こんにちは!Ahrefs(エイチレフス)日本マーケティング統括の Taka です。
最近、日常の検索行動において、ある確かな変化を感じています。検索結果に表示される AI の概要を確認するだけで、当初の目的が完結してしまう。さらに詳細な情報を求める際も、サイトを訪問するより先に AI との対話を選択する機会が、明らかに増えています。
今、私たちの検索行動の変化は、静かに、しかし決定的なスピードで進んでいます。AI による概要(AI Overviews)が瞬時に回答を提示してくれるようになったことで、かつてのように「リンクの先にある情報を探しに行く」必要がなくなる場面が増えているからです。
こうしたゼロクリック検索の広がりを前に、「これからの SEO はどうなるのか」と、どこか落ち着かない気持ちを抱えているマーケターの方も多いかもしれません。
ただ、今の状況を少し引いた視点で眺めてみると、これは決して「検索の終わり」を意味するものではないことが見えてきます。むしろ、検索体験そのものが次の形へと再定義されている過程なのだと感じています。
今回は、この AI 検索時代の変化をどう構造的に捉え、向き合っていくべきか。AI 時代の SEOを考える上で欠かせない視点を、いくつか整理してお伝えできればと思います。
皆さんは今日、何度くらい検索を利用されましたか? その中で、実際にどこかのサイトを訪問した回数は、どれくらいだったでしょうか。
おそらく、「検索はしたけれど、結果画面で答えが得られたのでクリックはしなかった」というケースが、いくつか思い当たるはずです。この、ウェブサイトへの流入を伴わない行動が、いわゆるゼロクリック検索です。
かつては天気やスポーツの試合結果など、単純な事実を知るためだけのものだったこの現象。しかし今では、レシピや旅行のプラン、さらにはYMYLに関連する様な「NISA と iDeCo の違い」といった少し複雑なトピックまで、AI が即座に答えを生成してくれるようになりました。
こうした検索行動の変化は、単なる一時的な流行ではありません。 キーワードを投じて情報を自ら「採掘」する時代から、クリックを前提とせずに「回答を享受する」時代へ。検索という行為のあり方そのものが、今まさに変わろうとしているのかな、と感じます。

ゼロクリック検索でSEOが効かない!?
ゼロクリック検索が増えることで、一体何が起きるのか。最も顕著なのは、自社サイトへのアクセス数の減少でしょう。クリックという目に見える反応が減ることで、「これまでの施策が通用しなくなったのではないか」「SEO はもう終わりではないか」といった不安を抱えるマーケターの方も、少なくないはずです。
ただ、Ahrefs として客観的なデータを見つめていると、少し違う景色が見えてきます。 SEO が効かなくなったのではなく、検索という行為の役割と定義が、根本から変化しているように思えます。
以前、汐留 PR 塾の自社調査データを Ahrefs独自の視点で解析させていただいたことがあります。
その調査では、AI の影響が本格化する前後で、検索経由のアクセスが急減していました。しかし、その裏側を Ahrefs ブランドレーダーで解析してみると、非常に興味深い 2 つの特徴が浮かび上がってきました。
- コンテンツ量が増えているのに、クリックが減るという「ねじれ」
- AI による回答の中での「引用」の大幅な増加
つまり、サイト自体への直接訪問は減っても、生成 AI が回答を作るための「重要な情報源」として、そのコンテンツが積極的に選ばれ、活用されていたわけです。
ゼロクリック検索が当たり前になる今、これまで通り「クリックされない = SEO の効果がない」と捉えても良いものなのか。 検索における真の変化を、見落としているのではないか。 そんな疑問が、どうしても浮かんできます。
ここからは、AI によって形を変えつつある私たちの検索体験と、その根底にある構造について、もう少し深掘りしてみましょう。
まずは、生成 AI の登場によって、私たちの検索という行為がどう変化したのか。その構造を、改めて整理しておきたいと思います。
従来の検索行動
- 検索窓にキーワードを入力
- 検索結果のウェブサイトにアクセス
- アクセスしたページを読むことで情報を取得
変化した検索行動
- 検索窓にキーワードを入力
- AI が複数ページから取得した情報を要約し、回答として提示
- AI より与えられた回答で情報を得る(ゼロクリック検索)
必要に応じて深掘りなどのために検索結果のウェブサイトをクリック
これまでの検索は、ユーザーがサイトを訪問することを前提に設計されていました。 そのため、私たちマーケターも「いかに上位に表示させ、クリックを勝ち取るか」に注力してきました。
ですが、今の検索はそこから大きく逸脱し始めています。 AI による回答で満足が得られる場合、クリック数とユーザーの満足度が必ずしも一致しなくなっている。 これからの検索行動は、AI の概要文を読んで即座に解決する「ゼロクリック検索」と、その裏付けや専門的な意見を求めてサイトを訪れる「ディープクリック」の二極化が進んでいくのかな、と。
ここで一つ、考えてみてほしいことがあります。 もし、ユーザーが求めていた答えが検索結果の画面上だけで完結し、本人がその結果に満足していたとしたら。 クリックされなかったからといって、その検索行動は果たして「失敗」だったのでしょうか。
おそらく、そうではないはずです。 求めていた情報が得られ、理解が深まったのであれば、それは検索体験として十分に成功といえるのではないかと思います。
変化の本質を見つめる時に大切になるのは、「クリックされない ≠ 検索が失敗」という視点を持つこと。たとえクリックが発生していなくても、ユーザーは検索結果の画面上で、すでにコンテンツの一部に触れ、情報を消費しています。その瞬間、ブランドを認知し、信頼を寄せている可能性すらあるのです。
クリック数の減少だけを追っていると、どうしても不安が募るかもしれません。ですが、検索体験の構造そのものが「情報を探す場」から「理解を得る場」へと進化しているのだと考えれば、私たちが次に打つべき手も、自ずと見えてくる気がしています。
国内外の調査データに目を向けると、ゼロクリック検索の増加はもはや一過性の現象ではありません。 もはや、世界的な潮流であると分かります。日本国内においても、サイバーエージェント社が実施した調査で、ゼロクリック検索の割合は全体で 60% を超え、10 代に限れば 70% を上回るという結果が出ています。なぜ、これほどまでに「クリックしない検索」が支持されているのか。その背景にある 3 つの要因を整理してみます。
① 情報収集の即時化
生成 AI からの回答や AI による概要で、ユーザーは初期ニーズを検索結果画面(SERP)上で完結できるようになりました。
「2 月の祝日は?」や「 お店の営業時間は?」、あるいは「 〇〇の効果は?」など、「今すぐ知りたい」、「とりあえず事実だけ確認したい」といったクエリでは、ユーザーは結果さえ分かれば満足するものです。 わざわざ個別のコンテンツを読みに行く手間を省けるわけですから、ゼロクリック検索が支持されるのは、ある種、必然かもしれません。
② 会話調・質問型クエリの増加
検索行動の変化に伴い、クエリの構造そのものも変わってきています。
例えば、「A と B の性能はどう違うの?」や「 商品名 店舗名 売り場はどこ?」といった会話調や質問型のクエリへとシフトしています。こうした問いは AI との相性が非常によく、精度の高い回答が生成されやすい。 結果として、検索結果画面だけで完結するケースが増え、ゼロクリック率が上昇しているわけです。

③ 比較・判断フェーズの前倒し
これが最も興味深い変化ですが、AI 検索では複数のサイトの情報が要約されて提示されます。
これまでは、ユーザー自身が複数のサイトを巡り、時間をかけて比較・判断をしていました。 それが今では、クリックする前の段階で「このサービスは信頼できそう」「このブランドを覚えておこう」という理解や印象形成が起きてしまう。
それぞれのサイトへのクリック数は、確かに減少しているかもしれません。 ですが、これは検索という行為が、より効率的で新しい形に進化している結果なのだと考えることもできます。
ゼロクリック検索が主流になると、「クリックされないなら、SEO をする意味がないのでは?」と感じる方もいるかもしれません。
確かに、AI 時代の SEO は、これまでのようにクリック数や流入数だけで KPI を測っていては、本質を見誤ることもあるのかな、と。 ですが、AI が回答を生成するための「情報源」は、あくまでウェブ上のコンテンツです。 この点に注目して、評価の視点を少し切り替えてみるのが良いかと思います。
① 検索結果でどのように言及されているか
これからの SEO の鍵となるのが、「AI 可視性」という考え方です。 自社のブランドやサービスが、AI の回答の中にどれだけ引用・言及されているか。それを測る指標です。
たとえクリックされなくても、AI による概要で「おすすめのツールは〇〇です。なぜなら……」と表示されていれば、ユーザーの認知には確実に繋がります。 自社のコンテンツが、どのような文脈で引用され、競合とどう比較されているのか。 そこを分析するのが、これからは重要になるのではないかと思います。
また、ユーザーが AI の回答を信頼してゼロクリック検索を行っているとを考えると、そこに自社ブランドが表示されることは、ユーザーからの信頼獲得そのものだと捉えることができますね。

② ブランド検索・指名検索へのつながりを見る
現在の検索行動は、即時解決する「ゼロクリック検索」と、深い理解を求める「ディープクリック」に二極化しつつあります。
AI の回答に自社の情報が繰り返し表示されれば、「このジャンルなら、あのサイトが詳しそうだ」という印象が残る。 その場ではクリックされなくても、後でさらに興味を持った際、ブランド検索や指名検索に繋がる可能性が高まるわけです。
指名検索をするユーザーは、非常に意欲の高い、いわば「高品質なリード」と言えます。 流入数だけでなく、最終的な成果に結びついた割合(CVR)の変化まで注目して分析することをおすすめします。
③ SEO は“流入施策”から“認知施策”へ
ゼロクリック検索では、ユーザーとブランドの「最初の接点」の形が変わりました。
検索結果画面で AI から与えられる回答が、ユーザーにとっての第一印象になり、そこからブランドイメージが形成されていきます。 だからこそ、AI 時代の SEO では、従来のような「流入を稼ぐための施策」に加えて「AI の可視性を高める」こと。そして、ブランドとしての信頼を積み上げるための施策に比重を置くことがポイントです。
AI 検索時代に、私たちはどのように指標を分析し、SEO 戦略を立てるべきか。 これからの時代に意識したいポイントを、いくつか整理してみます。
① 検索トレンドの変化を把握する
これからは、単純な検索ボリュームやクリック数だけを追うのではなく、キーワードそのものがどう成長し、どう衰退しているかを捉えるのが重要です。
AI 検索の登場によって、クエリは会話調や比較系といった「ロングテール」へシフトしています。 こうしたキーワード分析には、Ahrefs キーワードエクスプローラーが活用できます。
キーワードエクスプローラーでは、キーワードごとの成長予測や検索クエリについても調べることが可能です。


また、より深い解析が必要な場合は、Ahrefs MCP サーバーを用いるのも効果的かな、と。 ロングテールキーワードの抽出や、クエリの全体構造を把握することで、 AI の回答から派生した指名検索や、特定の機能を深く知ろうとする「ディープな検索」の兆しを、いち早く見つけることができます。
ロングテールキーワードの分析では、会話調・質問型クエリの中に、「〇〇の使い方」や「□□ 機能説明」などといった、生成 AI の回答や AI による概要から派生した指名検索・ブランド検索などのディープ検索が含まれていないかも観察しましょう。


② ブランド言及の推移を追う
単純な検索ボリュームだけでなく、生成 AI の回答や AI による概要に表示されているか、どのような意図で含まれているかを、Ahrefs ブランドレーダーで分析してみるのも面白いと思います。

AI が回答を生成するときに重要視しているのは、参照先のサイトが「信頼できる情報源か」ということ。信頼性を高める方法の一つは、やはり良質な被リンクを積み重ねること。Ahrefs のサイトエクスプローラーで被リンクを分析し、ドメインの信用スコアを地道に高めていくという戦略は、AI 時代でも依然として有効だと思います。

被リンク施策については、こちらもぜひご覧ください。
③ 検索結果全体での “ AI の可視性 ” を見る
AI の可視性を分析する際は、SERP 全体で自社がどれだけ表示されているかに注目しましょう。
単に引用されているかだけでなく、序文で紹介されているのか?競合との比較材料として扱われているのか?など、文脈まで読み解くことで、AI が自社をどう評価しているかの傾向が見えてきます。
ゼロクリック検索では、AI の回答がユーザーとの「最初の接点」になる可能性が高いです。なので、 どのような文章で引用されているかを分析し、ブランディングに活かすのが、これからの AI 時代の SEO の主要路線になるのではと感じています。

このように、クリック数や検索結果での表示順位、CTR(クリック率:Click Through Rate)だけでは見逃していた部分に、AI 検索時代の SEO 対策の本質が隠れているのです。
AI 検索時代において、ゼロクリック検索は、もはや避けることのできない変化です。
検索行動の構造そのものが変化し、クリック数の減少だけを見て、 SEO 施策の良し悪しを判断することがもはやできない時代。大切なのは、検索を「アクセスを得るための手段」としてだけでなく、ブランドイメージを定着させ、信頼を獲得するための「入り口」だと捉え直すこと。AI にどれだけ引用され、どのように言及されるか。そこにこれまで以上に注力してみると良いでしょう。
検索結果が AI による概要に置き換わったとしても、その先で情報を参照しているのは、私たち人間です。だからこそ、これまで以上に検索体験の裏側にある意図や文脈、そして自分のブランドがどう語られているかを読み解くことが、重要になるはずです。
ゼロクリック検索による変化を読み解き、ユーザーの本質的な深いニーズに応え、新しいコンテンツ戦略を立てていく。その際のパートナーとして、ぜひ Ahrefs をご活用ください。
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