SEO 業界において「AI 検索」という用語の意味は変化と拡大を続けていますが、筆者はこれを「ChatGPT、Copilot、Gemini などの AI アシスタントツールを使って行われる検索」と定義しています。
Ahrefs では現在、多数のウェブサイトを対象とした大規模調査に取り組んでいます。今回はその結果の一部を抜粋し、Ahrefs ウェブサイトに流入する AI 検索トラフィックとオーガニック検索トラフィックの比較データをご紹介します。
このデータは、Google アナリティクスに代わる Ahrefs 提供の無料ツール、Ahrefs ウェブアナリティクスを使って入手したものです。これはシンプルで使いやすく、ユーザーのプライバシー保護を実現したツールとなっています。
それでは早速見ていきましょう!
AI 検索トラフィックは、本記事の制作直前 30 日間(2025 年 5 月 16 日~ 6 月 14 日)において Ahrefs が獲得したトラフィックのわずか 0.5% にすぎませんでした。2025 年に入ってから 6 月 14 日時点までの総トラフィックに占める割合を見ると、それより低い 0.3% となっています。

下のグラフは、過去 12 ヶ月の AI 検索トラフィックの増減を示したものです。その数は急速に成長しており、特に 5 月に大きな増加が見られました。

興味深いのは、増加が 2024 年 8 月と11 月、そして 2025 年 5 月の 3 回にわたって見られる点です。そして、AI 検索トラフィック全体、もしくは増加部分のほとんどが ChatGPT からの流入です。同ツールからの訪問者が増えた原因はまだ特定できていませんが、タイミング的に、筆者が以前ブログ記事で指摘した「AI 検索からのトラフィックデータが取得不可能」という問題を ChatGPT 側が改善したことが理由ではないかと考えています。

以下は、本記事の制作直前 30 日間(2025 年 5 月 16 日~ 6 月 14 日)のデータです。AI アシスタント経由でサイトを訪問後、利用申し込みをしたユーザーが全体の 12.1 % を占め、そのほとんどが ChatGPT からの訪問者でした。

これはすごいことではないでしょうか?トラフィック全体のわずか 0.5% が、新規加入者の 12.1% を占めているのです。つまり、AI 検索は Ahrefs にとって非常に有用なチャネルだということです。Ahrefs にとって、AI 検索トラフィックは従来のオーガニック検索トラフィックと比べて 23 倍もコンバージョン率が高かったのです。
繰り返しますが、検索エンジン各社が AI 検索トラフィックの方がサイトにとって「良質な」トラフィックだと主張しています。これは真実なのでしょうか?AI 検索がコンバージョン率の高いユーザー獲得
において最も成果を上げているチャネルであることはすでに触れましたが、サイトを訪れたユーザーの行動指標はどうでしょうか?
見てみると、全体的には確かに「良質」と言えますが、他と大きな差があるわけではありません。たとえば、直帰率が比較的低く、訪問 1 回あたりのページビュー数も多いものの、滞在時間はオーガニックトラフィックよりも短くなっています。
直帰率の低さについては、コンバージョン率の高さから判断すると、AI 検索トラフィックのほうがカスタマージャーニーにおいてオーガニックトラフィックよりもかなり先に進んでおり、すでに購買行動を起こしやすい段階まで到達しているためと考えられます。

AI 検索からアクセスするユーザーの滞在時間が比較的短いのは、業界最高クラスのブログ記事や動画を掲載する Ahrefs ウェブサイトにとっては意外でした。その反面、従来のオーガニック検索から流入するユーザーには情報やインサイト満載の Ahrefs コンテンツを存分に楽しんでいただけているようで、滞在時間は長めになっています。

また、AI 検索からの訪問者のサイト内ページアクセス数は、オーガニック検索からの訪問者と比べて 1.5 倍になっています。AI 検索からの訪問者の 8 割がホームページや無料ツール、製品ページにアクセスしていることは別のブログ記事ですでにご紹介済みですが、今回の調査でオーガニックトラフィックよりもサイト内で多くのページを閲覧していることも分かりました。
さて、ここまでご紹介してきたデータには、実は大きな落とし穴があります。筆者は検索エンジンと AI ツールそれぞれで実行される検索総数、それぞれのユーザー数および推定ウェブトラフィック総数について大まかな計算を行い、この 2 種類のチャネルから Ahrefs サイトに流入するトラフィックを比較しました。その結果、ネットユーザーが AI 検索を利用する場合、その検索結果に掲載されたリンクのクリック率は、オーガニック検索利用時と比べて 75% も低くなることが判明しました。
とはいえ、従来型の検索を利用するユーザーはまだ根強く大量に存在するため、これはそれほど気にすべき数字ではないかもしれません。AI アシスタントの多くの用途がコーディングなどのタスク処理で、情報検索に利用する人はまだ比較的少ないからです。
しかし、今後もし AI 検索が検索の主流となった場合、Ahrefs サイトの獲得する検索トラフィックは現在の 25% 未満にまで落ち込む可能性があります。コンバージョン率が高いままであればそれでも問題はありませんが、どのように変動するかは読めません。もしコンバージョン率が今よりも向上すれば、実際のコンバージョン数は 5 倍以上になるはずですが、筆者の直感では、そこまで望ましい結果にはならない気がしています。
同じように感じているのは筆者だけではないようです。Ahrefs のコンテンツマーケティングディレクターであるライアン・ローもこう言っています。
今後は AI 検索の目新しさが薄れると予想され、AI 検索トラフィックのクリックスルー率はおそらく今がピークでしょう
ところが、検索エンジン運営各社は逆の方向に進むと予想しているようです。Bing を提供する Microsoft 社によれば、
AI の進歩に伴い、AI ツールがウェブサイトにもたらすクリックの「価値」は上がっており、今後も上昇を続けると予想されます
この予想の通り上昇が続くといいのですが…。
企業やマーケターがこの「新常識」に対応するには、大きな調整が必要になるでしょう。しかし、そうする以外に選択の余地はなさそうです。業務目標や KPI を修正し、この方向転換について利害関係者の理解を得られるよう、十分な説明をしていく必要があるでしょう。
まとめ
AI 検索から Ahrefs にアクセスする訪問者は、従来のオーガニックトラフィックよりも確かに「良質」で、コンバージョン率が高いようです。
Ahrefs では現在、複数のサイトを対象としたより大規模な調査のデータ処理を進めており、この結果は近日中に公開予定です。
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