AI 検索のカギは「プレゼンス」 ― Ahrefs ブランドレーダーで切り拓く LLMO 戦略

竹内 渓太
LANY代表。Ahrefs公式アンバサダー。リクルートでSEO・広告・BtoBマーケに従事後、LANYを創業。Webメディアやサービスサイトなど幅広いSEO改善を支援し、多くの企業のコンサルティングに携わる。X・YouTubeでは「SEOおたく」として情報発信し、『強いSEO』『強いBtoBマーケティング』『強いLLMO』を出版。

Ahrefs の日本公式アンバサダーを務める株式会社LANY 代表の竹内(@take_404)です。

LANY は、AI 時代の検索マーケティングにおいて SEOLLMO の知見を駆使し、クライアントの事業成長を力強く推進するデジタルマーケティングエージェンシーです。

「検索」は今、劇的に変わりつつあります。

従来の検索マーケティングが「検索順位」という一つの戦場に集中していたのに対し、AI時代には、複数の検索面での「プレゼンス」をいかに最大化するか、という点が重要になります。

このAI検索時代に、私たちはどのように向き合っていくべきか?何をどうモニタリングし、どう対策すればいいのか?

今回は、Ahrefs ブランドレーダーを活用し、AI 時代の検索プレゼンスをモニタリングして対策する方法をお伝えします。

これまでは、ユーザーが何かを調べたいとき、そのほとんどが Google の検索窓にキーワードを入力することから始まりました。

しかし、今では私たちの検索行動は多様化しています。その背景には 2 つの変化があります。

1. Google の AI プロダクトと LLM の台頭

まず、Google の検索結果画面自体が進化しています。

特に象徴的なのが「AI Overviews」の登場です。ユーザーの質問に対し、AI が Web 上の情報を要約して提示することで、ユーザーは Web サイトにアクセスすることなく答えを得られる機会が増えました。

これは、従来の SEO が目指してきた「検索順位を上げてクリックを促す」というゴールに対し、新たな課題を突きつけていると言えるでしょう。

さらに、検索への入口は Google の検索画面だけではなくなりました。ChatGPT や Gem­i­ni のような大規模言語モデル(LLM)が、まるで対話相手のように質問に答えてくれるようになり、少しずつ利用率も高まってきています。

ユーザーはより自然な言葉で質問を投げかけ、AI がまとめた回答を直接受け取ります。このとき、AI がどの Web サイトやブランドの情報を引用・参照するか、もしくは自社のブランドを AI が推奨してくれるか、といった新たな課題が生まれました。

つまり、ユーザーが情報に触れる場所は、これまでの自社 Web サイトや SNS だけでなく、AI の要約文や LLM の回答にまで広がったのです。

2. 検索プレゼンスの最適化が重要になった

検索行動の変化によって、検索マーケティングを再定義する必要性が出てきました。

従来の検索マーケティングでは、いかにして特定のキーワードで上位表示を獲得し、自社 Web サイトへの流入を増やすかが最大のテーマでした。

しかし、AI 検索時代においては、それに加えて、ユーザーの新しいタッチポイントである AI 検索面で、自社ブランドが「選ばれる存在」になることが重要になってきます。

検索エンジン最適化によって Web サイトへの訪問者数を増やすだけでなく、AI Overviews や AI モード、LLM といった多様なタッチポイントで、ブランドの存在感を最大化する「検索プレゼンスの最適化」が、これからの時代を生き抜く鍵となります。

では、どうすれば AI に自社ブランドを「選ばせる」ことができるのでしょうか?

LLM は、膨大な Web 上の情報を学習データにしています。つまり、Web 上にあなたのブランドに関する「良い情報」や「信頼できる情報」が、自社サイトだけでなく第三者のメディアやブログ、SNS などにどれだけ存在しているかが、AI に選ばれるかどうかの鍵となります。

Web での評判や言及、専門性や信頼性を高める活動、これらすべてが LLM の応答に影響を与えると言えるでしょう。

この AI プロダクトや LLM 等の新しい検索領域における自社の立ち位置を把握するためには、従来の SEO のキーワードモニタリングだけでは不十分です。

検索順位や流入数だけでなく、Web 上でどれだけブランドが言及され、それがどのような文脈で語られているかを把握する新しいモニタリング手法が不可欠となります。

ここからは、この「検索プレゼンス」をどのようにして可視化し、AI 検索時代に対応していくかについて、Ahrefs ブランドレーダーの具体的な活用法を交えて解説していきます。

Ahrefs のブランドレーダーを活用して、検索プレゼンスを可視化する方法をご紹介します。

ブランドレーダーは、下記のような画面になっており、検索プレゼンスを可視化するための様々な指標が確認できます。

今回は、日本の主要車メーカーの 3 社のブランド名をサンプルに見ていきましょう。

1. AI Overviews でのブランド言及数

まず、AI Overviews でのブランド名の言及数の確認方法をお伝えします。

ブランドレーダーの「AI の可視性」のタブにある AI Overviews の箇所を確認します。それぞれのブランド名ごとに、AI Overviews にてどの程度ブランド名が言及されているかの総量を確認することができます。

AI Overviews の箇所をホバーすると、下記のように数値も確認可能です。

これは、トヨタ・日産・ホンダの3ブランドの AI Overviews における合計メンション数が 29,400 件ある内、トヨタのみが言及されているものが 13,188、トヨタと他社が同時に言及されているものが 3,328、他社のみが言及されているものが 12,844 あるという見方です。

たとえば、他社のみが言及されている AI Overviews の対象クエリを知りたければ、上記の 29.4K となっている箇所をクリックした先の画面のフィルターで下記のようにすれば対象のクエリが抽出できます。

自社も言及されるべきクエリで言及されていない場合には、要因分析を行って対策を実行指定いきましょう。

2. LLM でのブランド言及数

LLM も、AI Overviews と同様に確認することが可能です。Ahrefs が分析対象としているプロンプトには限定されますが、一定数以上のプロンプトにおける自社ブランド・他社ブランドの言及状況を確認することが可能です。

本記事を執筆している時点では、ChatGPT・Gemini・Perplexity・Copilot の 4 つの LLM における言及数を確認することが可能です。

LLM それぞれの中身を深掘りすることも可能で、下記のように実際の LLM の応答のローデータも確認することができます。

自社と競合が、どのようなクエリ(プロンプト)で、どのように言及されているのかを確認する際に、利用しましょう。

3. ウェブの可視性(サイテーション)

ウェブの可視性のタブでは、ブランド名が Web 上でどれだけ言及されているか(正確には何ページで言及されているか)を確認することが可能です。

先ほど記載したように、AI の回答には Web の情報が多いに利用されます。その際に、Web での評判や言及が LLM の応答に与える影響は大きいため、Web での言及数(サイテーション数)や、言及内容を確認することは重要になります。

SEO の検索順位を高めるために被リンクの量と質が重要なのと同様に、AI 検索で選ばれるブランドになるには、Web でのサイテーションの量と質が重要になってくるでしょう。

Ahrefs のブランドレーダーを活用しながら、自社と競合のサイテーション数をモニタリングしていっても良いかと思います。

今回は、3 つの機能紹介にとどめますが、ぜひ実際に Ahrefs のブランドレーダーを活用してみて、AI 検索時代に必要なデータを色々確認してみてください。

Ahrefs ブランドレーダーを活用すれば、AI Overviews や LLM、そして Web 全体でのブランド露出状況を数値として可視化できます。しかし、データを見るだけでは意味がありません。そのデータを元に、AI に「選ばれる」ための具体的なアクションにつなげることが重要です。

ここでは、AI 検索面を AI Overviews と LLM の 2 つに分け、それぞれの対策について解説します。

本記事では詳細な対策方法は割愛しますが、その根本にある LLMO(Large Lan­guage Mod­el Optimization)の考え方についてご共有します。

詳しくは、LANY ブログで LLMO の対策方法について解説しているブログがありますので、こちらを参考にしていただけますと幸いです。

1. AI Overviews の対策

AI Overviews は、ユーザーの検索クエリに対し、Web 上の情報を要約して Google 検索結果の上部に表示するような機能です。この要約に自社の情報が採用されるためには、Web サイト上のコンテンツが AI に「要約しやすい」形になっていることが重要になります。

LANY では、下記のようなフローチャートで対策を行っています。

まずは、AI Overviews に表出させたいキーワードで SEO で上位表示されているかどうかを確認します。正確にはクエリファンアウトと呼ばれる概念でそのキーワード以外の検索結果面も利用されておりますが、基本的には狙いたいキーワードでの上位表示が重要です。

上位表示を達成しているのであれば、ページが引用されるために、AI が引用しやすい文章に調整しましょう。AI が引用しやすい文章としては、下記のようなものがございます。

  • 結論ファーストで書かれている
  • Q&A 形式で質問と答えがわかりやすく書かれている
  • 箇条書きや表などを活用して構造的に書かれている

AI Overivews へのページの引用ではなく、回答でのブランド名の言及を狙う場合には、自社のページそのものを改善するのではなく、対策したいキーワードで上位表示されているページ群の中で自社への言及をしてもらう必要があります。

それぞれ対策を分けて考えつつも、基本的には「対策キーワードにおける検索上位を要約して作っているのではないか」という概念のもとで施策を打っていけば、大きくズレることはないでしょう。

2. LLM への対策( LLMO の考え方)

LLM は、ユーザーが入力したプロンプト(質問やニーズ)に対し、最も適切で信頼できる回答を生成しようとします。その際に重要となるのは、AI がブランドを合理的な選択肢として推薦するかどうかです。

LLM に選ばれるブランドになるためには、Web 上で「選ばれる理由」を構築する必要があります。LLM がブランドを評価する軸に合わせて、自社の強みを Web 上で証明していきましょう。

この「選ばれる理由」をWeb上に構築するために、以下のような手法を組み合わせて実行します。

1. オウンドメディアでの一次情報発信

自社サイトを一次情報源として、高品質で専門性の高いコンテンツを継続的に制作します。これにより、AI が参照する信頼できる情報源としての地位を築きます。

2. アーンドメディアでのサイテーション獲得

プレスリリースや広報活動、第三者メディアでの紹介を通じて、自社に関するポジティブな言及(サイテーション)を増やします。Web 上での評判や言及は、LLM の応答に大きな影響を与えます。

3. ペイドメディアの活用

有料広告などを通じて、ブランドが Web 上で広く認知されている状態を作り出すことも重要です。比較メディア等への掲載も有効です。

なお、AI がブランドを推奨する条件は、人間がそのブランドを選ぶ条件と本質的に重なります。「AI に選ばれる=人にも選ばれる」につながるため、この二つを切り離して考える必要はありません。

AI を通して意思決定する人間にきちんと自社のブランドを届けるためには、AI にどんな強みを伝える必要があるか?を考えて推進しましょう。

AI 検索時代は、従来の SEO に加え、「検索プレゼンス」という新しい視点が不可欠です。検索順位だけでなく、AI Overviews や LLM といった多様なタッチポイントでのブランドの存在感を最大化することが、これからの検索マーケティングの鍵となります。

そのために欠かせないのが、Web 上のブランド言及を多角的にモニタリングする Ahrefs ブランドレーダーです。

ぜひ本記事でご紹介した方法を参考に、ブランドレーダーを活用し、AI に「選ばれるブランド」への道を切り拓いていきましょう。