【Ahrefs 独占取材】Hakuhodo DY ONE は、いかに AI 検索時代の市場変化をデータで読み解くのか?

河原田 隆徳 (TAKA)
Ahrefs 日本マーケティング統括。 国外 SaaS 企業における日本市場向けのマーケティングとローカリゼーションで 10 年以上の経験を積み、現在は Ahrefs の日本マーケティングを統括。ユーザーの皆さんと共に、Ahrefs を日本で盛り上げることを目標に、日々全力で取り組んでいます。

AI 検索のトラフィック総量は前年比 約2.3 倍、検索プラットフォーム全体では 約110% と拡大を続ける。 従来型検索が AI 検索に「食われる」のではなく、ユーザーは目的に応じて使い分けを始めている。この変化の最前線で、クライアント企業の検索戦略を支え続けているのが、株式会社 Hakuho­do DY ONEです。

同社のAI検索研究機関「ONE-AIO Lab」 の所長を務める登 章良氏は、SEO 領域では17年のベテランコンサルタント。2023 年から AI 検索の R&D に着手し、2025 年 10 月には社内に「ONE-AIO Lab 」を設立。独自の調査データとアンケートを武器に、ChatGPTやGeminiなどのAI検索、また、Google AI による概要( AI Overviews、以下 AI による概要)や Google AI モードがウェブサイトに与える影響を業界横断で分析し続けています。

Ahrefs(エイチレフス)アンバサダーでもある登氏に、Ahrefs が独占取材。2026 年の AI 検索市場動向、Hakuhodo DY ONE 独自の取り組み、そしてブランドレーダーをはじめとする Ahrefs の活用状況について伺いました。

取材をお受けいただいた株式会社 Hakuho­do DY ONEオウンドソリューション本部 SXO ソリューション局 局長 登 様

河原田: AI 検索の台頭で市場は大きく動いていると言われますが、実際のところはなかなか見えづらいところです。登さんはデータを定点観測されていますが、2026 年に入ってからの AI 検索の市場動向や、その周辺への影響について、まずは全体像を教えていただけますでしょうか。

登氏: はい。まず検索プラットフォーマーの話と、ユーザーの話、そしてウェブサイトの話は、それぞれ分けてお話できればと思っています。当社では、従来型の検索エンジン、つまり Google や Bing、Yahoo のトラフィック総量と、Gemini や Chat­G­PT といった AI 検索のトラフィック総量を、定期的にモニタリングしています。すでにご存知のとおりかと思いますが、ChatGPT、Gemini、ClaudeなどのAI 検索については、非常に大きく伸びてきている状況です。

登氏は、国内・米国・グローバル全体などの検索プラットフォームの動向を、第三者のパネルデータをもとにウォッチしていると語ります。2026 年 6 月時点のデータでは、国内においては、AI 検索のトラフィック総量は前年比で約2.3 倍にまで拡大しているといいます。

登氏: 従来型の検索エンジンについても、AI 検索が台頭してきた当初は「従来型の検索が AI 検索に奪われてしまうのではないか」という話があったかと思います。ただ、結果として検索プラットフォーム全体で見てみると、現時点では前年比で 約110% となっており、全体の総量としてはむしろ増加している点を確認しています。

この数値は、SEO に携わる人々にとって非常に重要な示唆を含んでいます。AI 検索が急伸する一方で、従来型検索も微増している。つまり、検索という行動そのものの総量が拡大しているという構造的な変化が起きているのです。「AI に取って代わられる」という単純な図式ではなく、検索エコシステム全体が膨張しているという見方が、データによって裏付けられていることになります。

『従来型が AI 検索に奪われるのではなく、検索という行動そのもののパイが広がっている。それがデータの示す実態です。』(登 章良氏 / ONE-AIO Lab 所長)

河原田: プラットフォーム側のトラフィックが伸びているというお話でしたが、では実際に検索するユーザーの行動はどう変わってきているのでしょうか。従来型検索から AI 検索へと乗り換わっているのか、あるいは別の動きなのか、この辺りの実態を伺えますでしょうか。

登氏: 弊社では昨年の 10 月からAI検索の研究機関として「ONE-AIO Lab」を立ち上げ、AI検索のR&Dを進めています。2026年3月にはAI検索に関するユーザーアンケート調査を実施しましたが、現状確認できている傾向として、ユーザーは、ウェブ検索、いわゆる従来型の検索と AI 検索のいずれか一方に偏るというよりも、目的に応じて両者を使い分けている、という傾向が見られます。

ONE-AIO Lab AI検索 生活者利用実態レポート 2026
※全国の18〜69歳男女2,800名を対象とするAI検索の利用動向・意識調査レポート

Hakuho­do DY ONE が 2025 年 10 月に設立した「ONE-AIO Lab 」では、パネルデータの分析だけでなく、実際のユーザーに対するアンケート調査も実施しています。登氏は、プラットフォーム側のトラフィックデータとユーザー側のアンケートデータの両方が、同じ結論を指し示していると語ります。それは、AI 検索が従来型検索を「リプレイス(置き換え)」しているのではなく、ユーザーが目的に応じて「使い分け」ているという実態です。

情報の概要を素早く把握したいときや発想を広げたいときは AI 検索を、特定の商品やサービスを比較・検討したいときは従来型検索を、というように、検索行動が多層化しつつあることがうかがえます。この知見は、クライアント企業に対して AI 検索対策を提案する際の大前提となるものです。「従来型 SEO はもう不要」でも「AI 検索だけに注力すべき」でもなく、両者を見据えた統合的なアプローチが求められるという Hakuho­do DY ONE のスタンスは、こうしたデータに裏打ちされています。

AI 検索の台頭がウェブサイトのトラフィックにどのような影響を与えているのかは、多くの企業が最も気にするポイントです。この問いに対して、登氏は「誰を主語にするかによって回答は変わってくる」と慎重な姿勢を見せます。

登氏: Chat­G­PT をはじめとする新しい AI 検索エンジンの台頭によってトラフィックが減少したというよりも、従来型の検索エンジン側、いわゆる Google の AI による概要といった部分の影響を、より色濃く受けているのではないかと捉えています。

つまり、外部の AI 検索サービスそのものよりも、Google 自身が検索結果に AI による概要を表示するようになったことが、ウェブサイトへのクリック流入に影響を及ぼしている可能性が高いという見解です。また、Googleのアルゴリズム更新による順位変動の影響とAI検索の影響を結び付け、誤って解釈されるケースも多い印象です。

登氏は業界別の AI による概要表示率についても独自のデータを保有しており、金融・保険・B2B といった「Knowクエリへの流入依存度が高いサイト」においては相対的に影響度が大きいと語ります。

河原田: AI検索において上位のプレイヤーの動向などは把握されているのでしょうか。例えば、Googleの AI による概要やAIモードなどで上位に位置しているサイトはありますか。

登氏: そうですね、当社では複数の業界を横断して検索結果上に表示されるすべてのプレイヤーの動向をモニタリングしていますが、顕著な例としては、YouTube の露出拡大が挙げられます。マクロな観点で見ると、YouTube の存在感が高まってきているという点は一つあるのではないかと考えています。

AI による概要や AI モードの検索結果において、YouTube が最上位プレイヤーとして浮上しているという観察結果は、コンテンツ戦略を考える上で見逃せないポイントです。テキストコンテンツだけでなく、動画コンテンツが AI 検索の回答ソースとして重視される傾向が強まっているとすれば、企業のコンテンツポートフォリオにも再考が求められることになります。

登氏は、AI モードで取得した上位プレイヤーのデータにおいても、Google のドメインや YouTube が上位に来ていることを確認しており、「一時期急激に増加が見られ、その後落ち着いたものの、依然としてAI による概要や AI モードにおけるYouTubeの頻出度は高い傾向にある」と述べています。

AI 検索の回答源として、YouTube の存在感は確実に高まっています。動画を抜きにコンテンツ戦略は語れないでしょう。』(登 章良氏)

河原田: 検索結果上で AI が直接回答を返すようになると、サイトへの遷移は減りそうです。AI モードのクリック率についても、やはり低くなっている印象でしょうか。

登氏: そうですね、当社のAI検索に関するアンケート調査のデータや業界内での言及などを踏まえると、AIモードのクリック率は、通常のウェブ検索と比べて相対的に低く、限定的であると捉えています。AI モードに関しては、取得できるデータ自体がまだ限られています。業界全体で見ても、この領域を大規模に定量化できる手段はまだ乏しいというのが実情です。

AI モードにおけるクリック率の低さは、SEO コンサルティングの現場において新たな課題を突きつけています。AI が検索結果画面上で直接回答を提示するため、ユーザーがウェブサイトへ遷移する動機が薄れる、いわゆる「ゼロクリック検索」の問題です。登氏は、この領域で取得できるデータ自体がまだ限定的であることにも言及し、分析の難しさを率直に認めています。

こうした課題に対して、Hakuhodo DY ONE はクライアント企業のデータだけに依存するのではなく、第三者パネルデータや独自のアンケート調査、さらには Ahrefs のような外部ツールのデータを組み合わせることで、多角的な視点から市場を捉えようとしています。データソースを複数持ち、それぞれの限界を理解した上で総合的に判断するという姿勢は、長年にわたる SEO キャリアに裏打ちされたものと言えるでしょう。

河原田: ここまで伴っていただいたデータや知見は、相当な蓄積がなければ語れないものだと感じます。Hakuhodo DY ONE として、AI 検索に対してどのような取り組みをこれまで進めてこられたのか、教えていただけますか。

登氏: AI 検索の R&Dに関しては、もともと 2023 年から 進めていました。例えば、当時、Google の Search Gen­er­a­tive Experience、いわゆる SGE が米国の環境で調査などが挙げられます。

当時のSearch Gen­er­a­tive Experienceに関する調査資料(2023年)

Hakuho­do DY ONEAI 検索への取り組みは、一朝一夕に始まったものではありません。2023 年に Google が米国で SGE(Search Gen­er­a­tive Experience)を試験的に導入した段階から、いち早く調査・研究に着手しています。業界黎明期からのSEOサービスの提供と、AI検索に関するこの先行投資が、2025 年 10 月の「ONE-AIO Lab」設立という形で結実しました。

登氏の話の中で印象的だったのは、R&D 活動における分析の起点として、検索プラットフォーマー・ユーザー・ウェブサイトという 3 つの視点を据えている点です。インタビューの冒頭でも示されたこの 3 軸は、複雑に絡み合う AI 検索の影響を整理し、全体像を俯瞰した上でクライアント企業に対して的確な提言を行うためのフレームワークとして機能しています。

SGE から AI による概要へ、そして AI モードへと、Google の AI 検索機能は急速に進化を続けています。その変化を 3 年以上にわたって追い続けてきた蓄積が、Hakuhodo DY ONEAI 検索コンサルティングの基盤となっているのです。

SGE が米国で登場した 2023 年から、調査を続けてきました。10年以上のSEOとこの 3 年余りの AI 検索に関するデータの蓄積が、今の判断の土台になっています。』(登 章良氏)

登氏のインタビューから浮かび上がるのは、AI 検索の時代においても SEO の価値は失われるのではなく、むしろその守備範囲が拡張しているという事実です。

従来型検索の最適化に加えて、AI による概要への露出戦略、AI モードでの引用獲得、さらには Chat­G­PT や Gem­i­ni といった外部 AI 検索プラットフォームへの対応まで、SEO コンサルタントがカバーすべき領域は確実に広がっています。Hakuhodo DY ONE が早期から R&D に取り組み、専門ラボを設立してデータを蓄積してきたのは、まさにこの拡張に備えてのことでしょう。

同時に、YouTube が AI 検索結果の上位プレイヤーとして浮上しているという観察結果は、テキストベースの SEO だけでは不十分になりつつあることを示唆しています。動画コンテンツ、構造化データ、エンティティ最適化など、多様なシグナルを統合的にマネジメントすることが、今後の検索戦略において不可欠になると考えられます。

検索総量そのものが拡大し、ユーザーが従来型検索と AI 検索を使い分けるようになった今、「SEO は終わった」という論調はデータによって否定されています。むしろ、検索のタッチポイントが増えたことで、SEO の重要性はかつてないほど高まっていると言えるのではないでしょうか。

登氏と Hakuho­do DY ONE が蓄積し続ける市場データと知見は、この変化の時代を乗り越えるための羅針盤となるはずです。そして、その分析基盤の一つとして Ahrefs が果たす役割も、AI 検索時代にさらに大きくなっていくことでしょう。

編集後記

登氏のお話から印象的だったのは、AI 検索の急成長を語る際にも常にデータを根拠とし、「誰を主語にするかによって回答は変わる」と冷静に分析の前提を明示される姿勢でした。2023 年から地道に続けてきた R&D の蓄積があるからこそ、AI 検索という不確実性の高いテーマに対しても、事実に基づいた議論ができるのだと実感します。検索プラットフォーム全体の総量が増えているという知見、そしてユーザーが「リプレイス」ではなく「使い分け」を選んでいるというデータは、多くの SEO 担当者にとって心強い指標になるのではないでしょうか。登氏の挑戦、そしてその分析基盤の一つとして Ahrefs が貢献できていることを大変光栄に思います。貴重なお話をありがとうございました!