事例

株式会社 LANY 独占インタビュー:「測れる指標に踊らされない」 LANY 竹内氏が Evolve Singapore で得た AI 時代の本質

河原田 隆徳 (TAKA)
Ahrefs 日本マーケティング統括。 国外 SaaS 企業における日本市場向けのマーケティングとローカリゼーションで 10 年以上の経験を積み、現在は Ahrefs の日本マーケティングを統括。ユーザーの皆さんと共に、Ahrefs を日本で盛り上げることを目標に、日々全力で取り組んでいます。
SEOLLMO 支援のプロフェッショナル集団として急成長を続ける株式会社 LANY。代表取締役の竹内渓太氏は、Ahrefs(エイチレフス)公式アンバサダーとして 2 年連続で Ahrefs Evolve Sin­ga­pore に参加し、AI 検索時代の最前線を肌で感じてきました。

「新規提案の準備に 10 時間かかっていた作業が、AI エージェントの Agent A 導入後 10 分になった」と語る竹内氏が、海外カンファレンスで得た知見、ブランドマーケティングへのシフト、そして AI エージェントがもたらすエージェンシーの未来について語ります。

2 年連続 Ahrefs Evolve シンガポールにお越しいただいた株式会社LANY 代表の竹内様(右)と、浅井様(左)

本記事では、Ahrefs Evolve Sin­ga­pore 2026 の会場で行った現地インタビューの模様をお届けします。聞き手は Ahrefs 日本マーケティング統括の河原田です。

河原田: Evolve シンガポール、2 年連続のご参加ありがとうございます。まず、最近の LANY の動きと、竹内さんが今一番ホットだと感じている取り組みを教えてください。

竹内氏: 私たちは今、LLMO に全集中しています。その中でも、SEO の延長ではなく、もっとブランドマーケティング寄りなのではないかと考えているんですよ、LLMO も。ですので、そのあたりを科学していきたいというのが今一番ホットなトピックです。

LLM(大規模言語モデル)と AI 検索の台頭は、SEO 業界に大きな転換をもたらしています。しかし竹内氏は、その変化を単に「SEO の延長」として捉えるのではなく、ブランドマーケティングの領域として再定義しようとしています。

Ahrefs Japan Pod­cast においても、 LANY竹内氏はワクワクする LLMO 未来設計図について熱く語られました。

竹内氏: 日本国内の LLMO の概念や AI 検索の概念は、いろいろと調べられるのですが、海外の方々がどう捉えているのかを知りたくて、今年はいくつか海外カンファレンスに参加しようと思っています。その一つ目として今回参加させていただきました。

今年はアメリカなど複数の海外カンファレンスへの参加も予定しているという竹内氏。その背景には、LLM がまだ黎明期にあり、人によって捉え方が大きく異なるという現状認識があります。

竹内氏: やはり黎明期ですので、LLMO に関しては人によって捉え方が大きく異なります。日本でも SEO の延長と考える方もいれば、パフォーマンスマーケティングと捉える方もいますし、ブランドマーケティングだという方もいます。いろいろな意見を取り入れた上で、自分なりの答えを出してみたいと思い、今期は積極的に知見を得に行こうとしています。

設立 6 年目を迎える LANY だからこそ、既存の枠組みに囚われず柔軟に軸足を動かせる。竹内氏はその身軽さを強みとして、積極的に海外の知見を吸収しようとしています。

河原田: Ahrefs Evolve のセッションに参加されて、海外と日本の熱量とか意識の違いって何かありましたか?

竹内氏: 感じましたね。やはり海外のほうが一歩進んでいるなという印象があります。日本だと、AI 検索周りは SEO の延長でコンテンツをこうすれば引用されるという話が中心なのですが、ティムも言っていましたし、3 番目の登壇者の方もおっしゃっていたのは、そういう話ではなく、「ブランドマーケティング」だということです。

Evolve のセッションで複数のスピーカーが共通して語っていたのは、「AI 検索時代のマーケティングは、コンテンツの最適化だけでなく、ブランドそのものの認知と言及を増やすことが鍵になる」という視点でした。竹内氏はこの議論に深く共感したと言います。

Ahrefsが主催する年次マーケティングカンファレンス「Evolve」。国内外からトップマーケターが集結し、マーケティングの最前線に関する議論が交わされます。

竹内氏: ブランド名がたくさん言及されるように PR を行ったり、リードやコンバージョンを追うだけでなくブランドメンションを追ったり、そういったブランドマーケティング的な要素を重視していこうという流れになっていて、まさにそのとおりだと強く共感しました。

日本の AI 検索に関する議論が「コンテンツをどう最適化すれば AI に引用されるか」というテクニカルな視点に偏りがちである一方、海外では PR やブランドメンションの増加など、より上流のマーケティング戦略として議論が進んでいる。この差を体感できたことが、今回の Evolve 参加で得た大きな収穫だったと竹内氏は語ります。

河原田: 最初に言っていたブランドマーケティングというところに、本当に求めていた情報をここで得られたんですか?

竹内氏: はい、まさにそうです。非常に参考になりました。

河原田: 日本に持って帰りたいと思っているテーマや考え方はありますか?

竹内氏: 今のところ一番持ち帰りたいのは、測れる指標に踊らされすぎないほうがいいということを強く感じた点です。

SEO の世界で長年重視されてきたキーワード順位、コンバージョンレート、コンバージョン数。これらの「測定可能な指標」は確かに重要ですが、AI との対話というブラックボックスが介在する新しい時代において、それだけを追い続けることのリスクを竹内氏は感じています。

竹内氏: やはり SEO をやってきたからこそ、キーワードの順位やコンバージョンレート、コンバージョン数を気にしてしまうのですが、もうそういう世界ではなくなってきていますよね。AI との対話というブラックボックスがある中で、いろいろな方が「見えないものを大事にしましょう」とおっしゃっていたので、そのスタンスはまず確実に持ち帰りたいと、今のところ思っています。

『測れる指標に踊らされすぎないほうがいい。それを見ていると優先度がずれるのかなと思いますので、本当に大切なものの優先度になっていないというか。そこは確実に意識したいなと思います。』

数字で測れるものだけを追いかけていると、本当に大切なものの優先順位がずれてしまう。Evolve で複数のスピーカーが語った「見えないものを大事にする」というスタンスは、SEO のプロフェッショナルだからこそ響くメッセージでした。

河原田: 竹内さんは新しい時代に向けたマインドのシフトがすごく柔軟にできますよね。

竹内氏: まだ私たちは 6 年目の会社ですので、失うものもなく、軸足を動かしやすいと思います。

創業からまだ 6 年。その若さゆえの身軽さと、既存の成功体験に縛られない柔軟性が、LANY の強みとして際立っています。

河原田: AI エージェントのマーケティングについて、ワクワクしている部分と、懸念している部分の両方を教えてください。

Ahrefs が提供するAIエージェント「Agent A」。14 年以上にわたり蓄積された膨大な Ahrefs データへのアクセスはもちろん、自然言語での指示だけで独自のアプリやダッシュボードの構築、業務の自動化までを可能にします。

検索リテラシーの壁がなくなる世界

竹内氏: 非常にワクワクしています。その理由は、SEO の時代ではこれまで、検索リテラシーが高くないと良い情報に巡り合えませんでしたし、例えば良い買い物ができなかったと思うんですよ。

従来の検索エンジンでは、「何と検索すれば欲しい情報にたどり着けるか」「検索結果をどう精査するか」は、ユーザーのリテラシーに大きく依存していました。しかし AI エージェントの時代では、その構造が根本的に変わると竹内氏は期待しています。

竹内氏: AI になってくると、その部分を超高性能な AI が代わりにやってくれるわけです。私たちは本当に思っていることを、思っている言葉のまま伝えればいい。そうなると、検索リテラシーがない方にとっても良い情報に出会えるようになると思います。つまり、企業が本当に良いものを作っていれば、本当に必要としている方に届くという状態になると思いますので、とても良い時代だなと感じています。

『企業が本当に良いものを作っていれば、本当に必要としている方に届くという状態になると思いますので、とても良い時代だなと感じています。』

検索キーワードの選び方や情報の精査を AI が代行してくれることで、ユーザーは自然な言葉で本当に欲しいものを伝えるだけでよくなる。そして企業側も、本当に良いプロダクトやサービスを作っていれば、それが必要な人に自然と届く。竹内氏はこの構造変化を「より本質的な時代」と表現します。

マーケターの差別化が難しくなるという懸念

一方で、懸念がないわけではありません。

竹内氏: マーケティングを進めていく上で、横並びになってくると思うんです。専門性のようなものが AI によって全体的に引き上がり、誰でも同じことができるという状態になってきますので、そこでどうやってマーケターは価値を出していくのか、私たちのような支援会社はお客様により大きな価値を提供していくのかというのは、少し難しいポイントではあるかなと思います。

AI によって誰もが高い水準のマーケティングを実行できるようになると、専門性だけでは差別化が難しくなります。これはエージェンシーにとって避けて通れない課題です。

竹内氏: ただ逆に言えば、本当に良いものを作る、サービスやプロダクトを磨く、それこそが最大のマーケティングになっていく時代だと思いますので、より本質的な時代かなと感じています。

AI がコンテンツ制作やデータ分析の品質を底上げする一方で、「本当にいいものを作ること」そのものが最大のマーケティングになる。テクニックよりも本質が問われる時代への期待を、竹内氏は率直に語りました。

河原田: 竹内さんは Agent A をかなり使い込んでいらっしゃいますが、特にエージェンシーにとって価値がありそうな使い方はどこだとお感じですか?

竹内氏: 私たちが一番、各論的な話にはなりますが価値を感じているのは、お客様に新規提案をしに行く際の現状分析です。今までであれば 10 時間から 20 時間かけていたものが、本当におそらく 10 分程度でできるようになったというのが大きな価値かなと思います。

LANY では、新規クライアントへの提案準備として、キーワード分析、ドメインパフォーマンスの調査(被リンク数やメンション数の確認)、そしてサイト監査によるテクニカル課題の洗い出しを行っています。従来、この一連の作業はマニュアル対応と外部スタッフへの依頼で進めており、完了までに 2 営業日ほどかかるのが通常でした。

竹内氏: 今までやることとしては、どういうキーワードを対策していくかというキーワード分析をして、その後にドメインのパフォーマンス、つまりバックリンクが何本あるか、メンションがどれくらいあるかといったことを確認し、さらにサイトオーディットとしてサイトのテクニカルな課題を洗い出していくのですが、そこをかなりマニュアルと、外部スタッフへの依頼で対応していたんですよ。

作業時間の短縮だけではない、「リードタイムゼロ」の価値

竹内氏: このドメインでこの分析をお願いしますと依頼すると、10 時間ほどかかって 2 営業日くらいで戻ってくるんです。それが今は Agent A で実行すれば、外部スタッフを介さないのでリードタイムがゼロで、5 分ほどで出てきます。精査性が大きく向上しました。

竹内氏が特に強調するのは、単なる作業時間の短縮だけでなく、「依頼→待機→納品」というリードタイムがゼロになった点です。

竹内氏: 10 時間が 10 分になるのも非常に大きいのですが、その 10 時間を今までは他の方がやっていたんですよね。依頼して外部スタッフの方が作業するので、依頼のリードタイムやその方の稼働状況の問題があります。Agent A であれば一人ひとりが自分で操作できますので、リードタイムがゼロになる。作業時間も短縮しますし、その手前の待ち時間も短縮されますので、本当に素晴らしいと感じています。これが AI の良さだと思います。

『Agent A であれば一人ひとりが自分で操作できますので、リードタイムがゼロになる。作業時間も短縮しますし、手前の待ち時間も短縮される。本当に素晴らしいと感じています。これが AI の良さだと思います。』

コンサルタント一人ひとりが、誰かに依頼することなく自分自身でデータを取得し、分析を完結できる。この「セルフサービス化」こそが、エージェンシーの業務フローを根本から変える AI の真価だと竹内氏は語ります。

精度の進化:MCP から Agent A への飛躍

精度についても、竹内氏は高く評価しています。

竹内氏: 精度も非常に高いです。正直、以前 Claude と MCP を使っていたときは精度が微妙でした。Ahrefs の MCP を叩いても正確ではないなと感じていたのですが、Agent A になってからは完璧です。

河原田: そうなんですか。

竹内氏: データの取得方法が異なるんですよ。API でも MCP でもなく、画面上で Ahrefs を操作するのと同じ形で取れますので、精度が完璧ですね。しかもコストがかからないという点も大きいです。率直に言って、外部スタッフに依頼するよりもトークン代のほうが安いです。

Agent A は APIMCP 経由ではなく、Ahrefs の画面上と同じデータを直接取得する仕組みであるため、データの精度が格段に向上したとのこと。さらにコスト面でも、外部スタッフへの依頼と比較してトークン代のほうが安く済むという、コストパフォーマンスの高さも魅力です。

社内での活用の広がり

LANY では Agent A を個人利用にとどめず、社内全体で活用するための仕組みづくりも進めています。

竹内氏: 私たちもスキルズを作成して導入していますし、アプリケーションも現在 8 個ほど作成したのではないでしょうか、全員が使えるものとして。本当に感動しました。

独自のスキル(カスタムワークフロー)を構築し、チーム全員が使えるアプリケーションも 8 個ほど開発済み。Agent A を組織のインフラとして本格的に活用している様子がうかがえます。竹内氏は「一度サーバーが落ちて 3 日間触れなかったときは少し大変でした」と笑いながらも、それほどまでに業務に不可欠な存在になっていることを物語るエピソードを語ってくれました。

今回の Evolve Sin­ga­pore 2026 を通じて、竹内氏が繰り返し語ったのは「本質への回帰」というテーマでした。

AI エージェントが検索リテラシーの壁を取り払い、誰もが最適な情報やプロダクトに出会える時代が来る。そのとき、小手先のテクニックではなく、「本当にいいものを作っているか」が問われるようになる。

これは SEO のプロフェッショナルにとって脅威にも見えますが、竹内氏はそこにワクワクを感じています。測れる指標に踊らされるのではなく、見えないものの価値を大切にする。ブランドメンションや PR といった、従来の SEO の枠組みを超えた取り組みにこそ、次の時代のチャンスがある。

LANY は創業 6 年目の若い会社だからこそ、失うものなく軸足を動かし、LLM 時代のマーケティングを先頭で切り拓こうとしています。そしてその武器として、Ahrefs の Agent A が日々の業務を根本から変えつつあります。

──────────────────────────────────────────────

編集後記

竹内様のお話から伝わってきたのは、変化の時代を恐れるのではなく、その本質を見極めて楽しもうとする姿勢でした。「10 時間が 10 分に」という Agent A の効率化エピソードはもちろん印象的でしたが、それ以上に「測れる指標に踊らされない」「本当にいいものを作ることが最大のマーケティングになる」というメッセージには、AI 時代のマーケターすべてに通じる示唆が詰まっていました。

2 年連続で Evolve にお越しいただき、Ahrefs 公式アンバサダーとして日本の SEO コミュニティを牽引してくださっている竹内様に、改めて感謝申し上げます。LANY の皆様の挑戦を、Ahrefs はこれからもツールとデータの両面で支え続けてまいります。

示唆に富む貴重なお話をありがとうございました!

──────────────────────────────────────────────

今回取材をお受けいただいた企業様

項目内容
企業名株式会社 LANY
代表者竹内 渓太(代表取締役)
事業内容SEO コンサルティング、LLMO 支援、デジタルマーケティング支援
設立2020 年(創業 6 年目)
URLhttps://lany.co.jp/

インタビュイー: 竹内 渓太 氏(株式会社 LANY 代表取締役 / Ahrefs 公式アンバサダー)

聞き手: 河原田(Ahrefs 日本マーケティング統括) 

取材場所: Ahrefs Evolve Sin­ga­pore 2026 会場