SEO 全般

忙しいスタートアップ代表におすすめする SEO 戦略入門ガイド

ライアン ・ロー
Ahrefs のコンテンツマーケティングディレクター。 過去 13 年間でライター、コンテンツストラテジスト、チームリーダー、マーケティングディレクター、部長、CMO(最高マーケティング責任者)、代理店設立といった様々な役職を経験。その間、Google、Zapier、GoDaddy、Clearbit、Algolia など数十社のコンテンツマーケティングと SEO サポートを担当。小説家の顔も持ち、これまでに 2 種類のコンテンツマーケティング専門講座を自ら開発・設計した。
SEO の重要性は理解しているものの、どこから始めれば良いか分からないという経営者の方はいませんか?ぜひこの入門ガイドを読んでみてください。

この場を借りて、このガイドに対するフィードバックを下さった、下記のスタートアップ設立者の方々に感謝の意を表します。

Side­note.
筆者は、プレシードステージ(アイデアが生まれたばかりの初期の段階)から IPO(新規株式公開)後までスタートアップの SEO 戦略を支援した経験にもとづいてこの記事を書いています。また今回ご紹介するのは、米国を拠点とするベンチャーキャピタル会社、アンドリーセン・ホロウィッツと共同開催したマーケティングのワークショップでも取り上げた内容です。

SEO 対策の必要性についてはすでにご存知だと思いますが、その利点について再度ご説明しておきましょう。 SEO を通じて

得られる成果としては以下のようなものがあります。

  • 自社名が検索された時に上位表示されるようになる。
  • 自社製品が解決できる問題を検索している人々に表示されるようになる。
  • どんな言葉や表現を使って自社製品が説明されているかを知る(そしてそこから、商品に対する需要を測ることが可能に)。
  • 潜在顧客を競合他社に取らせず、自社商品へと誘導。
  • 常に一定の顧客獲得が想定通りに実現するようになり、顧客獲得への取り組みにかかるコストを削減。
  • バックリンク件数とブランド認知度で他企業を引き離し、ライバルにとって自社との競合が困難に。

一部のスタートアップ企業は、主要な顧客獲得チャネルとして会社設立初日から SEO をスタートさせています。設立したばかりの会社では、SEO 対策を有効に進めるために以下をしっかりと把握しておく必要があります。 

  • ターゲットとなる顧客層が分かっている:効果的な SEO 対策が取れるかどうかは、ターゲットとする潜在顧客の抱える問題や困難について、少なくとも基礎的なレベルで理解できているかどうかにかかっています。自社製品に料金を払って利用する(そして利用を継続している)顧客がある程度いなければ、SEO の効果を感じることはできません。
  • 顧客の購入経路が把握できているSEO はさまざまな種類の商品の販売に役立ちますが、すべての商品に有効だとは言えません。というのも、オーガニック検索と全く関係ない経路から商品が購入される場合もあるからです(たとえば購入費用が数億円にものぼる高級ホテルの床材の売買が、「人通りの多い通路用のカーペット」といったキーワードでの Google 検索から始まることはあまりないと言えるからです)。
  • 長期的にコミットするだけの時間的および予算の余裕があるSEO は長期的な取り組みであり、最良の結果を得るには数か月から数年の継続的な努力が必要です。

ほとんどの企業にとって、SEO はビジネスのさらなる成長のための手段であり、プロダクトマーケットフィット(商品を最適な市場で提供できており、顧客が満足している状態)の達成が目的なのではありません。すでに成長の兆しを見せているビジネスや商品の後押しをするのが SEO で、ゼロの状態から一気に成長を生み出すものではないからです。

そして、以下のような結果を実現したい場合は、SEO に通常より多額の予算を投資することをおすすめします。

  • 顧客獲得チャネルの多様化:ほとんどのスタートアップが、アウトバウンド広告や有料広告のコストがかさみ始め、収益が減少し始めたとき、これを目的に SEO に投資し始めます。
  • 顧客獲得費用の削減:利益がさらなる利益を生むようなビジネス成長チャネルは数少ないですが、SEO はその 1 つです。今 SEO に投じる資金は、将来、ウェブサイトのページが上位ランクインし、今後何年にもわたってトラフィックをもたらし続けることで、投資資金以上の収益を生み出し、その後も収益が増え続ける可能性があります。これはユーザーの解約率が高いと事業がダメージを受けやすいフリーミアムビジネスにとって、将来的に損失を利益で取り戻す助けとなるため、特に重要な点です。
    (※ 基本的なサービスは無料で提供し、高度な機能には利用料を課金するビジネスモデル。)
  • 他社との圧倒的な差をつけるSEO はますますゼロサム化しています。
    特定のキーワードの検索結果から生まれるページクリックのほとんどは少数の企業が独占しています。皆さんも競合他社を差し置いてトップ企業に仲間入りできれば、彼らには太刀打ちできなくなります。
    (※ 誰かが得をしたら、それと同じ分だけ別の誰かが損をして、差し引きの合計=サムがゼロになる状態のこと。)

SEO は、以下の 3 本柱から成り立っています。 

  1. コンテンツ制作:記事、ツール、ランディングページなどの作成。
  2. リンク獲得:他のウェブサイトから自社サイトに戻るバックリンクの獲得。
  3. テクニカル SEO:検索エンジンへの表示を制限している技術的な問題の解決。

それぞれが重要な対策ですが、まずは次の順番で優先順位を付けることをおすすめします。

1. コンテンツ制作

コンテンツこそが最も重要です。SEO に最適化されたコンテンツを作成すればするほど、Google が皆さんの会社を潜在顧客となる人々に表示してくれる可能性が高まります。コンテンツは SEO において成長をもたらす最強の手段ですが、それと同時に、その最大の障害にもなりうるものです。

優れたコンテンツは、ほぼ自動的に良質なリンクを獲得できます。逆に、優れたコンテンツなしにリンクを獲得するのは非常に困難です。コンテンツは自社商品の長所を説明し、人々を商品購入へと促すのに役立ちます。新たなコンテンツページを作成するたびに、広大なインターネットの宇宙をさまよう人々にとって、皆さんのウェブサイトへの新たな「入り口」が 1 つ増えるのだと言えるでしょう。 

2. リンク獲得

リンク獲得は SEO で大きな役割を果たします。 Google やその他の検索エンジンは、外部からのリンク獲得数をサイトの信頼性の基準として捉えています(Google のウェブページ評価システムは「ページランク」として知られています)。一般に、より多くの高品質なリンクを獲得しているサイトの検索順位は高くなります。

一般的なルールとして、取得しやすいリンク(無料のスタートアップデータベースにウェブサイトを記載してもらうなど)は、取得が難しいリンク(評価の高い業界ブログで自社製品が言及されるなど)よりも、高評価につながる要素としては下位にカウントされます。

これらのルールには例外もありますが、一般的に言えば、獲得すべきリンクは以下のようなものです。

  • 自社のビジネスと関連性のあるウェブサイトからのリンク
  • 説明を含んだアンカーテキストを使ったリンク (「こちらをクリック」ではなく、商品・ブランド名または会社の説明など)
  • dofol­low リンク(リンク先のページにリンクジュースが伝わるもの)

3. テクニカル SEO

Google のクローラーがページにアクセスできない場合、またはウェブサイトが検索に出てこない場合は、いくらコンテンツ制作やリンク構築をしても役に立ちません。

ほとんどの新規あるいは小規模ウェブサイトでは、技術的な SEO 対策は難しくないでしょう。よく使われる CMS (コンテンツ管理システム)のほとんど(WordPress、Wix、Webflow など)には、それなりのテクニカル SEO 機能が備わっているからです。ただ、独自の CMS を使用して、大量の静的ページをコンパイルしている場合は、特別な対策が必要となるかもしれません。

テクニカル SEO は、優れた検索パフォーマンスをあげるにあたって障害となる問題を取り除く作業だと考えてください。とはいえ、ウェブサイトの検索結果内での存在感をより高めていくには、優れたテクニカル SEO 対策だけでは十分ではありません。 

SEO 戦略の導入にあたって、まず始めやすい対策ポイントをいくつかご紹介します。

1. 明らかな技術的問題点の修正

コンテンツ制作やリンク構築に時間と費用をかける前に、テクニカル SEO が適切に行われていることを確認しましょう。Ahrefs の無料のウェブ分析を使って、よくある SEO の技術的な問題をチェックできます。 

たとえば、この分析ツールを Ahrefs のブログ記事を対象に使ってみたところ、以下のような問題点が検出されました。対策の重要性の高さに基づいて優先順位が付けられており、青色マークは軽微な最適化の提案、黄色は中程度の問題の警告、赤色は重大なエラーで要修正、という意味です。

無料の Ahrefs ウェブ分析でAhrefs のブログ記事を分析した結果

優先事項として、ウェブサイトがクローラーからアクセス可能であり、サイト上のページが Google によってインデックスに登録されることが許可されているかどうかを確認してください。 

2. コネクションを使った初期のリンク取得

SEO の初期段階では、自社ページに関連する内容のページからの被リンクをいくつか獲得することで、SEO パフォーマンスを大幅に向上させることができます。 

リンクが獲得できるかどうかは自分で決められるものではないように思えるかもしれませんが、確実に良質なリンクを構築する方法はたくさんあります。長期的にはコンテンツを作成することで被リンクを獲得しやすくなりますし、短期的には社内や業界のネットワークが活用できます。例えば、以下のような方法です。

  • 出資企業のポートフォリオページに掲載を依頼
  • パートナー企業に自社サイトへのリンクを依頼
  • Prod­uct Hunt(米国発、世界最大の新デジタル製品紹介サイト)に商品を掲載
  • ポッドキャストに出演
  • 他の創立者のブログに寄稿を依頼

最初は、自社に関連したウェブサイトからのリンク取得を優先すればいいと思います。リンクが獲得できるようになって少し経ってから、リンク元のドメイン評価といった他の要素を考慮すればいいでしょう。

3. パフォーマンスの優れた競合他社ページを参考にしたコンテンツ制作

競合他社のウェブサイトでオーガニックトラフィックを一番多く獲得しているページを見つけて、その内容を参考にしながら独自の(さらに内容を改善した)コンテンツを作成することから始めてみてください。

参考にすべきページは、Ahrefs のトップページレポートで探すことができます。以下は、Ramp という企業(米国を拠点とする金銭管理プラットフォーム)のウェブサイト上のブログ記事を推定オーガニックトラフィック順に並べたランキングです。

Ramp のウェブサイト上のブログ記事を推定オーガニックトラフィック順に並べたランキング

もし筆者がこの企業の競合相手だとしたら、このランキングに表示されたキーワードをターゲットにして独自の記事を作成・公開しようと考えるでしょう。たとえば、オーガニック検索から毎月推定 2,157 件の訪問を得ている、画像内の黄色線で囲った「最も入手が簡単なビジネス用クレジットカードのガイド」という記事のターゲットキーワードなどです。

また、「被リンク数の多いページ」レポートを使って、サイト上で最も多くリンクされているページを確認することもできます。Ramp のウェブサイトでは、「ビジネスクレジットカードの申請方法ガイド」が、99 のサイトから 211 のバックリンクを獲得してることが分かりました。 

Ramp では、「ビジネスクレジットカードの申請方法ガイド」が、99 のサイトから 211 のバックリンクを獲得している

ということは、競合他社が同様のガイドを作成すれば、リンク獲得につながる可能性が高いということです。

「ビジネスポテンシャル」の重要性

多くの企業が、トラフィックの獲得だけを目的に自社製品とほとんど関連のないキーワードの検索結果で上位にランクインしようとしています。しかし、自社製品こそが解決できる問題を取り上げた記事を書いた方が良いのです。そうすれば、その情報を求めてサイトを訪れるユーザー 1 人 1 人が潜在的な顧客になります。

下の図の「ビジネスポテンシャル」測定基準を使って、各トピックを評価してみてください。各キーワードに点数を付け、ビジネスポテンシャルが高いキーワードを優先してください。

ビジネスポテンシャルの測定基準

SEO で目標とすべきなのは、単に高いキーワードボリュームを追い求めて被リンクを大量に獲得することではなく、顧客になる可能性が十分にある人々を惹きつけることです。

4. ターゲットとなるネットユーザーの疑問を特定し、それに対する回答を掲載

潜在顧客は、皆さんの商品や業界について多くの疑問を持っています。その中で最もよく聞かれている質問を特定し、それに対する回答を提供すれば、訪問者が「同様の質問を検索してあなたのウェブサイトに訪れる」という安定した流れを生み出すことができます。

まずは、いくつかの「シードキーワード」、つまり製品に直接的に関連する中心的なトピックを考えることから始めましょう。

Ramp のような企業の場合、シードキーワードは「ビジネスクレジットカード」かもしれません。Ahrefs のキーワードエクスプローラーを使えば、AI の助けを借りてブレインストーミングを簡単に行うことができます。 

キーワードエクスプローラーで「ビジネスクレジットカード」に関連するシードキーワードをブレインストーミング

「検索」をクリックすると、各キーワードの推定検索件数(下の図内1)と、そのトピックの検索結果で上位ランクインするのがどれほど難しいかの推定値(下の図内2)が、その他データに並んで表示されます。

「ビジネスクレジットカード」に関連するキーワードの推定検索件数と難関度の推定値

フレーズ一致、関連用語、および検索候補レポートを使えば、コンテンツ制作の際に取り上げる候補となるトピックをより多く見つけ、数百の関連キーワードを表示させることができます。

キーワードエクスプローラーのフレーズ一致、関連用語、検索候補レポートで、多くの関連キーワードが表示される

サイトが比較的新しい場合、競合の多いキーワードで上位にランクインするのは難しいでしょう。まずは難易度の低いキーワードをターゲットにし、被リンクとオーガニックトラフィックを増やしてから、徐々に競争力の高いキーワードに向けて取り組むことをおすすめします。

Ahrefs でターゲットにしやすいキーワードを見つけるために、キーワードを難易度の低いものに絞り込んで表示させます(たとえば最大値を 30 に設定)。 

キーワードの難易度を最大値を 30 に設定し、ターゲットしやすいキーワードに絞り込んで表示

5. 連携企業との統合ページや、競合他社との比較ページの作成

ほとんどのスタートアップは既存の企業と競合することになります。自社とこれらの競合他社の商品とを直接比較したページを作成すれば、SEO にもプラスに働きます。需要をゼロから創出しようとするのではなく、自社製品に類似した商品に対する既存の需要を効率的に捕まえることができるからです。

以下は、米国発のデジタルコンテンツ販売プラットフォームである Podia のウェブサイト上にある、競合他社と自社の比較コンテンツのページを表示したリストです。たとえば、同じく EC プラットフォームを運営する Stan Store との比較記事が同社のサイトにもたらすオーガニックトラフィックは毎月推定 3,444 件にのぼります。

米国発のデジタルコンテンツ販売プラットフォーム Podia の比較コンテンツのページを表示したリスト

こういった比較ページは、競合他社と自社の商品の特徴・機能が異なる場合にも作成する価値があります。商品の違いや開発の背後にある理念を説明することで、ゆくゆくは同業の大手企業と対等にわたりあえる競争相手としての地位を確立するための長期的なプロセスの良い足がかりとなります。

もし自社の製品が(Shopify 連携アプリや Google Look­er Stu­dio の統合ツールなど)より大きなソフトウェアの一部をなすものである場合は、連携パートナーごとにランディングページを作成することもできます。こうすることで、自社よりも知名度や人気の高い連携企業の製品に対する既存の需要の一部を取り込むことができます。

たとえば、「Google Look­er Stu­dio コネクタ」というキーワードを分析した Ahrefs データは以下のようになりました。キーワード難易度は低く、月間検索数は 100 件で、Looker と統合する製品との関連性が高いことが分かります。 

「Google Looker Studio コネクタ」というキーワードを分析し、キーワード難易度と月間検索数、Looker と統合する製品との関連性を示す Ahrefs データ

6. オリジナルの対策

SEO を始めたばかりの段階で、収益増加を直接的かつ最速に達成するには、すでに競合他社に収益をもたらしている実証済みのトピックを参考にするのが有効でしょう。ところが長期的に見ると、他の企業がまだ試していない対策を試みることにも大きなメリットがあります。

SEO はオリジナリティを大いに発揮できる分野です。少し調べれば、競合他社がカバーしていないトピック、誰にも解決できていない問題点、需要が高い他社サイトとの連携、または人気が出る寸前の急成長中のキーワードなど、自社にとって素晴らしい成果をもたらしうる対策ポイントを見つけることができるでしょう。

スタートアップにおける長年のアドバイスがここにも当てはまります。それは「顧客の声を聴く」ということです。彼らの抱える問題や疑問を知り、コンテンツで取り上げるべき新トピックについてブレインストーミングを行い、Ahrefs のようなツールを使用して、それらのアイデアに時間をかけて取り組むだけの価値があるかどうかを吟味してください。

長期的にみると、大量に SEO トラフィックを得ているほとんどの企業は、次の 4 つの方法のいずれかを実践しています。 

1. エディトリアルコンテンツ:長期的な情報ブログの投稿

エディトリアルコンテンツとは、関連キーワードをターゲットにした高品質の情報リソースを作成、公開するプロセスのことです。コンテンツ制作をシステム化し、SEO コンテンツを毎週発信することで、多くの企業のウェブサイトがブログ記事だけで月間数十万のアクセスを生み出しています。

Ahrefs ブログのオーガニックトラフィックと参照ドメインの増加を示すグラフ

上のグラフは、Ahrefs ブログのオーガニックトラフィックと参照ドメインの増加を示しています。 

コンテンツの執筆は、ブランド認知度を高め、サイト訪問者に自社についてより深く知ってもらうのに最適ですが、ChatGPT 全盛期である今でもまだコストのかかる作業です。

現在、ブログの世界は非常に競争が激しくなっています。検索ボリュームの多いキーワードのほとんどは、(予算額では到底敵わない)有名な大手ブランドがすでに競ってターゲットにしています。皆さんにもこういった検索順位トップを争うブランドの 1 社に加わるチャンスはありますが、それはこれまで以上に困難になっています。

ブログ投稿の例を以下に挙げますので、参考にしてください。

2. プログラマティック SEO:ランディングページ作成の自動化

プログラマティック SEO で、キーワードをターゲットにしたページを自動で(またはほぼ自動で)作成する方法について説明します。

この手法により、企業はページをデザイン、作成、公開する作業を手動で行わなくても、何千ものキーワードを対象とした何千ものページを作成できるようになります。こういったページは通常、商品価格、天気、位置情報などのデータから作成されます。 Zapier、Zillow、G2 などの企業は、プログラマティック SEO を使って毎年数百万のページビューを獲得しています。 

Zapier の提供するアプリディレクトリへのオーガニックトラフィックと参照ドメインの増加の様子を示すグラフ

上のグラフは、Zapier の提供するアプリディレクトリへのオーガニックトラフィックと参照ドメインの増加の様子を示しています。 

この戦略はテック系のスタートアップに好まれますが、リスクがないわけではありません。コンテンツの内容が浅い、またはスパムであると判断された場合、上位ランクインが難しくなるか、検索結果から除外されてしまう可能性があります。そのため、記事コンテンツや無料ツールといった「より安全な」SEO 戦略とは対照的なものとなります。別の言い方をすると、プログラマティック SEO によって一時的にトラフィックが増加したとしても、そのトラフィックが上記の要因により結果的に失われてしまうリスクもあるということが許容できる場合にのみ、この手法の導入を検討するといいでしょう。

プログラマティック SEO の作成コンテンツ例を以下に挙げます。 

3. UGC(ユーザー生成コンテンツ)のキュレーション(まとめ記事作成)

ユーザー生成コンテンツのキュレーションとは、自社商品の紹介文や商品カタログ、紹介ブログ記事にいたるまで、ユーザーが作成したコンテンツをまとめて編集し、それを検索結果で上位表示されるように最適化して発信するプロセスのことです。

Canva のデザインテンプレートが獲得したオーガニックトラフィックと参照ドメインの件数の成長を示すグラフ

上の図は、無料のグラフィックデザインツールを提供するウェブサイト、Canva のデザインテンプレートが獲得したオーガニックトラフィックと参照ドメインの件数の成長を示したグラフです。 

この手法では、コンテンツ制作作業をユーザーに代わりにやってもらえるため、比較的低コストで数百万ものコンテンツを制作することができます。しかし、こういったウェブサイトは悪用されたり(詐欺のコンテンツ投稿が増えてしまった、企業のコンテンツ作成、管理、公開を支援するコンテンツマーケティングプラットフォームである Con­tent­ly の例など)コンテンツの維持管理に多額のコストがかかるというリスクも伴います。

以下の例を参考にしてみてください。 

4. 無料ツールの提供

企業のホームページで、有料商品の簡易バージョンや、特定の問題解決に特化したツールが無料提供されているのを見たことはありませんか?

VEED の無料ツールの獲得オーガニックトラフィックと参照ドメイン件数の成長を示すグラフ

上のグラフは、動画編集プラットフォーム VEED の無料ツールの獲得オーガニックトラフィックと参照ドメイン件数の成長を示したものです。

無料ツールのページそのものでないとターゲットにできない、トラフィックの多いキーワードは多数あります。たとえば、下の画面は「無料被リンクチェッカー」の検索結果ページです。最初の 19 件はすべて無料ツールであり、それを取り上げた記事のページは表示されていません。

「無料被リンクチェッカー」の検索結果ページ

無料ツールは、有料プランに加入していないユーザーに有料製品を自然な形で紹介する良い機会となります。こういったツールの開発というのは簡単にできるものではないため、競合他社にすぐに真似されにくいという利点もあります。

その一方で、これらのツールを開発するにはリソースと多額のコストが必要になるところが、この手法の明らかなマイナス点ではあるでしょう。

無料ツールを使った SEO 戦略の例には以下のようなものがあります。 

SEO は消えつつあるのですか?

SEO は無くなりつつあるのではなく、変わりつつあります。 ChatGPT、Perplexity、およびその他の LLM(大規模言語モデル)の登場により、検索エンジン以外にもネットユーザーがオンラインで情報にアクセスする方法が新たに増えました。Google 検索結果に表示される「AI による概要」は、検索結果からウェブサイトにアクセスするユーザーの数を減少させるかもしれません。また、AI によって生成されたコンテンツは、多くの検索結果で競争を激化させています。

SEO のベストプラクティスは変わりませんが、LLM(大規模言語モデル)の最適化といったトピックについて理解を深めたり、AI Overview(AI による概要)」について知ることは、価値のある学びとなるでしょう。

コンテンツ制作はどのようにすればいいですか?

コンテンツ制作には主に 4 つの方法があり、それぞれに長所と短所があります。

  • インハウス(社内制作):コンテンツを自社で作成するとクオリティ管理はきちんとできるが、作成プロセスには多大な時間と知識が必要。
  • フリーランサー:比較的手頃な料金で依頼が可能だが、ライターの調達、制作プロセスの管理、品質管理、納品後の編集が必要となる。
  • 代理店:多くの場合、他にも同様の企業をクライアントとして受け持った経験を持つため、業界やビジネスに合ったサービスが受けられるが、高額のコストがかかる可能性も。
  • AI コンテンツの生成:非常に安価にコンテンツが作成できるものの、優れたパフォーマンスをあげるにはマーケティングと SEO の専門知識が必要。低クオリティの AI 作成コンテンツを発信すると、かえって SEO に悪影響を及ぼす可能性がある。 

SEO 代理店を使う必要がありますか?

良い SEO 代理店との出会いは、企業の成長に大きなプラスとなります。難しいのは、真に優れた代理店を見つけることです。筆者が以前一緒に仕事をしたことがあり、良い印象を受けた会社には、Organ­ic Growth Mar­ket­ingGrowth PlaysGraphiteSiege MediaAni­malz(筆者が以前勤務)があります。

SEO 対策が効果を上げているかどうか、どのように確認できますか?

SEO の導入初期の段階では、具体的な目標や KPI を設定するのはまだ難しいでしょう。代わりに、キーワードの検索順位、オーガニックトラフィックやバックリンクの獲得件数といった主要な指標を毎月確実に改善させることに集中してください。

SERP 内での動きには常に注目しておきましょう。公開したばかりのページが、多数の類似キーワードの検索結果でランキング圏内に表示され始めたら、それは良い兆候です。

オーガニックトラフィックの追跡には、Google Search Con­sole を活用できます。キーワード検索順位とバックリンクについては、Ahrefs が便利です。Google アナリティクス 4 や Ahrefs ウェブサイト分析(近日公開予定)などのウェブ分析ツールを使用して、検索以外のソースから生まれるトラフィックを追跡することも可能です。

コンテンツ発信はどれくらいの頻度ですれば良いですか?

一般的に SEO は時間が経つにつれ効果が高まる傾向にあり、公開頻度が高いほど成果が上がりやすいでしょう。その一方で、短期間に何百、何千といった記事を公開すると、ウェブサイトが AI コンテンツを作成している可能性があると Google に判断される可能性があります。 

AI コンテンツでパフォーマンスは向上しますか?

生成 AI は、タイトルのブレインストーミング、メタデータの作成、執筆作業の支援など、SEO ワークフローの一部をスピードアップさせるのに役立ちます。しかし一般的な傾向として、完全に AI だけに頼って作成したコンテンツのパフォーマンスはあまり良くありません(また、Google の最近のアルゴリズムアップデートの多くは、低クオリティの AI コンテンツの可視性を減らすことを目的としています)。 

詳細については、AI コンテンツ戦略を取り扱った Ahrefs のブログ記事をチェックしてみてください。 

ブラックハット SEO は有効な手法ですか?

ブラックハット SEO は、Google ランキングシステムの一時的な抜け穴を利用するアプローチです。 

ここで注意したいのが、それが「一時的」に使えるトリックに過ぎないという点です。ブラックハット SEO の有効期限は短く、多くの場合、ウェブサイトが Google の検索結果で順位を大きく落としたり、あるいはインデックス解除される可能性すらあります。パフォーマンスの長期にわたる向上を目指しているのであれば、こういったリスクを冒す価値はないでしょう。

まとめ

スタートアップの代表者や出資者によって書かれた、SEO とコンテンツマーケティングに関する以下の入門ガイドもぜひ読んでみてください(英語)。

この記事についてご質問やご意見がある場合は、X での投稿をお待ちしています。

Fur­ther reading