その 2 か月後の 2025 年 5 月 20 日、Google は米国ですべてのユーザーに向けて AI モードを展開しました。その勢いは止まらず、わずか数か月後にはさらにインド、その後英国、そして現在では 180 を超える国と地域に展開しています。
この流れを受け、好き嫌いは別として、ユーザーの検索体験はまちがいなく変わったのです。
では、これまでに Google の AI モードについてわかっていることを整理してみましょう。
まず、Ahrefs のブランドレーダーで、460 万件(さらにどんどん増加中!)の AI モードのクエリとレスポンスのインデックスを探索します。

Google AI モードでは、従来の Google 検索エクスペリエンスが会話型のエクスペリエンスになっています。
従来の Google 検索では、クエリに対してリンクのリストが表示されます。そこから答えを得るためには、1 つまたは複数のリンクをクリックしていく必要があります。

そして見つけたものに納得がいかない場合は、何度も検索を繰り返さなくてはなりません。
一方 AI モードでは、Gemini 2.5 生成 AI モデルを使用して、質問に対する回答と引用元リンクのリストが生成されます。

その後、さらに質問を重ねて会話を深掘りすることもできます。

AI モードはマルチモーダル、すなわちタイプ入力、音声入力、写真撮影、画像のアップロードにより回答を得ることができます。
ChatGPT や Perplexity のような AI アシスタントに慣れている方なら、AI モードの使い方にも違和感はないことでしょう。
Google の最終的な目標は、AI モードをエージェンティックに、つまり自律的に行動し、ユーザーをサポートできるようにすることです。
たとえば、2025 年 8 月 21 日、Google は Google AI Ultra サブスクライバー向けに、AI モードにエージェンティック予約機能を追加しました。ユーザーが、「今週の金曜日午後 7 時に 4 人分の夕食の予約先を見つけて」とリクエストをすると、AI モードはそのリクエストを理解し、リアルタイムで空き状況を確認して、予約ページにリンクしてくれます。

AI モードは Google 検索のタブから利用できます。


Google が AI モードを展開している 180 以上の国と地域にいれば、問題ありません。(サポートされている国と地域のリストはこちらで確認できます。)
ただし現在、AI モードの対応言語は英語のみとなっています。
従来の Google 検索では、クエリを受け取り、ユーザーが探しているものにできるだけ関連性の高いリンクのリストを表示します。
AI モードでは、クエリのファンアウト技術を使用し、ユーザーのクエリ/プロンプトを受け取ると、それを複数のサブクエリに分割します。
「快適なオーバーイヤーデザインでバッテリーが長持ちする Bluetooth ヘッドホンのお勧めはありますか?」というプロンプトを例にとりましょう。この場合、AI モードが生成する可能性のあるサブクエリには、次のようなものが挙げられます。
- オーバーイヤーデザインで最高の Bluetooth ヘッドホン
- バッテリーが長持ちする高評価のオーバーイヤー Bluetooth ヘッドホンのリスト
- 最も快適なオーバーイヤー Bluetooth ヘッドホン
- バッテリー寿命が最も長い Bluetooth ヘッドホン
- Bluetooth オーバーイヤーヘッドホンのうち、最も充電が速いのはどれですか?

システムは、このようなサブクエリに基づいて Google の検索結果を取得します。各ウェブページが回答となる従来の検索とは異なり、このシステムは各情報源から関連する情報のかたまり(例:段落、表、画像)を取り出し、それらを 1 つの回答に統合します。
その後、生成された回答を引用元と照合するためにグラウンディングを使用します。

- How AI Mode Works and How SEO Can Prepare for the Future of Search(AI モードの仕組み・SEO ができる将来の検索方法への備え)
- Query fan-out(クエリファンアウト)
AI モードの登場によって SEO はどうなる?
AI モード以前に、Google はすでに AI Overviews(検索クエリに対し AI が生成する要約)を展開していました。
Ahrefs の調査によると、AI Overviews の登場から、クリック数が 34.5% 減少しています。

AI モードでは、さらにこの傾向が強まることが予想されます。どのリンクもクリックすることなく、立て続けに質問することで答えを得られるようになったためです。
実際、SEO エージェンシー iPullRank による予備的な調査では、AI モードのセッションのうちクリックにつながったのはわずか 4.5% であることが示されています。
Google の CEO スンダー・ピチャイさんは、 レックス・フリードマンさんとのインタビューで、AI モードが検索の未来であると断言しました。したがって、私たちは皆、このゼロクリック検索の現実と向き合わなければなりません。
わずかな安心材料としては、AI モードの導入が今のところ進んでいないということです。
- iPullRank(デジタルマーケティングエージェント) の調査によると、ユーザーの 50% 超が AI モードを一度試してそれっきりだったことがわかりました。5 回以上使用したユーザーは約 9% ほどで、早期導入率が低いことが明らかになっています。
- アレイダ・ソリスさんによる別の調査(今回は英国での導入に焦点を当てたもの)では、導入開始時は急激に採用されましたが、その後減少し始めたことが示されています。

残念ながら、Google は AI モードのデータを開示しておらず、現時点では、Google Search Console の通常検索と統合されている状況です。
そして、Google がそれを分離してユーザーに示すつもりはないようです。それには正当な理由があります。AI モードのデータを開示すると、すべてのサイトがクリックを失っていることが明確になり、それは「AI 検索はクリック数を減らしていない」という Google の現在の立場に反するからです。

したがって、AI モードにおける自社ブランドのプレゼンスを追跡するには、Ahrefs のブランドレーダーのようなツールを使用する必要があります。
ブランドレーダーにブランドを入力し、「AI の応答」に移動して「AI Mode」を選択すると、自社ブランドが表示されているクエリを確認できます。

競合ブランドを入力して、AI モードでのそのブランドのプレゼンスと比較することもできます。

Google の Gemini のように情報源をどのように選んでいるのかを開示していない LLM だけでなく、AI モードでも同一のクエリに対するリンク/引用は検索するたびに異なります。
実のところ、AI モードで引用されるための確かな方法はわかっておらず、現時点では、すべてが推測の域を出ません。
とはいえ、てがかりがまったくないわけではありません。LLM の最適化について、Ahrefs や他社が行った調査に基づく戦略が提案されていますが、そのような戦略は AI モード対策にも役立つのではないかと考えられます。それを詳しく見ていきましょう。
AI モードが自社ブランドについて正確な情報を伝えているか確認する
LLM はハルシネーションを起こすことがあります。Google の Gemini も例外ではありません。そのため、AI モードが自社ブランドについて生成しているものが、事実に相違のないことを確認しましょう。
これには、ブランドレーダーに自社ブランドを入力して、AI モードがどのような回答を生成しているかを見ます。

ブランドについて正しい情報が生成されていることを確認し、誤りがある場合は、エラーが表示されているクエリ、何が間違っているか、引用元をメモしておきます。
このようなエラーは、ロゴやタグラインなど、ブランドアセットに一貫性がないために発生することがあります。その場合は、ウェブサイトやソーシャルプロフィールの整合性を確認し、修正しましょう。
それには、デスピナのブランド SEO プロセスをぜひお試しください。
AI が誤った情報を生成するもう 1 つの理由は、ウェブサイト上の情報が少なすぎることです。その場合、コンテンツギャップを埋める必要があるかもしれません。Ahrefs が、「Ahrefs の発音方法」という記事を公開した理由の 1 つはそこにあります。

ギャップを埋めるために新しいページやセクションを公開する必要があるかどうかを確認するには、次のワークフローをご利用ください。

AI が他の情報源を誤って引用していることが原因でエラーが発生している場合は、YouTube、G2、Google Business などのサードパーティサイトのコンテンツやブランドアセットを更新することを考えてみましょう。
2. ブランドのオンラインプレゼンスを高める
数百万の AI Overviews を対象に 75,000 のブランドを調査した結果、ブランドのウェブでの言及が AI Overviews でのブランドの言及と最も強い相関があることがわかりました。

それもそのはずです。ほとんどの LLM はインターネットをスクレイピングしてモデルを訓練するため、オンラインでブランドが言及されるほど、LLM がそのブランドを関連トピックに関連付ける可能性が高くなります。
そこで、ブランド認知度を高め方法をいくつか提案します。
- 「最高の~」リスト(例: 「最高の AI SEO ツール」)や業界トレンド記事で取り上げてもらう
- 顧客にレビューやケーススタディで自社ブランドに言及してもらうよう促す
- 無理に進めなくても口コミで広まる素晴らしい製品を作る
- インパクトのあるストーリーテリング、重要なデータ、実体験やそこから苦労して得た洞察など、印象に残りシェアしたいと思わせるコンテンツを作成する
- デジタル PR キャンペーンを実施し、権威あるサイトで言及される
たとえば、Ahrefs のブランドレーダーにアクセスし、引用元ドメインレポートをクリックすると、コラボレーションや PR の機会を見つけることができます。

これは、Tech Radar と Forbes という 2 つの権威ある出版物への売り込みの可能性がある例です。
- データで見る!成功したPRキャンペーン事例 9 選
- すぐれた SEO だけではもう通用しない—成果を分けるのは“本物のマーケティング”
- How To Stand Out in an Ocean of AI Content(ひしめく AI コンテンツに埋もれない方法)
3. UGC サイトでコンテンツを宣伝する
Google の AI Overviews に関する Ahrefs ブランドレーダーで引用されている上位 50 サイトを見ると、AI Overviews が Reddit、Quora、YouTube のような UGC サイトに大きく影響されていることがわかりました。
それもそのはず。YouTube は Google が所有しており、Google は Reddit とも提携を結んでいるのですから。AI Overviews でこれらのサイトを優遇する理由にうなずけるというものです。それは AI モードでも同じことでしょう。
例をあげれば、Ahrefs は AI 検索でランキングを上げるために YouTube チャンネルを始めたわけではありませんが、2018 年から一貫して動画をあげてきたことでポジティブな影響を受けています。Ahrefs のキーワード調査チュートリアルは、AI モードを使用した「キーワード調査方法」の引用元の 1 つになっているのです。

Ahrefs Evolve 初回カンファレンスで、われらが YouTube 担当者サム・オーが、YouTube に関する最高の ヒントを共有してくれましたので、それをご紹介します。
- ターゲットキーワードをタイトルと説明に追加する
- コンテンツ内で関連キーワードに言及する
- コンテンツ内で必要なサブトピックを網羅する
- 関連キーワードを含むタイムコードやチャプターを使用する
- 可能な限りオーディエンスの注意を引きつける

また、Ahrefs の YouTube 戦略全般を説明するサム・オーの YouTube ビデオもぜひご覧ください。
Reddit は、ユーザーが露骨なマーケティングを嫌うことで知られているため、攻略が難しいプラットフォームです。唯一の攻略方法は、あなた自身がアクティブな Reddit ユーザーになることです。役立つコメントを残し、議論に参加し、価値のあるコンテンツを共有し、ニッチ分野で知られた人物になるのです。
もう数年前になりますが、筆者は、Reddit で実際に本格的にマーケティングを行う方法についてのガイドを書いたことがあるので、ぜひ読んでみてください。
- Reddit Hates Blatant Marketing: Here’s How You Can Still Get Thousands of Visitors from Reddit(露骨なマーケティングを嫌う Reddit からでも数多くのビジターを獲得する方法)
4. アトミックコンテンツのワークフローを使用して、LLM 向けに最適化されたコンテンツを構築する
SEO 担当者の間では、コンテンツを特定の構造にすると、ページが強調スニペットで上位表示されやすいことはずいぶん前から周知のことでした。LLM も同様に特定の構造のコンテンツを優先的に取り上げます。
Ahrefs では、このようなコンテンツを「アトミックコンテンツ」と呼んでいます。大きなドキュメント内の独立したセクションで、それ以上分割できない情報のまとまりを指します。

アトミックユニットは、独立してそれ単体で意味を成し、Google、ChatGPT、Perplexity、その他の AI 検索プラットフォームによって抽出され表示されたとしても、自力で完全な回答を提供できるものでなければなりません。
アトミックユニットを作成するには、Bottom Line Up Front (BLUF) フレームワークを使います。簡単に言えば、記事や記事内のセクションをそれぞれ、主要なトピックに完全に対応する直接的な回答やはっきりとした発言で始めるのです。
Ahrefs の記事から次のような例を紹介しましょう。

BLUF は、人間と LLM の両方に効きます。
どれほどじっくり読んでもらいたいと願っても、人は読む前にまず自分の求める情報があるかざっと見て判断するものです。その点、BLUF はすぐに答えを提供するため、読み続けるかどうかを決めやすくなるのです。また、コンテンツが即座に理解でき、検索もできるので、LLM にとっては願ったりかなったりです。
- SEO “Chunk Optimization” is Overrated(SEO の「チャンク最適化」は過大評価)
5. コンテンツを常に最新の状態に保つ
7 つの AI 検索プラットフォームにわたる 1,700 万件の引用に関する Ahrefs の調査では、AI アシスタントがより新しいコンテンツを引用する傾向があることが示されました。
Google はコンテンツの鮮度による影響を最も受けにくいとされていますが、AI モードを支える Gemini の動作は異なり、新しいコンテンツを好むようです。

したがって、この調査からは、コンテンツを更新し続けると AI モードに引用されやすいことがわかります。
更新する価値のあるコンテンツを見つけるには、Ahrefs のサイトエクスプローラーにドメインを入力し、上位ページレポートに移動して、特定の期間(通常は 6 か月から 1 年)で「トラフィックが減少している」フィルターを設定します。

「コンテンツの変更」列で「小」または「中程度」のものに目を通しましょう。これらは、まだ更新されていないコンテンツであることを示しています。

コンテンツの更新には、Ahrefs の以下のガイドをご利用ください。
6. ロングテールキーワードクラスターを構築する
AI モードは、プロンプトを複数のロングテールサブクエリに「ファンアウト」します。そのため、ロングテールキーワードに最適化すると、AI モードで引用されやすくなります。
これは、AI モード以前からほとんどの SEO 担当者が行っていた戦略です。批判的な意見はあっても、SEO は廃れておらず、SERP と AI 検索の両方で上位にランクインする最良の方法の 1 つであることを示しています。結局のところ、GEO はほとんど SEO と重複しているのですから。
ロングテールキーワードのアイデアは、Ahrefs ブランドレーダーの競合ブランドのギャップ分析から得ることができます。
自社ブランドと競合ブランドを入力し、AI モードの自社ブランドにカーソルを合わせます。そして、「他社のみ」に表示される数字をクリックします。

すると、競合ブランドが可視化されていて、自社ブランドが可視化されていないプロンプトとクエリが表示されます。そこで、ロングテールコンテンツのアイデアについてプロンプトを調査しましょう。

まとめ
AI モードは将来、本当にデフォルトの Google 検索エクスペリエンスになるのでしょうか?Google の CEO サンダー・ピチャイさんはそれが「イエス」であることをほのめかしています。また、Google が AI モードを急速に展開して全力で取り組んでいることも事実です。
しかし、SEO 担当者の中にはそう考えていない人もいます。Google は AI モードが使用されるかどうかを単にテストしているだけだと言うのです。だからこそ、AI モードを別のタブとして配置し、使用を「強制」しているわけではない、と。そして、これまでに見てきたように、導入率は低いレベルにとどまっています。
筆者は、個人的には、AI モードがデフォルトの検索エクスペリエンスになり、ウェブ検索が別のタブになると考えています。
一度出世に出してしまったものはなかったことにはできません。すでに多くのユーザーが会話型チャットボットを主要な検索エンジンとしてデフォルトで使用しています。
数えきれないほどのリンクをたどって調べたあげく、探しものが見つからない、そんな従来の検索よりは、ずっと快適なユーザーエクスペリエンスだからです。