
Ryan Law 作成
Ahrefs コンテンツマーケティングディレクター
Anthropic は、Claude (クロード)が生成するすべてのテキストに、見えないウォーターマーク(透かし)を埋め込むようになりました。このマークはテキスト自体に織り込まれているため、コピー&ペーストしても残ります。おまけに、世界中のすべての Claude バージョンに適用されます。私たちは心配すべきでしょうか?
ほとんどのマーケターにとって、心配は不要だと私は考えます。
一方で、マーケターが毎日使うソフトウェアには、すでに AI 生成機能が標準搭載されています。Gmail、Google ドキュメント、Canva、Figma、Photoshop、Word、Notion、Slack、Grammarly、LinkedIn……。今や AI が入っていないマーケティングツールを探す方が難しい状況です。
これが本当に問題になるのは、「人間が書いた」と約束しておきながら、AI に書かせた成果物をそのまま納品しているようなケースだけです。コンテンツの制作プロセスに嘘がなければ、ウォーターマークを恐れる理由はありません。
ここからは、Anthropic の発表内容、ウォーターマークの仕組み、そして実際に影響が出るポイントについて解説します。
Anthropic は EU 法への準拠を目的として、Claude の出力に機械読み取り可能なマークを追加しています。同社のヘルプドキュメントによると、ポイントは以下のとおりです。
ここで重要なのは、Anthropic が「マークが検出されたのは、コンテンツが Claude によって処理された可能性があることを意味する」と述べている点です。カギとなるのは「処理された」という言葉です。
たとえば、自分で書いた下書きを Claude に渡してタイプミスを直してもらった場合でも、出力にはマークが付く可能性があります。翻訳や要約に使った場合も同様です。つまり、ウォーターマークが示すのは「Claude がプロセスのどこかで関与した」という事実だけであり、誰がその文章を書いたかは一切わかりません。
さらに Anthropic は、マークが検出されないからといって AI 不使用の証明にはならないとも明言しています。テキストが短い場合、大幅に書き直された場合、あるいはフォーマット変換でファイルメタデータが消えた場合など、マークが検出されないケースは十分にあり得ます。
「Claude がダメなら OpenAI に乗り換えよう」そう考えている方、ちょっと待ってください。
Anthropic がこの対応を行うのは、2026 年 8 月 2 日に適用が開始された EU AI 法の第 50 条に準拠するためです。同条は、生成 AI システムの提供者に対し、出力を機械読み取り可能な形式でマークすることを義務づけています。
Anthropic が最初に実装し、最初にニュースになりましたが、すべての主要プロバイダーが同じ義務を負っています。別のモデルに切り替えても、いずれウォーターマークが導入されることに変わりはありません。
もう一つ、パブリッシャー側に影響する義務もあります。第 50 条(4)では、公共の利益に関わるテーマについて AI 生成テキストを公開する場合、その旨を開示する必要があるとされています。ただし、欧州委員会の公式ガイダンスによれば、「人間によるレビューまたは編集管理のプロセスを経ており、自然人または法人が出版物の編集責任を負っている場合」にはこの要件は適用されません。
一言で言えば、AI モデルが単語の選択をごくわずかに「秘密のリスト」寄りに調整する仕組みです。
LLM (大規模言語モデル)がテキストを生成する際、1 トークンずつ出力します(トークンとは、おおよそ 1 単語または単語の一部にあたる単位)。各ステップで、次に来る可能性のあるすべてのトークンにスコアを付けます。ウォーターマークはこのスコアリングに介入します。基礎となるアプローチ(Kirchenbauer らの論文参照)では、「単語が生成される前にランダム化された『グリーン』トークンのセットを選択し、サンプリング時にグリーントークンの使用をソフトに促進する」という方法が使われています。
個々の単語選択は自然に見えます。しかし、数百語にわたってこれを繰り返すと、偶然では説明しにくいパターンが浮かび上がります。たとえば、表が 53% の確率で出るコインを想像してください。5 回投げただけでは気づきませんが、1,000 回投げれば偏りは明白です。鍵を持っている人がこの検定を実行すれば、信頼度スコアを算出できます。
ウォーターマークの限界も理解しておく必要があります。短いテキストでは信頼性の高い検出に十分なシグナルが得られません。大幅な書き直しでマークは劣化しますし、Google DeepMind も、「テキストが徹底的に書き直されたり、別の言語に翻訳されたりすると」信頼度スコアが急落すると指摘しています。ファイルメタデータは再保存で消えます。そして最も重要な点として、検出には鍵が必要です。現時点では Anthropic だけが鍵を保持しており、検出方法はまだ公開されていません。
Google の検索順位に影響されることはおそらくありません。すでに解説したとおり、Google は AI の使用自体に対して中立的な姿勢をとっており、Ahrefs の調査データもそれを裏づけています。AI 生成コンテンツは、Google 検索の最上位にランクインできますし、実際にランクインしています。
確かに傾きはあり、SERP (検索結果ページ)を上に行くほど AI コンテンツの割合はやや低くなります。しかし、その差はなだらかで、データのどこにも明確な境界線は見当たりません。
インデックス率についても同様です。もし Google が AI コンテンツをインデックスから締め出しているなら、AI 率の低いページと非常に高いページの差は劇的なものになるはずです。実際の差は 9 ポイントに過ぎません。
ウォーターマークがなくても、AI コンテンツの検出はすでに可能です。もし Google が AI コンテンツを「AI だから」という理由だけでペナルティを与えたいのであれば、その影響は明確に表れるはずです。Ahrefs のデータにはそうした証拠は見当たりません。
私は、Google がこれまで一貫してやってきたことをやっているだけだと考えています。つまり、質の低いコンテンツを取り締まっているのです。AI によるコンテンツ生成は質の低いコンテンツの量産と重なりがちですが、必ずそうなるわけではありません。
したがって、ウォーターマークがランキングシグナルになることはないと私は見ています。実際に活用されるとすれば、契約上の紛争の場面でしょう。たとえば、制作会社が AI 不使用の条項に署名していた場合や、クライアントが人間の執筆を依頼して納品物を確認したいケースです。それでも、マークがあれば Claude がどこかで関与したことがわかるだけであり、マークがなければほとんど何もわかりません。
この調査結果を自分で確かめてみたいと思いませんか? Ahrefs のサイトエクスプローラーでは、すべてのページの AI コンテンツレベルを評価できます。URL を 1 つずつチェックする代わりに、サイト全体を一括で確認できます。競合サイトを含むあらゆるドメインに対応しており、プロバイダーの協力も秘密鍵も不要です。これこそ Claude のウォーターマークがカバーできないギャップであり、本記事の調査で使用したのと同じ検出エンジンです。

この動きが検索業界に与える影響について、クリス・ロングさんの投稿で活発な議論が展開されています。
ウォーターマークは、法的な期限に対応するために、すべての主要 AI プロバイダーで導入が進んでいます。OpenAI と Google も数か月以内に自社版を提供すると見られます。すでに所定の書面には署名済みです。
検索に大きな変化をもたらすとは思いません。AI で完全生成されたページが現時点で検索結果のトップ 3 にランクインしており、Google 自身も「問題なのは AI の使用ではなく、質の低いスパムコンテンツだ」という立場を維持しています。
ウォーターマークのニュースが出る前に、私は LinkedIn でこの件について書きました。その時の考えは今も変わっていません。AI を使ってコンテンツを作ること自体は問題ではありません。問題なのは、AI を使って通常のコンテンツマーケティングよりも質の低いものを作ってしまうことです。
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ライアン・ローは Ahrefs のコンテンツマーケティングディレクターです。ライアンにはライター、コンテンツ戦略家、チームリーダー、マーケティングディレクター、VP、CMO(最高マーケティング責任者)、エージェンシー設立者として 13 年の経験があります。彼は Google、Zapier、GoDaddy、Clearbit、Algolia など、多くの企業のコンテンツマーケティングと SEO 改善を支援してきました。彼は小説家でもあり、2 種類のコンテンツマーケティングコースの考案者でもあります。