2025 年は「AI 検索元年」と呼ぶにふさわしい年となりました。Google AI Overviews、AI モード、ChatGPT など複数の AI 検索エンジンが本格的に台頭し、従来の SEO とは異なる新しい検索体験が広がりました。

本記事では、Ahrefs ブランドレーダーのデータを活用し、自動車・IT・食品の 3 業界において、各 AI 検索エンジンがどのようなドメインを引用しているのかを徹底分析します。2026 年の AI コンテンツ戦略を考える上でのヒントがここにあります。
データについて
取得日: 2025 年 12 月 1 日
データ期間: 過去 90 日間 (2025 年 9 月 2 日 〜 12 月 1 日)
データソース: Ahrefs ブランドレーダー
以下のインタラクティブチャートでは、業界 (自動車・IT・食品) と AI 検索エンジン (AI Overviews・AI モード・ChatGPT) を自由に組み合わせて、トップ 10 の引用ドメインを確認できます。
使い方:
- 左側で業界を選択
- 右側で AI 検索エンジンを選択
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業界を選択
AI検索エンジンを選択
自動車業界 × AI Overviews — トップ10引用ドメイン
| 順位 | ドメイン | AI応答数 | ボリューム | ページ数 |
|---|
データから見えてきた主要インサイト
インタラクティブチャートで様々な組み合わせをご覧いただけましたか?上記データは全てブランドレーダーから取得しているデータになります。ここからは業界別・AI 検索エンジン別の傾向を詳しく分析していきます。
AI Overviews
AI Overviews では、日本国内の自動車専門メディアが強い存在感を示しています。
トップ 5 ドメイン:
- goo-net.com — 9,276 応答
- youtube.com — 8,303 応答
- nextage.jp — 6,948 応答
- ja.wikipedia.org — 6,157 応答
- zurich.co.jp — 4,318 応答
中古車情報サイト (goo-net、nextage) や自動車比較サイト (carsensor、carview) が上位を占め、日本のユーザーに馴染み深い専門メディアが AI Overviews で優先的に引用されていることがわかります。保険会社 (zurich.co.jp、sompo-direct.co.jp) もランクインしており、自動車関連の総合的な情報ニーズに応えていることが伺えます。
AI モード
AI モードでは、グローバルプラットフォームが圧倒的な強さを見せています。

トップ 5 ドメイン:
- youtube.com — 13,787 応答
- google.com — 11,656 応答
- goo-net.com — 8,712 応答
- ja.wikipedia.org — 6,519 応答
- nextage.jp — 5,762 応答
YouTube と Google が 1 位・2 位を独占。AI モードは Google のエコシステム内のコンテンツを優先的に引用する傾向があります。専門メディアの goo-net は 3 位に健闘していますが、上位 2 つとは大きな差があります。YouTube の応答数が AI Overviews の 1.6 倍以上になっている点も注目です。
ChatGPT
ChatGPT では、英語圏コンテンツが優勢です。
トップ 5 ドメイン:
- en.wikipedia.org — 2,289 応答
- carview.yahoo.co.jp — 1,658 応答
- goo-net.com — 1,532 応答
- kuruma-news.jp — 1,295 応答
- car-me.jp — 1,207 応答
英語版 Wikipedia が 1 位となり、ChatGPT のグローバル志向が顕著に表れています。また、Reddit (9 位) のような海外プラットフォームがランクインしている点も特徴的です。全体的な AI 応答数は他の 2 つの AI 検索と比べて低く、ChatGPT は日本語の自動車コンテンツへの引用頻度が相対的に少ないことが読み取れます。
AI Overviews
IT 業界の AI Overviews では、意外にも英会話サービスが多数ランクインしています。
トップ 5 ドメイン:
- youtube.com — 6,813 応答
- eikaiwa.weblio.jp — 3,689 応答
- nativecamp.net — 2,963 応答
- eikaiwa.dmm.com — 2,690 応答
- note.com — 2,196 応答
weblio、DMM 英会話、nativecamp、rarejob など、英会話・語学学習サービスが複数ランクイン。これは「IT」というキーワードが「IT エンジニア向けの英語学習」「グローバル IT 企業で働くための英会話」といった文脈で検索されていることを示唆しています。また、IT 用語辞典 (e‑words.jp) も 6 位にランクインしており、専門用語の解説ニーズも高いことがわかります。
AI モード
AI モードでは、グローバルプラットフォームと辞書サービスが上位を占めます。
トップ 5 ドメイン:
- youtube.com — 15,093 応答
- en.wikipedia.org — 14,250 応答
- reddit.com — 5,110 応答
- ja.wikipedia.org — 4,401 応答
- dictionary.cambridge.org — 3,087 応答
YouTube と英語版 Wikipedia がほぼ同数で 1 位・2 位。Reddit が 3 位に入っているのは、技術的な議論や Q&A が豊富な Reddit のコミュニティが AI モードに評価されているためと考えられます。Cambridge 辞書や Merriam-Webster 辞書もランクインしており、IT 関連の英語表現や専門用語の解説が重視されています。
ChatGPT
ChatGPT では、Reddit が圧倒的な 1 位です。
トップ 5 ドメイン:
- reddit.com — 5,439 応答
- en.wikipedia.org — 2,768 応答
- youtube.com — 1,441 応答
- note.com — 1,208 応答
- ameblo.jp — 1,177 応答
Reddit が他を大きく引き離して 1 位。ChatGPT は技術的な質問に対して、実際のエンジニアやユーザーのディスカッションを重視する傾向があります。また、日本のコンテンツプラットフォーム (note、ameblo、prtimes) もランクインしており、技術ブログやプレスリリースも引用されています。
AI Overviews
食品業界では、レシピメディアと一般メディアが混在しています。
トップ 5 ドメイン:
- youtube.com — 5,418 応答
- ja.wikipedia.org — 3,761 応答
- macaro-ni.jp — 1,870 応答
- news.yahoo.co.jp — 1,775 応答
- amazon.co.jp — 1,672 応答
レシピ・グルメメディアの macaro-ni.jp が 3 位にランクイン。食品業界ならではの専門メディアです。また、ふるさと納税サイト (furunavi.jp、9 位) が入っているのは、12 月という時期的な要因が大きいと考えられます。年末の駆け込み需要により、食品関連のふるさと納税が検索されているためです。健康情報アプリ (ubie.app) や製薬会社サイト (brand.taisho.co.jp) もランクインしており、食品の健康面への関心の高さが伺えます。
AI モード
AI モードでは、EC サイトと SNS が強い存在感を示しています。
トップ 5 ドメイン:
- youtube.com — 10,676 応答
- google.com — 5,049 応答
- amazon.co.jp — 4,714 応答
- search.rakuten.co.jp — 3,621 応答
- ja.wikipedia.org — 3,321 応答
Amazon、楽天といった EC サイトが上位にランクイン。食品の購買行動と AI 検索が密接に結びついていることがわかります。Instagram (6 位、2,719 応答) もランクインしており、ビジュアル重視の食品コンテンツが AI モードで評価されています。特売情報サイト (tokubai.co.jp、10 位) が入っているのも食品業界ならではの特徴です。
ChatGPT
ChatGPT では、プレスリリースとブログプラットフォームが上位です。
トップ 5 ドメイン:
- prtimes.jp — 2,445 応答
- item.rakuten.co.jp — 2,392 応答
- ameblo.jp — 2,235 応答
- en.wikipedia.org — 1,682 応答
- macaro-ni.jp — 1,335 応答
PR TIMES が 1 位というのは興味深い結果です。ChatGPT は企業の公式発表や新商品情報を重視する傾向があることが読み取れます。ameblo、note といった日本のブログプラットフォームも上位にランクインしており、個人の食レポや料理ブログも ChatGPT に引用されています。
AI Overviews
特徴: 日本国内の専門メディアが強い
AI Overviews は、各業界の専門メディアや日本のユーザーに馴染み深いサイトを優先的に引用する傾向があります。goo-net、macaro-ni、weblio 英会話など、日本市場に特化したメディアが上位にランクインしています。
戦略のヒント:
- 業界特化型の専門コンテンツを充実させる
- 日本語での詳細な解説記事を作成する
- ローカル SEO 的なアプローチが有効
- 専門性・権威性・信頼性 (E‑E-A‑T) を重視
AI モード
特徴: グローバルプラットフォーム優位
AI モードは、YouTube、Google、Wikipedia、Reddit といったグローバルプラットフォームを圧倒的に優先します。特に YouTube と Google の存在感が全業界で非常に強いです。
戦略のヒント:
- YouTube 動画コンテンツの制作が必須
- Google のエコシステム内 (YouTube、Google Maps、Google Business など) での存在感を高める
- 英語コンテンツの充実も検討
- 動画 SEO を含めた総合的なアプローチ
ChatGPT
特徴: 英語圏コンテンツと日本のブログプラットフォームのバランス
ChatGPT は、英語版 Wikipedia、Reddit など英語圏のコンテンツを重視しつつ、note、ameblo、PR TIMES など日本のブログプラットフォームも積極的に引用しています。
戦略のヒント:
- 英語コンテンツの作成も視野に
- note や ameblo での情報発信も有効
- プレスリリース (PR TIMES) の活用
- Reddit 等での議論参加も長期的には効果的
- コミュニティベースの情報発信
YouTube の圧倒的な強さ
YouTube は全業界、全 AI 検索 (特に AI Overviews と AI モード) で上位にランクインしています。動画コンテンツが AI 検索においても非常に重要な位置を占めていることは明白です。
数値で見る YouTube の強さ:
- 自動車業界 AI モード: 13,787 応答 (1 位)
- IT 業界 AI モード: 15,093 応答 (1 位)
- 食品業界 AI モード: 10,676 応答 (1 位)
2026 年の戦略:
YouTube SEO を含めた動画コンテンツ戦略は必須。製品紹介、使い方解説、業界情報など、多様な動画コンテンツを継続的に発信することが重要です。
Wikipedia の安定性
日本語版・英語版ともに、Wikipedia は全 AI 検索で安定的に引用されています。権威性と網羅性が評価されていると考えられます。
2026 年の戦略:
Wikipedia に自社・自社製品のページがある場合は、正確な情報を維持することが重要。また、自社サイトのコンテンツも Wikipedia 的な網羅性と中立性を意識すると、AI 検索に評価される可能性があります。
EC サイトの台頭 (食品業界)
食品業界では、Amazon、楽天といった EC サイトが AI モードで上位にランクイン。AI 検索が購買行動に直結していることを示しています。
2026 年の戦略:
EC プラットフォームでの商品情報の充実、レビューの蓄積が重要。AI 検索は購買可能性も含めて評価している可能性があります。
1. マルチプラットフォーム戦略
AI Overviews、AI モード、ChatGPT はそれぞれ異なる引用傾向を持っています。1 つの AI 検索に最適化するのではなく、複数の AI 検索を意識したコンテンツ配置が必要です。
具体的アクション:
- 自社サイト: 専門的で網羅的なコンテンツ (AI Overviews 向け)
- YouTube: 動画コンテンツの充実 (AI モード向け)
- note / ameblo: 一般向けのわかりやすい記事 (ChatGPT 向け)
- PR TIMES: 公式発表・プレスリリース (ChatGPT 向け)
- Wikipedia: 正確な企業・製品情報の維持 (全 AI 検索向け)
2. 動画コンテンツの強化
YouTube の圧倒的な強さから、動画コンテンツはもはや「あったらいい」ではなく「必須」です。
具体的アクション:
- 製品紹介動画の作成
- How-to 動画・チュートリアル
- 業界解説・トレンド解説動画
- FAQ 動画
- 定期的な更新と SEO 最適化
- サムネイル・タイトルの工夫
- 字幕・トランスクリプトの追加
3. グローバル vs ローカルのバランス
AI モードは英語コンテンツを重視し、AI Overviews は日本語の専門コンテンツを重視します。ターゲット市場に応じた言語戦略が必要です。
具体的アクション:
- 日本市場メイン: 日本語での専門コンテンツ充実
- グローバル展開視野: 英語版コンテンツも並行して作成
- 両言語での YouTube 展開
- 多言語対応の FAQ・ドキュメント
- hreflang タグの適切な実装
4. コミュニティとの関わり
Reddit が IT 業界で上位にランクインしていることから、コミュニティベースの情報発信も重要性を増しています。
具体的アクション:
- Reddit、Quora 等での質問回答
- note、ameblo での情報発信
- Yahoo! 知恵袋での専門家としての回答
- 技術コミュニティへの参加
- オープンソースプロジェクトへの貢献
- ユーザーフォーラムの運営
5. 構造化データと網羅性
Wikipedia が全 AI 検索で評価されていることから、構造化された網羅的なコンテンツが重要です。
具体的アクション:
- FAQ ページの充実
- 用語集・辞書的コンテンツの作成
- 構造化データ (Schema.org) の実装
- 内部リンク構造の最適化
- コンテンツの階層化・体系化
- 包括的なガイド・ハンドブックの作成
6. プレスリリースの戦略的活用
ChatGPT で PR TIMES が上位にランクインしていることから、公式情報の発信も重要です。
具体的アクション:
- 新商品・新サービスのプレスリリース
- 調査データ・レポートの公開
- 企業の取り組み・社会貢献活動の発信
- 定期的な情報発信
- SEO を意識したプレスリリース作成
7. EC とコンテンツの統合
食品業界で EC サイトが上位にランクインしていることから、購買導線を意識したコンテンツ設計が重要です。
具体的アクション:
- 商品ページの情報充実 (説明、レビュー、Q&A)
- レシピ・使い方コンテンツと EC の連携
- ユーザーレビューの蓄積
- 在庫情報・価格情報の最新化
- 商品比較コンテンツの作成
企業の SEO・コンテンツ戦略においては、従来の検索エンジン最適化 (SEO) に加えて、AI 検索最適化という新しい視点が必要不可欠となります。
どの AI 検索エンジンをターゲットにするかによって、最適な媒体やコンテンツ形式が大きく異なることを意識し、マルチプラットフォーム戦略を展開することが成功の鍵となるでしょう。
2026 年も、AI 検索の進化と普及は加速していくことが予想されます。本記事のデータとインサイトが、皆様の来年のコンテンツ戦略の一助となれば幸いです。
データ出典: Ahrefs ブランドレーダー
分析期間: 2025 年 9 月 2 日 〜 12 月 1 日 (90 日間)
取得日: 2025 年 12 月 1 日
※ Ahrefs ブランドレーダーの仕様上、90 日間のデータ保存期間があるため、本記事で紹介する統計は過去 90 日間のデータに基づいています。12 月のデータなので、年末特有のトレンド (ふるさと納税需要など) が反映されている可能性があります。