
ゲストライター
Web 制作とデジタルコミュニケーション支援を手がける株式会社 GIG は、顧客サイトの分析と提案に AI と Ahrefs データを活用しています。導入の目的は、作業時間の短縮だけではありません。担当者によって差が生じやすかったアクセス解析の品質を整え、提案段階からデータに基づく改善案を示せる体制をつくることにありました。
現在は、Ahrefs から取得したデータに顧客の事業背景を加え、Claude との対話を通じて課題の整理から改善提案、報告資料の作成までを進めています。AI 検索への対応では、ブランドレーダーを使って自社や競合の露出と引用元を継続的に確認し、コンテンツ、SEO、広報 PR を横断した施策につなげています。
株式会社 GIG 執行役員 CMO のじきるう氏( 内田 一良氏 )に、分析業務を半自動化した背景、社内での運用、AI 検索時代に必要な組織と人材について聞きました。
株式会社 GIG は、Web 制作を起点に、デジタルコミュニケーション全般を支援する企業です。自社ではフリーランス・副業向けマッチングサービス「Workship」や Web サイト CMS「LeadGrid」、オウンドメディア「Workship MAGAZINE」などを展開し、顧客に対しては戦略設計から制作、運用、改善までを一貫して支援しています。
じきるう氏は 2018 年に GIG へ入社し、メディア事業部長やマーケティング事業責任者などを経て、現在は執行役員 CMO を務めています。自社サービスのマーケティングに加え、顧客企業へのマーケティング・広報支援、書籍の編集・監修にも携わってきました。近年は、SEO に加えて AIO や LLMO と呼ばれる AI 検索最適化にも注力しています。
GIG では、法人リードを年間約 4,000 件、個人リードを年間約 1 万件を、広告を一切使わずにSEO / AI検索のみで獲得しています。AI 検索に関する相談も増えており、2026 年に入ってからは「AI に強いサイトを作りたい」という具体的な依頼が目立つようになったということです。
Claude と Ahrefs を組み合わせた背景には、顧客へ提供するアクセス解析の品質を安定させたいという課題がありました。GIG のマーケティングチームには、アクセス解析を得意とするメンバーがいる一方で、経験や得意分野には違いがあります。複数の顧客を支援するうえで、担当者によって分析や報告の品質が変わることは避ける必要がありました。
「AI 活用では、早く作れることに注目が集まりがちです。ただ、私たちが重視しているのは、それ以上に品質を保つことです。Claude と Ahrefs を組み合わせることで、まず一定水準の報告資料を素早く作り、そこから人が精度を高められるようになりました」
GIG が目指したのは、分析をすべて AI に任せる完全自動化ではありません。AI が作成した初稿を起点に、顧客の目的や事業固有の事情を踏まえて人が見直す「半自動化」です。出力に違和感がないか、別の視点が必要ではないかを判断し、足りない背景情報を追加する役割は人に残しています。
実際の分析では、最初に目的を明確にします。たとえば「問い合わせが減少している原因を把握し、改善策を検討する」と定めたうえで、目的に関連するデータを Ahrefs から取得します。問い合わせが多かった期間と減少後の期間など、比較する 2 期間を設定し、変化の要因を探ります。
次に、事業内容、顧客層、現在の施策といった背景情報を Claude に渡します。データだけでは判断できない文脈を補ったうえで、現状分析、課題整理、改善提案までを対話しながら組み立てます。報告資料は、エグゼクティブサマリー、全体の推移、現状分析、課題整理、改善提案、計測の前提、次のアクションという流れを基本としています。
長年の支援で蓄積してきた分析の観点や、報告資料に必要な要素は Claude のスキルとして整理しています。一度で完成形を求めるのではなく、対話を重ねて有効だった手順を再利用できる形にし、汎用性が高いものはチームで共有します。顧客固有の要件がある場合は、専用のスキルとして担当チーム内で管理しています。
従来は、顧客とのお打ち合わせを重ねる中で、マーケティングの戦略提案を徐々に作り上げていました。現在は、初回商談段階で対象サイトの状況を確認し、想定される課題と改善案までをスピーディに資料に含められるようになりました。初回の提案から具体的な分析を示すことで、顧客との議論を早い段階から実務的な内容へ進めやすくなったということです。
「初回提案の段階で、ここまで調べてくれるとは思わなかったと言っていただくことが増えました。顧客からの信頼にもつながり、受注にも良い変化が出ています」
この運用はマーケティングチームだけに閉じていません。営業担当者が Claude と Ahrefs を使い、自ら提案資料を作成するケースもあります。今後は、一部の担当者だけでなく、より多くの社員が同じ流れで分析と提案を行えるようにすることが課題です。
GIG は AI 検索の可視性を高める取り組みにも Ahrefs を活用しています。プロンプトを設計する前に、自社がどのようなブランドで、どの質問に対する回答で登場すべきかを整理します。単に露出数を増やすのではなく、事業上重要な質問で選択肢に入ることを優先しています。
「まず確認すべきなのは、自社が必ず登場すべき質問で出ているかどうかです。サービスが実際に何社と比較検討されるのかも踏まえ、現実的な候補数の中に入ることを目指します」
AI がブランドを推奨するには、根拠となる情報が必要になります。GIG では、制作実績、サービスの継続率、顧客事例など、選ばれる理由を裏付ける具体的な情報を自社サイトに整備しています。さらに、ブランドレーダーで回答と引用元を確認し、どのページや外部媒体が情報源として使われているかを分析しています。
AI 検索への対応では、まず顧客が必要とする情報を自社サイトに掲載します。サービス内容、料金、導入事例、口コミなどを整えた後、AI が引用する比較サイトやレビューサイトなどの外部媒体にも正確な情報を届けます。すでに掲載されている情報が古い場合は、料金やサービス内容、ブランドの説明を更新してもらうための働きかけも行います。
プレスリリースによる継続的な情報発信も重視しています。GIG では PR TIMES を活用しており、公開した情報が AI の回答で引用される例も確認しています。じきるう氏は、AI 検索への対応には、マーケティング、SEO、広報 PR の連携が必要だと話します。
GIG では創業時からマーケティングと広報が同じチーム内で動いてきました。この体制が、AI 検索の調査結果をコンテンツ改善や外部発信へ移す際の動きやすさにつながっています。
AI の回答や引用元は、モデルや検索環境の変化によって変動します。GIG は短期の増減だけで判断せず、中長期の取り組みとして月 1 回を基本に計測しています。
KPI には、設計したプロンプトのうち自社ブランドが露出した割合を示すシェア・オブ・ボイスを用います。あわせて、どの質問で露出したか、どの情報源が引用されたかを確認します。引用元に自社の情報を追加できる余地があれば、掲載内容の更新依頼、広報活動、広告を含む対応を検討します。
一方で、AI 検索最適化は短期間で成果が出る施策ではありません。早期の問い合わせ増加を求める顧客には、リスティング広告など別の施策を提案します。SEO や AI 検索最適化については、初期に全体戦略を設計し、その後の実行を中長期で支援する方針を取っています。
Claude と Ahrefs の活用を始める際、じきるう氏は最初から完成度の高いプロンプトを作ろうとしないことを勧めます。まずは短い指示で試し、必要な背景情報を会話の中で追加します。使える資料ができた段階で、それまでの手順を整理し、スキルとして保存します。
「世の中で配布されているプロンプトが、自社の業務に合うとは限りません。参考にはできますが、まず会話しながら試し、自分たちに合う形を見つけることが大切です」
この進め方であれば、初期の設計に時間をかけすぎず、実務を通じて精度を高められます。成果が安定した手順をチームで共有することで、個人の経験を組織の資産へ変えることもできます。
AI によって、1 人が扱える業務の範囲は広がっています。マーケティング担当者が広報 PR や広告に関わり、営業担当者が分析結果を用いて提案を作ることも可能になりました。一方で、成果を出すためには AI ツールの操作だけでなく、マーケティング、広報、営業など各領域のドメイン知識が欠かせません。
GIG では、新卒社員が複数の部署を経験するジョブローテーションを導入し、各領域の知識を身につける機会を設けています。営業がマーケティングを理解し、マーケティングが営業の視点を持つことで、AI が生成した分析や提案を適切に評価できる人材を育てる狙いがあります。
今後、マーケターに求められるのは、あらゆる質問で露出を増やすことではありません。自社が最も登場すべき質問を定め、そこで選ばれる状態をつくることです。優先順位を判断する力と、部門を横断して施策を実行する力が、AI 検索時代の競争力につながります。
今回の取材から見えたのは、AI 活用の価値を作業時間の短縮だけで捉えない GIG の姿勢です。Ahrefs のデータと Claude を組み合わせ、分析の初稿を素早く作りながら、顧客の目的や事業背景を踏まえた判断は人が担います。この役割分担によって、品質の標準化と提案の具体性を両立しています。
また、AI 検索への対応を SEO の延長だけでなく、ブランド戦略、コンテンツ、広報 PR を含む取り組みとして運用している点も特徴的でした。データを取得する環境と、結果を施策へ変える組織体制の両方があって初めて、継続的な改善につながります。
Web 制作を起点に、戦略設計、コンテンツ制作、マーケティング、広報、運用改善まで、デジタルコミュニケーション全般を支援。フリーランス・副業向けマッチングサービス「Workship」、Web サイト CMS「LeadGrid」、オウンドメディア「Workship MAGAZINE」などを展開している。
株式会社 GIG 執行役員 CMO。2018 年に GIG へ入社し、メディア事業部長、マーケティング事業責任者などを経て現職。Workship、LeadGrid など自社サービスのマーケティング、オウンドメディア運営、書籍の編集・監修、顧客企業へのマーケティング・広報支援に携わります。
ブランドレーダーは、AI 検索におけるブランドの言及、シェア・オブ・ボイス、回答の引用元などを確認できる Ahrefs の分析ツールです。自社と競合の可視性を比較し、カスタムプロンプトを継続的に追跡できます。

Ahrefs 日本マーケティング統括。 国外 SaaS 企業における日本市場向けのマーケティングとローカリゼーションで 10 年以上の経験を積み、現在は Ahrefs の日本マーケティングを統括。ユーザーの皆さんと共に、Ahrefs を日本で盛り上げることを目標に、日々全力で取り組んでいます。