SEO 全般

すぐれた SEO だけではもう通用しない—成果を分けるのは“本物のマーケティング”

デスピナ・ ガヴォヤニス
Ahrefs | シニア SEO スペシャリスト。 8 年以上にわたり BtoB、E コマース、SaaS の各分野で活躍し、国民的メーカー・ブランドの業務成長に携わった経験も持つシニア SEO コンサルタント。実は楽観主義者で、困難に直面してもポジティブな側面に目を向けることを忘れずに、日々を楽しんで過ごしている。

SEO は、クリエイティビティに富む人が知恵を絞って問題解決にあたる場です。しかし今では、「キーワードを AI ツールに入力する」「型どおりのチェックリストに従ってコンテンツを作成する」「リンクを構築する」「トラフィックが流入してくるのを期待して待つ」など、決まりきったやり方に陥りがちです。

以前はそれが通用していたかもしれませんが、AI を活用した検索の台頭により、SEO 担当者が技術者としての役割を担う時代は幕を閉じようとしています。その代わり、真のマーケターとして活躍する時代が到来しているのです。

検索は、もはや Google だけのものではありません。ランキングはクリックを保証するものではなく、コンテンツを作成しただけでは人の目に留まりません。

SEO 担当者として勝ち続けたいのであれば、型にはまった戦略を捨て、真摯にマーケティングに取り組む必要があります。

SEO はサイロ化した状態で発展しました。ページの構成方法、リンクの構築方法、そしてアルゴリズムの要件を満たす方法さえ知っていれば、ブランドによっては、マーケティングチャネルすべてを合わせたよりもはるかに多くのトラフィックを獲得できていました。

トラフィックの 85% 以上がオーガニック検索から来ているウェブサイトの Google アナリティクスのスクリーンショット。

オーディエンス心理、ブランディング、プロモーション、配信戦略といったマーケティングの核となる要素を理解していなくてもうまくいっていたのです。

キャンペーンを打つ必要も、注目を集めるためにお金を使う必要もありませんでした。そうした役割は、すべて Google が担ってくれていたからです。 

一方、ブランドマーケティング、SNS、E メールマーケティング、コンテンツの提供に携わるマーケターは、ほんのわずかな注目を集めるために、何倍もの努力をしなければなりませんでした。ストーリーを伝え、オーディエンスを研究し、ディストリビューションの工夫に奔走し、少しずつ信頼を築くということをしていたのです。

今や AI のおかげで、SEO が持っていた優位性は大幅に低下しました。そしていつの間にか、「優れたマーケティング」こそ、業界のほとんどが見逃していた、ランキングに多大な影響を与える重要な要素になっているのです。

この事実は、以下が示しています。

  • トラフィック分布:Google は SEO 以外からもトラフィックを獲得しているサイトを評価している。 
  • E‑E-A‑T:信頼性のある本物のブランドは、可視性が高くなる。
  • サイトの品質:ブランド力のあるサイトは、権威性があると認識されやすい。
  • マルチメディア:画像や動画は、ブログよりも可視性が高い。
  • 検索意図:重要なのは、キーワードを詰め込むことではなく、真のニーズを満たすことである。

Google は現在、別の場所で需要を生み出し、その結果直接言及され、検索されるブランドを評価しています。こうしたブランドは、非ブランドの検索クエリでもより多く表示される傾向があることを示すデータも増えています。

たとえば、AI Overview です。 

AI Overview の表示に関係する上位の要素は、ブランドの言及、ブランド名を含むアンカーテキスト、そしてブランド検索です。

AI Overview におけるブランドの出現と相関するファクター。

つまり、ユーザーがブランドを検索し、話題にし、名前でリンクを張れば、ブランド名が含まれない検索クエリであっても、Google がそのブランドを上位に表示する可能性が高まるのです。 

Google は、もはや優れた SEO を評価するだけでなく、優れたマーケティングとブランド認知度も評価するようになったという大きな変化が到来していると言えるでしょう。

実例が示す適切な SEO と適切なマーケティングとは

あまり注目が集まっていないローカルブランドを例に挙げ、この仕組みを実際に見てみましょう。

配管業者の Prox­im­i­ty Plumb­ing は、地元の配管関連のキーワードでは常に検索上位にランクインしています。しかし、SEO の統計データを見ると、競合他社と比べてそれほど優れているとは言えません。

競合他社に対する Proximity Plumbing の SEO メトリックの比較チャート。

完璧ではないにせよ、全体的にまずまずのレベルでしっかりと行っています。

それでも、このブランドが地域内で最も競争の激しいキーワードで 31% のトラフィックシェアを獲得しているのは、まさにその積み重ねが理由と言えそうです。

Proximity Plumbing が 31% のトラフィック シェアを獲得していることを示している Ahrefs のドメイン別トラフィック シェアレポート。

彼らは、大量の SEO コンテンツや被リンクを武器にする大規模サイトでさえも寄せつけないほど一歩先を行っています。 

優れた SEO に加えてしっかりとしたマーケティングも行っており、それが功を奏しているのです。

たとえば、この会社は毎月 1,000 件以上のブランド検索を獲得しています。 

Proximity Plumbing が毎月約 1,050 件のブランド検索を獲得していることを示す、Ahrefs のオーガニックキーワードレポートのスクリーンショット。

1,700 件を超えるレビューが寄せられ、平均評価はなんと星 4.9(まさに信頼性の証!)。また、本物のビジネスであることを証明する 1,000 枚以上の実際の画像と動画が公開されています(これぞ信用性!)。

1,700 件を超えるレビューを獲得したことと、1,013 枚の写真がアップロードされていることを強調表示したProximity Plumbing の Google ビジネスプロフィールのスクリーンショット。

そればかりか、 LinkedIn には 7,000 人を超えるフォロワーがいます。 

7,000 人を超えるフォロワーを持つ Proximity Plumbing の LinkedIn プロフィール。

筆者が知る限り、LinkedIn を使っている配管業者はこの会社だけです。 

確かに、Proximity Plumb­ing の LinkedIn コンテンツはトップレベルではありませんが、長年にわたってコツコツと投稿を続け、基本をしっかり押さえてきています。

その積み重ねが大きな成果につながり、Proximity Plumb­ing は、その地域で最も信頼され、頼りになる存在として認識されているのです。

こうした姿勢こそが、SEO チームが真のマーケターへとレベルアップするための道筋です。単にランキングの順位だけを追いかけるのではなく、時間とともに蓄積されていくブランド価値をいかに築くか。Proximity Plumb­ing の事例がその答えを示してくれています。 

しっかりとした SEO とマーケティングの組み合わせは、手抜きのマーケティングをしている優れた SEO よりも大きな成果をもたらすのです。 

では、どうすれば真のマーケターへとレベルアップできるのか?その方法をこれからご紹介していきます。

テンプレート通りの SEO から真のマーケティングへの転換は、すでに各業界で起こり始めています。

単にアルゴリズムを攻略したからではなく、これから紹介する取り組みを通して SEO をより包括的なマーケティング戦略に組み込んだことで、競合よりも上位に教示されるブランドが増えてきています。

1. 戦略が生きる徹底的なオーディエンス調査

SEO は長年、キーワードの検索ボリューム、検索意図を示す修飾語、オートコンプリート機能といった間接的なシシグナルに頼って、ユーザーの求めているものを理解しようとしてきました。これはユーザーデータとしては偏りがなく、依然として非常に役立ちます。

Ahrefs のキーワードエクスプローラーなどのツールを使えば、ユーザーが実際に検索するフレーズとその頻度を正確に把握できます。

シドニーの配管キーワード例を含む、Ahrefs のキーワードエクスプローラーのレポート。

このような定量データは検索の価値を非常に高めますが、現代のマーケティングにはそれ以上の定性的な洞察も求められます。

「どのキーワードで上位を狙うべきか?」という問いから、「このユーザーはどのような問題を解決しようとしていて、それをどのような言葉で表現しているのか?」という問いへと一歩踏み込みましょう。

つまり、キーワードツールから得られる定量データと、より深いオーディエンスのインサイトを融合させ、ユーザーの動機、言葉、行動を理解するのです。

具体的な方法を紹介します。 

  • Spark­Toro を使用して、オーディエンスの活動場所と影響力のある人物を見つける
  • Reddit、Quora、YouTube のコメントを分析し、オーディエンスの言葉を正確に捉える
  • ユーザーにインタビューを行い、意思決定の要因、好み、感情トリガーを明らかにする
  • サポートチケット、チャットログ、営業電話を分析し、質問や反論を洗い出す
  • Wyn­ter や UserTest­ing を使用して、実際に共感を呼ぶメッセージングをテストする

こうした方法でオーディエンスを深く理解すれば、コンテンツは彼らの言葉で表現され、リアルな悩みに対処し、本人すら気づいていなかった課題に対する答えまで提供できるようになります。

2. 意図的なブランド構築

SEO 担当者の多くが、ブランド構築は自然に起こるものだと思い込んでいます。上位表示を狙って、頻繁に記事を更新し、何度か言及されれば、ブランドは自然と形成される、と。

しかし、可視性を得ることはそんなに単純なものではありません。ブランドは、ブログを投稿していれば勝手にできあがるものではなく、意図的に構築するものなのです。

Google は長年にわたり、次のようなシグナルを通してブランドの情報を蓄積してきました。

  • 月間のブランド検索ボリューム
  • 他社サイトと比較したサイト品質
  • ページ上のコンテンツと、そこから得られるブランド情報
  • 構造化データとナレッジグラフにおけるその役割
  • 外部ソースからのリンク、言及、引用
  • 実際の需要を反映したトラフィックソースと分布

これらすべてを評価する単一の指標は存在しませんが、Google(あるいは LLM)は絶えずブランドに関する意見を形成し、それを AI 機能に反映させています。 

問題は、それが常に正しく伝わるとは限らないことです。

Ahrefs のブランドレーダーのようなツールを使えば、自分のブランドを検索して AI Overview でどのように要約されているかを確認できます。 

「トップ 10 ツールブランド」というキーワードで Google の AI Overview に言及されたブランドを示す Ahrefs のブランドレーダーのレポート。

競合他社についても同様のことを行えば、各ブランドがどのように表現されているかを比較し、自社のコアな製品カテゴリやキーワードとより密接に結びついているブランドを見つけることができます。

この領域は常に進化しており、ポジショニングやディストリビューションを通して積極的にブランドストーリーを構築していなければ、Google や LLM によって推測や誤った情報が生成される、あるいは話題にすらされないことになります。

それこそが、「意図的なブランド構築」が解決する課題です。

重要なのはロゴやブランドカラーではなく、あらゆる接点において、自社の専門性、価値観、そして差別化を明確に表現することが求められています。

具体的な取り組みは、次のとおりです。

  • 他社との差別化ポイントを強調する、明確で再現性のあるポジショニング
  • ホームページ、ブログ、ソートリーダーシップ、広告、SERP での一貫したメッセージ発信
  • ブランドのコンテンツフォーマット(フレームワーク、テーマ、独自のスタイルなど)
  • 関連性の高いコミュニティ、会話、メディアへの露出
  • 認知度向上のためのプレゼンスの構築(LinkedIn、YouTube、ソーシャルメディア)

今日では、最良の答えを提供するだけでは十分ではありません。それを提供する最も信頼できるソースであることも必要です。

3. 検索を超えた需要創出

ここで、筆者が特に気に入っている優れたマーケティングの実例を紹介します。

タイトルのない出版物が 2023 年 10 月に全書籍の中で 1 位にランクされたことを示す Amazon のスクリーンショット。

イギリスの出版社 Red Tow­er Books から出品された、544 ページのハードカバー本。 

タイトルも、表紙も、著者名も、説明文も、ソーシャルプルーフもなし。ぱっと見ただけでは、特に目を引く要素はありません。

それが 2023 年 10 月、Amazon にアップされてからわずか 24 時間以内に、全書籍カテゴリでベストセラー 1 位を獲得しました。 

もう一度言います。一夜にして Ama­zon 全体の書籍ランキングで1位になったのです。 

SEO だけではこんなことは到底できません。 

中身を何も知らなくても、「このブランドなら間違いない」と思わせる、圧倒的な信頼の力、需要創出の真骨頂です。

このケースでは、以下の 3 つの要因が需要を押し上げました。 

  • BookTok(TikTok 上で本をレビューしたり、紹介するコミュニティ)と恋愛ファンタジーのコミュニティが引き起こした大規模な FOMO(取り残されることへの恐れ)
  • 恋愛ファンタジージャンルにおける出版社の確固たる実績
  • 新作をリリースするたびに FOMO を生み出し、熱狂を波及させる巧みな仕組み
レッドタワーのタイトルのない書籍が Amazon で一夜にしてベストセラーになるきっかけとなった FOMO サイクル。

Red Tow­er にとっても、タイトルすらない書籍がここまでバズるとは予想していなかったかもしれません。しかし、これまでのリリースで築き上げてきた FOMO の連鎖のおかげで、実際に大ヒットとなりました。

現実として、SEO だけでこうした熱狂的な盛り上がりを生み出すことはできません。なぜなら、SEO の本質は「需要を捉える」ことであって、「需要を生み出す」ことではないからです。

  • 需要創出:存在していなかった欲求を生み出す。
  • 需要捕捉:既存の欲求を自社製品に誘導する。

たとえば、このタイトルのない本がフォーラムや SNS で話題になっていた時も、多くのユーザーが Google で「それらしいワード」を使って検索し、なんとかその本にたどり着こうとしていました。

レッドタワーのタイトルなしの出版物に関して Google で検索されたキーワードのリスト。

言うまでもなく、これらのキーワードはそれぞれ急増し、2023 年 10 月になんと合計 20,000 件を超える検索数になりました。 

レッドタワーに関連するキーワードの検索ボリュームが 2023 年 10 月に大幅に増加したことを示している Ahrefs のキーワードエクスプローラー。

たとえどこで買えるかすでに分かっていても、人はつい Google 検索をしてしまうものです。今回のケースでは、その本が Ama­zon にあることを誰もが知っていたにもかかわらず、検索トラフィックは急増しました。

この行動パターンは、B2BB2C を問わず、あらゆるオーディエンスに共通して見られます。

だからこそ、SEO は他のチャネルと連携してこそ真価を発揮するのです。需要がどのように創出されたとしても、検索はそれを捉え、購買へとつなげるための重要な手段であり続けるのです。

4. Google だけでなく、どこで検索されても見つかる状態に最適化する

従来の SEO では、Google 向けに最適化することが最優先とされてきました。しかし、現代のユーザーは Google だけで検索するわけではありません。 

Reddit、YouTube、TikTok、Quora、ニュースレター、ポッドキャスト、Slack のグループ、そしてますます増えている LLM などさまざまな場所でブランドを発見します。 

実際、筆者がレーザーカッターを購入しようとしたときの検索行動は、こんなふうに展開していきました。

検索プロセスとそれに利用されたプラットフォームを視覚化した縦棒グラフ。

これは 1 つの検索ジャーニーにすぎません。 

いま最も先進的な SEO 担当者たちは、「検索エンジン最適化」から「検索体験最適化」へとシフトしています。目指しているのは、単にランキングを上げることではなく、ユーザーが商品やサービスを探すときの行動全体を最適化すること。それが自社サイト内であろうと、外部のプラットフォームであろうと関係ありません。

カギとなるのは、ユーザーが目にするあらゆる場所で「信頼」と「可視性」を獲得することです。そのために必要なのが、SEO 担当者が見落としがちな次の 2 つのマーケティングスキルです。 

  • ディストリビューション:オウンド、アーンド、ペイドといった多様なチャネルを活用し、コンテンツをより多くのユーザーに届けること。
  • プロモーション:メッセージングや戦術によってユーザーの関心を引き、注意を維持し、納得して行動につなげること。

これらは単なる補助的な要素ではありません。マーケティングの中核を担う機能であり、 SEO 担当者が競争力を保つために今すぐ身につけるべきスキルです。 

Ahrefs では、これらのスキルを B.R.E.W. フレームワークに組み込み、すべての戦略に反映させています。

マーケティングアイデアを精査するための Ahrefs の B.R.E.W. フレームワーク。

アイデアを提案する際には、常に次のように自問します。「このアイデアは、SEO 以外ではどう届けられるか?」検索、メール、ソーシャルメディア、有料広告など、何のチャネルでも集客が見込めない場合、そのアイデアは実行しません。

たとえ優れたコンテンツであっても、自然に広がることはありません。古典的な思考実験を借りて言えば、「コンテンツを公開しても誰も見なければ、それは本当にマーケティングと言えるのか?」です。

これからの SEO 担当者は、何を公開するかではなく、どれだけリーチできたかで評価されるでしょう。

どのチャネルが実際にトラフィックを生み出しているのかを把握したい場合は、Ahrefs のウェブアナリティクスが有効です。このツールはプライバシーを重視しつつ、Google だけでなく、すべての検索プラットフォームにおけるパフォーマンスを可視化できます。

獲得したウェブサイトトラフィックの合計を示す Ahrefs のウェブアナリティクス。

次のように、どのトラフィックソースから最も多くの訪問者が送られているかを確認することもできます。

ウェブサイトのトラフィックソースを示す Ahrefs のウェブアナリティクス。

また、どのページがもっとも見られているかも。

ページごとに獲得したトラフィックを示す Ahrefs のウェブアナリティクス。

5. 記憶に残るコンテンツというモートを作る

正直なところ、記憶に残らないコンテンツにはあまり価値はありません。

AI が書いた似たような投稿が溢れる中で、ただ情報を伝えたりちょっとした娯楽を提供するだけのコンテンツはすぐに埋もれてしまいます。心に響くコンテンツでなければ、人の目に留まり、印象に残ることはできません。

Google の最新コンテンツガイドラインでも、パブリッシャーが目指すべき方向として非コモディティコンテンツが明確に示されています。

パブリッシャーにとっての今後の方向性としての非コモディティコンテンツについて言及している Google のコンテンツガイドライン。

SEO 担当者以外のマーケターはずっと以前からこのことを理解し、ストーリーテリングと感情的なインパクトを習得していた一方で、SEO 担当者の多くは、たまにしか価値を生み出さないコンテンツどうランク付けするかという問題に頭を悩ませ続けてきたのです。

本当に共感されるコンテンツをつくるには、次のような視点が重要になります。

  • オーディエンス自身もまだ気づいていない本質的な課題を解決し、「なるほど!」という気づきを与える
  • 決まりきったアドバイスではなく、自身の体験や苦労して得た洞察を率直に共有する
  • 好奇心を刺激し、新たな視点や思考のきっかけを届ける
  • 読者の内なる声に応えることで、「自分のことをわかってくれている」と感じさせる
  • 自分を偽らず、時には弱さを見せることで、読者にもそうする勇気を与える
  • 視点を変えることで、オーディエンスの思考の枠を外し、視野を広げる
  • ありふれた日常に、喜びや知的なユーモア、軽やかさなどのひらめきを加える

たとえば、Ahrefs のブログに掲載しているこちらの投稿「LLMs Don’t Reward Orig­i­nal­i­ty, They Flat­ten It(日本語仮:LLM は独創性を評価するのではなく、むしろ平坦化する)」を見てみましょう。Google Search Con­sole を見るとわかるように、この記事は検索エンジンでの上位表示を目的に作られたものではありません。

記事「LLM's Don't Reward Originality, They Flatten It」が 4 週間で合計 93 回のクリックと 7,490 回の表示回数しかなかったことが示されている Google Search Console のスクリーンショット。

それでも、公開以来毎日アクセスがあり、合計視聴回数は約 4,000 回、平均視聴時間は 17 分を超えています。 

記事「LLM's Don't Reward Originality, They Flatten It」は合計 4,000 回以上の閲覧、3,500 人のユニーク訪問者、平均訪問時間は 17 分 31 秒だったことを示している Ahrefs のウェブアナリティクス。

この可視性を達成したのは、まず LinkedIn で投稿を共有したからです。SEO 経由では約 7,490 インプレッションしか獲得していませんでしたが、LinkedIn でのリーチは桁が違いました。その結果がこちらです。

「LLM's Don't Reward Originality, They Flatten It」という投稿 1 件に対して、52,484 回の表示回数と 32,700 人のメンバーがアクセスしたことを示す LinkedIn の投稿分析。

これは、筆者が LinkedIn に投稿した事例のひとつにすぎません。 

Ahrefs のチームが拡散に協力してくれただけでなく、CEO や創業者、CMO にまで届き、それぞれが自身の視点で投稿し直し、コミュニティと共有してくれていることがわかりました。

たとえば、マシュー・サープさんの投稿がその一例です。

「LLM's Don't Reward Originality, They Flatten It」という記事が共有されているMatthew Tharp 氏の LinkedIn 投稿。

SNS 以外のトラフィックは、主にダイレクト流入、メールニュースレター、ニュース記事、そして Ahrefs のコンテンツを配信している外部サイトからの流入によるものです。 

記事「LLM's Don't Reward Originality, They Flatten It」は、直接トラフィックからの 1,622 回の訪問、LinkedIn からの 515 回など、SEO 以外のソースからのトラフィックが多くなっていることを示す Ahrefs のウェブアナリティクス。

この投稿は、SEO 対策のために書かれたコンテンツではなかなか見られない反響を呼びました。公開から 1 か月が経った今でも、なおシェアされ続けているほどです。

これはおそらく、誰もが漠然と感じていたけれど明確に言葉にできなかった感覚を、この投稿が見事に表現していたからでしょう。表現する言葉が見つかっていないものは、検索することなどできませんから。

ゾーイ・アッシュブリッジ氏による、「LLM's Don't Reward Originality, They Flatten It」という記事について、彼女はこのトピックについて考えてきたが、うまく表現できなかったと述べている LinkedIn のコメント。
マーク・ウィリアム氏による、「LLM's Don't Reward Originality, They Flatten It」という記事について、彼はしばらくこのテーマについて考えていて、この記事の表現が気に入ったと述べている LinkedIn のコメント。

さらにこの投稿は、オーディエンスの好奇心を刺激し、新しい視点を提供するきっかけにもなりました。

Rajavanya Subramaniyan 氏による、「LLM's Don't Reward Originality, They Flatten It」という記事について、新たな視点からひらめきを得たと述べている LinkedIn のコメント。
Amaka Chukwuma 氏による、「LLM's Don't Reward Originality, They Flatten It」という記事について、考えもしなかった新しい視点だったと述べている LinkedIn のコメント。
Oliver Pearce 氏による、「LLM's Don't Reward Originality, They Flatten It」という記事について、興味深い視点だと述べている LinkedIn のコメント。

こうしたインパクトこそが、これからのコンテンツに求められるものであり、ココモディティ化されていないコンテンツが実際に力を持って機能している好例でもあります。

もちろんこうしたコンテンツのモートを築くことは、AI に丸投げしてできるものではありません。かなりの労力と地道な作業が必要ですが、その努力は十分に報われます。

だからといって、コだからといって SEO を軽視してよいわけではありません。検索にきちんと表示されるよう、基本的な対策は今後も欠かせない要素です。

重要なのは、コンテンツの目標を引き上げること。AI に要約されることを目指すのではなく、人の心に届く影響を持つことが求められているのです。

それこそが、どの検索プラットフォームでも注目されるコンテンツを生み出す鍵となります。

まとめ

もし今でも従来の SEO でトラフィックは増やせると信じているなら、次の問いに正直に向き合ってみてください。

AI 搭載の検索エンジンが、今後どのパブリッシャーにもトラフィックを送らなくなったとして、それでも自社のブランドは存続できるか? オーディエンスを維持できるか?」 

今後成功する SEO 担当者は、可視性を優れたマーケティングの副産物として捉える人であり、その逆ではありません。つまり、信頼を築き、検索されるあらゆる場所で見つかり、オーディエンスにとって本当に価値あるコンテンツを届けられる人です。

SEO が優れていても、マーケティングが手抜きでは十分ではありません。これからは、コンテンツと向き合う姿勢そのものを見直していくことが求められているのです。