生成 AI による検索が普及する中、「この AI の回答はどこから来ているのか?」という疑問が浮かびます。同じ質問をしても、AI によって回答の傾向が違う理由は、引用している情報源が異なるからです。
今回、Ahrefs ブランドレーダーを使って、主要な 4 つの AI 検索エンジンが日本国内においてどんなドメイン(ウェブサイト)を情報源として引用しているかを徹底分析しました。
調査対象の AI 検索エンジン:
- ChatGPT(OpenAI)
- AI Mode(Google)
- Microsoft Copilot(Microsoft)
- Perplexity(AI 検索エンジン)
※調査期間:2025 年 5 月〜 9 月(過去 5 ヶ月間)、国:日本
※ChatGPT、Perplexity は 5–9 月、Copilot は 7–9 月、AI Mode は 9 月のデータ
結論から言うと、YES です。
現代の生成 AI 検索エンジンは、単に学習済みモデルだけで回答しているわけではありません。以下の 2 つの方法で外部情報を活用しています。
1. RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)
RAG とは、AI が回答を生成する前にリアルタイムで外部データベースやウェブを検索し、その情報を参照して回答を作る技術です。
具体例:
- 「近くのカフェは?」→ Google ビジネスプロフィールをリアルタイム検索
- 「○○企業の新製品は?」→ PR TIMES のプレスリリースを検索
- 「○○の作り方は?」→ YouTube 動画を検索
2. 事前に取得したデータ(インデックス)
AI 検索エンジンは定期的にウェブをクロール(巡回)し、膨大なドメインの情報をデータベースに保存しています。質問が来たときに、このデータベースから関連情報を取り出します。
なぜドメインごとに引用頻度が違うのか?
各 AI 検索エンジンは、情報源の信頼性・正確性・鮮度を独自の基準で評価し、引用優先度を決めています。
引用優先度の決定要因:
- 信頼性:Wikipedia、公式サイト、専門メディア
- 更新頻度:ニュースサイト、SNS、YouTube
- ユーザーエンゲージメント:閲覧数、滞在時間、口コミ数
- 自社エコシステム:Copilot → Bing、AI Mode → YouTube、Google
つまり、今回の調査結果は「各 AI がどんな情報源を信頼し、優先的に引用しているか」を可視化したものです。
各 AI 検索エンジンがどんなサイトを情報源として信頼しているかを分析すると、驚くほど明確な違いが見えてきました。

ChatGPT:Reddit とブログを重視
トップ 10 引用ドメイン:
- Reddit(228,388)- 圧倒的 1 位
- Wikipedia 英語版(166,445)
- Ameblo(131,629)
- PR TIMES(123,786)
- note(106,110)
- 楽天市場(91,797)
- Yahoo! 知恵袋(78,928)
- マイナビニュース(65,479)
- Amazon.co.jp(45,083)
- 楽天検索(33,735)
ChatGPT の特徴:
- Reddit を最も頻繁に引用(海外コミュニティ重視)
- Wikipedia 英語版を重視(グローバルな情報源)
- 日本のブログ(Ameblo、note)も大量に引用
- プレスリリース(PR TIMES)を重視(企業公式情報)
- テックメディア(マイナビニュース)も参照
回答の傾向:海外コミュニティの議論、専門家の意見、企業公式情報、個人の体験談に強い
AI Mode:YouTube・SNS 重視
トップ 10 引用ドメイン:
- YouTube(91,954)- 圧倒的 1 位
- Google.com(35,191)
- Wikipedia 日本語版(33,006)
- Instagram(27,226)
- Amazon.co.jp(26,326)
- X.com(22,965)
- Wikipedia 英語版(22,683)
- note(17,522)
- Reddit(15,862)
- 楽天検索(15,438)
AI Mode の特徴:
- YouTube を最も頻繁に引用(動画重視)
- Google.com を重視(Google エコシステムとの統合)
- SNS(Instagram、X)を積極的に引用
- Wikipedia(日英両方)も参照
- EC サイト(Amazon、楽天)の情報も活用
回答の傾向:動画解説、ビジュアル情報、SNS のトレンド、商品レビューに強い
Copilot:辞書・百科事典と Microsoft 連携
トップ 10 引用ドメイン:
- Wikipedia 日本語版(125,842)
- Bing.com(93,300)- Microsoft 自社検索エンジン
- note(65,023)
- Ameblo(30,024)
- 価格.com(27,451)
- Pixiv 辞典(24,861)
- my-best.com(18,549)
- 楽天トラベル(17,081)
- じゃらん(16,545)
- PR TIMES(15,907)
Copilot の特徴:
- Wikipedia(百科事典)を最重視
- Bing との連携が明確(自社検索エンジン活用)
- 辞書系サイト(Pixiv 辞典)を参照
- 比較サイト(価格.com、my-best)も活用
回答の傾向:正確な定義、客観的な情報、比較情報、旅行・ショッピング情報に強い
Perplexity:Q&A・動画・百科事典の総合型
トップ 10 引用ドメイン:
- Yahoo! 知恵袋(518,977)- 圧倒的 1 位
- YouTube(276,702)
- Wikipedia 日本語版(252,313)
- note(238,021)
- Ameblo(156,479)
- my-best.com(118,984)
- PR TIMES(91,305)
- 価格.com(73,537)
- Weblio(66,069)- 辞書サイト
- 楽天検索(65,444)
Perplexity の特徴:
- Yahoo! 知恵袋を圧倒的に重視(51 万回以上)
- YouTube 動画も大量に引用
- Wikipedia、辞書サイト(Weblio)を重視
- ブログ(note、Ameblo)も大量に引用
- 総合的な情報源戦略
回答の傾向:ユーザーの質問と回答、動画解説、辞書的な定義、ライフスタイル情報に強い

AI 時代のコンテンツ戦略:SEO から AEO へ広がる最適化の視点
これまでのデジタルマーケティングでは、Google 検索で上位表示されることが最優先事項でした。ターゲットとするキーワードで検索結果の 1 ページ目に表示され、自社サイトへのトラフィックを獲得する。これが成功の定義でした。
しかし、AI 検索エンジンの台頭により、SEO 戦略を主軸としながらも、より幅広い情報源への展開が求められる時代になっています。AI は自社サイトだけでなく、SNS での言及、ユーザー生成コンテンツ(UGC)、プレスリリース、外部メディアの記事、ブログなど、Web 上のあらゆる情報源を参照します。従来の SEO に加えて、多様なチャネルでの自社ブランドの露出を戦略的に設計することが、AI 時代のコンテンツ戦略には不可欠なのです。
多角的なコンテンツ展開の必要性
今回の調査で明らかになったのは、AI 検索エンジンは自社サイトだけでなく、SNS、UGC(ユーザー生成コンテンツ)、PR、コミュニティ、動画など、あらゆる場所の情報を引用しているという事実です。
つまり、例えば:
- Reddit でのコミュニティ参加が ChatGPT に引用される鍵になる
- YouTube 動画制作が AI Mode や Perplexity に引用される
- Instagram や X での SNS 発信が AI Mode に引用される
- Wikipedia への貢献が Copilot や Perplexity に引用される
- PR TIMES でのプレスリリース配信が複数の AI に引用される
など、従来の SEO に加えて、より幅広いプラットフォームでの戦略的な情報発信が必要になったのです。
これは、マーケティング担当者にとって大きな視野の拡張を意味します。自社サイトの最適化という SEO の基盤を維持しながら、さらに以下のような多角的な取り組みが求められるのではないでしょうか。
- 他部署との連携強化: PR、カスタマーサポート、製品開発チームなど、情報を持つ部署との協働
- サードパーティメディアへの積極的な露出:外部メディアへの記事提供や取材対応
- 多様なコンテンツ形式の展開:記事だけでなく動画などの異なる媒体で配信
- ユーザーコミュニティへの参加・構築:既存コミュニティでの対話や自社コミュニティの立ち上げ
- 継続的なニュース配信:プレスリリースや業界ニュースへの貢献
AI 時代のマーケティングは、自社サイトという「点」から、Web 全体という「面」へと戦略を広げることが不可欠なのです。
AI 検索・Web を統合した 360° ブランド可視化プラットフォーム
今回の調査に利用した「ブランドレーダー」は、AI 検索・Web 上のブランドシェアを一元的に可視化し、ブランドの「強い領域」「見落としている領域」「アクションが必要な領域」を俯瞰的に把握できる AI 検索可視化ツールです。

ブランドレーダーの優位性
・ブランドの AI 検索シェアを可視化:ブランドの「強い領域」「見落としている領域」「アクションが必要な領域」を俯瞰的に把握
・6 大 AI エンジン対応:Google AI Mode、ChatGPT、Perplexity、Gemini、Copilot、AI Overviews といった 6 大 AI エンジンの 1 億件以上のプロンプトデータと Web 指標を一元化し、ブランドの露出状況を包括的に把握できます。
・即時利用可能:セットアップ不要で即時利用可能。AEO(AI 検索エンジン最適化)戦略の基盤をすぐに構築できます。
また、他ツールでは特定のクエリしか追跡できない中、ブランドレーダーは競合ブランドの言及を俯瞰し、これまで見逃していた露出機会を発見します。
多方面への情報発信が必要な時代だからこそ、各チャネルでの成果を可視化することが重要です。Ahrefs ブランドレーダーで AI 検索での引用状況を把握し、データに基づいた効率的なコンテンツ戦略を設計しましょう。
【ブランドレーダーについて】
ブランドレーダーの使い方についてより詳しく知りたい方は、以下の動画や記事を参照してください。
⇩上記のブログ内容を当社マスコットキャラの「リンクちゃん」が動画で解説しています⇩
調査データについて
- 調査期間: 2025 年 5 月〜 9 月(過去 5 ヶ月間)
- ChatGPT、Perplexity: 5–9 月データ
- Copilot: 7–9 月データ
- AI Mode: 9 月データ
- 使用ツール: Ahrefs ブランドレーダー
- 調査内容: 各 AI 検索エンジンが回答生成時に引用しているドメインの分析
- 分析項目: トップ 10 引用ドメイン