【基礎編その1】ブランドレーダーの仕組みと指標の見方

河原田 隆徳 (TAKA)
Ahrefs 日本マーケティング統括。 国外 SaaS 企業における日本市場向けのマーケティングとローカリゼーションで 10 年以上の経験を積み、現在は Ahrefs の日本マーケティングを統括。ユーザーの皆さんと共に、Ahrefs を日本で盛り上げることを目標に、日々全力で取り組んでいます。

Chat­G­PT や Gemini、Perplexity などの AI 検索で、あなたのブランドがどれだけ表示されているかをご存知ですか? Ahrefs のブランドレーダーは、AI 検索時代における新しいビジビリティ分析ツールです。

この基礎編では、ブランドレーダーの仕組みと各指標の定義を詳しく解説します。

ブランドレーダーは、AI 検索におけるブランドのビジビリティを測定・分析するツールです。対応している AI プラットフォームは、AI モード、AI Overviews、ChatGPT、Perplexity、Gemini、Copilot の 6 つです。これらは、ウェブサイトへのトラフィックを最も多く生み出している AI ソースとして選定されています。

Ahrefs は世界最大級のキーワードデータベースを保有しており、1,100 億以上のキーワードから約 287 億のキーワードを追跡しています。ブランドレーダーは、このキーワードデータと Google の「他の人はこちらも質問」から抽出した質問を、ChatGPT や Gem­i­ni などの AI チャットボットに実際に投げてデータを収集しています。

月間で投げている質問数は以下の通りです。

  • ChatGPT:約 1,060 万件
  • Perplexity:約 1,310 万件
  • Gemini:約 720 万件
  • Copilot:約 1,330 万件
  • AI Overviews:約 1 億 3,400 万件
  • AI モード:約 1,350 万件

AI への入力には、各プラットフォームの無料で公開されているウェブ版を使用し、デフォルトモデルで実行しています。データの正規化、パーソナライゼーション、事前プロンプト、フィルタリングは一切行っていません。つまり、普通のユーザーが AI を使うときと同じ条件でデータを取得しているということです。

また、質問は国や言語ごとに、Ahrefs のキーワードデータベースにおける検索比率に応じて配分されており、各市場を適切に反映しています。

更新頻度は、検索需要が数日ごと、ウェブの可視性が数分ごと、AI Overviews が数日ごと、そして AI チャットボットが月 1 回となっています。履歴データは、検索需要が 2015 年から、ウェブの可視性が 2013 年から、AI Overviews が 2024 年 8 月から、AI チャットボットが 2025 年 5 月から利用可能です。

AI チャットボットへの質問は月 1 回しか行われないのに、グラフは日次で表示されます。この仕組みを理解することが、ブランドレーダーを正しく活用する第一歩です。

90 日間の集計

仕組みはこうです。Ahrefs が持っているキーワードには、それぞれ「いつ検索されたか」という日付データが紐付いています。

AI への質問は月 1 回しか行いませんが、その回答は「元になったキーワードの日付」と紐づけられます。そして、過去 90 日以内に検索されたキーワードに対する回答だけが、グラフの集計対象になります。

例えば、3 月 15 日のグラフを見ると、過去 90 日以内に検索されたキーワードに対する AI の回答がすべて集計されます。毎日、検索されるキーワードが変わるため、集計される回答セットも毎日変わります。これがグラフが日次で変化する理由です。

90 日を過ぎたキーワードに対する回答は、履歴として残りますが、グラフの数値計算には含まれなくなります。

データの入れ替わりと鮮度

毎月、検索トレンドの変化により約 50% の質問が入れ替わります。90 日間更新されなかった質問は集計対象から外れますが、同じ質問が再度取得されれば、その時点から新たに 90 日間集計対象となります。また、同じ質問を 90 日以内に複数回取得した場合は、最新の 1 回のみをカウントします。

この仕組みにより、実際に検索されている最新のキーワードに対する AI の回答のみを分析でき、かつ月 1 回の取得でも十分なデータ量を維持できるようになっています。


ブランドレーダーを活用する上で、メンション、引用、インプレッション、AI SOV という 4 つの基本指標の違いを正確に理解することが重要です。

1) メンション

メンションは、ユーザーの質問または AI の回答のテキスト本文内に、エンティティで定義された名前バリエーション(例:Ahrefs、エイチレフス)が含まれているケースをカウントします。これはテキストでのマッチングに基づいており、AI が回答に利用した引用元のリンクの有無は関係ありません。

具体的には、「ユニクロのジャケットでおすすめは?」という質問や、「ユニクロのヒートテックがおすすめです」という回答の中でブランド名が出現した場合にカウントされます。エンティティ設定で「ユニクロ」「UNIQLO」などの表記揺れを登録しておけば、どの表記でもメンションとして認識されます。

メンションは、テキストレベルでのブランド言及頻度を測定する指標です。

2) 引用

引用は、AI 回答の末尾や横に表示される「この回答の情報源」として列挙されるソース URL のリスト内に、ユーザーが「エンティティを編集」から設定したドメインが含まれているケースをカウントします。これは、AI「この回答を生成する際に参照した情報源」として明示的に提示する引用元リストを対象としています。

3) インプレッション

インプレッションは、メンションまたは引用のいずれか一方、もしくは両方を満たすケースの総数をカウントします。単一のクエリ / レスポンスペアで両条件を満たす場合でも 1 回としてカウントされ、重複は排除されます。

これはメンションと引用の単純合計ではなく、重複を除いた総露出回数を示すものです。エンティティの総合的なビジビリティ、つまりユーザーセッションで指定したブランドがどの程度露出したかを把握する指標となります。

具体例で見てみましょう。

例1)

質問「おすすめのテニスラケットは?」に対して、回答が「YONEXVCORE がおすすめです」(情報源リストに yonex.com はない)の場合、メンションのみでインプレッションは 1 回です。

例2)

質問「テニスラケットの選び方」に対して、回答が「グリップサイズが重要です」(ブランド名は出てこないが、情報源に yonex.com が掲載)の場合、引用のみでインプレッションは 1 回です。

例3)

質問「YONEX のラケットは?」に対して、回答が「YONEX EZONE シリーズが人気です」(情報源にも yonex.com が掲載)の場合、両方ありますがインプレッションは 1 回としてカウントされます。

4) AI Share of Voice(AI SOV

AI Share of Voice は、自社と競合他社のインプレッションを比較し、相対的な露出度を百分率で表現することで、競合他社に対する自社のシェアを測定する指標です。

計算式は「自社ブランドのインプレッション数 ÷ (自社 + 全競合の総インプレッション数)」となります。

例えば、

  • テニスラケット市場で YONEX が 500 インプレッション
  • Wil­son が 300 インプレッション
  • Head が 200 インプレッション
  • 合計 1,000 インプレッション

この場合、YONEXAI SOV は (500 ÷ 1,000) x 100 = 50% となります。これにより、業界内でのブランドの露出シェアを明確に把握できます


検索需要は、あなたのブランドがどれだけ検索されているかのトレンドを把握するための指標です。 

この指標は、AI 検索の中での指標ではなく、Google 検索のキーワードエクスプローラーのデータに基づき、指定したブランド(エンティティ)名を含むクエリの検索ボリュームを集計した指標です。

一般的なキーワードエクスプローラーの検索ボリュームから、指定したブランドを含む検索に絞り込んだ合計を示します。

例えば「ユニクロ ジャケット」「UNIQLO セール」など、ブランド名が入った指名検索の合計がこれにあたります。この指標は、ブランドに対する検索需要のトレンドを把握する上で重要です。

ですので、この指標はブランド名が明示的に含まれる指名検索を測定するため、ブランドの検索需要が高いほど数値が高くなりますが、これは AI 可視性とは異なる概念です。真の AI 可視性を測定したい場合は、検索需要を除外し、AI インデックスのみを使用する必要があります。

ウェブの可視性は、Google にインデックスされているコンテンツの中で、あなたのブランドや競合がどれだけメンションされているかを測定する指標です。

コンテンツエクスプローラーのデータに基づいており、ウェブ上のコンテンツ内でブランド名が言及されている頻度を示します。コンテンツエクスプローラーは 24 時間ごとに 3 億ページが更新されるため、常に最新のウェブ上でのブランドの露出状況を把握できます。

検索需要と同様に、ウェブの可視性も AI 可視性とは別の概念です。AI 検索でのビジビリティを測定したい場合は、メンション、引用、インプレッションといった AI 専用の指標を使用してください。

ブランドの「表記揺れ」を1つのエンティティとしてまとめる機能です。同じブランドでも、日本語の「ユニクロ」、英語の「UNIQLO」、カタカナの「エイチレフス」と英語の「Ahrefs」など、様々な表記で呼ばれることがあります。これらを1つのブランドとしてまとめることで、異なる表記で検索された場合でも、ブランド全体のビジビリティを正確に把握できます。英語、日本語の両方でのブランドの認知がある際に非常に便利な機能です。

補足:AI は自社サイトを直接引用しにくい

ブランドレーダーの分析から判明した最も重要な事実があります。AI は自社サイトの URL を直接引用しにくい傾向があるということです。

AI が好む引用元は、YouTube、Reddit、大手メディア、ヘルプサイトなどの第三者サイトです。したがって、AI 時代のビジビリティ向上には、AI が好む引用元ドメインを特定し、それらのドメイン上で自社が言及されるよう働きかけることが求められます。具体的には、YouTube での製品レビュー動画を増やす、Reddit でのコミュニティ参加、大手メディアへのプレスリリースなどが効果的です。

また、Ahrefs の 1,700 万件の引用分析により、AI は「鮮度の高い」コンテンツを好むことが判明しています。コンテンツの鮮度を保つことも、AI 時代の重要な戦略の一つです。


ブランドレーダーの基礎として押さえておくべきポイントをまとめます。

データの仕組みについては、AI への質問は月 1 回ですが、90 日間の集計により日次でグラフが変化し、実際に検索されている最新のキーワードのみを分析できるようになっています。

3 つの基本指標の違いは、メンションがクエリまたはレスポンスのテキスト本文内での名前言及、引用がレスポンスの情報源リストへのドメイン掲載、インプレッションがメンションまたは引用の総数となります。

AI SOV は競合と比較したシェアをインプレッションベースで計算し、検索需要はブランド名を含む検索の総ボリュームを示しますが、これは AI 可視性とは別の概念です。

次回の基礎編2では、基本的なフィルタリング、競合分析、レポート作成などについて、より詳しい使い方についてご説明します。