データ・研究

AI Overview の引用の 76% は、検索上位 10 ページから

ルイーズ・ リネハン
Ahrefs のコンテンツマーケター。Pi Datametrics、BuzzSumo、Cision といった SaaS 企業でシニアコンテンツ担当として 10 年以上の経験を積む。日中はコンテンツや SEO について書き、オフや仕事の後はサッカーやカラオケを趣味として楽しむ。
従来の検索結果と AI の検索結果は、どの程度重複しているのでしょうか?

AI モデルは、検索拡張生成 (RAG) として知られるプロセスにおいて、静的な学習データを補強するために検索エンジンのインデックスを利用します。このため、AIによる回答と検索結果の間にある程度の重複が見られるのは当然と言えるでしょう。

しかし、検索エンジンで見つけられる度合いと、AIでどれくらい言及されるかはどの程度一致するのでしょうか?

Ahrefs のデータサイエンティストであるシベイジャ・グアンの協力のもと、100 万件の AI Overview から 190 万件の引用情報を分析し、各回答で最も目立った上位 3 件の引用元を調べました。

Google 検索で「how many people use ai」と入力した際に表示される AI Overview の回答例と、右側に表示された関連ソース記事の一覧

調査の結果、以下のことが明らかになりました。

  • AI Overview で引用されたページの 76.10% は、トップ 10 にランクインしています。 
  • AI Overview で引用されたページの 9.50% は、11 位から 100 位の間にランクインしています。
  • AI Overview で引用されたページの 14.40% は、SERP にランクインしていません(つまり 100 位以下)。 
Google 検索の結果における AI Overview の引用順位を示す円グラフ(Ahrefs による 190 万件の引用データに基づく)

要するに、従来の検索ランキングと AI Overview の引用には、大きな重複が見られるということです。

AI Overview に含まれる引用のうち、86% は Google 検索の上位 100 件以内にランクインしているページからのものでした。これは、トップ 10 に入るものもあれば、11 位から 100 位の間に位置するものも含まれます。 

AI Overview で引用される 3 つの URL は、SERP での順位の中央値が 3 位でした。 

主な(最も多く引用される)URL は、それより少し上位に表示される傾向があり、従来の検索での順位の中央値は 2 位です。 

AI Overview で最も多く引用された URL のオーガニック検索順位を示すボックスプロット。中央値は 2 位で、四分位範囲は 1〜4 位、外れ値は最大 8 位まで。引用される URL は通常、検索順位が高い傾向にあることを示している

2 番目、3 番目に引用される AI Overview のリンクも、多くの場合、検索結果のトップ 10 以内にランクインしていることがわかります。 

AI Overview で引用された上位 3 件の URL のオーガニック検索順位を比較したボックスプロット。順位が下がるにつれて分布が広がり、2 位・3 位の引用 URL は順位のばらつきが大きくなる傾向を示している

中央値に基づくと、AI Overview で 2 番目に引用されるリンクは、従来の検索結果では 4 位に、3 番目に引用されるリンクは 5 位にランクインしています。 

AI Overview の
引用ポジション
従来の検索結果
(中央値のポジション)
12
24
35

このデータを分布グラフとして視覚化すると、このようになります。

AI Overview の 1〜3 位に引用された URL のオーガニック順位の割合分布を示す折れ線グラフ。AIO 1 位の URL は 1〜2 位付近に集中(中央値 2)、AIO 2 位は 4 位前後(中央値 4)、AIO 3 位はより広い分布で中央値 8。AIO の引用順位と実際の検索順位の相関を可視化

AI Overview の引用の約 10% は、SERP の 1 ページ目より下にランクインしています。 

どのような場合に、 Google は AI で引用する際に検索結果の 1 ページ目を越えた情報まで参照するのでしょうか。 

ファンアウトクエリ理論

AI は、ユーザーのプロンプトに関連するサブトピックについて、より長く詳細な「ファンアウトクエリ」を生成し、それをもとに情報源を選択すると言われています。

ChatGPT のウェブ検索インターフェースのスクリーンショット。「Queries behind the answer(回答の元になったクエリ)」というポップアップに、複数の検索クエリ(例:best running shoes 2024 runners world、Nike Pegasus 42 review 2025 など)が表示されている。赤い矢印と「query fan-out!!!」というキャプションが、AI が複数の詳細クエリに分岐していく様子を強調。画面はダークモード表示
トム・ニエズゴダ氏の LinkedIn 投稿より。 Surfer 社の「Keyword Surfer」拡張機能により、ChatGPT が応答生成時に発行するファンアウトクエリを可視化している。

検索順位が低いページでも引用されるのは、そのページの内容が AI の生成するファンアウトクエリに対して、より適切に答えているからではないかという見方があります。そこで、それが本当かどうかを検証してみました。

検証結果

検索順位の低いコンテンツがファンアウトクエリの過程で引用されているとすれば、それはより詳細な(長い)クエリや、同義語を多く(より多くのキーワードを)含むクエリに対して返されるのではないかと予想していました。これは、ファンアウトクエリがいわゆる「ロングテール」型であることをふまえた仮説です。

しかし、実際には、トップ 10 より下にランクインしているページは、より少ないキーワードで表示され、より短いクエリで返されていることが分かりました。

平均上位 10 位に
ランクイン
11〜100 位に
ランクイン
キーワード数1020887
キーワードの平均語数5.45.2
「トップキーワード」の語数8.57.7

これは、ファンアウトクエリによって引用されるコンテンツの想定していた特徴とは、整合しませんでした。

AIによってコンテンツが引用される理由は多様化しており、鮮度や特定のユーザーの好みとの一致、さらには過去のプロンプトとの関連性など、さまざまな要因が関係しています。

「検索順位でトップ 10 圏外に位置する」約 10% の引用も、これら複数の要素が複合的に作用した結果であると考えられます。

まとめ

AI に引用されるコンテンツの 14% はトップ 100 にランクインしていませんが、これはルールというよりは、むしろ例外のようです。

AI Overview の可視性と検索の可視性は、かなり大きく重なっているように見えます。

これはつまり、あなたが検索で上位表示されれば、Google の AI の結果でも引用される可能性が高まるということです。 

とはいえ、この点については、筆者の同僚であるスー・ チュアン ・オンが最近、検索順位と AI Overview の可視性の相関に関する調査を行いました。

その結果は、中程度の正の相関であり、順位は重要であるものの、他の要因も作用していることを示唆しています。

SERP で 1 位にランクインしていれば、それより低い順位の場合よりも AI Overview で引用される可能性が高いのは事実です。しかし、その確率は、良くても五分五分といったところです。
スー・ チュアン ・オン
スー・ チュアン ・オン, シニアコンテンツマーケター Ahrefs

その確率を考えると、検索の可視性の全体像を把握するためには、従来のランキングと AI での引用パフォーマンスの両方を監視することが依然として重要です。 

Ahrefs を使えば、自社コンテンツの検索順位や AI Overview での引用状況を確認できます。サイトエクスプローラーのオーガニックキーワードレポートで検索順位をチェックし、Ahrefs ブランドレーダーAI Overview に引用されているリンクをすべて確認しましょう。 

「Brand Radar」ダッシュボードのスクリーンショット。「ahrefs」に関連するドメインの AI Overview における引用データを表示。2024 年 8 月〜2025 年 7 月までの推移をグラフ化し、reddit.com、backlinko.com、zapier.com、ahrefs.com、semrush.com の 5 ドメインを比較。下部のテーブルには、引用数、競合シェア、市場シェア、インプレッションなどの指標が表示。2025 年 7 月 16 日時点では reddit.com が引用数 750 件・インプレッション数 212,972 件で首位、backlinko.com、zapier.com、ahrefs.com、semrush.com が続く。ダッシュボードでは AI Overview が選択され、引用数順(絶対値モード)で並べ替えられている

今のところ、AI Overview の引用は依然として従来の検索での成功に大きく左右されているようです。つまり、SEOの基本を押さえることが、今も変わらず大切だということです。