
スー・ チュアン ・オン 作成
Ahrefs の SEO & Marketing Educator
Ahrefsが公開する記事は、すべて何らかの形でAIを活用しています。例外はありません。
ただ、Ahrefsの使い方は他とは違います。
重要なのは、AI をどれだけ使ったかで「スロップ」かどうかが決まるわけではないという点です。
AI スロップとは、読者が時間を費やす価値を正当化できるほどの「人間の理解・判断・根拠・独自の貢献」が欠けたまま公開されたコンテンツを指します。
つまり、スロップとは「作り手の労力を読者に転嫁する行為」です。
執筆者は面倒な部分を飛ばします。トピックの調査、主張の検証、意見の構築、何が重要かの判断などです。その結果、読者の側が「この情報は信頼できるか」「関連性はあるか」「そもそも書いた人は本当に理解しているのか」を自力で見極めなければなりません。
作り手は時間を節約できます。しかし、そのツケを払うのは他のすべての人です。
Ahrefs では、AI ファーストになることと、これまでコンテンツに価値をもたらしてきた取り組みを捨てることは別だと考えています。AI が担う作業が増えても、その取り組みを守り続ける方法を見つけること。それが Ahrefs の目指すところです。
多くのライターにとって、「書くこと」こそが仕事の本体でした。時間の大半はそこに費やされていました。AI がその部分のコストを劇的に下げたいま、Ahrefs の努力はもっと上流に移る必要があります。何を書く価値があるのか、どう構成するのか、自分たちが何を付け加えられるのかを考えることです。
AI に文章を書かせる前に、私は以下の問いに答えるラフな前提を用意します。
お気づきのとおり、これらは別に新しいものではありません。AI の登場以前から存在していたチェック項目であり、AI を使う時代でも変わらず必要なものです。
AI はこれらの問いに答える手助けはできます。検索結果(SERP)を整理させたり、私の切り口に反論させたり、反対意見を探させたり、根拠の不足を指摘させたりすることは可能です。ですが、最終的な判断を AI に委ねてはいけません。
とはいえ、計画は半分にすぎません。モデルには「面白い素材」も与える必要があります。
誰もがアクセスできるインターネット上の情報だけを渡せば、誰もが書いている記事の焼き直しが返ってくるだけです。どんなに精巧なスタイルプロンプトを使っても、それは変わりません。必要なのは、AI が自力では生み出せない生の素材です。インタビュー、社内の知見、独自データ、実演、失敗した実験、自分の仕事から得た具体例などです。
ここで必要になるのが、いわば「信頼できる情報源(Source of Truth)」です。たとえば、同僚のマテウシュは Letaido を使って Source of Truth アプリを構築しました。彼のエージェントと彼自身がコンテンツ制作時に参照する情報を、検索可能なライブラリとしてまとめたものです。

このツールには 4 種類のコンテンツが格納されています。ファクトと統計データ、解説記事、プロダクト詳細、そしてハウツーガイドです。
個人的に、私が実践した最大の変化は「タイプする代わりに話す」ことです。
タイプしていると、書きながら無意識に編集してしまいます。頭の中のカオスを、AI に渡す前にきれいに整理してしまうのです。ところが、そのカオスにこそ価値がある場合が多いのです。不確かさ、留保、意見、まだ形になっていないつながりといったものです。
そのため、私は Wispr Flow を使って音声入力をしています。部屋を歩き回ったり、デスクに座ったりしながら話します。とにかく頭の中のものをできるだけ多く吐き出して、AI に渡す生の素材を増やそうとしているのです。

あるいは、AI に私をインタビューさせて、論理のギャップを見つけ出し、主張になりそうなポイントを引き出してからアウトラインを提案させることもあります。この段階で AI に求めているのは、中身を捏造させることではありません。私が提供した素材を整理し、問い直すことです。

AI は、洗練された文章の中に判断を紛れ込ませるのが非常に得意です。
ワンショットのプロンプトでは、リサーチ、切り口、構成、主張、事例、トーンがすべて一度に決まります。それらの選択が目に触れるときには、すでに「記事」としてパッケージングされています。実際以上に確定した印象を与えてしまうのです。
だからこそ、ライアンのパイプラインは、ひとつの謎めいた最終ファイルを出力するのではなく、人間の編集ワークフローを再現する構造になっています。リサーチ、コンテンツギャップ、アウトライン、ドラフトがそれぞれ別に保存されます。どの段階でも内容を検証でき、問題のある出力や指示を修正し、最後に問題がなかった地点からやり直せます。

この原則をまねるために、23 のスキルを持つ Claude Code パイプラインが必要なわけではありません。作業をステージに分け、ステージの間に判断ポイントを置けばいいのです。
すべてのゲートで、ライター自身が判断を下す必要があります。追加リサーチを求めるかもしれませんし、セクションを削除したり、切り口を変えたり、記事そのものを取りやめたりすることもあるでしょう。
これが重要なのは、安価なアウトプットが独特のサンクコストを生むからです。AI が 2,000 語の整った文章を出した瞬間、人は「なぜこの記事が存在すべきなのか」を問い直すのではなく、「どう改善するか」を考えてしまいます。
いわばサンクコストの罠です。ただし AI の場合、その罠は 6 分ごとに発生します。
パイプラインを構築しない場合でも、1 本の記事に AI を使うなら、作業をステージに分けましょう。まずブレインストーミングだけを行います。ドラフトは書きません。やりとりを重ねて切り口に納得できたら、次のステージに進みます。アウトラインを作成させ、満足するまで AI と何度もやり直してから、次のステージに進むのです。途中で AI に自分の主張を「スティールマン(最強の反論構築)」させるのも有効です。
目的は、より良い判断を下すことであり、文字数を増やすことではありません。
そうしないと、AI によって「考える役割」を終える前に「編集者」にさせられてしまいます。
ここが、AI をコンテンツに活用する多くの企業と Ahrefs の違いだと考えています。
コスト削減のわかりやすい方法は、ほぼ同じ記事をより安く作り、浮いた分を量に回すことです。記事を増やし、キーワードを増やし、Google にクロールさせるページを増やすのです。
誤解のないように言えば、Ahrefs も退屈な作業を AI で自動化し、時間を節約しています。それを否定するつもりはありません。
たとえば、私が構築したデータリフレッシュハブは、12 のデータセットの取得、クリーニング、更新準備を自動化し、月あたり少なくとも丸 1 日分の手作業を削減しています。以前は四半期ごと、不定期、あるいはまったく行われていなかった更新が、毎月実行できるようになりました。

つまり、AI のおかげで公開・更新の頻度が上がっているのは事実です。
ですが、効率化のリターンは「量」だけではありません。
ドラフトと公開だけがコンテンツのボトルネックだったわけではないのです。むしろ大きな制約は、記事に追加したかったものの、コストや工数を考えると踏み切れなかった要素にありました。
たとえば、ちょっとしたデータ分析をしたければ、データサイエンティストの助けが必要でした。無料ツールを作りたければ開発者が要りました。よりインタラクティブな記事にはデザインとエンジニアリングの支援が不可欠でした。大規模なリサーチプロジェクトは、一人のコンテンツマーケターには手作業が多すぎることもありました。
AI がこうしたハードルを下げてくれます。ライターが自分でデータセットを分析し、ツールのプロトタイプを作り、インタラクティブな要素を構築し、記事の UI を改善し、リサーチの一部を自動化できるようになりました。完璧にこなせるわけではなく、重要な場面では専門家の力が必要です。ですが、「試してみる」ためのハードルは格段に下がりました。
シンプルな TablePress の埋め込みが、AI Mode で最も引用されるドメインを探索するための、よりリッチなインターフェースに進化した事例もあります。

あるいは、コンテンツマーケターが開発者の空き時間を待たずに、クイズや無料ツール、データの可視化を自力で作れるようになりました。たとえば Ahrefs の無料 LLMs.txt ジェネレーターがその一例です。

ここが Ahrefs が重視しているポイントです。AI を使って記事ごとの労力を「削る」こともできますが、以前はコストが合わなかった仕事に「挑む」ために使うこともできます。
「AI でどれだけ多くの記事を公開できるか」だけを問うのではなく、「以前は不可能だったものを記事の中に盛り込めるようになったか」を問いましょう。
スケールする力には、節度も必要です。Ahrefs はすべてのライターをコンテンツ工場に変えようとしているわけではありません。目指しているのは、公開に値する基準を下げることなく、一人のライターが作れるものの幅を広げることです。
プロセスの多くを AI が実行するとしても、結果に責任を持つ特定の人間が必要です。
ワークフローを運用する人物は、そのトピックを十分に理解し、主張を検証し、誤情報を正し、根拠の出所を説明し、自分の名前を出して問題ないかどうかを判断できなければなりません。
だからこそ、ライアンはパイプラインを持っていても、一晩で何百本もの記事を公開するようなことはしません。

コンテンツマーケティングディレクターとして、ライアンは Ahrefs のすべてのコンテンツの編集者でもあります。Ahrefs ブログに掲載されるすべての記事の、すべての言葉に目を通しています。
そして業界のソートリーダーとして、記事を読んだときに前提を疑い、根拠を問い、ありきたりなセクションを見抜き、「この記事は読者への約束を本当に果たしているか」を判断する力を持っています。
「ヒューマン・イン・ザ・ループ(人間がプロセスに関与する仕組み)」も、人間がただ出力にスタンプを押すだけなら、ほとんど意味がありません。必要なのは、知識と権限、そして「ノー」と言う意志を持った人間です。
そして、たとえ AI が生成した記事、あるいは AI がアシストした記事であっても、ライターとエディターの二人が十分な工数をかけ、公開に値するかどうかを確認しています。

AI が生成したコンテンツは、それだけで「AI スロップ」になるわけではありません。Google が AI コンテンツをどう扱うかについての Ahrefs の調査が示すように、AI を多用したページでも検索結果の上位 3 位以内にランクインできます。
しかし、AI の利用度が高まるほど、検索パフォーマンスは低下する傾向がありました。その原因は、Google が AI コンテンツにペナルティを課しているからではありません。多くの企業が AI を使って「難しい作業」を省略し、凡庸なコンテンツを量産しているからです。
ここで、この記事の核心に立ち返ります。AI が問題なのではありません。人間が責任を放棄することが問題なのです。
AI のおかげで「実行」のコストは劇的に下がりました。だからこそ、浮いた時間を判断、根拠、実体験、独自のアイデアに投資すべきです。読者が時間を費やす価値のある記事は、そこから生まれます。
本当に問われるべきは、AI がどれだけの文章を書いたかではありません。人間がその内容を理解し、判断し、検証し、責任を持って公開したかどうかです。
誰もその結果に責任を持たないなら、それはスロップです。
Ahrefs をもっと活用 👉
▶︎ Ahrefs 公式ブログ --- 本社発信の記事
▶︎ Ahrefs Canny --- 開発チームへ意見を送る
▶︎ X 公式アカウント--- 最新情報をリアルタイムで
▶︎ YouTube 公式チャンネル--- 動画コンテンツをチェック
▶︎ Ahrefs note --- 日本チーム発信の記事

Ahrefs|シニアコンテンツマーケター。
これまで 6 年間、デジタルマーケティングに携わり、アジアで開催される業界最大のカンファレンス(TIECon および Digital Marketing Skill Share)で数回講演を行っている。気になることを Substack(サブスタック)にも投稿中。