データ・研究

調査で判明:オーガニック流入が多いサイトは、AI の回答にも選ばれやすい

パトリック ・ストックス
Ahrefs のプロダクトアドバイザー、テクニカル SEO 担当、およびブランドアンバサダー。2021 年の Web Almanac(ウェブ開発コミュニティによって毎年刊行されるインターネットの現状分析レポート)内で SEO を扱った章の筆頭著者で、2022 年には同章のレビューを担当。Ahrefs 制作「初心者のための SEO ブック」の共著者であり、SEO 解説書籍「The Art of SEO 第 4 版」のテクニカルレビューおよび編集担当。Raleigh SEO ミートアップ(アメリカで最も参加者の多い SEO イベント主催グループ)、Beer and SEO ミートアップ、Raleigh SEO カンファレンス、Tech SEO Connect など複数の団体で主催者をつとめ、Technical SEO Slack グループの運営や、掲示板 Reddit の /r/TechSEO(テクニカル SEO 関連スレッド)の管理人としても活動。
この結果に驚く人はいないでしょう。従来のオーガニック検索で多くのトラフィックを獲得しているウェブサイトは、AI 検索でもより多く言及される傾向にあります。検索システムが変わっても、人気のあるサイトはやはり人気なのです。

筆者は、2025 年 6 月のデータに基づき、Google AI Overview、ChatGPT、そして Per­plex­i­ty のそれぞれで最も言及された上位 50 のウェブサイトを Ahrefs ブランドレーダーで調査しました。この調査は、約 7,670 万件の AI Overview、95 万 7,000 件の Chat­G­PT プロンプト、そして 95 万 3,500 件の Per­plex­i­ty プロンプトを対象としています。 

そして、それらのウェブサイトの言及数を、Ahrefs で計測した全世界のオーガニック検索トラフィックと比較しました。 

Side­note.
ブランドレーダーは、単なる AI 可視性モニタリングツールではありません。Ahrefs はこれらの AI 検索システムで発生する膨大なクエリを追跡しているので、ブランドレーダーを用いることで、あらゆる製品、サービス、ブランドを検索でき、競合他社と比較することができます。どちらかというと、ランクトラッカーよりもサイトエクスプローラーに近いツールです。さらに、ウェブ上でどれくらい言及されているかを把握できる「ウェブでの可視性」や、人気度を確認できる「検索需要」といった機能も備えています。

ブランドレーダーは、このように表示されます。

Ahrefs ブランドレーダー

では、詳しく見ていきましょう。

3 つのシステム(AI Overview, Chat­G­PT, Perplexity)はすべて、トラフィックの多いウェブサイトをより頻繁に言及する傾向にありますが、その関係性の強さには多少の違いが見られます。

Per­plex­i­ty での言及は、ウェブサイトのオーガニック検索トラフィックと最も強い相関が見られました。

Chat­G­PT は最も相関が弱い結果となりましたが、もし Wikipedia がこれほど極端な外れ値でなければ、相関はもっと強まっていたでしょう。

「相関関係は因果関係を意味しない」といういつもの注意喚起はしておきますが、今回の相関関係は非常に理にかなっています。

以下は、各システムの上位 50 ドメインにおける、言及シェアと検索トラフィックのスピアマンの順位相関係数です。

AI アシスタントスピアマンの順位相関係数(Rho)P値相関の強さ
Google AI Overview0.470.0006中程度
Chat­G­PT0.330.0515弱い
Per­plex­i­ty0.660強い

検索は Google の本業です。Google で上位にランクインし、多くのオーガニック検索トラフィックを獲得しているサイトは、AI Overview でもより多く言及される傾向にあるようです。 

AI Overview における上位 50 サイトの言及シェアとウェブサイトトラフィックの比較

AI Overview は、YouTube、 Red­dit、 Quora、または Wikipedia といったユーザー生成コンテンツ (UGC) サイトを過度に参照する傾向にあります。一方で、Facebook、 Insta­gram、 Tik­Tok のようなソーシャルメディアサイトはあまり参照されません。 

以前の調査では、AI Overview が YouTube、 Red­dit、 Quo­ra といった UGC サイトを、そのトピックの人気度が示す以上に好んで参照している可能性を指摘しましたが、今回の検索トラフィックとの比較でも同じ傾向が見られました。Google はこれらのシステムにかなり強く依存しているようで、その度合いは本来あるべき姿を超えているかもしれません。あるいは、単にこれらのサイトに、人々が本当に求める回答やコンテンツの種類が揃っているだけなのかもしれません。

Wikipedia は Google で上位に表示され、今回の調査でも際立っていますが、トピックの人気度で分析した際には、むしろ参照される割合が低い結果となっていました。これは、Wikipedia が従来のウェブ検索において、実際には過小評価されていた可能性を示唆していると言えるかもしれません。しかしご心配なく。Google は AI Overview でその状況を是正しようとしているようです。 

今回、ChatGPT は予測不能な存在でした。彼らは従来の検索インデックスを持っていないため、結果がどうなるか分かりませんでした。それでも最終的には、オーガニック検索トラフィックとまずまずの相関関係が見られました。

ChatGPT における上位 50 サイトの言及シェアとウェブサイトトラフィックの比較

前回の調査では、Wikipedia や Reuters のようなニュースサイトは、トピックの人気度に比べて活用されていないという結果でしたが、今回の分析ではその傾向が是正されています。これは、このようなサイトが従来の Google オーガニック検索において、過小評価されていた可能性があることがうかがえます。

Chat­G­PT での言及において、Wikipedia は圧倒的な存在感を放っています。全クエリのなんと 16.3% で言及されているのです!また、ニュースサイトもこのインデックスではより適切に参照されています。実際、もし Wikipedia がなければ、言及数と検索トラフィックの相関はもっと強くなっていたでしょう。

一方で、あまり良い結果を出せなかったのは、企業サイトやエンターテイメントサイトです。これらのサイトは、Google でのパフォーマンスと比較して、十分な可視性を得られていません。

Per­plex­i­ty は従来の検索エンジンを持っていないにもかかわらず、調査対象の中でオーガニック検索トラフィックと最も強い相関を示しました。言及数とトピックの人気度を比較した際にも、同様の結果が見られました。Perplexity がどこからかこのデータを取得し、それに合わせてモデルを学習させたのではないかと思ってしまうほどです。

Perplexity における上位 50 サイトの言及シェアとウェブサイトトラフィックの比較

Per­plex­i­ty では、YouTube と Wikipedia が優勢で、全言及のそれぞれ 16.1%、12.5% を占めています。Healthline や Med­line­Plus のような、いくつかのヘルスケアサイトも同様に上位に集まっています。

一方、Instagram のようなソーシャルメディアサイト、IMDB のようなエンターテイメントサイト、そして Google や Microsoft といった一部の企業サイトは、あまり参照されていないようです。

まとめ

この結果は、おそらく誰にとっても驚きではないでしょう。オーガニック検索トラフィックが多いウェブサイトは、AI 検索でもより多く言及されるのです。 

参照されやすいサイトの傾向から、動画コンテンツの作成やフォーラムでの積極的な活動は、有効な戦略だと言えるでしょう。これらのシステムは、明らかにユーザー生成コンテンツ (UGC) を求めているようです。 

もしあなたが Wikipedia なら話は別ですが、百科事典のような網羅的なコンテンツを作成することが本当に有効かどうかは明確ではありません。Ahrefs の用語集へのアクセスをみると、AI 検索経由の流入は一定程度あるものの、やはり目立って多いとは言えないようです。

ご質問があれば、X でお気軽にお声がけください。