
SEO に携わる人なら、一度は聞いたことのある「Ahrefs(エイチレフス)」。キーワード分析にとどまらず、ウェブ上の動向を多角的に可視化できるツールとして多くのマーケターに支持されています。
そのグローバルな成長を支えてきたのが、Chief Marketing Officer(CMO)のティム・ソウロ氏。彼は、質の高いコンテンツで価値を伝えるマーケティング戦略を率い、Ahrefs を「信頼される SEO ツール」へと導いてきました。今回は今年 5 月に初来日したティム氏に、日本展開の背景と展望についてインタビュー!豊富な経験とビジョンに裏打ちされた、貴重な生の声をお伝えします。

Ahrefs は検索トラフィック分析、被リンクデータ、競合調査などの豊富な機能を備えたプラットフォームですが、その成長の背景には「人」を軸にした明確な哲学があります。
ティムは、「純粋に価値あるコンテンツを通じて信頼を積み重ねていく」ことを信条に、Ahrefs のグローバルなマーケティング戦略を形づくってきました。SEO やマーケティングの専門家が信頼を寄せる Ahrefs の情報発信には、単なるキーワード対策やトレンド追従にとどまらない、現場での実践と検証に基づいた深みがあります。
また、Ahrefs では派手なキャンペーンに頼るのではなく、あくまでもユーザーの成功体験を積み上げることに焦点を当てています。そのため、ブログ、動画、セミナーといった教育的コンテンツを重視し、知識と信頼の醸成に努めるのが彼らの信条。
さらに、Ahrefsのマーケティングは決して一方通行ではありません。SNS やコミュニティ、ユーザーフィードバックを積極的に収集し、それを製品や戦略に反映させることで「共創」の姿勢を貫いているのが特徴です。こうしたアプローチが、Ahrefs を単なるツールのプロバイダーではなく、マーケティングパートナーとしてのポジションに押し上げているのだと言えます。
ウクライナ出身のティムは、もともとテック系のブロガーとして活動をスタート。製品レビューや SEO 関連の実験を通じて、自身の知識とスキルを磨いていきました。ブログの執筆や情報発信に没頭する中で、「どうすれば人が検索し、情報を見つけ、納得して行動するのか」という検索行動の仕組みに強く興味を持ち、SEO の世界にのめり込んでいきます。
SEO やコンテンツ戦略のスキルを試行錯誤の中で独学で磨いた彼は、2015 年にマーケターとして Ahrefs に加わることに。当時のチームはまだ小さく、知名度も限られていました。
「当時の Ahrefs は “隠れた名品” のような存在でした。ただ、製品の力は本物で、あとはそれを正直に伝えるだけだと思ったんです」
以降、ティムは Ahrefs のブログを世界的に信頼されるメディアへと成長させ、YouTube チャンネル、Ahrefs Academy など、教育系コンテンツの拡充も牽引してきました。現在では毎月、相当数のユーザーが Ahrefs のサイトを訪れるまでに成長しています。
「自分たちが提供する情報は、本当に役立つのか? それがマーケティングにおける最重要項目です」と語るティムの姿勢は、Ahrefs のコンテンツ作成全体に貫かれています。

ティム自らが出演して作成したキャンペーン画像(出典:X)。
Q:Ahrefs とはどのような会社ですか?
Tim:Ahrefs は製品ファーストの会社です。バズワードや派手なキャンペーンよりも、地道な改善とユーザー教育を重視しています。組織の成長についても「とにかく拡大」ではなく「誠実な価値提供」がモットー。価格、機能、ブログの内容まで、すべてがその考え方に基づいています。
Q:他社ツールと違う点は?
Tim:製品の完成度と、コンテンツへの姿勢です。Ahrefs の強みはデータの正確性と規模にあると思います。Ahrefs のクローラーは Google に次ぐ規模で、世界中のウェブを絶えずクロールして膨大かつ有用なデータを日々蓄積しています。
そしてもうひとつの差別化ポイントはコンテンツの質。Ahrefs のブログ記事はすべて自社のデータに基づき、実体験と意見を正直に書いています。単なる「SEO のための SEO 記事」ではありません。単なる SEO テクニックではなく、現実的な課題解決に役立つ情報を発信していますから、その違いは読者の方々にも伝わっていると思います。
Q:ユーザーの声はどう活かされていますか?
Tim: サポートや SNS など、あらゆるチャネルでの声を真剣に受け止めています。X でツイートされたひとことが新機能のアイデアにつながることもあります。
開発スピードも非常に速く、社内では「ユーザーの声を機能に変える」文化が根づいています。こうした取り組みが、結果として Ahrefs のプロダクトに対する信頼感を育てていると実感しています。たとえば、日本のユーザーから「もう少し UI を直感的にしてほしい」「この指標が翻訳されていない」といった声が届けば、即座にチーム内で検討が始まります。こうした対応力の高さも Ahrefs の強みです。

Ahrefs が日本市場への展開を本格化させたのは 2024 年のこと。すでに多くの日本人マーケターが英語版を使用していたものの、日本語化が進んでいないことで一部の機能が十分に使いこなされていないという課題がありました。
そんな中、日本マーケティング統括として河原田 隆徳氏を迎え、UI、ヘルプ、ドキュメント、SNS まで徹底したローカライズを進めました(Taka へのインタビューはこちら)。
「日本は高度な市場でありながら、言語的に独立している。だからこそ、単なる翻訳ではなく “体験そのものを日本化” し、すべてを日本語で届けることにこだわりました」
その効果はすぐに現れ、トライアル登録者数やブログの閲覧数は着実に増加。
日本語版 UI の公開後には SNS でも多くの喜びの声が投稿されました。日本のユーザーの声が Ahrefs チームにとって大きなモチベーションとなっており、今後も新機能のローカライズをどんどん進めていく次第です。

2025 年には東京で初のユーザーミートアップを開催。80 人以上の SEO 関係者が参加し、プロダクトへのフィードバックやマーケティング課題について熱い議論が交わされました。このイベントは、日本のユーザーコミュニティがすでに大きな関心と期待を寄せていることの象徴でもあります。
「オフラインでユーザーと直接会い、声を聞き、交流できたことは非常に意義深かった。今後も継続的にイベントを企画していきたいと思っています。
この成長は “はじまり” にすぎません。大事なのは短期的な数字ではなく、ユーザーに “信頼され続ける存在” になることです」


生成 AI の登場により、SEO やコンテンツ戦略のあり方が急速に変化しています。こうした中で Ahrefs は、単なる分析ツールではなく「信頼できる情報の起点」としての役割を強化しています。
Q:生成 AI など、SEO の変化にどう対応しますか?
Tim:AI の進化に伴い、情報の質と信頼性がますます重要になってきます。誰でもそれらしい記事を書ける時代だからこそ、本当に信頼できるデータ、裏付けのあるインサイト、そして具体的な実行方法を提供することが Ahrefs の役割です。
今後は、AI が生成したコンテンツの中でもユーザーに本当に価値あるものを見極めるための指標やフィルタリング機能を充実させ、SEO プロフェッショナルの方々が安心して使えるツールへと磨きをかけていきます。
確かに検索体験は変わりつつありますが、信頼できる情報の重要性は変わりません。私たちは、AI の時代でもユーザーが「根拠を持って戦略を立てられる」よう支援する方向で開発を進めています。
Q:Ahrefs にとって、コンテンツとは?
Tim:すべてです。コンテンツマーケティングと真剣に向き合い、全力で取り組んでいるチームだからこそ、ブログ・YouTube・アカデミーの内容には徹底的にこだわります。日々考えているのはとにかく「ユーザーに役立つ情報を届ける」こと、それが Ahrefs のマーケティングの真髄だと考えています。

Q:今後、日本市場で強化したい取り組みは?
Tim:教育とコミュニティですね。Ahrefs は多機能であるがゆえに、使いこなすのが難しいという声もあります。今後は、日本語ウェビナーやガイドコンテンツ、イベントなどを増やし、ユーザーの学びと実践をサポートしたいです。
さらに、コミュニティとの連携を深め、プロダクトの改善に活かしていくつもりです。東京だけでなく、日本の他の地域でもローカルイベントを開いていきたいと考えています。
Q:最後に、日本のマーケターへのメッセージをお願いします。
Tim:Ahrefs を信頼していただき、本当にありがとうございます。日本語対応の環境が整った今、Ahrefs はさらに日本の皆さんに寄り添う存在になります。ぜひ気軽にフィードバックを送っていただき、共により良いツールを育てていきたいと思っています。
Ahrefs は「単なるツール」ではなく、「ともに育てていくプラットフォーム」。ティム氏の言葉には、その想いが込められていました。信頼は、一日にして成らず。日本チームの努力とともに、Ahrefs はこれからも誠実なマーケティングを貫きながら、日本のマーケターの方々と歩みを進めていきます。
これからも日本でさまざまな取り組みを行っていきますので、ぜひフォローよろしくお願いいたします。公式 X でのタグ付け投稿もお待ちしています!
写真撮影:irodorizm
取材・執筆協力:SIJIHIVE Inc.