たとえば、アメリカのある州の人々が、他の州よりも多くの税金を一生のうちに支払っているというデータを元に記事を書いたとしましょう。
その州の地方紙はその内容に飛びつき、きっと記事を取り上げてくれるはずです。
そしてもしあなたが、ある都市の電車の遅れが全国で最もひどいことを突き止め記事にしたら?
その都市の地方紙は、きっとそれも取り上げてくれるでしょう。
たとえ記事の特集する内容が「ミレニアル世代にとってベストな都市ランキング 37位」(そもそもそれが何を意味するかもわかりませんが)など、かなりどうでもいいものであっても、ローカル紙は構わずに取り上げるようです。
実際、ローカル新聞のオンライン記事がこういった特集記事によくリンクを飛ばしていることから判断すると、地方タブロイド紙の記者は地元と他地域の比較が大好きみたいです。では分野は…?ほとんど何でもです。
「イギリスで運転免許試験の申請から受験まで最も長く待たされる都市」を取り上げたこの記事にも、58 の参照ドメインからのリンクが集まっていました。そのほとんどは地方紙からのリンクです。
この現象をうまく活用すれば、自サイトへのリンク獲得につなげることができます。筆者はこの手法を「タブロイド テクニック」と呼んでいます。
「タブロイドテクニック」を使ってリンクを構築するプロセスは、次の 3 段階からなります。
- ニュース価値のあるトピックを見つける
- それに関する特定地域関連データを収集する
- 該当地域の新聞記者に記事を送付する
正直に言うと、これが最も難しいステップです。地方紙記者を感心させられる話題をそんなに簡単に思いつくのであれば、広報担当者の誰しもが、PR キャンペーンの一環として投稿する特集記事を次から次へとヒットさせているでしょう…。
それでも、筆者がこれまで見てきた中で最もリンク獲得率の高い話題は、次の 2 つのいずれかに当てはまるようです。
- エバーグリーンなトピック(人々が長期にわたり関心を持ち、一貫した需要があるトピック):税金や道路工事など、地元の人たちが常に気にしており、時には不満や怒りを感じているような事柄。
- トレンドのトピック:地方紙の記者たちが競って特集する、地方選挙、季節のイベントなど、人々が今まさに関心を向けている事柄。
ChatGPT を使って見つけたエバーグリーントピックのアイデアをさらにいくつか紹介します。
Ahrefs のコンテンツエクスプローラーを使えば、エバーグリーントピックを扱った SEO パフォーマンスの優れた特集記事を見つけ、そこからアイデアを得ることもできます。
たとえば「税金」に関するページを検索し、100 を超える参照ドメインからリンクされているページに絞り込むと、観光税を義務付けている国のリストを掲載したページが出てきました。
ここから推測できるのは、たとえば「観光税」が最も安い国と最も高い国を地図上に示した記事を作成し、その 2 か国の新聞記者に連絡を取って記事へのリンク掲載をお願いすれば、ある程度はうまくいくだろうということです。
トレンドのトピックを探している場合は、Google トレンドと Google ニュースが格好の情報源となります。
Ahrefs では、リアルタイムであがってくるニュース記事のチェックから、 Google ニュースを活用したリサーチまで、さまざまなテクニックを使って過去のある特定の時期にどんなトピックが取り上げられていたかを理解するよう努めています。
Ahrefs のキーワードエクスプローラーで「成長」の並べ替え機能を使ってトレンドのトピックを見つけることもできます。
たとえば、「イギリスの食べ物」のようなありふれたトピックを検索し、成長期間を過去 3 か月に設定し、成長率順にページを並べ替えてみましょう。するとすぐに、あるトレンドトピックが目に飛び込んでくるでしょう。それは、イギリスの各スーパーが売り出すクリスマス限定食品に関連した検索です。
このデータには特定の地域向け特集記事のアイデアが沢山詰まっています。たとえば、
- イギリス国内で一般家庭がクリスマス関連の食品に費やす平均額を地域ごとに比較。
- 同国の各地域で一番人気のクリスマス料理を比較。
- 同国の各地域の、クリスマスディナーをフードバンク(業者から寄付された食品を困窮世帯などに無償で提供する団体)から配布された食品でまかなう世帯数を比較。 (少々暗い話題ではありますが、こういった社会問題に焦点を当てることが、ある意味ジャーナリズムの原点でしょう!)
ここまで読んで、「でも、私はこんなに沢山アイデアが思い浮かばない!」と思った皆さんに言いたいのは…実は、これらの案はすべて ChatGPT が考えてくれたんです。
私のアドバイスは、できるだけ多くのアイデアをブレインストーミングし、所属チーム全体にも意見を求めることです。たとえひどいアイデアに思えるものでも、書き残しておいてください。候補が多ければ多いほど、PR 戦略で成功するトピックが見つけやすくなります。
記事のアイデアがあるのは素晴らしいことですが、それに関するどんな独自のデータを、どこから引っぱってこれるでしょうか?
デジタルマーケティングエージェンシー、Diggity Marketing のマット・ディギティーさんが最近おすすめの情報源をいくつか教えてくれました。
政府データベースの場合は、アメリカなら USA.gov(政府公式ウェブサイト)や Data.gov (政府機関保有の公共データを公開するポータルサイト)があります。イギリスの場合は UK Data Service(社会科学・経済学・人口学の研究者が研究データを保存、公開、共有するオンラインデータリポジトリ)があります。EU 諸国の場合は Eurostat が活用できるでしょう。そしてカナダの場合は、そのままの名前ですが…カナダ統計局があります。国際的な統計が知りたい場合は、世界銀行のオープンデータと国連データ・ポータルはデータの宝庫です。ピュー研究所の提供データは社会問題、世論、人口動態に関するリサーチに、米国連邦捜査局(FBI)の犯罪データ検索は犯罪関連統計に、アメリカ疾病予防管理センターのデータベースは健康関連統計を探すのに最適です。
デジタルマーケティングエージェンシーである Digitaloft 社のチームが作成したある特集記事を例に考えてみましょう。彼らは英国運転免許庁(DVLA)からデータを取得し、イギリスのどの地域で運転免許試験の申請から受験までにかかる時間が最も短く、合格率が最も高いかを調べました。
この記事により、同社は 59 のウェブサイトから被リンクを獲得しました。
そして、その中には多くの地方紙サイトが含まれていました。
また、複数のソースからのデータを組み合わせて記事を書いてもいいのです。
たとえば、SEO 専門家のダレン・キングマンさんは米国の各州で人々が一生涯のうちに払う税の総額をそれぞれマップ上に示した記事を投稿しました(彼の使った情報源については同記事内「調査方法」のセクションを読んでみてください。)
この記事は 188 のウェブサイトからのリンクを獲得しました。
しかし、いつも既存のデータに頼って記事が書けるとは限りません。場合によっては、データを自分で収集しなければならないこともあります。
これは難しく聞こえるかもしれませんが、そんなことはありません。
たとえば、Cedarwood Digital 社の SEO およびデジタル PR 責任者であるアマンダ・ウォールズさんは、シンプルに情報公開請求を利用し、得られたデータを編集して「イギリスで違法電子タバコの温床になっている都市」について記事を書きました。
この記事は 72 の参照ドメインからリンクを獲得し、さらに多くのオンライン新聞でも取り上げられました。
特集記事で扱うデータをどこから、どのように収集すればよいかわからない場合は、ChatGPT に聞いてみるのも 1 つの手です。
そしてデータが見つかったら、データ、情報源、調査方法を明確に記載し、理想的にはデータを視覚化した図や画像も加えた、新聞記者が引用・リンクしやすいような記事として公開するようにしてください。
以下にいくつかの記事の例を貼っておきます。
データを収集し、読んでもらいたい面白い内容の記事が書けたら、それをシェアしましょう。
ここで誰にコンタクトを取ればいいかは、特集記事の内容とデータによって異なります。たとえば、先ほど紹介した「運転免許試験が受けやすい都市」の記事では、次の地域が試験に合格しやすい場所であることがわかりました。
これを見れば明らかなのは、この場合連絡を取るべきなのは、これらの地域の主要な新聞記者だということです。
Ahrefs でこの記事の被リンクレポートを見ると、この記事を作成したチームがまさにそれをしたことが明らかです。最初にあがってきたリンク元の 1 つがノーサンバーランド・ガゼット(イングランド北東部ノーサンバーランド州の週刊新聞)からのリンクだからです。
(イギリスの地理に詳しくない方のために言っておくと、運転免許試験の受験に最も適した街としてランクインしたブライスはノーサンバーランド州にあります。)
では、こういったローカル新聞社や新聞記者はどうやって見つけたらいいのでしょうか? 「地名+新聞」のキーワードで検索すれば一発です。
そして、連絡先となる記者の名前を探します。
クリックして相手のプロフィールにアクセスすると、通常はメールアドレス(または少なくともソーシャルメディアのプロフィール)が表示されるため、非常に簡単にコンタクトを取ることができます。
このやり方でうまくいかない場合は、Hunter などのメールアドレス検索ツールに記者の名前とウェブサイト名を入力してみてください(いつも成功するとは限りませんが、試してみる価値はあります)。
また、コンテンツエクスプローラーに新聞社のウェブサイトを入力し、現在最も多く記事を書いている記者が誰かを探すこともできます。「著者」 タブで、過去 30 日間に公開されたページ件数順に記者を並べ替えればいいだけです。
こうすれば、現在その新聞社で働いていない記者や、めったに記事を書いていない記者に連絡を取る無駄がはぶけ、コンタクトをとるべき記者をより速く見つけることができます。
デジタルマーケティング企業である Root Digital 社のダレン・キングマンさんが、担当者にどんなメールを送ればいいか、サンプルをシェアしてくれました。
Cedarwood Digital 社のアマンダ・ウォールズさんのメール例はこちら。
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この手法の成功例をもっと取り上げていきたいと思っていますので、試してみた上での皆さんの感想をぜひ Ahrefs チームまでお知らせください。
百発百中で成功する手法なんてありませんから(運の要素も多少ありますし)、うまくいかなかったケースもぜひ教えてください。失敗例も皆さんと共有していきたいと思います。
この記事についてご質問がある場合も、 X から Ahrefs チームまでご連絡ください。