| この記事の要点 ▸ Ahrefs Evolve Singapore 2026 では、AI による概要(AI Overviews) によるトラフィック減少そのものよりも、その後の KPI 設計に議論の重心が移っていた ▸ AI 検索時代の SEO では、Brand Mentions、Visibility、Branded Keyword search volume、Accuracy、Traffic & Attribution、売上などを階層的に見る必要がある ▸ SEO と AEO は対立ではなく、情報の取得・処理・提示という構造の上で地続きの実務として捉えるべき |
Ahrefs Evolve Singapore 2026 では、AI 検索時代における SEO・AEO・ブランド可視性をめぐる議論が交わされました。現地で印象的だったのは、AI による概要(AI Overviews)によるトラフィック減少そのものを嘆く議論よりも、その変化を前提に、どの KPI を追い、どのようにブランドの発見可能性を高めるかという実務的な議論に重心が移っていたことです。
今回は、SEO・AI 検索領域で発信を続ける平 大志朗氏に、Ahrefs Evolve Singapore 2026 の会場で感じた議論の変化、AI 検索時代に追うべき KPI、そして日本のマーケターが今後意識すべき視点について伺いました。
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平氏は 2025 年のシンガポール開催およびサンディエゴ開催にも参加しており、継続的に Ahrefs Evolve を現地で見てきた実務家のひとりです。SEO・AI 検索に関する知見を YouTube をはじめ多方面で発信されており、今回のインタビューは Ahrefs Evolve Singapore 2026 の会場で収録しました。
Ahrefs 河原田: Evolve シンガポールへのご参加ありがとうございます。まず、平さんが今回いらっしゃるきっかけとなった Evolve の魅力を教えてください。
平氏: Ahrefs は、SEO 業界の中でも一、二を争うほど存在感のあるプロダクトで、その実務家コミュニティが世界中から集まる場であることが、自分にとっては大きな魅力です。2025 年もシンガポールとサンディエゴに参加したのですが、サンディエゴはとくに会場の熱量が高かったですね。
Ahrefs 河原田: サンディエゴ、そんなにすごかったんですか。
平氏: シンガポールも素晴らしいんですけど、Ahrefs Evolve サンディエゴは会場の広さも参加者数もさらに規模が大きく、韓国などアジア圏からの参加者も多くて、グローバルな実務家が一堂に会する場という感覚が強かったです。会場の周辺にはツール各社のアクティビティも目に入って、SEO ツール業界全体の動きを肌で感じられました。

平氏は、Ahrefs Evolve の空気感を、かつての IT 業界の象徴的なユーザーカンファレンスに例えました。
平氏: IT プロダクトの文脈で言うと、かつての MacWorld のような感覚に近いですね。セッションの内容そのものも学びになりますが、Ahrefs というプロダクトを軸に SEO の実務家が集まり、議論が交わされるこの空気感は、現地でないと得にくい価値だと感じています。
Ahrefs Evolve は、単なるカンファレンスというより、世界中の SEO 実務家が一堂に会する場としての性格が強いイベントです。セッションで最新の知見を得ることに加え、会場の熱量そのものが議論の解像度を高めてくれる側面があります。平氏は 2025 年のサンディエゴに続き、2026 年のシンガポールにも足を運びました。継続的に現地参加するスタンスの背景には、「現地でしか感じ取れない議論の温度がある」という考えがあるようです。
SEO という仕事はデスクワークに閉じがちですが、世界中の実務家と直接言葉を交わし、議論の温度感を共有する場に身を置き続けること。それ自体が、平氏のリサーチャーとしての基盤を支えている要素のひとつのようです。
Ahrefs 河原田: 国内外いろいろなカンファレンスに参加されていると思いますが、AI 検索に関する議論の解像度について、日本と海外で感じる違いはありますか。
平氏: 私が見ている範囲では、海外の方が AI 検索への受容と適応が早い印象があります。とくに今回の Ahrefs Evolve Singapore 2026 では、その感覚をはっきり持ちました。良し悪しの問題ではなく、国内ではまだ「SEO か AEO か」という対立軸で語られる場面もある一方、現地の主要セッションでは、すでに別のフェーズに議論が進んでいたと感じます。
Ahrefs 河原田: なるほど。
平氏: 今回の Evolve では、少なくとも主要セッションでは、その二項対立そのものは中心論点として扱われていませんでした。
この発言は、日本と現地での議論の「フェーズ」の違いを端的に表しています。国内でも SEO と AEO をめぐる議論は活発ですが、少なくとも今回の主要セッションでは、その二項対立そのものよりも、KPI 設計や実装に議論の重心が置かれていました。
平氏はさらに、2025 年と 2026 年の Evolve における議論テーマの変化を指摘しました。
平氏: 2026 年と 2025 年の違いは、議論の中心の置き方です。2025 年は、AI による概要(AI Overviews)の登場による流入数への影響、つまりトラフィック減少そのものが大きな話題でした。Ahrefs CMO の Tim さんもそのテーマで話していました。一方、今年は少なくとも主要セッションでは、流入減少そのものを嘆く議論は中心ではありませんでした。
Ahrefs 河原田: それは大きな変化ですね。
平氏: ここは日本と現地で、議論が置かれているステージの差として感じた部分です。
2025 年の Evolve では、AI による概要(AI Overviews)の登場によるオーガニックトラフィックの減少が大きなテーマでした。「自分たちのサイトへの流入がどう変化するか」という関心が議論の中心にあったと言います。1 年後の Ahrefs Evolve Singapore 2026 では、その話題はほぼ中心から外れていました。複数のセッションを通じて、トラフィック減少そのものを論点として扱う場面は限定的だったのです。
少なくとも主要セッションでは、AI による概要(AI Overviews)によってオーガニック流入が減少するという議論は中心になっていませんでした。多くの実務家がその前提を共有したうえで、次の打ち手の議論に進んでいる印象です。
この変化は、少なくとも今回の Ahrefs Evolve Singapore 2026 において、議論の重心が「影響把握」から「適応と実装」に移っていたことを示唆しています。トラフィック減少それ自体を議論の主題に置くのではなく、その前提のもとでどのような KPI を設定し、どのような戦略を組み立てるかという、より実践的な議論にシフトしていました。
Ahrefs 河原田: KPI も変わってきたという話がありましたよね。コンバージョンなどの下流指標も含めて見るべきだという議論もありました。
平氏: そうですね。現地のセッションでは、この状況を前提として、ではこの状況下で何をするか、というところに議論の重心が移っていることを強く感じました。
Ahrefs Evolve Singapore 2026 で得た気づきの中から、平氏が「日本に持ち帰りたい」と語った最も重要なテーマ。それは、AI 検索時代に何をトラッキングすべきかという KPI の再定義でした。
平氏: AI 検索に対する捉え方は、明確に持ち帰りたいと思いました。今回、自分の中でもやや輪郭がはっきりしていなかった部分が、現地で言語化されたと感じています。AI 検索におけるトラッキングについて複数の登壇者が言及していたのですが、まず重要なのは可視性(Visibility / Share of Voice)。これは以前から言われている点です。
平氏: 次に、指名検索ボリューム(Branded Search Volume)。
Ahrefs 河原田: 指名検索ですね。
平氏: そうです、指名検索。それから関連キーワードの検索ボリュームの変化、そこから全体の売上です。ブランドメンションだけを単独で見たり、メンション数単体を最重要 KPI に置くのではなく、ビジビリティや指名検索、最終的な売上との関係性のなかで位置づけるべきだと感じました。ビジビリティとブランドキーワードがまず直接的に追える KPI で、そこからオーガニックの流入を見ていく、という階層で整理できると思います。
これは示唆に富む整理です。AI 検索の時代において、多くのマーケターは「何を指標にすればよいのか」という問いに直面しています。SNS や一部の論調では「ブランドメンション数を追え」「AI での言及回数が新しい KPI だ」といった主張も見られますが、平氏は Ahrefs Evolve Singapore 2026 での複数のセッションを通じて、より実践的な KPI の優先順位の整理に確証を得たと語ります。
平氏が今回の議論を踏まえて整理した、AI 検索時代に見るべき KPI は以下の通りです。
• Visibility(検索結果や AI 回答における自社・自社コンテンツの露出度)
• Branded Keyword search volume
• 売上・コンバージョン(最終的なビジネス成果)
• オーガニック流入(従来から重要な指標。他の KPI と組み合わせて見る)
※オーガニック流入は引き続き重要な指標です。AI 検索時代には単独で評価するのではなく、可視性・指名検索・売上との関係のなかで見る必要がある、という整理です。
Ahrefs 河原田: 最終的にはブランドの認知度が AI というチャネルを通して上がって、そこで指名検索が増えているかどうかを見ていくということですね。
平氏: そうですね。ブランド検索ボリュームを継続的に見るべき重要な KPI として挙げていた登壇者もいましたし、ひとつの有力な見方だと受け止めています。複数の登壇者が近いことを語っていたので、改めて確証を得た感覚があります。
「フワッとしていたものが言語化された」という平氏の表現は、現地参加の価値を象徴しています。ひとつのセッションだけでは「ひとつの意見」に過ぎないものが、複数の登壇者から同じ方向性の発言が出ることで「確証」に近づく。この体験は、ブログ記事や動画のアーカイブを視聴するだけでは得にくいものです。会場にいて、セッションからセッションへと流れる議論の文脈を肌で感じるからこそ、点が線になる瞬間があるのでしょう。
AI 検索の台頭によって業界は激変しているように見えますが、平氏は「本質的に変わっていない部分」があると指摘しました。
Ahrefs 河原田: 平さんが今、SEO・AEO の領域で「ここが本質的に変わってきている」、または逆に「ここは変わっていない」と捉えているポイントを教えてください。
平氏: 自分の中で軸に置いているのは、SEO も AEO も、ユーザーに返される結果の背後で、検索システムや AI が取得・参照した情報を処理しているという点です。したがって、情報を見つけられやすくし、理解されやすくし、信頼されやすくするという改善策の大枠は、SEO も AEO も地続きだと考えています。
この指摘は、SEO の実務家にとって重要な視座を提供します。検索エンジンであれ AI であれ、根底にあるのは「情報が取得・処理され、ユーザーに対して回答や結果として返される」という構造です。その構造に対する最適化を行うという大枠は、テクノロジーが進化しても地続きで捉えられると平氏は言います。
一方で、平氏は AEO に関する現在の議論についても率直な疑問を呈しました。
平氏: 今の AEO の議論で、自分のなかでまだ腹落ちしきれていないのが、施策としてよく挙げられる「専門家や第三者からの言及を増やす」「ブランドの認知や信頼を高める」といった話です。方向性としては理解できますし、重要だとも思います。ただ、そのままだと抽象度が高く、実務の打ち手まで落とし込みづらいと感じています。
平氏は、身近なたとえを使って説明しました。
平氏: たとえば、来月の結婚式までにスーツが入るようになりたいですと言っている人に対して、「健康的な食事をしましょう」とだけ伝えて終わってしまう、というイメージに近いんですよね。
Ahrefs 河原田: これまでの一般論と変わらない、ということですよね。
平氏: そうです。それだけでは実務に落とし込みづらい。AI 検索によって、自サイト外、オフサイトでどのようなレピュテーションを獲得するかが重要になってきたのは事実なのですが、抽象論だけで終わってしまうと、現場では動きづらいんですよね。
この指摘は、AI 検索時代のマーケティングにおける重要な論点であると思いました。「外部言及を増やす」「信頼されるブランドを創る」といった方向性は間違っていませんが、それだけでは実務者が具体的な行動に落とし込めません。例えば「健康的な食事をしましょう」と言われても、具体的なメニューやカロリーがわからなければ行動できないのと同じです。AEO や LLMO の施策も「どの媒体で、誰に、どの文脈で、何を語ってもらうのか」まで分解して初めて、実践的な打ち手となります。
一方で、SEO と AEO を完全に別物として扱うべきではありません。検索エンジンでも AI でも、結果の背後には「情報を取得し、理解し、信頼性を判断する」プロセスが存在します。そのため、情報を「見つけやすく、理解されやすく、信頼されやすくする」という改善の方向性は、SEO と AEO で地続きと言えます。
この視点は、変化の激しい AI 検索時代において、実務家の足場を固める重要な考え方です。新しい技術やトレンドに振り回されず、根底の構造を理解したうえで変化に適応する。平氏のアプローチは、まさにこうした冷静な態度に基づいていると感じました。
今回のインタビューを通じて、「議論を抽象論で終わらせず、明日の打ち手に落とし込むこと」の重要性が繰り返し浮かび上がりました。
複数の登壇者の言葉から仮説の輪郭が明確になること。会場の空気から議論の重心の変化を体感すること。主要セッションにおいて、SEO と AEO の対立軸よりも「その先の実装」へ議論が進んでいると肌で感じること。これらはすべて、オンラインの情報消費だけでは得難い体験です。
平氏: 現地に来て、その温度感、肌感を感じることができたのは大きかったですね。
平氏が Ahrefs Evolve Singapore 2026 の会場で得た気づきは、大きく 3 つに整理できます。
• 今回の Evolve Singapore 2026 では「適応」のフェーズに議論が進んでいた:トラフィック減少を嘆く議論ではなく、新しい KPI のもとで具体的な戦略を組み立てる議論が中心
• 追うべき KPI の見方が明確になった:ビジビリティや指名検索、トピック単位でのシェアオブボイス、回答の正確性・鮮度、売上・コンバージョン、オーガニック流入を、単独の指標ではなく事業成果との関係のなかで捉えるという整理
• 抽象論ではなく具体的な施策の解像度が問われている:「良いブランドを作り、結果的に外部言及を増やしましょう」という方向性に加えて、実務レベルの解像度を上げることが重要
これらの知見は、まさに「日本に持ち帰りたい」と平氏が語った内容そのものです。
Ahrefs Evolve Singapore 2026 での体験を通じて、平氏が伝えたいメッセージは明確です。
第一に、「トラフィック減少の把握」にとどまらず、その先の KPI 設計へ議論を進めること。 AI による概要(AI Overviews) によるクリック減少は多くのサイトで観測されており、今回の Ahrefs Evolve Singapore 2026 では、すでにその前提のうえで議論が進められていました。今後は影響把握に加えて、次の KPI 設計へと議論を進める必要があります。
第二に、KPI をアップデートすること。 ビジビリティ、指名検索の検索ボリューム、そこからの売上。この階層構造を理解し、従来のオーガニックトラフィック中心の評価軸を相対化していく必要があります。
第三に、SEO と AEO を地続きの実務として捉えること。 両者の根底にある「情報の取得・処理・提示」という構造は共通しています。対立構造に置くのではなく、統合的に取り組む視座を持つことが重要です。
第四に、抽象論で止めないこと。 「良いブランドを作って、外部言及を増やしましょう」だけでは施策になりません。具体的なアクションプランにまで落とし込める力が、これからの SEO・AEO 実践者には求められます。
そして、自ら現場に足を運び、議論の温度感を確かめることの価値。オンラインで情報を追うことと、グローバルカンファレンスの会場で実践者と同じ空気を吸うこととは、得られる情報の質が異なります。平氏が継続的に Ahrefs Evolve に参加している背景には、こうした考えがあるようです。

編集後記
平氏のお話からは、単なるイベントレポートにとどまらない、AI 検索時代における SEO の本質的な問いが浮かび上がりました。「SEO vs. AEO」という対立軸を一度脇に置いて、地続きの実務として捉え直すという視点は、日本の SEO 業界にとっても示唆的です。
Ahrefs Evolve は、AI 検索時代の SEO・AEO・ブランド可視性について、実務家同士が議論を深める場のひとつになっています。現地で得た知見を日本語で共有することは、国内の実務者にとっても参考になるはずです。