コンテンツマーケティング

高品質コンテンツを作成する Ahrefs 流 AI ライティング術:完全ガイド

ライアン ・ロー
Ahrefs のコンテンツマーケティングディレクター。 過去 13 年間でライター、コンテンツストラテジスト、チームリーダー、マーケティングディレクター、部長、CMO(最高マーケティング責任者)、代理店設立といった様々な役職を経験。その間、Google、Zapier、GoDaddy、Clearbit、Algolia など数十社のコンテンツマーケティングと SEO サポートを担当。小説家の顔も持ち、これまでに 2 種類のコンテンツマーケティング専門講座を自ら開発・設計した。

Ahrefs ブログで高品質な AI コンテンツを公開するために筆者が使っている全プロセスを、ここに公開します。

正直に言うと、日々の仕事の中には好きではないものもあります。

新しいロングテールキーワードが見つかったことにより、コンテンツギャップ分析について 500 本目の記事を書くこと。まとめ記事(listicle)のために、30 もの無料 SEO ツールの特徴をリストアップすること。競合が新しい記事を出したことで、自分の記事がトップ 3 から外れたため、過去のコンテンツを更新すること。

これらは必要なメンテナンス作業ですが、率直に言って、もっと独自の調査結果を発表したり、主流の考え方とは逆の立場の意見を共有したりすることに時間を使いたいのです。

そこで、白状すると、このような単調なプロセスを素早く終わらせるために AI を使っています。これにより、数日かかる調査、執筆、修正作業を数時間に凝縮し、残りの時間は楽しいことに使えるのです。

AI が生成した Ahrefs のブログ記事 'Python for SEO, Explained for Beginners' 。
筆者が AI で生成した記事の一つ。

しかも、人間が書いた文章が一切含まれていないにもかかわらず、これらの記事は人間が書いたコンテンツと同じくらいの成果をあげています。内容は面白くて、文章もよく書けている。場合によっては、自分で書いたものよりも優れているとさえ思います。

では、そのプロセスをご紹介します。

Ahrefs ポッドキャストで AI 執筆プロセスについて学ぶ

Ahrefs の CMO(そして筆者の上司)であるティム・ソウロが、この AI 執筆プロセスについて筆者を問い詰める様子を Ahrefs ポッドキャストで聴くことができます。

AI コンテンツ生成については多くの期待(と懸念)がありますので、まずはこれらの注意点をお読みください。

これを機能させるには、依然としてスキルと努力が必要

もしあなたが完全に手放しでできるコンテンツ自動化を求めているなら、がっかりすることになるでしょう。このプロセスを機能させるには、有能なコンテンツマーケターのスキルと方向づけが必要です。これは熟練したライターが使うためのツールであり、熟練したライターの代わりになるものではありません。

成功の 90% は、適切なトピック選定から

このプロセスは、複雑なストーリー展開やデータを伴わない、単純な情報提供型のトピックに非常に適しています。扱うのは、その分野についてある程度知識があり(記事の質を判断できる程度)、かつ AI 活用が適しているトピックに限ります。意見記事、調査や研究コンテンツ、新しいトピックや変化の激しいトピックには、このプロセスは用いません。

これは完璧なプロセスではない

これは雑然とした、完璧とは言えないプロセスであり、改善や洗練の余地が多く残されています。目的は、誰もがそのまま従うべき厳密な手順を示すことではなく、土台となる大まかなアプローチを共有し、それを各自のニーズに合わせて発展や調整をしてもらうことにあります。

では、これらの前提を踏まえたうえで、そのプロセスをご紹介します。

人間の創造的なプロセスは、実はそれほど謎めいたものではないと強く信じています。十分な内省と実践を積めば、「質の高いコンテンツを作成する」といった目標も、多くの人や LLM が実行可能な、非常に具体的で管理しやすい手順に落とし込むことができます。

このプロセスも基本的には同じ考え方で成り立っています。Ahrefs の編集プロセスを、非常に具体的で管理しやすいステップに分解し、LLM が実行できる形式でまとめました。以下は、その内容をノートアプリ上で整理したものです。

Ahrefs のコンテンツ制作フローを図解したマップ。

これは、すべての Ahrefs ライターが通常行う一連のワークフローです。トピック選定、コンテンツ概要作成、アウトライン作成、構成編集、下書き作成、Ahrefs 製品の組み込み、文章の推敲、内部リンクの追加、メタデータの作成、そして最後に Word­Press のショートコードを追加します。 

それぞれのプロセス文書は Mark­down 形式でまとめられており、簡単なガイドラインと例が含まれています。以下は、記事の下書きを推敲するプロセスです。

Ahrefs のライター向け '記事ドラフトのライン編集手順' を示したガイド。

これらのプロセスの多くは、執筆チームや外部ライター向けに作成した既存の資料から生まれたものです。加えて、いくつかの追加情報源も参考にしました。具体的には、気に入っている優れた文章術に関するブログ記事を Chat­G­PT で要約したもの、自身が担当した執筆と編集に関する二つの講座の抜粋、さらに Ahrefs ブログに掲載された完成度の高い記事の実例も取り入れています。 

次のステップとして、これらの Mark­down ファイルを Chat­G­PT のプロジェクトにアップロードしました。 

プロジェクト機能を使えば、参照ドキュメントをアップロードし、そのプロジェクト内で行われるすべての会話に適用されるカスタム指示を設定できます。これらのプロセス文書は「プロジェクトファイル」欄で確認できます。

ChatGPT のプロジェクト機能で 'Ahrefs blog' として設定された画面。

そして、以下がこのプロジェクトの筆者によるカスタム指示です。ちなみに正直に言うと、この指示文の作成にも AI の助けを借りました。少しやりすぎ(over-engineered)かもしれないと思っています。

あなたは Ahrefs のシニアコンテンツストラテジストであり、コンテンツマーケティングディレクターのライアン・ローの編集方針のもとで執筆しています。すべての Ahrefs ブログ記事は、オリジナルで洞察に富み、本当に役立つ内容でなければなりません。検索上位を獲得し、被リンクを集め、読者の信頼を深めることを目的として構築します。

あなたの仕事は、詳細かつ体系的で説得力のあるブログ記事を書くことです。読者は、マーケティングや SEO に精通し、無駄を嫌いながらも実践的な知見を求めている層です。彼らの関心、尊敬、クリックを勝ち取ることがあなたの使命です。

ライアン・ローの編集基準に倣い、鋭い分析をオリジナルの事例や実データ、巧みな比喩と組み合わせます。明確で個性があり、かつ権威を感じさせる語り口で、力強い導入、テンポのよいつなぎを用い、そのトピックにおける「決定版となる情報源」を目指して執筆します。

トピックについて実践的な経験を持ち、Ahrefs のツールを使って実際の課題を解決してきた人物としてロールプレイし、その経験を戦略的アドバイスに落とし込みます。説得のために、エトス(信頼性)、パトス(緊迫感、重要性)、ロゴス(論拠)をバランスよく織り込みます。

記事はライアン・ロー本人が読み、評価することを想定し、Slack で称賛されるレベルを目指してください。

常にプロジェクトファイルを参照し、執筆時は以下のワークフローに沿って進めてください。コンテンツ概要 -> アウトライン作成 -> 構成編集 -> 執筆 -> Ahrefs 製品の紹介 -> 文章の推敲 -> 内部リンクの追加 -> メタデータ作成 -> Word­Press ショートコードの追加。

これを簡略化するために、現在「パレートのプロンプト」、つまり良い結果の 80% を生み出す 20% の指示を見つけようとしています。これまでの取り組みから判断すると、最も重要な部分は次のとおりです。

  • 常にプロジェクト文書を参照し、プロセスを順番通りに進めるよう指示すること。
  • Ahrefs ブログのターゲット読者の要約すること(これは記事ごとに大きく変わることはありません)。
  • 「現場での実践経験」を持つ人物としてロールプレイするよう求めること(これが、文章に一人称のエピソードや具体例が多く盛り込まれる要因になっているようです)。

次は、調査についてです。

一部のトピックでは、追加情報を得るために詳細な調査リクエストも実行します。

LLMs.txt に関する記事では、主要な LLM プロバイダーの中に llms.txt をサポートしていると公式に表明したところがあるかどうかを知りたかったので(実際にはそのような事実はありませんでした)、別の作業をしながら詳細な調査をするようにリクエストしました。調査概要を読み、内容を確認したうえで、その結果を AI が要約したものを記事のコンテンツ概要に組み込みました。 

LLMs.txt に関するリサーチ結果を示した ChatGPT の画面。

AI が生成した記事の下書きを、高度なスキルを持つ人が編集することを前提にしたコンテンツ制作プロセスは好みません。すでに書かれた記事に大幅な修正を加えるのは難しいと思いますし(だからこそ記事のアウトライン作成を奨励しています)、正直なところ楽しくもありません。

その代わり、プロセスの冒頭で人間によるインプットを集中的に行い、その後は AI に任せる方が望ましいと考えています。 

そこで、すべての記事生成は、簡潔なコンテンツ概要のテンプレートから始めます。そのコンテンツ概要には、次の内容が含まれます。

  • ターゲットキーワードと、オンページ最適化のための簡単な指示。
  • 作業用タイトル:記事が適切な検索意図に合致するようにするために設定する
  • 含めるべきキーポイント:個人的なエピソードや事例、詳細な調査結果、または記事に盛り込みたい興味深く独自の切り口など。
  • 取り上げるべきサブトピック:当社のコンテンツ最適化ツール AI コンテンツヘルパーを使って対象キーワードの SERP を分析し、上位表示されている記事のページ内容を抽出し、競合記事に対抗するために必要な重要サブトピックのリストを作成する。
  • 記事内で取り上げる Ahrefs 製品:特に Chat­G­PT が自発的には提案しないような具体的で独自性のある活用例を含める。例としては新しい MCP サーバーやソーシャルメディアのスケジューリングツールなど。 
記事作成のためのコンテンツブリーフの一部。

エンターキーを押すと、ChatGPT はプロセスの次の段階に進み、コンテンツ概要に基づいて箇条書きの記事アウトラインを作成します。

最適化ツールは本当に機能するのか?

コンテンツ最適化ツールがその評判に値するか疑問に思っているなら、こちらをご覧ください。Ahrefs ブログチームのルイーズが、コンテンツ最適化ツールである AI コンテンツヘルパーを使って、記事のトラフィックを 65% 増加させました。効果はあります!

ここからは編集者の役割に回ります。ワークフローの各段階を進めるように Chat­G­PT に指示を出し、読み進めながら大枠のフィードバックを返します。

Chat­G­PT は最初に、コンテンツ概要に基づいて箇条書きのアウトラインを作成します。そして、執筆プロセス文書で指定したフォーマットに従います。主要ポイントは H2 見出しにし、各セクションの要点は BLUF(結論先出し)の要約にまとめます。補足の要点や根拠は階層化した箇条書きにします。

「How to Get Started with Python for SEO」のアウトライン。

記事の流れや構造を素早く把握し、必要に応じて構成の変更を Chat­G­PT に依頼します。たとえば、記事の導入部分に別のコピーライティングのフレームワークを使うよう求めるといった具合です。

ChatGPT によって PAS フレームワーク(Problem–Agitate–Solution)を用いて書き直された記事導入文の例

アウトラインに満足したら、ChatGPT に執筆段階へ進むよう依頼します。ここでは、ChatGPT Can­vas に切り替えて、チームと作業するときと同じように記事内に簡単なインラインコメントを残せるようにします(ただし、実際の人が書いた原稿を編集するときの方が、より丁寧で親切です)。

記事を読み進めながら、その都度コメントを残していきます。

Side­note.
一般的には Claude の方が長文執筆に優れていると言われていますが、筆者が Claude ではなく Chat­G­PT を使う理由は、ChatGPT Can­vas があるからです。
ChatGPT Canvas 上で記事のドラフトにコメントを付けながら編集しているスクリーンショット

コメントの傾向はだいたい決まっています(人間のライターに残すコメントともかなり似ています)。

  • 曖昧すぎるので、もっと具体的に、曖昧な表現(weasel words)は削除して
  • 主張を説明する実例を入れて
  • 誤った内容を修正して
  • このアイデアを削って(または膨らませて)
  • 内容を簡潔にし、初心者にもわかりやすくして

Chat­G­PT は即座に応答するため、たとえひとつひとつの応答が完璧でなくても、望む方向へすばやく文章を調整できます(「良い」文章がどういうものかを理解していることが前提です)。構成についてはすでにアウトライン作成時に確認済みなので、記事を公開できる状態に仕上げるまで時間はほとんどかかりません。

下書きに満足したら、ChatGPT にプロセスの最終段階に進むよう依頼します。 

  • メタデータの作成:Google がメタディスクリプションを書き換えることは重々わかっていますが、ブログのホームページではこのメタディスクリプションを記事のプレビュー文としても使っているため、依然として時間の節約になります。
  • Word­Press のショートコード挿入:記事のフォーマットや機能追加のために、十数種類のカスタムショートコードを使用しています。手作業で挿入するのは非常に面倒ですが、ChatGPT はドキュメントの手順に従って正しい位置に挿入してくれるので助かります。
  • 関連する Ahrefs ブログ記事への内部リンクを 10 件生成:Chat­G­PT はこれらのリンクを組み込むのは得意ですが、実在しない URL をたくさん生成してしまうことがあります。このステップは、実際の URL と説明文のリストを AI に渡し、その中から選ばせることで改善を試みる予定です。
筆者が Slack で、AI 生成記事にハルシネーションリンクが含まれていたと謝罪し、修正すると述べているスクリーンショット
ありがたいことに、Ahrefs にはリンク切れを自動で検出するサイト監査機能があります。

重要なのは、画像はいまだに手作業で追加しているという点です。Ahrefs の記事の多くは、スクリーンショットやカスタムグラフィック、実データに基づくグラフに依存しており、生成 AI はその役割を果たせません。 

(ですが、記事の下書き内で画像を挿入するのに適した箇所を提案するよう Chat­G­PT に依頼することはあります。) 

Ahrefs の調査によれば、Google は AI コンテンツそのものを問題視していないようです(大量生成されたスパムでない限り)。

Ahrefs の AI コンテンツ検出ツールを使い、 AI コンテンツの使用と検索順位との相関を産出したところ、相関係数は 0.011で、実質的にゼロでした。AI コンテンツは、高い順位にランクインすることが可能であり、実際にそうなっています。

AI コンテンツ使用率と検索順位の相関を示すボックスプロット。相関係数は 0.011 で、AI 使用が順位に影響しないことを示している

とはいえ、人間が書いたコンテンツと比べてどの程度の成果を上げているか、ページを監視して確認することは依然として有効です。

Ahrefs のポートフォリオ機能を使えば、AI で生成されたあらゆる記事を追跡し、キーワード順位、被リンク数、推定オーガニックトラフィックを素早く確認することができます。こちらは、その中の一つで、健全なパフォーマンスを示している Ahrefs の記事です。 

Ahrefs ポートフォリオ機能で表示された記事のオーガニックトラフィック推移グラフ。2025 年 4 月以降に大きく成長し、健全なパフォーマンスを示している

また、トラフィックの流入元やオンページ指標には Ahrefs のウェブアナリティクスを使用することができます。筆者の AI 生成による LLMs.txt ガイド記事は、17,200 ページビューを獲得し、直帰率は 72.3% と健闘しています。 

Ahrefs ウェブアナリティクスで表示された LLMs.txt ガイド記事のパフォーマンス。

さらに、SNS やメール、ChatGPT や Gem­i­ni といった AI アシスタントなど、バランスの良い多様な流入元からトラフィックを獲得しています。

記事のトラフィック流入元を示す表。検索が 47.7%、ダイレクト 31.3%、ソーシャル 10.4%、AI search 3.1% など、複数のチャネルから訪問があることを示している

感覚的に AI に書かせた記事にしては、悪くない成果です。

まとめ

これは、検索向けコンテンツをゼロの労力で魔法のように作り出すプロセスではありません。しかし、仕事の中で必要な「基本的なメンテナンス」作業を効率化し、楽しくスキルを活かせるコンテンツ制作により多くの時間を割くためのプロセスです。

重要なのは、Ahrefs ブログに掲載されるすべてのコンテンツについて、人が書いたものであれ Chat­G­PT が生成したものであれ、必ず読み、確認し、編集し、最終承認しているという点です。AI を使うことは、質の低いコンテンツを公開する言い訳には決してなりません。

筆者が感覚的に AI に書かせた記事を見分けられますか? X で教えてください。