「AI Overview に向けた最適化をすべきか、すべきでないか」と迷われている SEO 担当者の方は多いことでしょう。しかし、近い将来にはこの質問もすでに過去のものになってしまうかもしれません。
検索結果でのブランドの可視性を高めたいなら、AI Overview など、Google の AI を搭載した検索結果表示で上位表示されるためのメカニズムを理解する必要があります。
Ahrefs はこの新たな現実を踏まえ、今回 75,000 のブランドを分析し、AI Overview によるブランド言及頻度を左右する最も重要な要因を特定しました。
いつものように、この調査のためにデータをまとめてくれた Ahrefs の優秀なデータサイエンティスト、シーベイジャ・グアンに深く感謝!
それでは、さっそく見ていきましょう。
この調査の目的は、AI Overview における可視性が高いブランドに関連づけられる各種要因に、どんなものがあるのかを明らかにすることです。
Ahrefs は今回 、スピアマンの順位相関係数を使ってデータを分析しました。つまり、正の値が大きいほど、相関関係が強いことを示しています。

- AI Overview でのブランド可視性と最も強い相関(相関係数 0.664)を示したのは、ウェブ全体でのブランド言及数。
- ウェブ全体での言及数(0.664)は、サイトの持つ被リンク件数(0.218)よりもはるかに強い相関を示している。
- トップ3はすべてオフサイト(自社サイト外に存在する)要因で、ウェブ全体でのブランド言及数(0.664)、ブランド名を含んだアンカーテキスト数(0.527)、ブランド検索ボリューム(0.392)の3つ。
- ブランド有料トラフィック(0.216)やブランド広告への投資額(0.215)などの広告関連要因は、AI Overview での言及との相関が弱い。
- ウェブ上で獲得している言及数がトップクラス(上位 25%)のブランドは、AI Overview での出現頻度が2番目の四分位数(ブランドを言及数が多い順に並べ、四分割したグループ)と比較して最大 10 倍。
- ブランドの 26% は、AI Overview に全く表示されていない。
このデータは統計上の関連度を示していますが、ここでいう「相関関係」=因果関係ではない、ということを強調しておきます。
今回調査したすべての要因が、スピアマンの順位相関係数グラフで「非常に弱い~中程度」の相関関係を示したにすぎないものの、だからといってこのデータは軽視できるものではありません。
これらの項目がランキングシグナルとなり、その他多くの評価要因と組み合わさった結果、AI 搭載検索機能の検索結果におけるブランドの可視性に差が出てくるのです。
今回は、「ドメイン関連要因」と「ブランド言及・検索関連要因」の2カテゴリを調査し、これらが AI Overview における可視性とどのように相関しているかを検証しました。
「ドメイン関連要因」には以下のものが含まれます。
- ドメイン評価
- 参照ドメイン数
- 被リンク数
- 有料トラフィック
- 広告費用
- URL 評価
「ドメイン関連要因」には、Ahrefs API 経由で Ahrefs サイトエクスプローラーから抽出したブランドのウェブサイトドメインデータを使用しました。
「ブランド言及・検索関連要因」には、以下のものが含まれます。
- ウェブでのブランド言及数(ウェブ全体におけるブランド名の言及総数)
- ブランド名を含んだアンカーテキスト(ハイパーリンクテキスト内でのブランド名の言及)
- ブランド検索ボリューム(ブランド名に関連する月間検索ボリューム)
ここでのブランド言及およびブランド検索とは、ブランドウェブサイトの検索順位1位のキーワードの言及・検索を指しています。
まず、ドメイン評価が 40 を超えるウェブサイトに絞り込んだ上で、それらのサイトの月間検索ボリュームが 800 以上の(検索ボリュームの大きい)キーワードを採用しました。
これが絶対的にベストな基準値というわけではないものの、信用性の高いブランドを見つけるには非常に有効な数値でした。
その後、Ahrefs ブランドレーダーを使用して膨大な AI Overview の回答を分析し、これらのブランドへの言及を探しました。
対象として絞り込んだブランドのうち約 26% はまったく言及されていなかったため、残りの約 74% を調査しました。
AI Overview による言及頻度と最も強い相関関係にあったのは、すべてオフサイト要因で、トップ要因は以下の3つでした。(カッコ内は相関係数)
- ウェブ全体でのブランド言及数 (0.664)
- ブランド名を含むアンカーテキスト数 (0.527)
- ブランド検索ボリューム (0.392)
これは業界全体に見られる傾向と一致しています。AI 生成の検索結果での可視性は、自社ウェブサイトの良し悪しだけが左右するのではなく、ブランドがネット上でどれだけ広く言及されているかに関係しているのです。
SEO・オーガニックグロース戦略専門家のケビン・インディグさんが最近行った AI ツールの検索結果における可視性に関する調査でも、次のような結果が出ています。
ChatGPT における可視性を予測する上で最も役に立つ要素は、ブランドの検索ボリュームです。AI チャットボットによる言及頻度との相関係数は 0.334 で、他の要因と比べてもかなり高い数値です。
今回の Ahrefs 調査の結果でもブランド検索ボリュームの相関係数は 0.392 となっており、上記のケビンさんの調査結果をほぼ裏付けるものですが、Ahrefs はさらに強力な要因を発見しました。
AI Overview におけるブランドの出現頻度と最も高い相関を示していたのは、ブランドに関するウェブ全体での総言及数(リンクの有無を問わない)だったのです。
Ahrefs コンテンツマーケティングディレクターのライアン・ローは、ブログ記事「GEO、LLMO、AEO 対策はすべて SEO で解決!」で次のように述べています。
自社サイトへのリンクの含まれない言及(他のウェブサイトで自社ブランドについて書かれた箇所)は SEO 的にはほとんど意味がありませんが、GEO の場合は大きな効果があります。…(中略)… LLM は、ページ上で使われている単語、特定の単語の出現頻度、さまざまな用語やトピックがセットで使われているケース、およびそれらの表現が使用される文脈などから、ブランドの権威を評価します。
もう 1 つの注目すべき重要な点は、これらのトップ 3 の要因が、今回の調査で「ブランド言及・検索関連要因」とした 3 項目だったということです。
大規模言語モデル(LLM)は予測言語モデルであり、膨大なウェブテキストを含んだコーパスをもとに知識を学習します。
これは、AI Overview 機能を主導する LLM にとっても、ブランドの重要性を決定するシグナルはテキストと言語ベースの情報であるということです。
調査結果から、AI Overview は特定のブランドに回答内で言及するかどうか決定する際、ブランドの自社ウェブサイトだけでなく、ウェブ全体におけるブランドの存在感を判断基準にしていることが推測できます。
AI Overview におけるブランドの可視性に関して、ウェブ全体でのブランド言及数は被リンク数よりも大きな要因であるようです。
AI Overview でのブランド出現率と被リンク指標との間には、弱~中程度の相関関係しかないことが分かりました。
- ドメイン評価 (0.326)
- 参照ドメイン数 (0.295)
- 被リンク数 (0.218)

デジタルマーケティング企業 Seer Interactive による調査結果も、この傾向を裏付けています。
同社のチームは、さまざまなウェブサイトの Google と Bing における検索順位上位キーワード、異なるタイプの SERP 機能による回答内での出現回数やサイトのドメイン評価、獲得被リンク数などを調査し、それらが ChatGPT におけるブランド言及の頻度とどのように関係しているかを解明しようとしました。

ご覧のとおり、Ahrefs の調査結果と同様にドメイン評価 (0.25) や被リンク数 (0.10) などの被リンク指標との相関が弱いことが判明し、ChatGPT におけるブランドの可視性に関しては Google 検索結果でのブランド関連キーワード出現回数と最も強い相関があることが分かりました。
ブランドトラフィックとは、ブランドキーワードの検索からサイトに流入するオーガニックトラフィックのことです。AI Overview でのブランド出現率との相関は弱いことが調査結果から判明しました(0.274)。
Google の検索ランキングシステムは AI Overview にも組み込まれており、これにより同機能が上位のウェブ検索結果から情報を取得し、その内容をまとめて表示するすることが可能となっています。
流出したある Google 内部文書によると、Google の検索順位システムは、ウェブサイトに流入するトラフィックやネットユーザーの行動シグナルといったインタラクションデータもランキングシグナルとして順位決定の判断基準にしているようです。
このことから、AI Overview での表示に関してもサイトの獲得トラフィックが重要な決定要因であるように思えます。
しかし実際のところ AI Overview は、オーガニックトラフィック(0.274)といったユーザー行動シグナルよりも、ウェブ全体でのブランド言及(0.064)やブランド名を含んだアンカーテキスト数(0.527)といったテキストベースのシグナルを優先的に考慮する傾向にあるようです。
有料広告に関連した以下の要因は、AI Overview での言及回数との相関関係が比較的弱いことが判明しました。
- ブランド広告トラフィック (0.216)
- ブランドの広告への投資額 (0.215)
広告掲載に多額の資金を投じても、必ずしもブランドの AI Overview における可視性が向上するわけではないようです。
Google は AI Overview の表示枠内にも広告を掲載していますが、Ahrefs の最新調査によると、この広告を利用して収益化しているケースはまだ多くないようです。Ahrefs のプロダクトアドバイザー、パトリック・ストックスがこれについて分析し、次のように述べています。
興味深いのは、AI Overview が表示される検索の 71.67% に関してクリック単価データが存在しなかった点です。逆に言えば、Google は有料広告が多数利用されているキーワードの検索結果には AI Overview を表示していないということです。なので、AI Overview 欄でほとんど広告を目にすることがないのも不思議ではありません。Google に多額の収益をもたらす有料キーワードの大部分の検索結果で、AI Overview が表示されていないのです。

ここでのポイントは、AI Overview が表示されるとネットユーザーによるウェブページのクリックが減少するという点です。検索結果ページで回答が直接見られるため、ユーザーのクリック需要を低下させてしまうのです。
広告主にとっては、クリックが集まらない広告の掲載に費用をかける価値はありません。
これが、AI Overview 内で広告があまり掲載されていない理由の 1 つかもしれません。
ところが、Google は最近 AI Overview からの広告収益を増やすため、AI Overview 内での検索広告とショッピング広告の掲載増加を決めたばかりです。
この展開により、先述の有料広告関連要因と AI Overview におけるブランド可視性の相関性は今後より強まっていくと予想されます。
ウェブ上でのブランドへの言及総数が AI Overview での出現回数とどのように相関しているかを調べるため、調査対象ブランドを言及数の多い順に並べ、四分割してグループ分けした上でデータを分析しました。

「ウェブ上の言及数」で上位 25%(75~100%)のブランドは、AI Overview に平均 169 回登場しており、これは次の四分位(50~75%)のブランドの平均 14 回と比べて 10 倍以上の数です。
一方で、下位の2つの四分位(25~50% と 0~25%)に属するブランドは AI Overview にほとんど表示されておらず、平均0~3回の言及しか獲得していませんでした。
言い換えれば、ウェブ上での言及数で下位 50% に位置するブランドは、実質的に AI から認識されていないということです。
これは「SEO の悪循環」(検索順位が低ければ被リンクの獲得が難しくなるが、その結果被リンクが新たに獲得できなければ検索順位を上げることができないという現象)と同じように、すでに可視性が高いブランドのほうが更なる可視性を獲得しやすいという事実を物語っています。
つまり、トップの一人勝ちの状況が起こっているということです。まだネット上で話題になってないブランドが AI Overview の回答に登場する可能性は低いのです。
ここでは、自社のブランド検索ボリュームと AI Overview での表示回数を知ることで、検索順位パフォーマンスと AI ツールでの可視性の関係について理解する方法をご紹介します。
AI Overview でのブランド言及追跡方法
- Ahrefs ブランドレーダーにアクセス
- 「Google AI Overview」タブをクリックし、ブランド名を検索
- ドロップダウンから「キーワードまたは AI Overview」を選択
- AI Overview での出現回数のシェアと、その推移を確認

ウェブ上のブランド言及追跡方法
- Ahrefs ブランドレーダーにアクセス
- 「ウェブの可視性」タブをクリックし、ブランド名を検索
- 「合計」タブを選択
- ネット上での言及数の推移を確認

ブランドキーワードの特定と検索ボリュームの調査方法
- Ahrefs ブランドレーダーにアクセス
- 「検索需要」タブをクリックし、ブランド名を検索
- ブランドキーワードを確認
- 「合計」タブを選択し、ブランドキーワードの言及数の推移を確認
- 「検索ボリューム」タブを選択し、ブランドキーワードの検索ボリュームの推移を確認

他にもおすすめの対策とは?
ブランドの AI Overview での存在感を高めたい場合は、以下の項目を優先して取り組んでみましょう。
- ネット上での言及を増やす。これが AI Overview での出現頻度と最も強い相関関係(0.664)があるため、まずはウェブ上でブランドが話題になるように注力する。PR戦略、ソートリーダーシップ(企業による特定分野での革新的なアイデアの提案)、他社との戦略的パートナーシップ構築などを検討すると良い。
- 自社と関連性の高いサイトにブランド名を含んだアンカーテキスト(リンク)を掲載してもらう。ブランド名がはっきりと分かるアンカーテキスト(相関係数 0.527)の掲載を増やすことが大切。「ここをクリック」等のありふれたリンクではなく、ブランド名がアンカーテキストに含まれたリンクを貼ってもらうように外部サイトに働きかける。
- ブランド検索ボリュームを増やす。これが相関度が 3 番目に高かった要因(相関係数 0.392)のため、企業はネットユーザーが積極的にブランド名を検索したくなるようなキャンペーンに投資する。
- 可視性の「上位 25% の壁」を越えていく。ウェブ上での言及総数が下位 50% のブランドは AI ツールに認識されていないため、AI Overview での出現頻度を上げるには、まず言及数を増やし、最終的に上位 25% に入ることを目指す。
AI を搭載した検索機能におけるブランドの可視性を決定するメカニズムについて、現時点ではまだ完全に解明できていません。特に AI Overview の場合、この機能がまだ「実験的」なものであるため、正確な関連データの収集が難しいからです。

SEO の専門家であるリリー・レイさんとマーク・ウィリアムズ=クックさんは、AI Overview における可視性がいかに簡単に操作可能であるかを明らかにし、現行システムの欠陥を暴いています ¹ ² ³ 。
もし今後、今回ご紹介した「AI ツールにおける可視性向上の近道」が使えなくなった場合も、ブランドの可視性維持のために取るべき対策はブランド構築戦略と非常に似ています。なぜなら、可視性の向上とはまさにブランド構築の主要要素だからです。
結局のところ、ブランドの認知度を築き上げ、それを測定して把握することが、AI ツールの回答における可視性を獲得し、その後も可視性を高めていくための鍵となるのです。