この記事では、PPC スパイとは何か、その重要性、そして競合の有料広告をスパイする 7 つの方法についてご紹介します。
PPC スパイとは、企業が Ahrefs などのマーケティングインテリジェンスツールを活用して、競合他社のクリック課金型（PPC）のマーケティングキャンペーンに関するデータを取得することを指します。
PPC スパイの目的は、競合の動向に基づいて自社の戦略を調整し、 PPC キャンペーンをより効果的なものにすることです。
PPC スパイが重要な理由としては以下が挙げられます。
- 競争上の優位性を確保できる
競合の効果的な広告クリエイティブやキーワード、全体的な戦略を把握し、より優れた施策を打ち出すことができる - 重要なトレンドを特定できる
検索結果に表示される 1 つの広告に焦点を当てるのではなく、業界全体の有料検索のトレンドを特定するのに役立つ - 広告のインスピレーションが得られる
競合の広告コピーをスパイして分析することで、自社の広告を改善し、コンバージョン率やクリックスルー率の向上につなげることができる
つまり、PPC スパイは競合の PPC 戦略の全体像を把握し、自社のマーケティング施策を強化するうえで欠かせない手法だといえます。
それでは早速、Ahrefs を使用してライバルの Google 広告をスパイする 7 つの方法をご紹介します。
では基本から始めましょう。まず知りたいのは、ライバルがどれだけのトラフィックを獲得しているか、そしてそれにどの程度の費用をかけているかです。Ahrefs の有料トラフィックレポートを使用すれば、あらゆるウェブサイトの有料トラフィックとコストを確認できます。
競合の有料トラフィックとコストを調査する方法
サイトエクスプローラーに競合サイトの URL を入力して、レポートにアクセスします。ここでは例として canva.com を入力しました。
次に、「概要」の下にある「有料検索」タブをクリックすると、有料トラフィックレポートが表示されます。ここでは、トラフィックと有料トラフィックコストをオン・オフで切り替えられ、過去のデータが時系列グラフとして自動的にプロットされます。
また、ダッシュボード上部に戻り、右側にある有料検索を見ると、競合が有料検索から得ている推定月間検索数と推定月間コストが表示されます。
この方法が役立つ理由
競合の有料検索パフォーマンスを確認できれば、PPC に投じている予算や獲得しているトラフィックに関するインサイトが得られます。たとえば、Canva のデータを分析すると、第四半期のクリスマス前のブラックフライデーの時期に PPC 広告費を大幅に増やし、それに伴いトラフィックが急増していることがわかります。
クライアントが複数の国や地域で事業を展開している場合、その競合も同様に複数の国や地域で事業を展開している可能性が高いです。
さまざまな地域における競合の有料トラフィックを調査するには、Ahrefs の場所別の有料トラフィックレポートが便利です。
このレポートには、競合が最も多くの有料トラフィックを獲得している国が表示されます。
地域別の広告展開をチェックする方法
場所別の有料トラフィックレポートは、有料トラフィックレポートと有料キーワードレポートの右側に表示されています。
この方法が役立つ理由
競合が新しい地域に進出する場合、まず PPC 広告を活用して、何らかの成果が得られるかを確認する可能性が高いといえます。このレポートでは競合がどの国に予算を重点的に費やしているかがわかるため、新しい市場のチャンスを見つけるのに役立ちます。
また、競合が PPC 予算を 1 つの国や地域に集中させている場合は、類似の市場で投資を増やすことを検討するなど、自社の広告戦略を最適化する上でも有益な情報になります。
競合の有料キャンペーンの規模を把握するには、その競合が入札しているキーワード数とトラフィックを誘導しているページ数を確認するのが有効です。
キャンペーンの規模をチェックする方法
有料トラフィックレポートを開き、そのまま下にスクロールすると、有料キーワードと有料ページのデータが確認できます。
この方法が役立つ理由
有料キーワードと有料ページのグラフから、競合の Google 広告の過去のパフォーマンスを確認することができます。
このデータを活用すれば、競合の有料検索キャンペーンにおける季節性を分析し、特定の時期に入札キーワード数と有料ページ数が増減する傾向を読み取ることができます。それを基に自社の PPC 戦略の見直しにつなげることができます。
たとえば、競合が特定の時期にキーワード数またはページ数を大幅に増やしている場合、それはブラックフライデーやクリスマスといった需要を取り込もうとしていることを示しているかもしれません。
逆にキーワードやページが減っている場合は、需要が減少したか、SEO がうまくいっているため有料広告が必要なくなった、あるいは単なるテストだった可能性もあります。
最終的にデータの増減の理由を正確に見極めるためには、自社のデータと照らし合わせながら直感的な判断も交えて分析することが重要です。
競合の広告で最も成果の高いものを調査すると、何が効果的で何が効果的でないかを知ることができます。そのために最適なツールは上位の広告レポートです。
成果を出している広告をチェックする方法
競合の上位の広告を確認するには、有料ページレポートからさらに下にスクロールすると、トラフィックの多い順に広告が表示されます。
競合のすべての広告を確認したい場合は、「すべて見る」ボタンをクリックします。
この方法が役立つ理由
競合の広告で最も成果をあげているものがわかれば、無駄な PPC コストを費やすことなく、何が効果的で何が効果的でないかを知ることができます。
最も成果をあげている広告を分析することに没頭しがちですが、どのキーワードがそのトラフィックを生んでいるのか、また競合がトラフィックをどのページに誘導しているのかを知ることも重要です。
以下の例で、Canva は有料トラフィックの大部分を自社のホームページに集めていることが分かります。
主力キーワードと有料ページをチェックする方法
上位の広告レポートから下にスクロールすると、上位の有料キーワードと上位有料ページレポートが表示されます。
この方法が役立つ理由
特定のキーワードを把握することには、次の 2 つのメリットがあります。
- 新しいキーワードを発見できる
自社では見落としていた新しい有力キーワードを見つけることができます。 - 価値の高いキーワードを特定できる
PPC 広告では、収益性が高くないキーワードに費用を費やすことは通常ありません。競合の有料キーワードをスパイすることで、価値のあるキーワードを効果的に見つけることができます。
同様に、ライバルの上位有料ページを見ると、競合がどのページを最優先で広告に活用しているのかが分かり、マーケティング戦略全体を読み取る手がかりになります。
さて、これまでは競合を個別にスパイする方法を説明してきましたが、特定のキーワードに入札しているすべての競合を探りたい場合はどうすればよいでしょうか？ キーワードエクスプローラーの広告順位履歴レポートを活用すれば、簡単に確認できます。
このレポートからは、次の 2 つの情報が得られます。
- 競合がいつこのキーワードへの入札を開始および終了したのか
- 競合がトラフィックを誘導しているランディングページ
競合の広告履歴をチェックする方法
キーワードエクスプローラーの検索バーに調べたいキーワードを入力します（ここでは「ahrefs」と入力しました）。そして、下へスクロールし広告順位履歴レポートを表示させます。
この例では、数年前に競合の 1 社が「ahrefs」のブランドキーワードに対して広告を出していたことがわかります。
色付きのマークは、時系列の中で競合がこの特定のキーワードに有料 Google 広告を掲載した時期を示しています。マークの長さが長いほど、広告の掲載期間が長かったことを意味します。
それだけではありません。このレポートの強みは、特定のキーワードに入札しているすべての競合を一目で確認できる点です。例えば、検索バーに「クリスマスツリー」と入力すると、このキーワードに入札しているさまざまな競合サイトが表示されます。
色付きのマークのいずれかにカーソルを合わせると、実際に掲載されていた広告を確認できます。これにより、有料広告の動向を監視し、競合が時間の経過とともに広告をどのように変えてきたのかを確認できます。
これは、自社が PPC を開始する際に、競争状況をすばやく評価するのに非常に役立つ方法です。
この方法が役立つ理由
自社ブランド名などの重要なキーワードを素早くチェックしたい場合、特定のキーワードにどの競合が広告を出しているかを確認できます。競争の激しいキーワードでは、複数の競合が広告を出していることが一般的です。
また競合が特定の時期に集中して広告を出している場合は、広告のピーク期間を知ることで、翌年のキャンペーン戦略に役立てることができます。
さらに、PPC 予算の割り当てにも大変便利です。競合が広告を出すタイミングがわかれば、その時期に予算を重点的に投下することで、より効果的な運用が可能になります。
クリック単価（CPC）は、ユーザーが広告をクリックしたときに広告主が支払う金額です。これは、マーケティング担当者にとって重要な指標で、これにより潜在的な顧客を引き付けるためにどれだけの費用が必要かを把握できます。
CPC をチェックする方法
Ahrefs で CPC を確認するには、サイトエクスプローラーの検索ボックスに任意のドメインを入力し、有料キーワードレポートに進みます。
特定の範囲内で有料キーワードを見つけたい場合は、CPC フィルターを使いましょう。例えば、 CPC が $10 以上の広告を表示するフィルターを設定して、最も高額なキーワードを確認できます。以下の例では、Canva が $10 以上のキーワードに入札しているのは 1 つだけであることがわかります。
この方法が役立つ理由
各キーワードの CPC を確認することで、広告予算を効果的に管理でき、PPC キャンペーンで最高の投資収益率が得られるようになります。
また CPC を理解しておくと、入札戦略を状況に応じて更新したり最適化したりすることも可能になります。
競合の有料広告をスパイすることは、競争上の優位性を得るための有効な方法ですが、よくある落とし穴にも注意が必要です。ここでは、その落とし穴と回避方法をご紹介します。
競合の広告に過度に注目しすぎる
PPC スパイは、競合の有料広告に関するインサイトを得るのに有効な方法ですが、競合の広告に過度に注目しその分析ばかりしていると、自社の PPC キャンペーンの方向性を見失ってしまうことがあります。調査は重要なインサイトをいくつか引き出す程度に留め、それを自社の PPC 戦略に活かすことに集中しましょう。
データの解釈を誤る
SEO と同様に、PPC にもキャンペーンの成功を測定できる指標が多数あります。時として、そういった指標は誤解されたり、誤って解釈されたりすることがあります。
次のキャンペーンを展開する前に、クリックスルー率（CTR）、顧客獲得単価（CPA）、コンバージョン率（CR）、品質スコア（QS）、広告費用対効果（ROAS）などの主要な PPC 指標を理解しておきましょう。
競合の短期戦略に過剰反応する
膨大なデータが入手できるため、競合の PPC キャンペーンを見て過剰反応してしまうことがあります。特に、従来自社ブランドが「独占」しているキーワードに影響を与える場合は特にそうです。
そこで、長期的な PPC 戦略を確立することが重要になります。PPC を担当するチームは何が効果的で何が効果的でないかを調べるために定期的にテストを行うため、PPC 広告の多くは比較的短期的であることが多いです。
まとめ
Ahrefs は SEO 機能ですでによく知られていますが、これまで見てきたように、PPC に関する機能も競合の有料広告キャンペーンを調査するのに非常に便利です。そこから得られるインサイトをファーストパーティデータと組み合わせ PPC 戦略に活用することで、競合よりも一歩先んじることができます。
すでに Ahrefs を SEO で活用している方は、次の有料広告キャンペーンで PPC 機能を試してみて、PPC スパイを始めてみてください。
Ahrefs に追加してほしい PPC 機能のご提案がある場合は、ぜひ X でお知らせください。
