これは、外部サイトへユーザーを送りこむ(リファラルトラフィックを受け渡す)ことで成り立っていた、Google 本来の検索モデルとは真っ向から対立するものです。
Google がゼロクリック検索の精度を高め続けるにつれて、ウェブサイトが検索から獲得できるクリックはますます減少していきます。
ゼロクリック検索の増加は、ここ数年で徐々に進んできました。これまで AI を搭載した 様々なSERP 機能が追加され、その下地を作ってきましたが、AI Overview の登場が決定的となりました。
今年(2025 年)3 月のコアアップデートが完全な転換点となり、AI Overview の表示は一夜にして倍増しました。
Ahrefs の調査によると、AI Overview は現在、米国で検索されている全キーワードの 18.9% の検索結果で表示されています。さらに、ユーザーが Google アカウントにログインした状態で検索した場合の SERP(検索結果ページ)では、この数値はさらに高くなると考えられます。
「AI モード」が本格的に導入された今、ウェブページが獲得するトラフィックへの影響は加速しています。
SparkToro 社の調査では、2024 年時点で既に Google 検索全体の 60% がクリックなしで完結するようになっていました。
そして 2025 年に入って実施した Ahrefs の調査では、AI Overview の表示によってクリック数が 34.5% も減少する可能性があると判明し、特に情報収集型クエリに対応したコンテンツが最も大きな打撃を受けています。

最近、情報系コンテンツが獲得するトラフィックが大幅に減少したため、急いで掲載コンテンツのバリエーションを増やす動きを見せるサイトが数多く見られます。
つい最近も、Databox 社や Seer Interactive 社がオーガニックトラフィックの大幅な減少を報告しています。
私たちマーケターは皆、Google サーチコンソールのデータ上で「インプレッションが倍増する一方で、クリック数は急降下」という、まさに「大いなる乖離」とでも言うべき現象の発生を目の当たりにしているのです。

しかも、まだ AI Overview による影響だけで、こんなに大きなダメージが起こっているのです。
近い将来、検索結果ページは完全な対話型インターフェースへと進化し、そこから外部ページをクリックすることは当たり前ではなく、むしろ珍しくなるでしょう。
実はクリックなしの検索(ゼロクリック検索)は、今に始まったことではありません。
Google は、最初の SERP 機能である「画像検索」が登場した 2001 年からずっと、ウェブページからクリックを奪い続けてきました。
しかし、AI Overview と AI モードがもたらす変化の規模は、これまでとは次元が違います。これらは単なる追加機能ではなく、検索の仕組みそのものを根底から覆す、革命的な変化なのです。
この記事では、皆さんのサイトから強引にクリックを奪う各種検索機能について、知っておくべきことを解説していきます。
AI Overview
AI Overview とは、検索結果の最上部に表示される AI が生成した要約のことです。複数の ウェブページから統合された情報をもとに、ユーザーの疑問に対する回答を素早く提供します。

AI Overview は当初、質問形式のクエリやロングテールクエリの検索結果で表示され始めましたが、今では主要なキーワードでの検索においても、当たり前のように表示されるようになりました。
なんとも皮肉な話ですが、筆者がこの記事を執筆している間に、「AI Overview」や「ゼロクリック検索」といったキーワードの検索時にさえも AI Overview が表示されるようになってしまったのです。

AI Overview は、いくつかのウェブページを引用元として表示しますが(平均 7 件の URL リンクを掲載)、その表示スペースは限られています。
多くの引用元には「もっと見る」ボタンをクリック後にリンクアイコンをクリックしないと飛ぶことができません。つまりユーザーは引用元を見つけるために一度クリックし、実際にサイトにたどり着くためには更にもう一度クリックしなければなりません。
AI Overview には、クリックを促す働きがあるどころか、むしろ逆効果です。どちらかと言えば、より深く情報を知りたいユーザーにとっては質の低い UX(ユーザーエクスペリエンス)を生み出しているのです。
そして、外部サイトからの情報引用に関する問題はこれだけではありません。
AI Overview では多くの場合、ソースとなるページに掲載された大体の内容をまとめて表示しているにすぎません。つまり、回答内容と実際の引用元の原文が必ずしも正確に一致しているわけではなく、単に大まかな情報を提供する程度にとどまっているのです。
場合によっては、情報源を混同することさえあります。例えば、皆さんのコンテンツを要約しているにもかかわらず、引用元として競合他社のサイトを表示し、自社サイトに来るはずだった(ただでさえ減っている)クリックを、競合に横取りさせてしまう可能性があるのです。
そして最悪の場合、引用元を完全に省略してしまうことさえあります。
例えば、BuzzStream 社のコンテンツマーケティングディレクターであるビンス・ネロさんは最近、ある AI Overview で E メールマーケティングプラットフォームである Litmus 社のコンテンツが要約して紹介されたにもかかわらず、引用元リンクとして Litmus 社のページは記載されていなかったことに気がつきました。

AI Overview はしばしば回答の情報源として自分自身(Google)の情報を参照します。このためユーザーは永遠に続くゼロクリック検索のループに閉じ込められてしまいます。つまり、AI Overview のほぼ半分が掲載するリンクは、クリックしても結局 Google 検索結果に戻ってしまうのです。
— サチン・パテルさん (@SachuPatel53124) の投稿(2025 年 3 月 17 日)
Google AI Overview の回答内のリンク部分には下線が表示され、クリックするとそのキーワード検索画面に飛ぶようになっています。@rustybrick @gaganghotra_ @brodieseo pic.twitter.com/Y6Df6bfxgn
この問題は、他の国で異なる言語を使用した場合にも発生しています。
筆者の同僚エリック・サリスキーが最近公開した記事で明らかにしたところによると、Google は現在、AI 技術と AI Overview 機能を使って英語のコンテンツを別言語に翻訳し、その結果ユーザーを Google が生成した独自の翻訳ページ(プロキシランディングページ)に誘導しているのです。
そして、そこから内部リンクを使い、ユーザーを他の Google 関連サービスへとさらに誘導しています。

ユーザーが原文サイトへのCTA(行動喚起)をクリックしようとすると、Google は警告メッセージを表示し、自社のプラットフォームから離れないよう引き止めるのです。
これは Google 翻訳のドメイン上で起きたことです。
「かこって検索」機能を使って英語に翻訳したら、
「安全のため・・・」というメッセージが表示されました。 pic.twitter.com/RFxZbYBY79
— ガガン・ゴートラさん (@gaganghotra_)の投稿(2025 年 6 月 2 日)
もし皆さんのコンテンツも、ローカライズ(現地語対応)していない場合、Google の表示するゼロクリック SERP によって、さらに多くのトラフィックを失うリスクを抱えているといえるでしょう。
AI モード
AI モードとは、Google が提供する、文脈を理解する AI が対話形式で回答を提供する検索モードです。

これは、Gemini や ChatGPT よりも機能をシンプルにし、検索に特化させたものだと考えればよいでしょう。
現在、この AI モードは米国で実験的に導入されており、「ニュース」や「画像」と並ぶタブの 1 つとして提供されています。
そのため、まだ利用は本格的に広がっていません。
しかし、Google の意図は明確です。この機能がユーザーに馴染むにつれて、AI モードは徐々にメインの検索ページへと移行されていくでしょう。
そして、いずれはそれがメインの検索インターフェースになるのです。
強調スニペット、ローカルパック、検索ツール etc…
Google の AI が組み込まれていない従来の検索結果でも、外部サイトのコンテンツが検索結果ページ上で直接表示されたり、内容が要約して紹介されたりしています。
以下に、皆さんのサイトからクリックを奪う可能性が高い SERP 機能の例をいくつかご紹介します。

Ahrefs キーワードエクスプローラーでは主要な SERP 機能の追跡が可能。
強調スニペット
強調スニペットは、ウェブページから掲載文章を抜き出し、検索結果ページの最上部に直接回答を表示します。
これは、AI Overview の前身のようなものだと考えてよいでしょう。
しかし、AI Overview とは異なり、強調スニペットが引用元として表示するのは 1 つの ウェブサイトだけです。
こちらもクリックを減少させることで知られていますが、単一のサイトから原文をそのまま引用し、そのウェブページへのリンクを分かりやすく掲載するため、AI Overview のような引用問題は起こりません。
場合によっては、クリックを減らすどころか、むしろクリックを誘発することさえあります。
スニペット内に質問へのフル回答を表示するスペースがない場合、文末が「…」(三点リーダー)で省略されたり、「さらに表示」といった行動喚起(CTA)が表示されたりするためです。

ローカルパック
ローカルパックとは、ユーザーが特定の地域に関連するキーワード(例:「渋谷 カフェ」)を検索した際に表示される、複数の店舗情報がまとまった表示形式のことです。多くの場合、クリックすると Google マップやその他の Google 機能に移動します。
ローカルパックには、一般的に以下の情報が記載されます。
- 地図
- 営業時間
- ルート案内
- 連絡先情報
- 「席を予約する」といった CTA(行動喚起ボタン)など

画像パックとサムネイル
画像パックとは、検索結果ページ(SERP)に直接、横一列またはブロック形式で表示される画像検索結果のことです。
これは Google 画像検索への入り口となり、ユーザーは検索結果ページから離れることなく、検索クエリに関連するすべての画像を確認できます。

ナレッジカードとナレッジパネル
ナレッジカードは、構造化データをもとに、事実、人物情報、統計データ、言葉の定義といった情報を即座に回答として表示します。
また、以下のようなツールを使って情報が表示されることもあります。
- 計算機
- 時計
- 天気予報
- 為替レート
- 翻訳

一方でナレッジパネルとは、あるトピックに関する概要情報を、Google の検索結果 1 ページ目に表示する機能です。
情報は Wikipedia や Google のナレッジグラフといった情報源から引用され、通常は画面右側にパネルやカード形式で表示されます。

参考記事:SERP の機能とは何ですか?
その他の Google 関連ツール
Google が提供する独自の検索ツールもまた、特定の業界のサイトからクリックを奪っています。
例えば、Google フライトや Google 求人は、フライト情報や求人情報を集約し、Google 独自のプラットフォーム上で提供しています。
場合によっては、ユーザーは Google の検索環境から離れることなく、航空券の予約を完了したり、ワンクリックで求人に応募したりできます。
そして、あるAhrefs の調査によると、Google はますます多くのオーガニックトラフィックを、自社の検索ツールへと誘導するようになっているのです。

ゼロクリック検索は、一時的な変化でもなければ、解き明かすべき謎でもありません。これはもはや、「新常識(ニューノーマル)」なのです。
私たちに求められているのは、この変化に適応することです。
ここでは、マーケターがゼロクリック検索に対して実践している 7 つの対策をご紹介します。
正直なところ、Ahrefs ではこれまでの SEO 戦略において Google 検索をあまりにも優先しすぎていた、と認めざるを得ません。
クリックの獲得が簡単だった時代は、そのやり方だけで面白いほどうまくいきました。しかし、従来の方法ではもはや通用しなくなっているのです・・・
今、Ahrefs チームはより明確な意図を持ってコンテンツを発信しています。ブランドの目標達成に貢献し、かつユーザーにとっても真に有益な「発信側とオーディエンス双方に価値のあるコンテンツ」の制作に注力しているのです。
つまり、本当にユーザーの役に立ち、かつ販売する製品との関連度が高いツール、テンプレート、ユースケース、ワークフローなどについて情報を発信しているのです。
Ahrefs では、この方針転換がコンテンツで扱うトピックの優先順位付けに表れています。読者にとっての有益度と、Ahrefs の製品との関連度の両者の絶妙なバランスが保てる内容のコンテンツに注力しているのです。
社内では、これを「ビジネスポテンシャル」と呼んでいます。つまり、読者が関心を持つトピックの中で、どれだけ自然に Ahrefs を登場させられるかを測る指標です。
それについて語る上で Ahrefs に触れざるを得ないトピックが、Ahrefs にとって最適なトピックなのです。

AI Overview によるクリック数の減少をテーマにした Ahrefs の調査は、まさにその好例です。
Ahrefs では、ゼロクリック検索の影響に関する業界初にして最大規模の調査を実施し、その分析の核となる部分で、Ahrefs を使って得られたデータと製品を紹介しました。

この記事公開後、数多くのマーケターたちが自社のトラフィック減少を話題にする際、この調査は必ずと言っていいほど引用されました。こうして、Ahrefs はこの一連の議論において外せない存在となったのです。
そして、この戦略は驚くほど上手くいきました。結果として、Google 検索だけに留まらず、実に多様なチャネルから大量のトラフィックを獲得できたのです。


今、マーケターたちはコンテンツを単なるトラフィック稼ぎの道具ではなく、価値のある財産として捉え、模倣されにくい独自のコンテンツ制作に焦点を移しています。
結局のところ、ユーザーにとっての価値が低く、分かりやすくコンバージョンにつながらないようなコンテンツを作り続ける意味はないということです。
Ahrefs では、以下のような特徴を持つコンテンツを発信することで、AI によって均質化された「没個性のひしめく海」から距離を置いています。
- 人間らしさが満載のコンテンツ
- 全く新しい情報を提供するコンテンツ
具体的には、ソートリーダーシップ(特定の分野をリードするような革新的なアイデアや視点の発信)、オピニオン記事、ストーリーテリング、独自のデータ調査、他社とのトピックギャップを埋めるような内容、そしてゴンゾー・ジャーナリズムなどが挙げられます。

ライアン・ローのゴンゾー・ジャーナリズムに関する記事より抜粋
AI コンテンツが当たり前になるにつれて、競争において優位性をもたらすのが「人間らしさ」なのです。
Ahrefs では、AI コンテンツとははっきりと一線を画すため、「あえて人間らしさを追求したコンテンツ」を作っています。
Ahrefs のマーケティング戦略では、コンテンツを通してこんなメッセージを伝えることを目指しています。「このコンテンツを作ったのは人間なので、安心して信用してください。アバウトな情報や、ハルシネーション(AI が生成する誤情報)は一切含みません。これを書いた生身の人間の生きた経験をもとに、信頼できる情報と、その裏付けとなる根拠をご紹介します。同じことをオウムのように繰り返して言ったりはしません。他では読んだことのないような、全く新しい概念を皆さんとシェアしたいのです」
ソートリーダーシップ、独自調査、そして「ゴンゾー・ジャーナリズム」は、ありきたりなアイデアや一般的な情報を何度も繰り返すのではなく、本物の専門知識を核とするコンテンツです。
それは、ブランドを単に他社を模倣する立場から、革新者 (イノベーター) へと格上げしてくれるようなコンテンツです。
Ahrefs ではこの考え方を採用し、マーケティングにおいて誰にもまだ研究がされていない領域を対象とした調査に力を入れています。例えば AI ツールによるブランド言及シェア調査、AI マーケティングに関するアンケート調査、ブランド検索トラフィックの調査などで、これらの記事を次々に公開しています。
また、Ahrefs では AI Overview やゼロクリック検索結果にはまだ拾われていないアイデア、つまり「トピックギャップ」を積極的に探しています。
これには Ahrefs の AI コンテンツヘルパーを活用しています。まだ十分に情報が提供されていないトピックを見つけ、それをターゲットにしてコンテンツを制作することで、SEO 業界のさまざまなホットトピックに対し、常に新しい視点を提案するよう努めています。

実を言うと、筆者が今このガイドを書いているのも、まさにこの理由のためです。
現在、ゼロクリック検索に関する「将来の展望」をテーマにしたコンテンツはまだあまり世に出ていないようで、筆者が皆さんのお役に立てるよう、一肌脱いでいるということなんです!
検索ユーザーが検索エンジン等に投げかける質問は、これまで以上に複雑なものになっています。
同じクエリは 2 つとしてなく、ユーザーの 1 つ 1 つの質問には、それぞれ違う意図が込められています。
このためマーケターにとっては、顧客の需要を完全に理解することへのハードルが上がります。しかし逆に言えば、その微妙なニュアンスの違いを汲み取れる人にとっては、これが新たなチャンスになるのです。
一般的なクエリの場合、AI の生成回答が表示されやすくクリックも奪われやすい一方、専門性の高いディープな内容のコンテンツは AI にとって要約するのが難しく、簡単に回答を作成・表示することはできません。
こうした理由から、Ahrefs ではコンテンツの扱う情報の詳細度を上げ、顧客調査においては「メソッド重視」の方法を実践しているのです。
ここでいう「メソッド重視」とは、ロングテールクエリ、消費者コミュニティの掲示板、顧客からのフィードバック、サポート対応のログ、サイト内検索クエリといった情報を徹底的に活用し、消費者が本当に求めているものを深く理解することを意味します。

Magneti 社のマネージングディレクターであるギャリー・マニョーネさんは、SEO コミュニティに対し、顧客調査を一層強化し、理想の顧客像(ICP)をしっかりと描き出すようにアドバイスした
私たち人間のコンテンツ担当者たちは、AI が当てずっぽうで答えたり、単に SERP から情報を抜粋したりするだけでは真似できないような、質の高い情報を提供しているのです。
私たちのマーケティング対象が具体的に絞れているほど、ニッチな問題を解決できるほど、私たちはクリックが獲得困難な時代を生きのび、自社の熱心なファン層を見つけ出すことができるのです。
Google の AI モードは、ユーザーの過去のクエリ、位置情報、アカウントの行動履歴といった周辺情報を記憶し、すでに検索結果をパーソナライズし始めています。
つまり、オーディエンスに合わせたパーソナライゼーションを極め、顧客の世界観に入り込むことができれば、皆さんのブランドは顧客にとって忘れられない存在となり、選ばれ続けることができるのです。

では、詳細な情報を収集するための顧客調査に使えるフレームワークにはどんなものがあるでしょうか?
今回ご紹介するこの調査フレームワークには、ユーザーがゼロクリック検索で得られる大まかな情報だけでは物足りず、アドバイスや個人的な体験談、ヒント、そしておすすめ情報を求めているときに尋ねるであろう質問を見つけ出すねらいがあります。
こうしたクエリを見つけ出すために、筆者は Ahrefs と ChatGPT を活用しています。
まず、Ahrefs のコンテンツギャップツールを使い、競合サイトが検索結果上位に表示されている一方で、自社サイトが表示されていない検索キーワードを洗い出すためのサーチ条件を設定します。
要するに、オーディエンスが抱えているのに、Ahrefs のウェブサイトがまだ答えてられていない複雑な疑問・質問をすべて見つけ出したいのです。

そこから、以下のようにフィルターを設定します。
- 最低単語数を 6 語以上に設定。 これにより、細かなニュアンスを含むロングテールのフレーズに絞り込める。
- キーワードの開始語を「how」に指定(「キーワード」フィルターで「次で始まる」を選択後に任意の単語を入力)。 質問形式のクエリの中でも「how(どのように)」という単語が含まれる場合、ユーザーが複雑な問題解決のために検索をしている可能性が最も高いため。

さらに、以下の条件で絞り込みます。
- 自社サイトがまだ検索上位ランクインしていない
- 競合のうち、少なくとも 2 社が(100 位以内に)ランクイン済み

こうして抽出された 1,607 個のキーワードをエクスポートし、ChatGPT を開きます。そして、高度な推論タスクに最も優れた o4-mini モデルに、以下のプロンプトを入力します。
「このリストにあるキーワードを、以下の 1 から 10 までの 10 段階評価で採点して。1 =広範囲で曖昧、かつ簡単・簡潔に答えられる質問、10 =ニュアンスに富んだ非常に具体的で、簡単・簡潔には答えられない質問」
プロンプトと一緒に、キーワードと検索ボリュームの列だけを残して作ったキーワード一覧表の CSV エクスポートファイルも添付します。
ChatGPT の採点が完了すると、ユーザーによる最も複雑な質問リストが出来上がりました。

優先的にターゲットにする質問項目に絞り込むため、まずフィルター機能で「複雑さスコア」が 9 点か 10 点の質問に絞り込み、次にその結果をキーワードの「検索ボリューム」の大きい順に並べ替えます。

そこから、各質問が Ahrefs にとってどれだけ関連性が高いか、つまり先述の「ビジネスポテンシャル」が高いかという目線から、最終的な判断を下します。
ゼロクリックの世界で勝ち残るコンテンツ戦略では、「広く浅く」よりも「狭く深く」が鍵となります。そして、深掘りして取り上げるべきトピック探しはこういった顧客調査から始まるのです。
検索から簡単にクリックが獲得できなくなった今、トラフィックを誘導するためのチャネルの多角化が皆にとっての最重要課題となっています。
かつて Google こそがターゲットとすべき黄金のチャネルでしたが、今では数多くあるチャネルの 1 つに過ぎません。
TikTok、Reddit(掲示板型 SNS)、Substack(有料メルマガ配信プラットフォーム)、Slack(ビジネスコミュニケーションツール)、WhatsApp(メッセージングアプリ))。人々がさまざまな会話を繰り広げ、意思決定をし、新しい発見のために利用するオンラインプラットフォームならどんなものでも、戦いの舞台とすべき場所なのです。
今、優秀な SEO 担当者たちは、検索エンジンの世界だけに留まっていません。
彼らはマーケティングチャネルを多様化させ、検索という「コンテンツ掲載のために借りている場所」ではなく、自らが「所有・運営するスペース」でビジネスを展開しています。
私たちがすべきことは明確です。コンテンツ発信者は、トラフィック流入源として Google に頼るのをやめ、オーディエンス戦略に注力する必要があります。フォーカスべきなのは、Google 以外のチャネル、マルチメディアコンテンツ、そしてブランドへのダイレクトトラフィックです
この変化の流れの中で、私たちは皆、コンテンツプロモーションがいかに重要であるかを改めて思い知らされています。
今後は、オーディエンスの需要に対応した情報系コンテンツのみが生き残っていくでしょう。単に知識を提供するだけでなく、コンテンツでいかに需要を生み出せるかを考え始めなければなりません。
SEO の検索順位アップ対策のリスト項目を 1 つ 1 つこなしていくだけで、楽に安定したトラフィックの流れを生み出せた時代は終わりました。
私たちは再び、真のマーケターとして動き出す必要に迫られています。
筆者の同僚であるデスピナが言うように、「優れた SEO 戦略があれば手抜きのマーケティングでも通用した時代は終わった」のです。
SEO は長い間、費やす労力の小ささに見合わないほど大きなリターンをもたらしてきました。その一方で、SNS、PR、メールマーケティングなどの他のマーケティング手法では、その半分の成果を得るために倍の努力をしなければなりませんでした。
かつては簡単に手に入ったトラフィックを今得るためには、私たちは以前の 10 倍の努力をしなければならなくなったのです。

そこで私たちは、マーケティング専門家のランド・フィッシュキンさんが言うところの「Search Everywhere Optimization (あらゆる場所での検索最適化)」のような考え方へと移行しつつあります。

私たちは、以下のことを実践していく必要があるのです。
- コンテンツではなく、アイデアを広める。 Ahrefs の CMO ティム・ソウロいわく、「私たちは検索エンジンから自社サイトへのクリック誘導に心血をそそぐより、常識を覆すような『アイデア』を各プラットフォームで直接広めていくべき」。
- 需要の主導権を握る。そもそも Google は需要を生み出してはおらず、Google から流れ込むトラフィックの 63% はナビゲーショナルクエリで(ソース:SparkToro)、46% はブランド検索 (Ahrefs の調査より)。なので、私たちは、ただその主導権を取り戻せばいいだけ。チマ・メージェさんは、オーディエンスが何度もブログやサイトに戻りたくなるようなコンテンツ体験を生み出すことが重要だとアドバイス。
- 評価指標を見直す。単にトラフィックを追うだけでなく、ブランドへの言及数、シェアのされやすさ、リファラル、そしてセンチメント(評判)を継続的にチェックする必要がある。
私たち Ahrefs にとって、LinkedIn はリファラルトラフィックの流入源として非常に大きな役割を果たしています。また、オーガニックトラフィックが打撃を受ける中、その落ち込んだ分を ChatGPT が強力に補ってくれているのです。

自社のアナリティクスデータを深く分析し、どのチャネルにテコ入れすればコンテンツにオーディエンスを呼び込めるか、見極めましょう。
ここからの話は、SEO を捨てるべきだ、というアドバイスではありません。そうではなく、SEO に依存しすぎない状態をいかに作るか、という話です。
SERP(検索結果ページ)での露出が減れば減るほど、ネットユーザーに事前に皆さんのブランドについて知っておいてもらう必要性は、ますます高まります。
そのため、Ahrefs ではオフサイトコンテンツに力を入れ始めています。

サラ・ハートランドさんによる「SNS投稿、インフルエンサーマーケティング、PR を通じて AI ツールでの可視性を高める手伝いをしてくれる PR 代理店を探し中」との LinkedIn 投稿
ゼロクリック検索や AI ツールでの可視性という点において、PR、アーンドメディア、そしてブランドへの言及が最も強力な効果を発揮します。
これは長らく言われてきた説でしたが、Ahrefs でも 75,000 のブランドを対象に AI Overview におけるブランド言及の相関要因を調査し、その裏付けを得ました。

しかし、マーケターがここから学ぶべきことは、「ちょっとした PR でブランドのウェブ言及を増やすべき」ということではありません。
そして、報酬を払って他社サイトに言及してもらったり、ブログにゲスト投稿させてもらったりする「AI ツールへの印象操作」でも断じてありません。
言い換えれば、ブランドのリーチが多いように見せかけることではないのです。
本当に重要なのは、自然とネットユーザーの言及を獲得できるようなブランドを構築することです。
言及は、強力なブランドへの愛着や好感度(ブランドアフィニティ)から自然と生まれるものです。
そして、そういったブランドを築き上げるために、私たちは死に物狂いで努力しなければならないでしょう。
それを可能にする戦略には、PR 以外にも以下の様なものがあります。
- あらゆる場所での検索最適化(Search Everywhere Optimization)。 顧客が利用するあらゆるプラットフォームで存在感を示すこと。
- 素晴らしい製品利用体験の提供。優れたカスタマーサポート、充実した商品説明、そして人々が思わず話題にしたくなるような「驚きと喜び」を与える機能を提供すること。「ポストクリック(サイトクリック後)」検索のためのオープンソースツールを推進し、リアルタイムのフィードバックループを作り、「オープンな商品開発 」アプローチを取ること。
- 世の中の議論を活性化させる。G2 のような製品レビュープラットフォーム上の投稿や、ネット掲示板での製品ユースケースやワークフローについての情報交換や議論を奨励すること。最終的には、顧客コミュニティに積極的に参加すること。
- 「話題性のある」物語主導型キャンペーンの実施。シェアされることを前提に作られ、より感情的にオーディエンスに訴えかけるような、クリエイティブな仕掛け、ブランドコンテンツ、データストーリーテリング、そして(単なる製品発表ブログ投稿にとどまらない)独創的な新製品宣伝キャンペーンに投資すること。
- 「口コミ」マーケティングを戦略的に設計。 独自の理論や、フレームワーク、重要なブランドトピックを創出し、それらをネット上で広めて回り、オーディエンスがブランドについてどのように話し、考えるかを戦略的に設計すること。ConvertKit (旧 Kit) の創設者であるネーサン・バリーさんは、Ahrefs のポッドキャストでティム・ソウロと対談し、マーケターは「顧客に自社のブランドストーリーを語ってもらう能力を与えるべきだ」と語った。
Google の最新のガイダンスには既視感を覚えます。「質の高いコンテンツを作り、構造化データを使用し、フォーマットを多様化せよ」と。
変わったのは、その目標です。もはや目指すべきはランキングで上位表示されることではありません。「AI の回答の中での出現を増やす」こと、言い換えれば「ゼロクリック検索での可視性を得る」ことです。
しかし、Google のガイダンスが触れていないのは、AI Overview の登場に伴うアトリビューションとトラフィックの受けた壊滅的な打撃です。
多くの人にとって、このギブアンドテイクの関係はもはや崩壊しているように感じられるのです。

早くも、いくつかの反発の動きが見られます。
一部には、AI 検索を無効にしているマーケターもいるようです・・・

AI クローラーをブロックする動きも、ますます増えています・・・

トラフィック上位のサイトは 2024 年に AI ボットのブロックを開始
また、検索以外のチャネルに再び力を入れる企業も出てきています。



Seer Interactive 社のアリサ・シャーフさん(SEO & 生成 AI 担当 VP)による投稿
中には、自社のコンテンツが AI の学習データとして無断で利用されることに反発し、法的措置に踏み切る企業さえ現れています ¹ ²。

Google のゼロクリック検索は、間違いなく業界に激震をもたらしました。
Google のゼロクリック検索機能が私たちのトラフィックを減らしているのは確かですが、一体どれくらいなのでしょうか?
それこそが、誰もが答えを知りたい最重要課題です。
マーケターは、トラフィックへの全体的な影響を把握するため、ゼロクリックのデータを必死に追跡しようとしています。
しかし、Google はそれを簡単にはさせてくれません。
Google サーチコンソールでは、AI Overview は検索順位 1 位としてしか計測できません。つまり、AI Overview からのクリックなのか、従来の検索結果からのクリックなのかを区別することができないのです。
Google サーチコンソールは現在、AI モードでのクリック追跡に対応していますが、AI Overview と同様に、それらのクリックを従来の検索や他の Google のサービスと比較することはできません。

では、他にどんな方法でゼロクリック検索を追跡できるのでしょうか?
いくつかアイデアをご紹介します。
Ahrefs ブランドレーダーで AI Overview 内のブランド言及を追跡
Ahrefs ブランドレーダーを使えば、自社が AI Overview でどれだけ表示されているかを継続的に把握することができます。
このツールを使えば、AI Overview が表示されるきっかけとなった検索クエリ内での言及だけでなく、AI Overview の回答本文そのものに含まれるブランド言及も追跡可能です。
キーワードまたは AI Overview の項目で自社のブランド名を検索するだけで、全体的なシェアを算出できます。

さらに下にスクロールすると、実際の表示例の中で言及を確認し、ゼロクリック検索の回答でどのドメインが頻繁にリンクされているかをチェックできます。

「ドメイン」タブで自社サイトを検索すれば、現在サイトが引用されているすべての AI Overview を確認できます。

Ahrefs ブランドレーダーで AI ツールでの言及を追跡
AI とゼロクリック検索はコンテンツを要約してしまうため、その動向を把握し続けるのは困難です。
しかし、皆さんのブランド名は(要約されても変わらないため)確かな手がかりとなります。
そのため、多くのマーケターは AI プラットフォーム上での自社ブランドへの言及や、関連付けられている情報を監視するために、AEO (Answer Engine Optimization) ツールに注目しています。
Ahrefs ブランドレーダーを使えば、ChatGPT や Perplexity におけるプロンプトや AI の回答の中で、自社ブランドがどのように言及されているかを追跡できます。

Ahrefs ウェブアナリティクスでトラフィックを追跡
ゼロクリック検索といっても、クリックが完全にゼロになるわけではありません。ただ、私たちがこれまで慣れ親しんできた数よりも、はるかに少なくなるということです。
Ahrefs の無料ツールである Ahrefs ウェブアナリティクス を使えば、トラフィックが今どこに向かっているのか、そして実際にクリックしたユーザーがサイト上でどんなページを閲覧しているのかを理解できます。
Ahrefs の最新調査によると、ゼロクリック検索の環境下でも発生するクリックは、ブランド関連のコンテンツにたどり着く可能性が最も高いようです ¹。
もしダイレクトトラフィックやホームページへのアクセスの増加が見られた場合、それはブランドリコールが高まっているサインかもしれません。つまり、ユーザーがスニペットであなたの回答を見た後にブランド名で検索したり、AI ツール内での検索によりファネルのより深い段階に進んだ後に、皆さんのブランドページを直接訪れたりしている可能性があるのです。

また、リファラルトラフィックや SNS トラフィックを監視することで、どのコンテンツが口コミや SNS 上でのシェアにつながっているのかを把握することもできます。

また、コンバージョンを追跡することで、どのチャネルが最終的にビジネスにとって最も価値を生み出しているのかを見極めましょう。
例えば、会員登録をカスタムイベントとして独自に計測したところ、ここ数ヶ月で当社の AI 経由のコンバージョン率が約 10% まで急上昇していることが分かりました。これは、全チャネルの中で最も高い数値です。

今すぐ計測を始めましょう。あなたの想定をはるかに超えるパフォーマンスを発揮しているチャネルが、きっと見つかるはずです。
では、私たちの今後の方向性とは?
さて、ここまでゼロクリック検索について見てきました。
しかし、変化はそれだけにとどまりません。
次に私たちのトラフィックを脅かすのは、「ポストクリック検索」です。AI エージェントは、もはやユーザーの質問に答えるだけではありません。あなたに代わって行動するのです。フォームへの入力、スクリプトの実行、そしてあなたの製品の利用。そのすべてが、ユーザーがあなたのサイトに一度も足を踏み入れることなく実行されるのです。
・・・っと、少し話が逸れましたね。
ここで心に留めておくべき重要なのは、クリックされない検索こそが「新常識」だということです。それに抗っても意味はありません。しかし、うまく順応していくことはできるはずです。
あなたが公開するコンテンツのすべてがクリックに繋がるわけではないでしょう。しかし、それでもブランドへの言及を獲得したり、ユーザーの心に影響を与える一瞬を生み出したりすることは可能です。
検索の世界から完全に撤退する必要はありません。しかし、検索に過度に依存するのはやめなければなりません。多角化こそが、前に進むための唯一の道なのです。
困ることと言っても、「認知度獲得はできているが、その貢献度が計測できない」ということ程度でしょう。そして私たちは、これを受け入れざるを得ないのです。
誰も私たちを助けには来てくれません。しかし、マーケターという人種は、驚くべき適応能力で知られています。今回もまた、乗り越えるべき一つの転換点に過ぎないのです。