今回は、 Ahrefs を活用して月間 30 時間以上の分析工数削減を実現し、戦略的な SEO 運用を推進するコードキャンプ株式会社の田中様にお話を伺いました。
他のツールにはない Ahrefs の魅力、独自の分析手法、そして生成 AI 時代の SEO 戦略について詳しくご紹介します。

同社のマーケティング事業部で SEO 領域を担当する田中様は、チームメンバーの木守氏、町田氏、現在育休中の開発担当者と 4 人でメディア運用を行っています。 前職から Ahrefs を使い続け、 Ahrefs データを活用した独自の分析手法で SEO 戦略を展開しています。
今回は田中様に、他のツールにはない Ahrefs の魅力や生成 AI 時代の SEO 戦略について深くお話を伺うとともに、実際に木守氏が運用しているデータの一部を解説付きでご紹介いただきました。
―― まず、御社の事業内容について教えてください。
コードキャンプでは、 IT 人材の育成を通じて日本の DX 推進を支援する教育サービスを展開しています。 企業を対象にした法人向け DX ・プログラミング研修(TOB)を中核として、社会人個人向けプログラミング講座(TOC)、そして小学生から高校生を対象とした Kids 向けプログラミング教室の三本柱でサービスを提供しています。
私たちの強みは、親会社であるフューチャー株式会社をはじめとするグループ企業との連携です。 各領域に特化した IT 企業のノウハウを活用し、現場で本当に求められるスキルを反映したカリキュラムを提供できる点が他社との大きな差別化要素となっています。

企業研修(TOB)分野ではオンラインと対面のハイブリッド型でカスタマイズ研修から、ゼロからカリキュラムを作るオーダーメイド、すぐに始められるパッケージ型研修まで幅広く対応。 フューチャーグループとの連携により、単なる研修提供者ではなく、企業の真の DX パートナーとして機能しています。
個人向け(TOC)サービスでは、企業研修で培った実践的なカリキュラムを個人の方にもお届けし、 Kids 向けでは全国 50 を超える店舗のパートナー教室を展開。 10 年以上の運用経験を活かした子供特化のカリキュラムで、 Code Camp KIDS では Scratch や Unity 、 Code Camp YOUTH では Python と幅広く対応しています。
―― Ahrefs を導入された決め手は何だったのでしょうか?
コードキャンプに参画した当初、社内では他の SEO ツールが使われていました。 私も前職で複数の SEO ツールを使った経験はありますが、最終的に Ahrefs の導入を推進しました。
決め手は大きく 3 つです。
- 直感的で使い慣れた UI
- データの精度と豊富さ
- 他ツールを凌駕する被リンク分析

特に、 Ahrefs のデータを基盤に、自社で収集したデータ(Google サーチコンソールなど )や実際の検索結果を組み合わせて分析する現在のフローにおいて、 Ahrefs の信頼性は不可欠です。
『今では、マーケティングに関するデータは Ahrefs と Google のデータ以外、ほとんど活用していません。 それほど信頼しています。 』
―― 具体的に、 Ahrefs をどのように業務で活用されていますか?
マーケティングに関わるほぼ全ての業務、特に競合調査、市場分析、コンテンツ制作のプロセスで Ahrefs のデータを活用し、「データドリブンな意思決定」の基盤としています。
私たちのチームは 4 人で構成されており、私を含めて全員が SEO やマーケティングに対する共通認識を持ち、目的の改善や達成へ向けた取り組みをしています。 特にチームメンバーの木守は、 Ahrefs データを他のデータと掛け合わせた独自の分析手法を開発し、町田がコンテンツ制作を主に担当しています。
【Ahrefs のデータ活用事例①】

このシートでは、データベースで管理・集計しているメインキーワード・サブキーワードの日別順位を出力しています。 順位集計だけではなく、コンテンツ管理を行う町田や田中に最新順位を共有する目的でも活用しています。
主に以下の 5 つの Ahrefs の機能を目的別に使い分けています。
- サイトエクスプローラー: 競合サイトの DR ( ドメインレーティング )や内外被リンク、獲得キーワードなど、詳細な分析に使用
- キーワードエクスプローラー: 新規コンテンツやリライト時のキーワード選定、 SERP ( 検索結果画面 )分析に活用
- コンテンツエクスプローラー: 世の中のトレンドを把握し、新しいコンテンツのアイデアを得るために使用
- コンテンツギャップ: 競合は獲得しているが、自社が獲得できていないキーワードを特定し、機会損失を防ぐ
- サイトエクスプローラー / ブランドレーダー: AI Overview での表示状況を追跡・分析。 生成 AI 時代の必須機能です
【Ahrefs のデータ活用事例②】

このシートの目的として、キーワード管理やカニバリの自動確認、サブキーワードの自動選定などを目的に活用しています。 リストの中で、構成・記事作成において Trends が重要視する指標をまとめています。 このスクリーンショットでは切れていますが、構造化データから今後の対応方針、各種関連記事、使用クエリなど管理できるようになっています。
―― 特にユニークな活用法があれば教えてください。
CPC ( クリック単価 )データを使った市場分析は、私たちのチームの特長かもしれません。
一般的に CPC は広告運用の指標ですが、私たちはこれを「キーワードの市場価値」を測る指標として見ています。 CPC が高いキーワードは、それだけコンバージョンに近い、価値のある市場だと推定できるからです。

さらに、キーワードエクスプローラーで取得した月別の検索ボリュームと CPC のデータを掛け合わせることで、市場の「季節変動」を可視化しています。
例えば、弊社の「新入社員研修」は 4 月が繁忙期ですが、企業が動き始めるのは前年の夏頃からです。 この「感覚値」をデータで裏付け、他社がいつ、どのキーワードで予算を投下し始めているのかを把握することで、広告出稿の最適なタイミングを見極めることができます。
『この分析のおかげで、「 この時期はオーガニック検索の強化に注力し、この時期から広告予算を増やす」といった、より費用対効果の高い戦略立案が可能になりました。 』
【Ahrefs のデータ活用事例③】

このシートは一定のキーワード選定後に活用しており、季節に応じた検索需要の変動が一定あるかを調べています。 Ahrefs で競合を含めた対象キーワードから選定し、調べた結果から優先順位や需要の増減、他チームの繁忙期などに合わせたコンテンツの制作スケジュールを考慮する際に使用します。
―― Ahrefs を導入して、最も成果が出たプロジェクトについて教えてください。
3 年前に参画した当初、サイト全体の SEO をすぐに大きく改善するのは難しい状況でした。 そこで、まずは実績を作るために、サブドメインで技術トレンドを発信するメディア「Code Camp Trends」をゼロから立ち上げました。
戦略の核としたのは、キーワードエクスプローラーで徹底的に分析した「Python 研修」というキーワードです。 検索ボリュームが多く、かつ競合状況に勝機があると判断し、戦略的にコンテンツを投下していきました。
その結果、メディアリリースからわずか 4 ヶ月で「Python 研修」で検索順位 2 位を獲得しました。 さらに、関連キーワードでも確実に成果を上げました。
- 「python range」( 検索ボリューム 9,200 )で 4 位
- 「python format」( 検索ボリューム 4,600 )で 8 位
- 「python 改行」( 検索ボリューム 4,300 )で 4 位
- 「python replac」( 検索ボリューム 3,500 )で 6 位
しかし、ここで新たな課題が見えました。順位が安定しないのです。 さらに詳細な分析を進めると、複数の要因が明らかになりました。
まず、「Python 研修」領域で競合他社も積極的に上位表示を狙うようになり、現在のドメインパワーやコンテンツ量・クオリティでは継続的な上位維持が困難になったこと。 また、上位表示を獲得できた期間でも、想定していた CTR を下回る結果となり、月間検索ボリュームに対して期待したクリック数を獲得できませんでした。
こうした判断ができたのは、自社データだけでなく、 Ahrefs を活用して競合他社の更新頻度やコンテンツ投下量、その結果として得られている順位・クリック・キーワード獲得状況を詳細に分析できたからです。 SEO は内部施策だけでなく、むしろ外部要因の把握がマストです。 そのため、私たちのチームでは対象市場を調査する際は必ず Ahrefs で重要指標を調査し、たとえ上位表示を獲得できていても、検索意図の変化などがあった場合には柔軟に戦略を見直すようにしています。
【Ahrefs のデータ活用事例④】

このシートでは、「 メインキーワードの関連キーワード」や「 競合サイトの獲得クエリ」などを網羅的にまとめています。 これらのデータから、メインキーワードのサブキーワード、 TDH に入れるべきキーワード、検索意図が類似しているキーワードの選定・判断などが行えるため、新規記事作成・リライト問わず網羅的な調査を行っております。
商用性の高い「Python 研修」のようなキーワードは確かに商談につながる重要な CV キーワードですが、同時に広告での刈り取りも多いキーワードタイプでもあります。 加えて、 Python 以外で獲得していた上位キーワードも順位が安定しないケースが多く見られました。
そこで、特定キーワードに固執するのではなく、より包括的なアプローチに戦略転換しました。 「Python 研修」のような商用キーワードはルートドメインで対応し、トレンズ側では多種多様な軸キーワードに関連するコンテンツを制作。 ユーザーに価値を提供しながら、結果的にリンクビルディングが構築される形を目指すことにしました。

この戦略転換には、弊社の事業特性も大きく影響しています。 コードキャンプでは子供から大人まで、また企業まで幅広くカリキュラムを提供しており、 Python は中高生向けから企業研修まで対応している主力言語の一つです。 この特性を活かし、多くのエンドユーザーに価値あるコンテンツを届けることで、長期的なドメイン権威性の向上を図っています。
現在は一時的な順位下落を許容しながら、リンクビルディングの設計を根本的に見直し、長期的な視点で両ドメインの最適化を進めています。
これらのメディアでの実績( 2 位獲得と安定したトラフィック確保 )が提案の説得力を高め、最終的に社内の理解と協力を得て、ルートドメインの本格的な SEO 強化に着手することができました。
この成功体験がなければ、今も本格的な SEO 施策は行えていなかったかもしれません。
『小さな成功をまず作って信頼を得て、より大きなプロジェクトを動かしていく。 このアプローチを実現できたのは、 Ahrefs による精緻な分析があったからです。』
―― 生成 AI の登場で SEO は大きく変わりました。 今後の展望についてどうお考えですか?
変化の激しい時代だからこそ、 Ahrefs のような信頼できるデータの重要性は増す一方だと考えています。
これからの SEO 戦略で重要になるのは、以下の 3 つです:
- エンティティの形成: Google の AI に「信頼できる情報源」として認識されること
- AI Overviews での露出: 検索結果の最上部に表示される AI の回答にいかに引用されるか
- サイテーション( 言及 )の強化: 様々な媒体で自社やサービスがどう言及されているか
これらを攻略するためには、競合が AI にどう認識され、なぜ AI Overview に表示されているのかを分析する必要があります。 それを可能にするのが、 Ahrefs のサイトエクスプローラーや、ブランドレーダーに搭載されている AI Overviews 分析機能です。 現在、 AI Overview の表示状況を体系的に追跡・分析できるのは Ahrefs だけであり、これは本当に唯一無二の機能です。

弊社でも AI からの流入数が増えてきていますが、どのキーワードで流入しているのか、選定されている競合ページはどういう特徴があるのか、キーワードのタイプは何かといった観点を調査できるのは Ahrefs のみです。

AI を普段から使うエンドユーザーが増える中で重要なのは、 AI ユーザーが会話を通じて質問の角度を高めていく行動パターンです。 より潜在層が検索するキーワードから、 CV キーワードの間のどの段階で AI が自社コンテンツを紹介するか、またユーザーがそれに伴い態度変容を起こすかが重要なファクターになりつつあります。
自社サービスでキーワードのファネル層を設計した場合、どのキーワードがそれぞれ該当し、その受け皿があるのか。 そして実際に AI からの検索で、そのような検索ユーザーが生まれているのか。 これを把握した上での対策は今後急務になると考えており、現状これを実現できるのは Ahrefs だけです。
【Ahrefs のデータ活用事例⑤】

このシートでは自社・他社問わず、検索流入が多い上位 5 クエリや広告を出稿しているキーワードを比較出来るようにしています。 このシートを活用することによって、 CV キーワードの抜け漏れがないか、 CV キーワードを支えているキーワードを判断できるようにしています。
さらに、生成 AI 時代のコンテンツ戦略では新たな課題も生まれています。 従来、人間は自分が想像した、もしくは経験したことしかコンテンツとして作れませんでした。 しかし AI の登場により、自分たちの創造や経験を超えたコンテンツを作ることが可能になりました。 Google の Synth ID など著作権や品質管理の対策が進む中、膨大な新コンテンツが生まれる時代に、どのようなコンテンツが真に評価されるべきかを見極める必要があります。
『AI に無視されないサイトを構築し、適切な情報をユーザーに届ける。 そのための戦略立案に、 Ahrefs はもはや欠かせないパートナーです。』
―― 教育事業者として、生成 AI 時代に学習者へ提供したい SEO ・マーケティングスキルは何でしょうか?
変化に対応できる柔軟性と継続学習力が最も重要だと考えています。
生成 AI の登場により、検索の世界は根本的なルール変更の真っ只中です。 この変化は、小規模な組織でも大手企業と対等以上に戦える絶好のチャンスでもあります。
Ahrefs データを活用することで、 AI に無視されないサイト構築のための戦略立案が可能になります。 正しい知識を持った教育事業者が SEO スキルを身につければ、本当に価値のある情報が上位表示されるようになるはずです。
弊社では、このような時代の変化に対応できるマーケティングスキルを学べるカリキュラムの開発も進めており、 Ahrefs の活用方法も含めた実践的な内容を提供予定です。
―― 最後に、 Ahrefs の導入を検討されている方にメッセージをお願いします。
Ahrefs は単体でも強力なツールですが、自社のデータや他のツールと掛け合わせることで、その価値は何倍にもなります。
導入の際にハードルとなるのが、直属の上司や決裁者への説明かもしれません。 その際は、「SEO のためだけのツールではない」という点を強調すると良いと思います。
例えば、 CPC や検索ボリュームのデータから市場規模や季節変動を分析し、営業部門の戦略立案や、新規事業開発の市場調査にも活用できることを伝えれば、より多くの人を巻き込めるし、理解を得られるはずです。
私たちが開発した独自の活用法を、今後は弊社のマーケティング学習カリキュラムでも紹介していく予定です。 Ahrefs ユーザーの皆様にも、ぜひ独自の活用法を共有いただき、日本の SEO ・マーケティング業界全体の発展につなげていければと思います。
Ahrefs は、単なる順位チェックツールではありません。 競合を分析し、市場を読み解き、事業の成功確率を高めるための戦略的パートナーです。 SEO 担当者やマーケターに限らず、プロダクトを開発する担当者や意思決定をする担当者も活用するべきです。 ぜひその力を体験してほしいと思います。
――Ahrefs の新機能への期待
現在、 Ahrefs の新機能として ウェブアナリティクスやブランドレーダーなども提供されており、これらは GA4 の使いづらさを感じている方にとって魅力的な選択肢です。
特にブランドレーダーは他ツールにない唯一無二の機能で、 Chat GPT や Perplexity 経由の流入識別や AI Overview 影響分析は、今後の SEO 戦略に欠かせなくなるでしょう。
編集後記
田中様のお話から、単なるツール活用術にとどまらない、 15 年の経験に裏打ちされた深い知見と、データで未来を予測し組織を動かす戦略的思考を学ぶことができました。
日本の DX 推進という大きな使命を担うコードキャンプ様の挑戦、そしてその羅針盤として「Ahrefs」が貢献できていることを大変光栄に思います。
示唆に富む貴重なお話をありがとうございました!
▪️今回ご協力いただいた企業
【コードキャンプ株式会社】事業内容: 法人・個人・キッズ向けのプログラミング教育 / DX 人材育成
- 公式サイト: https://codecamp.jp/
- 導入事例メディア「 Code Camp Trends ( トレンズ )」: https://trends.codecamp.jp/