この記事の執筆にあたり、面接でどのような質問がよく聞かれるのかを調べるため、トップレベルで活躍する 8 人の採用担当者に今現在 SEO 面接で最もよく応募者に尋ねている質問を教えてもらいました。
今回話を聞いた採用担当者は、それぞれが SEO 代理店、インハウス SEO、大企業 SEO など、さまざまな SEO 経歴を持つ人たちです。
面接前にすべての質問に対して完璧に対策するのは難しいかもしれませんが、面接官の立場に立って質問内容を想定し、応募先の企業についてきちんとリサーチしておくことが大切です。
少なくとも以下の点についてはよく考えておきましょう。
- 応募先企業とその展開する事業が最も重要視しているものは?
- あなたを雇うと企業にはどんな利益があるのか?
- あなたが SEO を熟知していることを実証できるか、またその根拠は?
さて、私からはこのくらいで十分ですね。では実際の採用担当者の意見を見ていきましょう。
AI を活用したビジネス用コミュニケーションプラットフォーム サービスを提供する Slack の SEO ディレクター、Sam Page さんからの質問はこうです:
競合他社が新しい SEO 戦略を導入しました。彼らの戦略を分析するためにどのような手法を使いますか?また、我々が同様の戦略を導入するのはどのタイミングが良いと考えますか?
回答例
Sam さんは、自分なら次のように答えると教えてくれました。
まず、競合他社がキーワード、トラフィック、エンゲージメントを増やすためにどんな戦略を取り入れているかをチェックします。それが御社の SEO 施策にも理にかなった最良の方法と思われる場合は、同様の手法を取り入れることを検討します(それをさらに良くする工夫をしたうえで、というのが理想です)。
私は Screaming Frog、Ahrefs、Page Speed Insights などの SEO ツールを活用して、彼らの戦略の成功要因を分析します(GTMetrix など他のツールにも対応可能です)。
また、その戦略が御社の顧客層に対して有効に働くものであるかどうかも慎重に判断したいです。
Sam さんが回答例で触れたように、こういった分析には Ahrefs を活用できます。
サイトエクスプローラーの概要にあるコンテンツ変更フィルターを使えば、自社または競合他社が実施したコンテンツの変更がプラスに働いたか、逆にマイナスの結果をもたらしたかが一目で分かります。この情報をぜひ SEO およびコンテンツ戦略の参考にしてください。
この質問は、英国ロンドンを拠点とするメディアエージェンシー、MG OMD のオーガニックパフォーマンス主任である Jimisha Thakrar さんからのものです。
「上司が SEO の成果を今すぐ欲しがっている場合、どう対処しますか?」
回答例
Jimisha さんは、自分なら次のように答えると教えてくれました。
SEO は長期的な視点で考えるべき戦略ですが、場合によってはすぐに成果をあげる必要があることも理解しています。このような場合には、SEO の効果発揮について現実的な目標スケジュールを立て、有料検索などの他のチャネルとその効果を比較したうえで、企業内で早いうちに SEO 施策から期待できる成果に対する明確な共通認識を持てるようにします。
また、SEO 導入にあたって使用可能なツールや情報資源に主にどのようなものがあるのか、またそれによって業務にどのような影響が出てくるのかを認識しておくことも大切です。とはいえ、どんな場合でもまず取り掛かるべきことはあります。たとえば検索結果の 2 ページ目にランクインしているパフォーマンスの低いページの最適化、(それを可能にするツールを持ち合わせている場合は)可視性の向上を阻害している技術的な問題の解決といった、取り掛かりやすく、しかも結果が早く出やすい作業の特定などです。
次に、市場の季節性に合わせた対策が必要である、または キャンペーンの締め切りが近づいているなどの理由で、上司がトラフィックの迅速な増加を求めている場合は、即時的効果を期待できる有料チャネルの活用を提案します。こうすると短期的な有料検索と長期的な SEO 施策を組み合わせたハイブリッド型アプローチで、SEO の基本をベースとしてその上に更なる手法を積み重ねていけるからです。このアプローチなら、持続的なオーガニック トラフィック増加のための SEO 施策の基礎を築くと同時に、求められている可視性の向上を即座に実現できると考えます。
最後に、SEO に対しては辛抱強く長期的に投資していくことが重要だと伝え、この根拠として、SEO が時間が経つにつれて持続的なトラフィックと収益の増加にどのように貢献するかの例を挙げて説明します。そして、ウェブサイトの可視性を長期的に確保するための強固な SEO 戦略の開発に注力するよう働きかけます。
Jimisha さんの言うとおり、SEO は通常長期的なマーケティング戦略であり、これを企業関係者にしっかり理解してもらう必要がありますが、その一方で SEO の成果獲得をスピードアップさせるためにできることもいくつかあります。
筆者が書いた別の記事「Quick SEO」で、成果が出るまでにかかる期間を数か月からたった数日にまで短縮する 8 つの方法をチェックしてみてください。
次の質問は、Wise の オーガニックグロース担当者、Fabrizio Ballarini がシェアしてくれたものです。
担当するウェブ サイト上にどんなページを作っても良いと言われたら、どういったコンテンツを作成しますか?
回答例
応募者が面接に通ったとしても、SEO 担当者として業務を進めるうえで、リソースの限度や利害関係者の同意の有無といったさまざまな制約がかかることが多いでしょう。それでも私は、もし自由に SEO 施策ができる機会が与えられたらどの様な取り組みを行いたいと考えるのかを聞き、その回答によって応募者を評価したいと思っています。
ウェブサイトの規模がまだ比較的小さい場合でも、過去に作成したコンテンツの例として紹介するページのクオリティが高ければ、採用担当者の目に留まる可能性があります。
この質問は、英国ロンドンに拠点を置く SEO エージェンシー StudioHawk のシニア SEO ディレクター、Itamar Blauer さんからのものです。
過去 2 年間で最も大きな影響を与えた Google アップデートはどれだと思いますか?またそう考える理由は?
回答例
Itamar さんは、この質問で知りたいことは次の 3 点だと述べました。
この質問によってまず、応募者が SEO 業界と検索順位を取り巻く状況に関する最新情報を常に把握しているかどうかを確認します。
次に、問題に対し的確な優先順位を付け、また鋭い判断能力をもって対処することができるかどうかを見極めます。
最後に、SEO の各領域をどのように捉え、それぞれの重要性をどのように理解しているかも把握したいと考えています。
ここ 1 年ほどにわたって実施されてきたさまざまなヘルプフル コンテンツ アップデートは SEO 業界に相当大きな影響を与えたため、これに対して応募者がどんな見方をしているかを知りたいです。回答としてコア アルゴリズムアップデート全般についての考えを述べても問題はありませんが、どちらかと言うとその中でもこの特定の種類のアップデートについての意見が聞きたいです。
この質問に答えるには、Google の最新のアルゴリズムアップデートのすべての内容に十分精通しており、それが SEO にもたらした影響を批判的に分析・評価できないといけません。
Ahrefs のサイトエクスプローラー内では Google アップデートの内容をオーバーレイで見ることができます。この機能を活用して、分析するウェブサイトのトラフィック増加・減少と Google アップデートが相関関係にあるかどうかを確認できます。
ビッグデータ分析や AI を取り入れた SEO ツールを提供する SEO Stack の取締役、Daniel Foley Carter さんが応募者によく尋ねるのはこんな質問です。
SEO テストをどのように実施しますか?また、テスト実施の重要性についても説明してください。
回答例
Daniel さんは、新たな SEO 担当の候補者に次のように答えてほしいと言います。
SEO テストは SEO 戦略において大切な部分です。なぜなら、ランキング順位が意味することや順位変動の原因は非常に複雑なため、テストによって戦略と目指す順位の「ちょうど良いバランス」を見極める必要があるからです。
テストを行うことで、コンプライアンスや内部および外部リンクのアンカー テキストといったオーソドックスな SEO 対策と並行して、コンテンツ作成に際し考慮すべき要素(取り上げる情報の優先順位、コンテンツ内容のカバー範囲、情報の深さやクオリティなど)について掘り下げて考察することができます。
言い換えると、ケースバイケースでそれぞれのページに最適な対策を見つけることができるということです。というのも、通常ドメイン上の各ページの情報はそれぞれが異なる検索クエリをターゲットにしており、結局のところその検索結果の順位決定要因は検索クエリごとに変わってくることが多いからです。
したがって、持続性をもって何度もテストを繰り返すことにより、ランク順位を確立し、収益やトラフィックの増加を促進するのに最良の手法を見つけることができます。
Ahrefs のポートフォリオ機能を使えば、SEO テストの結果を常にチェックできます。
この質問は、英国リバプールに拠点を持つ SEO 会社、Quirky Digital の SEO 主任である Rachel Walton さんからのものです。
SEO 作業にどのように優先順位を付け、最初に終わらせるべきタスクを特定しますか?
回答例
レイチェルさんがこの質問を好んでする理由と、どのような回答を求めているかは次のとおりです。
この質問が好きな理由は、応募者のソフトスキル(時間とリソースの管理能力)とハードスキル(SEO の赤信号察知能力)の両方について回答からよく分かるからです。
これを自分のソフトスキルに関する質問だと解釈した人は、最小限のリソース投入で最も高い効果が得られる作業の優先順位を高く設定すると述べたり、最初の 1 か月間はクライアントにとって最も重要と判断したタスクに全力集中する、と答えることが多いです。
一方で自分のハードスキルをメインに答える人の場合は、情報アーキテクチャ (IA) の脆弱性、IT 装備面の弱さ、インデックス作成の問題など、確実かつ迅速に解決したいと考えるいくつかの重要課題に焦点を当てて回答します。
顧客のウェブサイトが優れたパフォーマンスを発揮するためにはどのような基礎対策が必要であるかをきちんと理解したうえでの回答が出てくると、毎回大変感心します。このような答えを聞くと、大抵その人がソフトスキルとハードスキルの両方をいいバランスで持ち合わせていることが分かります。
こういった回答ができる人には、たとえば新コンテンツ制作に移る前に、まずカニバリゼーションの問題に対処しておく方が後で作業がずっと楽になることがわかっています。これにより、後に無駄な内容の、あるいは重複したコンテンツを選別・削除する際に大量の内部リンクを修正する手間を省くことができます。
このタイプの回答をする人はSEO の概念を理解した上で先進的な考え方ができ、おそらく過去に業務上 1 度や 2 度は失敗を犯し、間違いを修正する必要があった経験を持つ人でしょう。なぜなら、まずやってみて失敗し、そこから学びを得ることで人は最も成長できると思いますが、こういった回答の内容からはこのような成長ぶりが感じ取れるからです。
次は、英国を拠点とする PR エージェンシーである PHA Group のデジタル担当ディレクター、 David Schulhof さんからの質問です。
今現在 SEO に資金投資する企業が最も優先すべき対策は何ですか?またその理由は?
回答例
David さんがこの質問をよくする理由と、彼が期待する回答は次のような内容です。
私がこのざっくりとした質問を気に入っているのは、回答者が SEO のどの分野を重視しているか、同時に SEO 全般にどれほど広い視野を持っているかを明確にするからです。
この質問からは応募者の経験や知識を深掘りするのに格好の議論や論点が生まれることが多く、そこから更に他の質問に繋げていくこともできます。
他の面接の質問と同様に、回答の正当性を裏付ける根拠や、挙げた対策がなぜ優先事項であるのか、またその判断を担当クライアントに応じてどのように調整するかについても意見を聞きたいのです。
通常は、特定の業界や企業について追加で質問を行い、応募者の回答がそれに応じた内容に変わるかを確認します。
最後の(そして非常に難度の高い)質問は、英国ロンドンに本社を置くメディア戦略エージェンシー、Zenith の SEO 主任 Philip Gamble さんからです。
AI Overview は SEO にどのような影響をもたらすと思いますか?
回答例
Philip さんは以下に回答例を挙げていますが、その内容は興味深いことに、これに対する正しい答えというのは存在しないと暗に示しているようです。
この質問は、応募者が SEO 全般をどれだけ理解し、施策について自身の意見を根拠とともに簡潔に説明できるかをチェックするためのものです。これはエージェンシー で仕事をする上で欠かせないスキルです。
現時点では、AI Overview はまだほとんどのクライアントに大きな影響を与えていません。
初期のベータ版と比較すると表示時の存在感がかなり薄く、主にアッパーファネル向けの情報を含むキーワードに関しては、ほとんどが長文の検索クエリに対する回答の形で表示されているようです。
例を挙げると、文法に関する質問を検索した際に、いくつか役に立つ内容の AI Overview が表示されました。とは言っても、強調スニペットにすでに含まれている情報を重複して表示しているだけのような場合も見受けられました。また、AI 生成された検索結果がクエリに対して有用な回答でない例も何度か見られました。
まとめ
面接で最高のパフォーマンスを発揮したいなら、採用担当者の思考を理解しておくことが重要です。言うのは簡単ですが、実際に行うのは難しいことです。本記事からもおわかりのように、各採用担当者が応募者に求める素質は少しずつ異なっています。面接を攻略するには、彼らが何を重視し、どんな人材を求めているのかを理解することが鍵となります。
もし、SEO 採用担当者の方でご自身の経験やしてみたい質問をシェアしてくださるという方は、X でぜひご投稿ください。