SEO 全般

Ahrefs Evolve で得た学び:マーケティングアプローチに生まれた 4 つの変化

スー・ チュアン ・オン
Ahrefs|シニアコンテンツマーケター。 これまで 6 年間、デジタルマーケティングに携わり、アジアで開催される業界最大のカンファレンス(TIECon および Digital Marketing Skill Share)で数回講演を行っている。気になることを Substack(サブスタック)にも投稿中。
Ahrefs Evolve は無事に幕を閉じました。個人的に一番の思い出は、イベントでの皆さんとの出会いです。

今回のカンファレンスで特に良かったと感じた点は、参加者の皆さんの多様性です。開催拠点がシンガポールだったおかげで、ベトナム、タイ、フィリピン、インドネシア、インド、マレーシア、中国、韓国、日本といった今までお目にかかる機会がなかった地域の SEO・マーケティング担当者に会うことができました。世界的な SEO カンファレンスではアジア地域のマーケターはあまり目立っていないのが現状ですが、活力と業界の盛り上がりにおいてはもちろん負けていません。

韓国のマーケターと Ahrefs チームの写真
写真は Eli­funt 社のイェジ・キムさん提供
クリス・D さんと私の写真
写真は Page­Fly 社のクリス・D さん提供

参加者の皆さんと対面で交流できたことも大変有益でしたが、登壇スピーカーもまた素晴らしく、どれも非常に実践的な内容の講演ばかりでした。今回のイベントでは、Google やその他のマーケティングチャネルをよりうまく活用するため、自国に帰ってすぐに業務に応用できるコツやスキルが学べたことでしょう。

私も同じく、たくさんの知識を吸収することができました。

この記事では、筆者がこのイベントから学んだ重要ポイントをいくつかシェアします。新しく学んだこと、試してみたいこと、そして今後はアプローチを変えて取り組んでみようと考えていることなどについて触れていきますので、ぜひ続きをお読みください。

Google の「ヘルプフルコンテンツアップデート」が行われる前は、SEO 担当者なら誰もが堅実で安全性の高い戦略を実行していました。 

キーワードを調査し、コンテンツ最適化ツールを使用してコンテンツを改善、オンページ SEO(内部対策)が適切にされていることを確認し、リンクを何件か構築さえすれば、ページが上位にランクインされるようになっていました。

しかし、このようにして上位に表示されるコンテンツはネットユーザーが求めているものではありませんでした。

サイラス・シェパードさんの講演スライド
サイラス・シェパードさんの講演スライド

たとえば、パスタのレシピが必要な人にパスタの歴史についての情報はいりません。メールマーケティングを始めたいと考えている人には、何十ページからなる詳細記事よりもシンプルなガイドのほうが適切でしょう。最高のランニングシューズを求めている人が見たいのは、Amazon からとってきた商品説明の概要ではなく、実際におすすめの商品です。

このような「必要でない」情報を上位にランクインさせることで、SEO としての KPI(重要業績評価指標)は達成できても、ネットユーザーや顧客の助けになることはできていなかったのです。ひいては、インターネット全体の利益にも貢献できていませんでした。

Google 検索から皆さんの人生を変えるような情報を最後に見つけたのはいつですか?筆者はこれまでにそんなことがあったのかさえ思い出せませんでした。

だからこそ、私も今回のカンファレンスで講演したサム・オー(Ahrefs マーケティング VP)と同じように、SEO 脳から抜け出したいのです。 

サムの講演

この講演でサムは YouTube に焦点を当てて話していましたが、同じことは文章コンテンツにも当てはまります。

「○○とは何?」や「○○の重要性」といった決まりきった無意味なテーマの型を使いまわし続けるループから解放されたい。「正しいコンテンツ作成法とは、すでに上位ランクインしているものを単純にコピーすること」という考えをやめ、ユーザーに合った内容のコンテンツを世に出したい。ユーザーの検索クエリから何についてコンテンツを作ればいいかまったくヒントがつかめなかったとしても、彼らが真に読みたいと思っているコンテンツを知恵を絞って考え出したいんです。

嬉しいことに、以前からすでにこのブログでこういった「仕事観」を実践する機会が持ててはいましたが、Evolve カンファレンスで聴いたサムの講演が、今後もこの考え方で続けていけばいいのだということを教えてくれました。

Ahrefs ブログの私の投稿記事

もちろん、SEO なんて無視すればいいと言っているわけではありません。キーワード調査でネットユーザーの多くが何について知りたがっているかを把握したり、検索意図を分析してユーザーが特定のキーワードを検索する際にどんな情報を求めているのかを確認することも大切です。

とは言っても、実際のところ、他社と同じようなコンテンツは作りたくありません。コンテンツ作成は自社ブランドの構築にも重要だからです。だからこそ…(次のポイントに続く)

Evolve で行われた講演のほとんどの内容を一言でまとめるとしたら、それは「ブランド構築」です。

アマンダ・キングさんの講演スライド
アマンダ・キングさんの講演スライド
アレイダ・ソリスさんの講演スライド
アレイダ・ソリスさんの講演スライド

SEO においても、自社ブランド確立の重要性が明らかに高まってきています。というのも、Google にとって SERP で大手ブランドを優先的に上位表示させることが、 生成 AI によるスパムを駆逐する最も簡単な方法だからです。 

AI スパムの対策は困難を極めたため、結局 Google は敵と真正面から戦うのではなく、回避策を講じました。 つまり、サイト掲載記事 1 件 1 件の品質評価をあきらめ、Forbes、WebMD、TechRadar、BBC といった信頼できる大手ブランドを以前より多くのSERP 順位で昇格させるという強引な方法での問題解決を選んだのです。

結局のところ、Google にとって、数千もの小規模ブランドすべてを相手にするよりも、少数の大型ブランドに対象を絞ってアップされるコンテンツ内容をチェックする方がはるかに簡単なのです。Google は「信頼できる」ブランド、つまり昔からの実績があり、ビジネスの透明性の点でも優れたブランドを人気の SERP で上位へと押し上げることで、ユーザーが検索時に AI 作成の詐欺広告に遭遇するリスクを効果的に低減しているのです。

では、Ahrefs のコンテンツ担当チームの場合、自社ブランド確立とはどのような形で実現が可能なのでしょう?まだ正確にはつかめていませんが、今考えているアイデアの 1 つは、コンテンツ、キャンペーン、クライアントとのコミュニケーション媒体の名前にブランド名をもっと使っていくことです。今のところ自社開催のカンファレンスを Ahrefs Evolve と呼んだり、ポッドキャストに Ahrefs pod­cast、YouTube チャンネルに Ahref­sTV、ウェビナーに AhrefsLive という名前をつけたりしていますが、こういった名前をもっと増やしていくこともできます。

たとえば、コンテンツ作成のプロセスについてブログで紹介する場合、それを「Ahrefs 流のコンテンツの作り方」などと名付けるほうが良いのです。こうすることでブランド検索の増加につながる可能性がありますし、ブランド検索のボリュームが実際に Google が使うランキングシグナルの 1 つかもしれないという調査結果も出ています。

アレイダ・ソリスさんの講演スライド
アレイダ・ソリスさんの講演スライド

しかし、すでに存在している手法をそのまま引っぱってきて、ブランド名を頭に付ければいいということではありません。あるアプローチについて紹介するなら、他にはないユニークな内容のものでなければなりません。では、ユニークな手法とはそもそもどのようにして確立するのでしょうか?実際の業務経験をきちんと積んでこそ、人とは違う意見を持ち、それを紹介できるようになります。と言うわけで…(次のポイントへ)

Google 側も検索ユーザー側も、専門的な知識が学べたり、自分だけの感動や気づきの体験が得られるようなコンテンツを求めています。しかし、「そのようなコンテンツ作成のために頑張った」と口で言うだけなら誰にでもできるし、努力が足りません。さらに一歩踏み込んで、自分が実際に取り組んだプロセスと結果をシェアすることが必要なのです。

たとえば、サイラスさんの講演では、文字通り「靴を半分に切ってテストする」ウェブサイト、Run­Re­peat の紹介がありました。同サイトの靴レビューでは、実際に靴をテストする様子を見せるユニークな GIF 画像や動画を見ることができます。

RunRepeat が靴を半分に切っている例

これこそが Google が上位ランクインさせたいコンテンツなのです。オーガニックトラフィックを見れば、それがはっきりとわかります。

RunRepeat のオーガニックトラフィックのグラフ

結局のところ、AI には靴を半分に切って見せることはできませんから…(少なくとも今のところは。)さらに、こういったユニークなコンテンツは他のサイトが真似するのも困難です。靴をわざわざ何足も購入し、発煙装置や顕微鏡といった実際の検査機器を入手、独自の検査方法を考案してアスファルトの上から水中までどこでも実際に走って検証するというニッチなウェブサイトは、彼らくらいのものでしょう。

こういったアイデアを本当に実行してみることで、コンテンツ作成の経験が積めるだけでなく、その努力をオーディエンスに見てもらうための記録としても残ります。 サイラスさんも講演で指摘したように、Google レンズはサイト上の掲載画像がオリジナルのものかどうかを認証することができます。ほとんどのアフィリエイトサイトはメーカー提供の写真を使っていますが、RunRepeat の掲載写真はすべて独自のものです。 

サイラス・シェパードさんの講演スライド
サイラス・シェパードさんの講演スライド

筆者もコンテンツ作成においてこれに似たことをいくつか始めました。たとえば、マーケターを対象に「一番好きな本」についてリサーチしたとき、単に本からの引用をシェアするだけではなく、彼らに自撮り写真を送ってもらうように頼みました。

マーケターに自撮り写真をシェアするよう依頼

しかし、今思えばもっと改善できたところもあります。たとえば、旅行 SEO に関するブログ記事を書くにあたって 8 人の SEO 担当者にインタビューをしたことがありました。今思えば、Zoom のスクリーンショットを撮ったり、対面インタビューで一緒に写真を撮らせてもらい、インタビューの様子を記事に載せて紹介することも容易にできたはずです。

以前担当した SEO コンテンツ作成に関するブログ記事についても同様です。コンテンツ作成プロセスを初めから最後まで説明した動画を埋め込むこともできました。

この点に関しては改善点がたくさんあります。そして動画といえば…?

Tik­Tok が Z 世代にとっての新しい検索エンジンであるということは、もはや周知の事実です。(「 Z 世代」という単語を使うたびに自分との年齢差を実感せずにはいられません…)シャーロット・アンさんが講演で取り上げたように、TikTok はこの流れを十分認識しており、実際の検索エンジンへと成長を遂げることへの関心を強めています。

シャーロット・アンさんの講演スライド
シャーロット・アンさんの講演スライド

ライターである私が言うのもなんですが、今後はテキストベースのコンテンツはコンテンツ形式として好まれなくなるのではないかという若干の懸念を抱いています。コンテンツ作成の専門家であるネビル・メドーラさんは自身の発信するニュースレターで次のように語っています。

ネビル・メドーラさんがブログ記事よりも多くのショート動画を見ていることを示した図

SEO 担当者の大多数は依然としてテキストコンテンツの作成とウェブサイトの最適化に重点を置いていますが、アマンダ・キングさんやその他多くの講演者が指摘したように、今後の SEO 施策はもはやウェブサイトだけを対象にしていれば良いのではありません。 

あらゆる面を考慮した戦略が必要になってきます。 

アマンダ・キングさんの講演スライド
アマンダ・キングさんの講演スライド

Google の SERP には、動画、ツイート、ナレッジパネル、画像といった幾つもの機能が次々と増えており、現在および将来の SEO は、動画(一般的な尺のもの又はショート動画)の作成、オリジナル写真や画像の制作、本の出版など、あらゆる形式の情報の検索パフォーマンス向上を目指すことが鍵になってきます。

要するに、SEO はついにマーケティングの一部として戻りつつあるのです。

好むと好まざるにかかわらず、TikTok を含めたショート動画は、現在すでに主要な情報チャネルとなっており、今後もそれは変わらないでしょう。

私自身は Tik­Tok ユーザーではないものの、シャーロットさんの成功例から、ショート動画プラットフォームでのパフォーマンス向上について多くの刺激的なアイデアがもらえました。

シャーロット・アンさんの講演スライド
シャーロット・アンさんの講演スライド

実は、私の同僚レベッカTik­tok を使い始めていて、Ahrefs でも少しずつ時代の流れに合った情報発信を試みています。

そういう私も近いうちに Ahrefs の YouTube チャンネルの動画に登場することになるかもしれませんし、TikTok、YouTube ショート、Instagram リールといったショート動画の作成を始めるかもしれません。乞うご期待!

まとめ

SEO 担当者によって置かれた状況はそれぞれ異なるため、今回のカンファレンス講演内容から実際の業務に応用できるポイントは人それぞれ違ってくるでしょう。今回ご紹介したのは筆者が個人的に最も参考になったと感じた点で、今後業務へのアプローチを変えていくヒントをくれました。

他の参加者が今回のカンファレンスから得た気づきや学びについて知りたい場合は、ぜひ下に転載した投稿をチェックしてみてください。

Ahrefs Evolve から学んだこと
Ahrefs Evolve から学んだこと

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