【基礎編その2】ブランドレーダーのレポート作成と基本操作

河原田 隆徳 (TAKA)
Ahrefs 日本マーケティング統括。 国外 SaaS 企業における日本市場向けのマーケティングとローカリゼーションで 10 年以上の経験を積み、現在は Ahrefs の日本マーケティングを統括。ユーザーの皆さんと共に、Ahrefs を日本で盛り上げることを目標に、日々全力で取り組んでいます。

基礎編その1では、ブランドレーダーの仕組みと 4 つの基本指標について解説しました。この基礎編その2では、実際にブランドレーダーでプロジェクトを作成し、レポートを設定する方法を詳しく解説します。


ブランドレーダーを使い始めるには、まずプロジェクトを作成することをおすすめします。プロジェクトとは、任意のドメイン、サブフォルダー、または URL をプロジェクトとして登録することで、時間経過とともにさまざまな指標を自動追跡する仕組みのことです。プロジェクトを追加するには、こちらをご参照ください。

レポートの作成と保存の重要性

ブランドレーダーを効果的に活用するには、レポートの作成と保存をお勧めします。よく使う指標やフィルター設定をレポートに保存することで、何度も同じ設定を作成する必要がなくなります。

プロジェクトを作成しておくことで、保存したレポートをご利用中のプロジェクトと紐付けさせることができます。これにより、プロジェクトごとに関連するレポートを整理し、チーム全体で効率的に分析を進められます。


エンティティとは、分析対象となるブランドや製品の名前のことです。ブランドレーダーでは、このエンティティを中心にデータが収集されます。

メインブランドの設定

まず、分析したいメインブランドを入力します。例えば「Ahrefs」「ユニクロ」「YONEX」などです。

バリエーションの追加

「バリエーションを追加」オプションを選択すると、ブランドの表記揺れや関連する名称を追加できます。基礎編その1で説明した通り、同じブランドでも様々な表記で呼ばれるため、これらをまとめて設定することが重要です。

例えば「Ahrefs」と、「エイチレフス」など日本語と英語の表記、カタカナと英語の表記、正式名称と略称など、考えられるバリエーションをすべて登録しましょう。

自社ブランドだけでなく、競合についても読み方のバリエーションや URL を細かく指定することで、より正確な分析が可能になります。

ドメインの追加

エンティティの設定画面で、自社のウェブサイトドメインを追加できます。これにより、引用データが収集され、AI がどのページを情報源として使用しているかを追跡できるようになります。

ドメインを追加しない場合、引用に関するデータは URL を特定しないため、メンション数と同じ数字が表示されます。

市場またはニッチ(オプション)

特定の市場やカテゴリー(例:SEO、電化製品、スポーツ用品、スマートフォン)などを指定できます。

市場やカテゴリー別にトラッキングしたい際(例:レポート1- Yamaha/楽器、レポート2 — Yamaha/バイク)には、レポートごとに作成しましょう。

国と地域の選択

分析対象とする国を選択します。ブランドレーダーは、Ahrefs のキーワードデータベースにおける検索比率に応じて、各市場のデータを収集しています。

国際展開しているブランドの場合、複数のレポートを作成し、国や地域をレポート別に選択することで地域ごとのビジビリティの違いを把握できます。日本だけでなく、アメリカ、アジアなど、重要な市場をレポート別に設定しましょう。

競合ブランドの追加

自社ブランドだけでなく、競合ブランドも追加することで、相対的なビジビリティを分析できます。

競合の選び方

直接的な競合だけでなく、同じカテゴリで AI 検索に表示されることが多いブランドも含めて考えましょう。例えば、テニスラケットメーカーの場合、YONEX、Wilson、Head、Prince などが考えられます。

AI による提案機能

ブランドレーダーには「AI による提案」機能があり、AI 検索における上位の競合ブランドを自動で提案してくれます。この機能を使えば、見落としている競合を発見できます。

レポートの保存

プロジェクトを設定したら、レポートとして保存できます。保存したレポートは、いつでも同じ条件で分析を実行できるため、定期的なモニタリングに便利です。

よく見る分析条件やフィルター設定をレポートとして保存しておけば、毎回設定する手間が省けます。例えば、特定カテゴリー、国際市場比較用など、目的別に複数のレポートを作成できます。

レポートの共有

保存したレポートは、同じワークスペース内の他のユーザーと共有できます。これにより、チーム全体で同じデータを見て議論できるようになります。

マーケティングチーム、経営陣、営業チームなど、異なる部署とレポートを共有することで、組織全体で AI 検索戦略を推進できます。プロジェクトを選択した際は、プロジェクトの共有管理設定が引き継がれるため、再度設定する手間を省くことができます。

レポートを作成したら、実際にブランドレーダーにアクセスしてみましょう。

AI 検索プラットフォームの指標を見る

ブランドレーダーのダッシュボードでは、複数の AI 検索プラットフォームの指標を一覧で確認できます。

ブランドレーダーの指標を設定するには、上から順に設定していってください。検索ボタンをクリックした時点で、指定した国、フィルターは一度リセットされますのでご注意ください。


ブランドレーダーが対応している AI プラットフォームは、AI モード、AI Overviews、ChatGPT、Perplexity、Gemini、Copilot の 6 つです。

AI の可視性」タブから、「メンション」、「引用」、「インプレッション」、「AI シェア・オブ・ボイス」を確認できます。各指標について、また、その他の「検索需要」、「ウェブの可視性」の説明ついては、【基礎編その1】ブランドレーダーの仕組みと指標の見方をご覧ください。

では「AI の可視性」タブの中を詳しく見ていきましょう。

プラットフォームの集計

「すべてのプラットフォーム」から、全プラットフォームのデータを集計した指標を表示できます。これにより、AI 検索全体でのビジビリティを俯瞰的に把握できます。

プラットフォームごとの指標:自社のみ / 他社のみ / 自社と他社の比較機能

「すべてのプラットフォーム」から、全プラットフォームのデータを集計した指標を表示できます。これにより、AI 検索全体でのビジビリティを俯瞰的に把握できます。

AI プラットフォームには、「応答数の合計」が表示されており、その数字をクリックすると「AI の応答」タブに移動します。また、各 AI プラットフォームにマウスをホバーすることでこれらの指標が見れます。

  • 合計:自社ブランドが言及されたすべての AI 応答の回答数(自社ブランドのみ+自社・他社ブランド)
  • 自社ブランドのみ:自社ブランドのみが言及された回答数
  • 自社と他社ブランド:自社・他社ブランドが同時に言及された回答数(競合は言及されていない)
  • 他社ブランドのみ:他社ブランドのみが言及された回答数
  • 指定のないブランド:上記の設定した自社・他社ブランドが含まれない回答数

「自社ブランドのみ」

「自社のみ」を選択すると、自社ブランドのみが言及されている AI の回答を表示します。これは、ブランド固有のクエリや、競合が出ていないトピックを分析するのに最適です。

自社が独占的に言及されているトピックを把握することで、強みを理解し、さらに強化する戦略を立てられます。

「自社と他社ブランド」

「自社と他社ブランド」を選択すると、自社ブランドと競合ブランドの両方が同時に言及されている AI の回答を表示します。これは、比較検討のトピックを分析するのに有効です。

例えば「SEOツール 比較」のような比較クエリでは、両方のブランドが言及されます。これらの回答で、自社がどのように位置付けられているか、どの情報源が引用されているかを確認することが重要です。

「他社ブランドのみ」

「他社のみ」を選択すると、競合ブランドのみが言及されていて、自社ブランドは言及されていない AI の回答を表示します。これは、ビジビリティのギャップを発見する最も重要な機能です。

競合だけが出ているトピックは、自社にとっての大きな機会です。なぜ自社が言及されていないのか、どうすれば言及されるようになるのかを分析し、コンテンツ戦略を立てましょう。

「指定のないブランド」

ブランドレーダーで設定しているブランド以外が AI の回答でメンションされている回答を見ることが可能です。自社が想定していなかった競合などを発見することに有用です。

また、これらの指標はすべて CSV でダウンロードすることが可能になっております。

データの取得期間、取得方法については、【基礎編その1】ブランドレーダーの仕組みと指標の見方をご覧ください。


ダッシュボードのグラフでは、「メンション/引用/インプレッション/AI シェア・オブ・ボイス」、「ブランドパフォーマンス」、「トップトピック」、「最も引用されたドメイン」、「最も引用されたページ」の時系列変化をグラフで確認できます。

基礎編その1で説明した 90 日間の集計により、グラフは日次で表示されます。定期的にチェックすることで、ビジビリティの変化をいち早く検知できます。

例えば、特定の日からメンションが増え続けた場合、その期間に何があったのかを調査することで、AI ビジビリティ向上の要因を特定できます。逆に、減少した場合は、競合の動きや AI モデルの変更などを確認する必要があります。


まとめ

基礎編その2では、ブランドレーダーの基本的な操作方法を解説しました。

プロジェクトを作成し、エンティティと競合を設定し、国を選択することで、分析の基盤ができあがります。レポートを保存・共有することで、チーム全体で継続的にモニタリングできます。

AI 検索プラットフォームの指標を確認し、自社のみ / 他社のみ / 自社と他社の比較機能を使いこなすことで、ビジビリティのギャップを発見できます。

次回の応用編その1では、トピックレポート、引用ドメイン・引用ページレポートを使った、より高度な分析方法を具体例に基づいて解説します。