しかし、AI の価値は認知度を高めることだけにとどまりません。AI の引用から、サイトへ積極的にトラフィックを呼び込むこともできるのです。
AI トラフィックは、その他の新しいリファラルチャネル同様、まだ足元を固めている段階です。Ahrefs の調査によると LLM はトラフィックの約 0.1% を占めていますが、この数字はかなり過小評価されている可能性があります。というのも、AI プラットフォームがリファラルソースデータを非公開にしているからです。
今後、テクノロジーが進化し、それに応じてユーザー行動が変化するにつれて、AI トラフィックのパターンがさらに変化していくのは必然でしょう。
こうした変化を常に把握し、成長を最大限に活用するには、持続的なモニタリングが重要です。
そこで今回の記事では、GA4 と Ahrefs ウェブアナリティクスで AI トラフィックを追跡する方法を紹介します。
新しいチャネルとソースを設定すると、Google アナリティクス 4 で AI トラフィックを追跡できます。
トラフィックチャネルとしての AI を追跡
AI トラフィックレポートは、アクセスを簡単かつ一目で理解できるものが理想です。
ではそのために、まずチャネルグループを設定することから始めましょう。
1. 管理画面でチャネルグループを見つける
GA4 の管理画面に移動します。「データの表示(図内①)」で「チャネルグループ(図内②)」を選択します。
デフォルトのチャネルグループを見つけ、その横にある 3 点メニュー(図内③)をクリックしたら、「コピーして新規作成」を選択します。

2. 新しい AI チャネルグループと AI チャネルを作成する
次に、以下の操作を行います。
- 新しいグループに「AI チャネルグループ」という名前を付ける。
- 「新しいチャネルグループの作成」をクリックし、「AI トラフィック」という名前を付ける。
- 条件として「参照元」を設定し、「正規表現に一致」を選択する。
- 一般的な AI プラットフォームのトラッキングには、以下の正規表現を貼り付けて使用する:
.*chatgpt\.com.*|.*perplexity.*|.*gemini\.google\.com.*|.*copilot\.microsoft\.com.*|.*openai\.com.*|.*claude\.ai.*|.*writesonic\.com.*|.*copy\.ai.*|.*deepseek\.com.*|.*huggingface\.co.*|.*bard\.google\.com*

この正規表現により、ChatGPT、Perplexity AI、Google Gemini、Microsoft Copilot などからトラフィックを取得できます。
あとは AI レポートを確認するだけです。
3. AI トラフィックを確認する
「レポート」>「見込み客の発掘」>「トラフィック獲得」に移動し、表の上部にある「AI チャネルグループ」を選択します。

これにより、自社のトップ AI トラフィックとその他のチャネルの比較が表示されます。

異なる AI トラフィックソースの追跡
トップの AI トラフィックが確認できたら、次はどの AI プラットフォームからトラフィックが送り込まれているのかを詳しく調べましょう。
方法は次の通りです。
1. 再アクセス可能なカスタムの「AI トラフィックソース」セグメントを作成する
「探索」タブに移動し、以下の操作を行います。
- 新しい探索を開始する。
- 「セグメント」の横にある「+」アイコンをクリックする。
- 「新しいセグメントを作成」をクリックする。
- 「セッションセグメント」をクリックする。
- セグメントを以下のように定義する:
- 次の条件に当てはまるセッションを含める:
- 「トラフィックソース」
- 「次の正規表現に一致」
- チャネルレポートを作成する際に追加したのと同じ正規表現を貼り付ける:
.*chatgpt\.com.*|.*perplexity.*|.*gemini\.google\.com.*|.*copilot\.microsoft\.com.*|.*openai\.com.*|.*claude\.ai.*|.*writesonic\.com.*|.*copy\.ai.*|.*deepseek\.com.*|.*huggingface\.co.*|.*bard\.google\.com*

- このセグメントに「AI トラフィックソース」という名前を付ける。
- 「適用」をクリックする。
- 左端の「セグメント」(「ディメンション」の上)に新しいカスタムセグメントが表示される。
いつでもアクセス可能な「AI トラフィックソース」の設定が完了したら、レポート作成に進みます。
2. 「AIトラフィックソース」の推移を確認する
レポート設定手順:

- ディメンションの設定:「トラフィックソース」を選択
- 指標の設定: 「セッション」を選択
- ビジュアライゼーションの設定:折れ線グラフアイコンを選択
- 内訳の設定:「セッションの参照元/メディア」を内訳ディメンションとして選択
- 値の設定:「セッション」を選択
- 期間の調整:希望する期間を選択
- 粒度の設定: 日次、週次、月次から選択
もしくは、Ahrefs ウェブアナリティクスを使えば、面倒な設定や手動設定を省き、あらかじめ用意されたレポートを入手できます。
Ahrefs ウェブアナリティクスは、プライバシーに配慮した Google アナリティクスの代替ツールです。
まずは、GA4 と比較した場合の 3 つのメリットをご紹介します。
- 簡単: GA4 で作成しようとしたら非常に時間がかかるレポート(主要チャネル、ソース、ページ、地域、デバイスなど)に数秒でアクセスできます。
- 高速:Google アナリティクスは訪問者データの表示に 24 ~ 48 時間かかりますが、Ahrefs ウェブアナリティクスなら 1 分以内にイベントを表示し、リアルタイムで訪問者インサイトを提供します。
- 軽量:Google タグマネージャーは約 98KB で、アップデートによってサイズが大きくなることがありますが、Ahrefs のスクリプトは 2KB 未満に抑えられているため、サイトの高速性と効率性を維持できます。
さらに、サイトにコードスニペットを追加すれば、ボタンをクリックするだけで、Ahrefs ウェブアナリティクスを使って AI トラフィックを確認できます。
設定方法は、次の動画でご確認ください。
それでは、AIを使ったトラフィック分析を詳しく見ていきましょう。
これ以降、この記事では、Ahrefs ウェブアナリティクスのさまざまなレポートとユースケースに焦点を当てていきます。
AI プラットフォームでは、まったく同じ質問に対して何百もの異なる回答が返ってくることがあります。たとえ自社ブランドがそのうちの 1 つの回答に言及されても、その後は二度と言及されない、ということもあります。
このような不安定な状況を考えると、AI からの数少ない訪問を追跡するだけでは徒労に終わる可能性があります。とすれば、AI トラフィックデータの上位パターンと傾向に注目し、自身のブランドが一貫して言及されるタイミングを把握する方が効果的です。
この方法で自社の AI トラフィックの全体像を確認してみましょう。Ahrefs ウェブアナリティクスの「概要」レポートに移動し、「トラフィックソース(図内①)」の「チャネル」タブが選択されていることを確認してください。次に、「さらに表示(図内②)」を選択して、全チャネルレポートを表示します。

このレポートを使用すると、チャネルの傾向を比較し、総トラフィックのうち AI から来ているトラフィックの割合が計算されます。

今回のケースでは、Ahrefs が所有する Wordcount サイトは、AI からのトラフィックが全体の 0.1% 未満で、これは前述の通り、業界の平均と一致しています。
この同じレポートで、行動指標(直帰率や滞在時間など)を分析し、自社の AI トラフィックが他のチャネルよりと比較してそのようにパフォーマンスを発揮しているかどうかを確認できます。
それには、「概要」レポートに LLM チャネルフィルターを適用し、AI トラフィックを絞り込みます。

こうすると、成長を詳細にモニターし、トラフィック急増の原因となるソースやページを発見できるようになります。
AI に割り当てる戦略の量を検討する
AI トラフィックを他の獲得チャネルと比較すると、その戦略的価値をよりよく理解できるようになります。
たとえば、AI の占める割合がセッション全体のわずか 0.1% だとしても、毎月着実に成長していれば、AI の可視性を高めることを目的に人気のページを最適化するなど、小規模な投資を行う価値があるかもしれません。
逆に、AI トラフィックが既にソーシャルトラフィックやリファラルトラフィックに匹敵している場合は、これらのチャネルと同様に、AI トラフィックのトラッキング、テスト、予算配分を行うことが妥当と言えるでしょう。
AI トラフィックのトレンドを他のチャネルと比較することで、最終的に AI にどれだけの時間と資金を投資すべきかを判断しやすくなるというメリットもあります。
AI のブランド認知キャンペーンによる最大の影響を評価する
AI トラフィックデータを追跡すると、メディア掲載やインフルエンサーとのパートナーシップといったブランド認知度向上キャンペーンが、サイトへの訪問者誘導に効果を発揮しているかどうかを測定できます。
それには、キャンペーンの前・途中・後のトラフィック数を記録して、成功の度合いを確認します。
たとえば、9 月に PR キャンペーンを実施し、AI における製品の「SEO 機能」認知度向上に積極的に取り組んだ結果、「SEO 機能」ページへの AI 参照トラフィックが次のように推移したとします。
- 8月:500人
- 9月:2,300人
- 10月:1,800人
キャンペーン実施月中にトラフィックが 360% 急増し、その後 260% の成長を持続しています。
このデータに基づくと、キャンペーンによって AI がユーザーの目に触れるようになり、サイトへのトラフィックが増加したということが合理的に推測できます。
また、キャンペーン期間中、他のトラフィックチャネルを指標として使用することで、特に AI による成長をその他によるものから区別することもできます。
科学的確証はありませんが、ブランドプッシュに伴う AI トラフィックの急増は、キャンペーンのリーチと影響に関する方向性を示すと推察されます。
同時に、AI 競合シェアなどの他のデータポイントと併せて活用することで(下記の Ahrefs ブランドレーダーの使用など)、AI 認識の全体像をつかむことができます。

トップの AI トラフィックについて少し詳しく理解できたところで、どの AI プラットフォームから最も多くのトラフィックが送られているかを調べましょう。
「LLM」チャネルフィルター(図内①)を設定し(前述の手順を実行した場合は既に適用されています)、 「トラフィックソース」コンポーネント(図内②)から「ソース」タブを選択したら、「詳細を表示」ボタンをクリックして詳細なレポート(図内③)を作成します。

このレポートでは、どの AI プラットフォームが最も多くの訪問とエンゲージメントを送り込んでいるかを確認し、そのトラフィックの傾向と変化を時間の経過とともに追跡できます。

上記の例を見ると、Ahrefs の Wordcount サイトは当初、AI トラフィックの大部分を Gemini から得ていたことがわかります。
一方、現在では、ChatGPT からのアクセスが増えています。
トラフィック貢献度の「相対的」ビューに切り替えると、この変化はさらに解りやすく表示されます。

AI 参照トラフィックのソース別の違いを解明
AI システムはそれぞれ異なる方法でコンテンツとやり取りします。
となると、トラフィック分析を確認することで、特定のプラットフォームが自社サイトへのトラフィックを誘導しているパターンや微妙な違いを見つけられるかもしれません。
中には詳細な技術コンテンツを引用しているプラットフォームもあれば、明確で構造化されたデータや簡潔な説明に重点を置いているプラットフォームもあります。ここに厳格なルールはありませんが、試してみたいことのヒントにはなるかもしれません。
そこで、観察したことを基に簡単な実験をしてみましょう。特定のコンテンツタイプが AI 主導のトラフィックをより多く引き付けている場合は、そのようなコンテンツを増やすか、他のページを更新して、トラフィックの呼び込みに有効なものに合わせて調整するのです。
これを継続的な学習プロセスとして取り入れてはいかがでしょうか。AI のもたらす効果は時間とともに変化するため、一つの戦略に固執するよりも、柔軟性と好奇心を持ち続けることが大切です。
「ページ」レポートを使って、AI プラットフォームで人気があるコンテンツを確認しましょう。
「概要」ダッシュボードから、以下の操作を行います。
- 「 LLM」チャネルフィルターを設定する
- ページコンポーネントの下にある「トップページ」を選択する
- 「詳細を表示」をクリックして、ページレポート全体を表示する

「ページ」レポートでは、AI からのアクセスが最も多いページが表示されるだけでなく、閲覧数、バウンス率、ページ滞在時間などの指標が得られるため、それを利用すれば、コンテンツごとのエンゲージメントとユーザーの行動がどのように異なるかを理解するのにも役立ちます。
たとえば、Ahrefs の AI 言い換えツールのアルゼンチン版は、AI 訪問者の間で人気があることがわかります。

一方で、インドネシアのホームページは、直帰率で最低、滞在時間で最長を記録しています。

このレポートでは、トップページ、エントリーページ、エグジットページのデータから、典型的な AI カスタマージャーニーについてさらに詳しく知ることもできます。

人気のコンテンツフォーマットを拡大し、肯定的なユーザー行動をリバースエンジニアリングで分析
ここで少し、AI プラットフォームに表示されるコンテンツのパターンを探りましょう。AI 訪問者は、製品、定義、ハウツーガイド、それともローカライズされたランディングページのどれに引き寄せられるのでしょうか。
すでに反響を得ているコンテンツは注力しましょう。例えば、特定のレビューが好評なのであれば、それに類似する製品やサービスをレビューして、その形式を広げていきましょう。
人気のコンテンツフォーマットに揃えることで、LLM で引用される可能性が高まるかもしれません。
この点では、ユーザー行動にも注目する価値があります。
あるページに関して、AI からのトラフィックはそれほど多くなくても、一度ページにアクセスしたユーザーのエンゲージメントが特に高いことに気づいたら、そのページがユーザーの目に触れやすくするために、速度の最適化など、細かい改善点を検討しましょう。
実験が終わったら、すべての発見事項を社内のブランドおよびコンテンツガイドラインに反映させ、「AI フレンドリー」なコンテンツを標準化し、LLM での可視性を高めるため常に利用できるノウハウ集をチームに提供します。
1 時間ごとのトラッキングで、コンテンツがどれだけ早く AI に取り上げられるをテスト
AI プラットフォームは、驚くほど迅速に新しいコンテンツを発見し、引用することができます。そのため、ブランドの認知度を素早く高める必要がある場合、AI は効果的なチャネルとなります。
そこで、Ahrefs ウェブアナリティクスのリアルタイムレポートの出番です。このレポートを使用すると、公開後の AI トラフィックの変化を 1 時間ごとにモニターできます。
たとえば、今年 1 月、筆者は急成長中の企業に関する記事を午前 8 時 52 分にブログに投稿しました。

ウェブアナリティクスのデータによると、その記事への最初の AI 訪問はその日の午後 2 時でした。

このような分析は、どのコンテンツタイプと戦術が AI に対して迅速にアプローチできるかをテストするのに役立ちます。特に、反応型キャンペーンや新しい情報を伝えてブランドへの注目を集めること、または単に、ブログの公開後にその統計情報を確認すること(筆者もやっています)にも使えます。
AI トラフィックデータからは、数多くのオーディエンス情報を得ることができます。特に、Ahrefs ウェブアナリティクスを使えば、オーディエンスがどこにいて、どのように自社サイトにアクセスしているか一目瞭然です。
所在と使用状況に関するインサイト
ダッシュボードで「LLM」チャネルフィルターがオンになっていることを確認し、レポートの一番下、「地域」コンポーネントまでスクロールします。
このデータにより、AI ユーザーがどの大陸、国、都市からアクセスしているか、またどの言語を使っているかがわかります。

レポートの横には「ブラウザとシステム」コンポーネントがあります。ここには、AI オーディエンスが使用しているブラウザ、オペレーティングシステム、デバイスが表示されます。

さらに詳細な分析を行うには、「ソース」や「ページ」フィルターを追加して、AI プラットフォームやコンテンツに基づいて、オーディエンスの所在地、ブラウザ、システムがどのように変化するかを確認することもできます。
特定の地域向けにコンテンツを最適化
Ahrefs ウェブアナリティクスの「地域」レポートでは、AI オーディエンスの居住地と使用言語を確認できます。
AI トラフィックが主要マーケット以外に集中している場合は、主要マーケットをターゲットにしつつ、そこでの人気ページの地域別バージョンを作成することを検討してください。
そうすれば、すぐに使える方式を使用して、最も重要なマーケットでブランドの認知度を拡大することができます。
まとめ
AI により、オンラインコンテンツの見つけ方、またそのコンテンツとの関わり方が変わりつつあります。AI トラフィックが重要かどうかは議論の余地がありません。問題は、それをどのように自社ブランドのために役立てられるかです。
AI トラフィックを適切に追跡し、どの AI プラットフォームが自社サイトに訪問者を送っているかを把握すれば、訪問者の行動を的確に捉え、それに応じてコンテンツを最適化できます。
GA4 を使用している場合でも、Ahrefs ウェブアナリティクスを使用している場合でも、AIトラフィックを継続的に追跡しましょう。今すぐレポートを作成し、どのコンテンツが最もエンゲージメントを獲得しているかを確認するのです。そして、そこから得られたインサイトを活用してマーケティング戦略を策定しましょう。
AI トラフィックが増えてから追跡し始めるのではなく、市場や競合先んじて取り組みましょう。分析データにはすでに大きなチャンスが潜んでいるかもしれませんよ。