
ルイーズ・ リネハン 作成
Ahrefs の Content Marketer
Forresterの調査によると、ビジネス購買担当者の 94%が購入時に AI 検索を利用しており、その評価は販売元のウェブサイト、製品の専門家、営業担当者を上回っています。
B2C もそれほど遅れていません。NielsenIQ の調査によると、消費者の 42% が AI を使って商品を検索しています。
こうした流れを受けて、AI 検索への予算を増やす企業が増えている中、多くのマーケターが「AI における可視性を高める施策に、どれだけの価値があるのか」を必死に突き止めようとしています。
Ahrefs のキーワードエクスプローラーのデータでは、AI 成果への貢献度の計測や ROI に関連するキーワードの検索数が、過去 18 か月で 212% 増加しました。
AI 検索の ROI を一言で言えば、AI における可視性向上の取り組みから得られる価値を、投入した AI 検索のコストで割ったものです。
先に正直に言っておくと、AI 検索 ROI をきれいに証明することは、おそらく誰にもできないと思っています。
Ahrefs では以前から、あらゆるタッチポイントを丁寧にたどって売上までさかのぼる試みは、勝ち目のない勝負だと考えてきました。
しかも AI 検索は、これまでのデジタルチャネルの中でも特に追跡しにくい部類です。完璧なアトリビューションは、さらに遠い目標になります。
ユーザーは ChatGPT の中で十分な答えを得て、自社サイトには一度も訪れないことがあります。
クリックして訪問した場合でも、リファラー情報が削除され、ダイレクトトラフィックのように見えてしまうことがあります。
さらに、AI のおすすめをきっかけに購入や問い合わせをしても、そのことを企業側に伝えてくれるとは限りません。
とはいえ、経営層が求めているのは完璧な数字ではありません。
必要なのは、時系列で比較できる妥当な見積もりです。計測できるデータと、顧客が教えてくれる情報を組み合わせれば、見積もりを作るには十分な材料がそろいます。
もし上司から AI 検索 ROI のレポートを頼まれたら、次の手順で進めます。
完全無欠の方法ではありませんが、四半期ごとに繰り返せて、すでに手元にあるデータをほぼそのまま使えます。
AI 検索 ROI とは、AI の回答に表示されることで得られる価値のことです。
数式にすると、価値からそこに至るまでにかけたコストを引き、そのコストで割った値になります。
ROI を計算するときにいちばん分かりやすい指標は収益です。そのため、以降のステップでは収益に焦点を当てます。
AI 検索 ROI = (AI 収益 − AI コスト) ÷ AI コスト × 100

ただし、収益以外の「価値」も非常に重要です。ROI と併せて報告しましょう(これらについては、続編の記事で解説します)。
ROI の分母になるのがコストです。まずは何にいくら使ったのかを整理しましょう。
AI 検索 ROI を計算するとき、考えるべきコストは 2 種類あります。
AI 専用コスト:AI 検索があるからこそ発生するコストです。AI における可視性のトラッキングツールや、AI 関連業務のエージェンシー契約料などが該当します。
共有コスト:AI 検索と、より広範な SEO ・コンテンツ業務の両方に使われるコストです。ツールや外部の支援に加えて、人件費も含まれます。
2 つを切り分ける際、最もシンプルだと感じている方法があります。すべてのコストに対して「明日から AI 検索の取り組みをやめるとしても、これは払い続けるか」と自問することです。
答えが「いいえ」なら、全額を計上します。
答えが「はい」なら、一部を計上します。
この按分はやや大まかになります。ただ、1 セント単位まで厳密に計算しようと時間をかけても、得られるものは少ないと考えています。おおよその金額で十分です。ここからは、その出し方を見ていきましょう。
最初に見るのは人件費です。共有コストの中で、最も大きくなりがちだからです。ポイントは、その四半期にメンバーが AI 検索の業務へどれだけ時間を使ったかです。
タイムシートを作って分析する習慣がないなら、わざわざ始める必要はありません。
代わりに、チームや外部パートナーに、その四半期の時間の使い道を聞いてみましょう。たとえば「3 分の 1 ほどは AI 向けのコンテンツ制作・最適化に使った」といった回答で十分です。
例として、3 名のコンテンツチームの人件費が四半期で 5.4 万ドルだとします。AI 検索の業務に時間の約 3 分の 1 を使っていたなら、1.8 万ドルを計上します。

ツールも、ほとんどが共有コストです。SEO プラットフォームでも ChatGPT の有料プランでも同じです。
ただ、ツールの利用量は時間よりも把握しにくいものです。
最もシンプルなのは、そのツールを使うチームと同じ割合を計上する方法です。
コンテンツチームが時間の約 3 分の 1 を AI 検索に使っているなら、ツール費用の 3 分の 1 も AI に使っていると見なします。
補足
AI 機能やアドオンが別料金になっているツールなら、そのアドオンの料金だけを計上し、残りは無視して構いません。
AI 業務の量が四半期ごとに増減する場合は、割合もそれに合わせて調整してください。
これらを合算すると、ある四半期の AI 検索コストは次のようになります。
コスト | 種別 | 四半期コスト | 計上割合 | AI コスト |
|---|---|---|---|---|
AI における可視性のトラッキングツール | AI 専用 | 1,500 ドル | 全額 | 1,500 ドル |
AI 専用エージェンシーの契約料 | AI 専用 | 3,500 ドル | 全額 | 3,500 ドル |
コンテンツチーム(3 名) | 共有 | 54,000 ドル | 3 分の 1 | 18,000 ドル |
フリーランスライター | 共有 | 6,000 ドル | 2 分の 1 | 3,000 ドル |
SEO ツールと AI サブスクリプション | 共有 | 3,000 ドル | 3 分の 1 | 1,000 ドル |
合計 | 27,000 ドル |
この 2.7 万ドルが AI コストです。ステップ 3 で使うので、手元に控えておきましょう。
次は ROI の分子になる収益です。ただ、AI 検索の収益を 1 つの数字で言い切るのは簡単ではありません。AI 検索の影響の多くが、分析ツールには表れないためです。
見積もり方は 2 通りあります。
データの状況に合うほうを選ぶか、可能であれば両方で計算しましょう。
補足:どちらの方法でも、AI の実際の価値は低めに出る可能性が高いです。レポートにその旨を明記しておくことをおすすめします。
トラッキング収益は、AI ツールからの訪問に直接ひもづけられるコンバージョンをもとにした収益です。
GA4 や Ahrefs ウェブアナリティクスなどの分析ツールでコンバージョンを確認し、平均顧客価値を掛けて収益額に換算します。

トラッキング収益の計算方法:
たとえば、前四半期に AI 経由の訪問者 40 人がコンバージョンし、平均顧客価値が 900 ドルなら、トラッキング収益は 3.6 万ドルです。
ただし、トラッキング収益が示すのは全体像の一部にすぎません。
AI は長い顧客ジャーニーの中のタッチポイントの 1 つであることが多く、AI の回答を読んだあとにブランド名で検索したり、URL を直接入力したりして訪れる人も少なくありません。
こうした訪問は、AI の成果としてカウントされません。
補足
逆のケースもあります。たとえば最後のタッチポイントが ChatGPT 経由の料金ページへの訪問だったとしても、従来のコンテンツマーケティングがその人に大きな影響を与えていた可能性はあります。
また、ほとんどの分析ツールは、1 人の訪問者を成約まで追跡できません。Cookie を使わない計測、Cookie バナーの拒否、デバイスの切り替え、Cookie の有効期間より長い営業サイクルなどが原因です。
だからこそ、多くのチームには平均顧客価値を使う方法が向いていると考えています。すべてをひもづけなくても、見えているコンバージョンを収益の見積もりに変換できるからです。
とはいえ、トラッキングの設定次第では、そのひもづけがすでにできている場合もあります。
AI ツールから訪れた人が同じ訪問内で登録やデモ予約をした場合、フォームによっては流入元が CRM に渡されます。その場合は、実際のパイプラインや成約額を確認できます。
たとえば、同じ 40 件のコンバージョンに商談金額が付いていて、合計が 4.2 万ドルだったとします。この場合は、平均顧客価値で出した 3.6 万ドルではなく、こちらの数字を使います。

実際の数字があるなら、そちらを使いましょう。ただし、対象は初回訪問でコンバージョンした人だけである点に注意してください。
自己申告収益は、新規顧客に「どこで当社を知りましたか?」と尋ねて求める方法です。多くの場合、登録時、決済時、オンボーディング時に質問します。
誰かを追跡する必要がないため、分析ツールでは拾えない人も数多く捉えられます。AI の回答でブランドを見かけ、あとから別の経路で戻ってきた人もその 1 つです。
Ahrefs でも、Ahrefs Free の登録者に対してまったく同じ方法で計測しています。データは分析ツールや Slack チャンネルにそのまま連携されます。

自己申告収益の計算方法:
最後のポイントを、もう少し詳しく見ていきましょう。
「どこで知りましたか?」のアンケートで、回答率が 100% になることはまずありません。
そのため、まずはその四半期に回答してくれた顧客だけを対象にします。
AI ツールを選んだ人の収益を合計し、回答者全員の収益合計で割ります。
これで、回答者の収益のうち AI 由来の割合が分かります。
次に、同じ割合を、回答しなかった人も含むすべての新規顧客の、その四半期の収益に当てはめます。
例:回答者がもたらした収益が 10 万ドルで、そのうち 1 万ドルが AI ツールを選んだ人からだった場合、割合は 10% です。
その四半期の新規顧客全体の収益が 40 万ドルなら、AI 収益は 4 万ドルと見積もれます。
これで、数式の「価値」の部分が揃いました。

コストと収益の見積もりが揃ったので、いよいよリターンを計算できます。
先ほどの数式と同じように、収益からコストを引き、その結果をコストで割って、100 を掛けます。
AI 検索 ROI = (AI 収益 − AI コスト) ÷ AI コスト × 100
たとえば、四半期のコストが 2.7 万ドルだった場合は次のようになります。
補足
33% の ROI は、非常に良い結果です。1 ドルを投じるごとに、その 1 ドルが戻ってくるうえ、さらに 33 セントの利益が出る計算になります。
1 つの方法しか使っていなければ、その数値がそのまま ROI です。
両方使った場合は、高いほうの数値を前面に出し、もう一方を併記するのがおすすめです。そうすることで、経営層が全体像をつかめます。
そのうえで、毎四半期同じ手順を繰り返し、リターンが伸びているかを確認しましょう。
AI 検索 ROI の計算が 100% 正確になることはありません。それでも毎四半期同じ方法で算出すれば、数値を比較でき、リターンが正しい方向に向かっているかを把握できます。
ちなみに、Ahrefs の AI における可視性を広告費で買っていたとしたら、どれくらいの価値になるのか気になり、試算してみました。
ChatGPT では広告の販売が始まっており、インプレッション単位の課金で、1,000 インプレッションあたり 25~45 ドルと報じられています。
そこで、Ahrefs の AI マーケティングプラットフォーム Letaido と Ahrefs ブランドレーダーのデータを使い、追跡している約 110 件のカスタムプロンプトで試算しました。

これらは、AI における可視性のトラッキングツールを探している人が入力する、購買直前のクエリです。表示される価値がとくに高いプロンプトと言えます。
試算に使った計算式は次のとおりです。
AI 広告換算価値 = (言及調整済みインプレッション ÷ 1,000) × CPM
インプレッションには、ブランドレーダーの AI 調整ボリュームを使いました。各 AI プラットフォームで、各プロンプトがどれくらいの頻度で聞かれているかを表す指標です。
そのうえで、回答に Ahrefs が実際に登場した頻度を加味しました。
直近 30 日間では、これらのプロンプトに対する ChatGPT の回答のうち、半数近い 46% に Ahrefs が登場しています。
これらのデータを組み合わせて、言及調整済みインプレッションを算出しました。
その結果、Ahrefs の可視性は広告費に換算して約 77~139 ドル相当だと分かりました。
小さな数字ですが、想定の範囲内です。
購買直前のプロンプトはニッチなため、有料でもオーガニックでも、インプレッションは大きくなりにくいのです。
全体的な可視性をより正確につかむため、ブランドレーダーのインデックス全体から約 1,800 件のプロンプトにも同じ計算をしました。

これらはカスタムプロンプトよりトラッキングの頻度が低く、数値の信頼性はやや落ちます。その代わり、認知拡大から比較検討の段階にあたるクエリでの存在感は、より正確に把握できます。
Ahrefs はこれらのクエリの 45% に登場し、可視性は広告費換算で約 7,300~13,100 ドル相当でした。

これが AI 広告換算価値です。ChatGPT 広告に投資して、AI との会話に枠を買っていた場合にかかったかもしれないコストを表します。
あくまで仮定上の節約額ですが、ROI と併せて報告すれば、経営層にも喜ばれる数字です。
AI 検索 ROI を 1 円単位で証明することはできません。それでも、経営陣が納得でき、四半期ごとに比較できる推定値なら作れます。
まずは、AI 検索に投じているコストを合計します。次に、計測できたコンバージョンやアンケート回答、あるいはその両方から、AI 検索がもたらした売上を推定しましょう。
大切なのは、毎四半期同じ方法を使うことです。そうすることで、数値が動いたときに「成果そのものが変わった」と判断できます。
さらに、データがあれば、ROI と併せて AI 広告換算価値も報告しましょう。
この記事では、AI における可視性に価値を結びつけるという、本来は難しい作業に取り組んできました。ただ、誰もが知るとおり、AI 検索が生み出す価値のなかで、売上はごく一部にすぎません。
AI の回答は、ユーザーがサイトをクリックして訪れるずっと前の段階から、どのブランドが記憶に残り、比較検討の候補に入るかを左右します。
Ahrefs をもっと活用 👉
▶︎ Ahrefs 公式ブログ --- 本社発信の記事
▶︎ Ahrefs Canny --- 開発チームへ意見を送る
▶︎ X 公式アカウント--- 最新情報をリアルタイムで
▶︎ YouTube 公式チャンネル--- 動画コンテンツをチェック
▶︎ Ahrefs note --- 日本チーム発信の記事

Ahrefs のコンテンツマーケター。Pi Datametrics、BuzzSumo、Cision といった SaaS 企業でシニアコンテンツ担当として 10 年以上の経験を積む。日中はコンテンツや SEO について書き、オフや仕事の後はサッカーやカラオケを趣味として楽しむ。