SEO 歴 17 年の GMO TECH 執行役員 中原卓馬氏が語る、AI 検索時代に変わること、変わらないこと

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河原田 隆徳 (TAKA) 作成

ゲストライター

September 3, 202611 分で読めます

GMO TECH × Ahrefs インタビュー 第 1 部

リンク SEO の全盛期からコンテンツの時代、そして AI 検索へ。検索環境の変化を実務と研究の両面から見続けてきた GMO TECH 株式会社 執行役員、アルゴリズム研究室長の中原卓馬氏に、キャリア、Ahrefs との関わり、AI 検索時代に企業が向き合うべき変化を伺いました。

アフィリエイターとの会話から始まった、17 年の SEO キャリア

中原氏が SEO に携わり始めたのは、31 歳の頃です。それ以前は金融業界で働き、リビン・テクノロジーズへの入社後、不動産一括査定サービスの集客を担当しました。広告やアフィリエイト出稿に取り組む中で、思うように媒体が集まらず、アフィリエイターとの懇親会で集客方法を尋ねたことが SEO との出会いでした。

そこで返ってきたのが「SEO」という言葉でした。帰りに書店で関連書籍を購入し、事業会社の担当者として検索集客に向き合い始めます。当時は現在のように体系化された情報が少なく、疑問を解くために Google の特許論文まで読むようになりました。ガイドラインに書かれた考え方と実際の検索結果を照合し、仮説を検証する習慣は、この頃から続いています。

その後はサムライファクトリーへ移り、リンク施策が主流だった時代に大規模なブログサービスを活用した SEO 事業に携わりました。検索アルゴリズムの変化によって雑多なリンクが評価されにくくなると、ブロガーによる記事制作のネットワークを立ち上げ、半年ほどで約 230 社が利用する事業へ育てました。検索環境の変化に合わせ、リンクからコンテンツへと事業の軸を移していったのです。

中原氏:懇親会で、みんなに『どうやって集客しているのですか』と聞いたら、口をそろえて『SEO』と言うんです。その帰りに書店で SEO の本を買ったのが始まりでした。

コンテンツ支援とプロダクト開発、生成 AI を経て GMO TECH へ

中原氏はその後、CROCO 株式会社でコンテンツマーケティングへ軸足を移しました。顧客の SEO 支援を進める中で、コンテンツ制作時の分析に特化したツール「tami-co」の設計と開発にも携わります。市場全体の分析には Ahrefs を活用しながら、日々のコンテンツ制作で必要になる工程を支えるプロダクトを作るという役割分担でした。

転機は生成 AIの登場でした。

中原氏:生成 AIの登場は、私にとって脅威ではなく、知性の拡張でした。人間だけでは難しかった規模の情報収集やデータ活用が現実になりました。支援する立場にとどまらず、当事者としてこの技術を突き詰めたいと考えていたタイミングで、GMO TECH から声をかけていただいたことが決め手でした。

現在は GMO TECH の執行役員として、プロダクトと顧客支援を統括するとともに、アルゴリズム研究室長として検索に関する研究を担っています。研究室では、MEO や検索画面の変化を実際のデータから捉え、得られた知見を社内のプロダクトや顧客支援へ展開しています。Google マップに組み込まれる Gemini の挙動など、AI が何を推薦するのかというテーマも研究対象です。

中原氏:検索や AI の挙動を実際のデータで検出し、そこで得たノウハウを社内へ展開しています。研究で終わらせず、プロダクトやお客様の成果へつなげることが役割です。

2013 年から使い続ける Ahrefs の価値

中原氏が Ahrefs を使い始めたのは 2013 年です。最初の用途は、被リンクと競合が獲得しているキーワードの調査でした。当時は Moz、Majestic など複数のツールを併用しながら、競合サイトがなぜ検索で評価されているのかを分解していました。

長年の実務を通じて最も価値を感じているのは、自社のデータだけでは見えない市場全体を比較できることです。Google Search Console を見れば自社サイトで起きていることは分かりますが、競合の流入ページ、獲得キーワード、被リンクまで同じ視点で捉えることはできません。Ahrefs を使うことで、経験や印象だけに頼らず、自社と競合の差をデータから検証できます。

日本では、施策の実行に比べて分析へ十分な予算や時間が割かれないこともあります。中原氏は、Ahrefs のユーザーが増え、より多くの企業が自社と競合をデータで比較できるようになれば、日本のマーケティング全体のレベルが上がると考えています。従来の SEO に加え、AI 検索まで観測対象が広がる現在も、その評価は変わっていません。

中原氏:Ahrefs のユーザーが増えると、日本のマーケティングのレベルも上がると思っています。自社だけでなく競合や市場全体を見て、感覚ではなくデータで判断できる企業が増えるからです。

公式アンバサダーとして、分析の価値を広げる

中原氏が Ahrefs の公式アンバサダーを引き受けた背景には、長年の利用を通じてプロダクトの価値を実感してきたことがあります。SEO 支援、コンテンツ分析、プロダクト開発という異なる立場で使い続けてきたからこそ、機能を紹介するだけでなく、データを実務の判断へどう結びつけるかを伝えられると考えました。

もう一つの理由は、SEO と AI 検索の両方を継続して研究するうえで、Ahrefs のデータとの相性がよいことです。検索環境が複雑になるほど、個別の事象を追うだけでは全体像を見失います。市場を比較できるデータをもとに仮説を立て、検証し、その知見を企業やマーケターへ還元する。この活動を広げることが、アンバサダーとして目指す役割です。

中原氏:できる限り多くの方に Ahrefs を使いこなしてもらいたいと思っています。分析に基づいて判断する企業が増えれば、日本のマーケティング全体の水準も上がっていくはずです。

AI 検索で、企業の存在感は測りにくくなった

AI 検索の普及によって大きく変わったのは、検索上の存在感を順位だけでは測れなくなったことです。従来の SEO では、対象キーワードの掲載順位や自然検索流入を中心に成果を捉えられました。AI 検索では質問に応じて回答が生成されるため、固定された順位表がありません。自社が登場するかだけでなく、どのような文脈で説明され、どの競合と比較されているかまで見る必要があります。

競合の範囲も広がります。キーワードごとに上位サイトを追うだけではなく、AI が比較候補として挙げる企業や、ブランドに関する認知、評判、第三者の評価も含めて捉えなければなりません。従来の SEO は、比較的低いコストで直接的なコンバージョンへつなげやすく、営業や獲得に近いマーケティングとして評価されてきました。一方、AI 検索での露出は、ユーザーの認知や選択肢の形成に影響するため、交通広告を含むオフライン広告やブランディングに近い性質を持つと中原氏は見ています。

そのため、AI 検索では成果の計測も難しくなります。回答内で自社が紹介されたことが、その後の指名検索や購買へどの程度影響したのかを、単一の指標で示すことは容易ではありません。特に大企業では、取り組みへの関心があっても、ROI を明確にできないことが意思決定の壁になり、着手までに時間を要することがあります。

中原氏は、この状況を中小企業や意思決定の速い企業にとっての機会とも捉えています。AI が商品やサービスを比較、推薦し、購買まで支援するエージェンティックコマースが進めば、企業が AI 上でどう理解されているかは、購買行動へより直接的に影響します。RAG などを通じて新しい情報を参照しながら回答する仕組みも広がる中、成果を完全に説明できるまで待つのではなく、今から自社の見え方を観測し、変化を蓄積しておくことが重要です。

中原氏:AI 検索は、従来の SEO よりもブランディングや認知に近く、成果を測りにくい領域です。だからこそ、大企業が判断に時間をかけている間に始められる企業には機会があります。特にエージェンティックコマースを見据える必要がある業界は、今後対応するべきことが更に増えていく可能性が高いです。入口となる施策はできるだけ早くから始めておいたほうが良いと考えています。

GEO は獲得施策ではなく、認知をつくる活動

AI 検索への対応は GEO と呼ばれることが増えています。この名称によって SEO や MEO と同じ枠組みで捉えられ、流入やコンバージョンといった直接的な成果を求められやすいことが、企業内での難しさにつながっていると中原氏は指摘します。

SEO は検索からサイトへの訪問を生み、コンバージョンまでを比較的追いやすい施策です。一方、GEO は、AI の回答を通じて企業や商品を知ってもらい、比較検討の候補に入るための活動です。その性質は獲得施策というより、認知広告や OOH に近く、投資に対する効果を短期間で直接示すことは容易ではありません。従来の SEO と同じ評価軸を当てはめると、成果が見えないと判断され、稟議が通りにくくなります。

そこで重要になるのが、AI シェアオブボイスです。対象となる市場やテーマの AI 回答において、自社が競合と比べてどの程度言及され、推薦されているかを継続的に確認することで、認知の獲得状況を可視化できます。コンバージョンだけを待つのではなく、AI 上で自社が選択肢に入っているかを中間指標として捉える考え方です。

実際に中原氏は、自然検索流入が減っている一方で、収益が伸びている企業があると話します。広告や OOH など、ほかのマーケティング予算に大きな変化がないにもかかわらず、流入と収益は逆方向に動いていました。ブランドレーダーを確認すると、その企業の AI シェアオブボイスは伸びていました。

中原氏が確認した複数の事例では、AI シェアオブボイスを獲得している企業で、収益も伸びる動きが見られました。自然検索流入が失われても、必ずしも顧客まで失われたとは限りません。これまで良質なコンテンツを蓄積し、SEO、広報、外部メディアでの掲載などに取り組んできた企業は、その資産が AI の回答内での言及や推薦につながり、認知と収益を支えていると考えられます。GEO を理解するうえでは、流入だけでなく、AI 上でどれだけ認知を獲得できているかを見ることが重要です。

中原氏:GEO と呼ぶと、SEO や MEO と同じように、すぐにコンバージョンを求められます。でも実際には認知広告に近い。だから効果をすぐに示しにくく、稟議も通りにくいんです。そこで AI シェアオブボイスを見れば、自社が認知を取れているかを確認できます。

AI 検索に関する相談は増えていますが、SEO 部門だけで完結する課題ではありません。自社サイトのコンテンツや構造を整えるのは SEO の領域です。一方、AI が参照する情報には、ニュース記事、比較メディア、口コミ、専門家の解説など、自社が直接管理できない情報も含まれます。

そのため、SEO、広報、ブランド、商品部門の連携が必要になります。広報は第三者にどう伝わるかを考え、商品部門は機能、料金、実績などの正確な情報を整え、ブランド部門は市場で獲得したい認識を言語化する。それぞれの情報が食い違えば、AI 上でも自社の特徴が一貫して理解されにくくなります。

AI 検索対策を新しい SEO のテクニックとして捉えるのではなく、市場に存在する自社情報を部門横断で整える活動として捉えることが重要です。どこか一つの部門がすべてを担当するのではなく、観測した結果を共有し、各部門が改善できる領域へ戻していく運用が求められます。

中原氏:AI 検索は、SEO 部門だけで対応できるものではありません。広報、ブランド、商品部門が持つ情報をつなぎ、自社が市場でどう説明されているかを一緒に見ていく必要があります。

変わらない SEO の土台と、広がる役割

AI 検索が広がっても、コンテンツの品質、サイト構造、クロールのしやすさ、被リンクといった従来の SEO の要素が不要になるわけではありません。ただし、どの要素が強く働くかは、Google の AI 概要や AI モード、Gemini、ChatGPT など、モデルやサービスによって異なります。

中原氏の観測では、AI 概要、AI モード、Gemini は、比較メディアやニュース、口コミなど、外部のアーンドメディアを引用する傾向が強く見られます。一方、ChatGPT は意外にも企業の自社サイトを引用する割合が高く、公式情報の整備がより直接的に影響する場面があります。すべての AI 検索を同じものとして扱うのではなく、各モデルがどの情報源を参照しやすいかという特性を理解する必要があります。

したがって、狙うモデルによって施策も変わります。自社サイトの情報設計やコンテンツを整えるだけでなく、外部メディアでの掲載、第三者による評価、口コミなどを含めて接点を設計しなければなりません。どちらか一方を選ぶのではなく、モデル別の引用傾向を踏まえて優先順位を決めることが重要です。

ブランドレーダーでは、AI 概要、AI モード、Gemini、ChatGPT などを横断し、モデルごとの言及や引用元を比較できます。自社がどのモデルで、どの情報源を通じて認識されているかを観測することで、自社サイトの改善を優先するのか、アーンドメディアでの接点を増やすのかを判断できます。具体的な分析方法は、第 2 部で詳しく取り上げます。

重要なのは、AI 検索を従来の SEO と切り離して考えないことです。検索エンジンや AI のクローラーが情報へ到達でき、ページの内容とサイト全体の関係を理解できる状態を作ることは、どちらにも共通する基盤です。会社概要やサービス情報を整え、サイトマップや内部構造を適切に保つといった基本は、AI 検索においても意味を持ちます。

一方、従来の SEO で成果を出している企業が、そのまま AI 検索でも選ばれるとは限りません。検索での評価は有利な土台になりますが、AI がどのような条件でブランドを紹介するか、第三者がそのブランドをどう説明しているかは別に確認する必要があります。

中原氏は、SEO の重要性が失われるのではなく、役割が広がると捉えています。これまでの順位、流入、コンバージョンに加えて、AI の回答内での言及や引用、説明のされ方まで観測する。変わらない技術的な土台を維持しながら、新しい検索体験の中でどう見つけられ、理解されるかを考えることが、これからの SEO に求められます。

中原氏:モデルによって、引用されやすい情報源は異なります。AI 概要や AI モード、Gemini は外部のアーンドメディア、ChatGPT は意外にも自社サイトの引用率が高い。各モデルの特性を理解し、施策を変える必要があります。ブランドレーダーでは、その違いを横断して確認できます。

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Ahrefs 日本マーケティング統括。 国外 SaaS 企業における日本市場向けのマーケティングとローカリゼーションで 10 年以上の経験を積み、現在は Ahrefs の日本マーケティングを統括。ユーザーの皆さんと共に、Ahrefs を日本で盛り上げることを目標に、日々全力で取り組んでいます。