果たして、これまでの SEO 時代は終わりを迎えたのでしょうか? それとも、大騒ぎするほど心配なことは何もないのでしょうか?
この記事では、これまでに Google AI Overview についてわかっていることについてご説明します。
Google の AI Overview は簡単に言えば、検索クエリに対して AI が生成した要約のことです。
Google は SERP 内でクエリに直接回答することを目指し、さらに調査するための Web ページへのリンクもつけようとしています。単純に考えると、強調スニペットのスーパーバージョンといったところです。
AI Overview は当初「Search Generative Experience (SGE)」と名付けられており、生成 AI の急速な台頭に対する Google の対応の一環でした。
- 2023 年 5 月 10 日 — Google が Search Generative Experience(SGE)の試験版を発表。
- 2023 年 5 月 25 日 — 待機リストに登録したユーザーに対して Google が SGE へのアクセスを開放。
- 2024 年 3 月 22 日 — Google は、ユーザーが SGE にオプトインしていない場合でも、メインの Google 検索結果で AI Overview の試験運用を開始。
- 2024 年 5 月 14 日 — Google が米国向けに AI Overview を正式にリリース。また、検索結果にテキストベースのウェブページのみを表示したいユーザー向けに、新しい「ウェブ」フィルターもリリース。
- 2024 年 5 月 24 日 — 危険で間違った回答を出したとしてAI Overview が非難の的に。たとえば、ピザソースの粘着性を高めるために無毒の接着剤を使用する、1 日に少なくとも 1 つの小さな石を食べる、腎臓結石を早く排出するために尿を飲むことを推奨した。
- 2024 年 5 月 30 日 — Google はこれらの騒動に対応し、AI Overview を改善する予定と説明。
- 2024 年 8 月 15 日 — Google は英国、インド、日本、インドネシア、メキシコ、ブラジル向けに AI Overview をリリース。また、シークレットモードや、サインインしていないユーザー向けに AI Overview の表示も開始。さらに、特定の AI Overview を「保存」する機能を開始し、AI Overview のテキスト内に直接関連する Web ページへのリンクを追加するテストも開始。
- 2024 年 8 月 23 日 — Google の John Mueller は、AI Overview がコア アップデートの影響を受けることを確認。
2023 年 9 月、Google は「Generative summaries for search results(検索結果の生成要約)」と呼ばれる AI Overview の特許を申請しました。
SEO コンサルタントのリッチ・サンジャーさんはこの特許について独自に調査し、Google AI Overview がどのように機能するかを解説しています。主な機能は次のとおりです。
- クエリの送信:検索クエリを入力します。
- クエリの理解:Google はさまざまな LLM を使用して、クエリのコンテキストと意図を理解します。
- コンテンツの収集:システムは、クエリに関連する Web ページ、記事、画像、動画などの関連ドキュメントを取得します。
- 追加コンテンツの処理:Google は、即時の検索結果に加えて、関連する検索のコンテンツや、同様のクエリ状況で他のユーザーが役立つと判断した情報も検討します。
- 要約の生成:LLM は、これらすべての情報を組み合わせて、クエリに対する役立つ応答を生成します。
- 動的かつコンテキスト認識型の応答:AI は、各クエリから送信される特定のコンテキストに基づいて応答を適応させます。クエリが繰り返されたり、異なるコンテキストで類似したりする場合、AI は提供する要約を調整します。
- ユーザーの操作と学習:Google は、ユーザーの検索結果に対する行動を学習します。特定の応答が常に無視され、他の応答が優先される場合、またはユーザーのクリックが好みを示唆する場合、AI はユーザーの行動に合わせて将来の対応を修正します。
- 精度と関連性の向上:AI は、新しい情報と操作に基づいて継続的に理解を更新し、時間の経過とともにより正確でコンテキストに適した応答を提供できるようにします。
少なくとも SEO 担当者にとって最も気になるポイントは、システムがどのようにソースを選択するかということです。主な基準は次のように 3 つあります。
- クエリ依存の尺度:システムは、潜在的なソース ドキュメントがそれぞれ特定のクエリにどの程度関連しているかを評価します。これには、ランキングのポジション、クエリの場所と言語との関連性が含まれます。
- クエリ非依存の尺度:次に、複数のクエリにわたる選択率、信頼性、全体的な人気、鮮度などについて検索結果ドキュメントを評価します。
- ユーザー依存の尺度:システムは、ユーザーのプロファイルと、最近の検索や最近のクエリ以外のインタラクションを含む過去のインタラクションも考慮します。
この特許についてご興味のある方は、AI Overview の仕組みに関するリッチ・サンジャーさんの記事をぜひ読んでみてください(英語)。
Google からの検索トラフィックを継続的に獲得したい場合は、AI Overview の動向にも気を配っておく必要があります。
AI Overview は Google が目指す新たな方向性のひとつであり、同社がその取り組みを放棄したり、SGE 以前の Google に戻ったりする可能性は低いといえるからです。
Google の CEO であるスンダー・ピチャイ氏によると、AI は長年にわたって Google 検索を変革してきたとのことです。
「モバイルが登場したとき、Google 検索は大きく進化する必要があることは認識していました。私たちはそれを“強調スニペット”と呼んでいますが、10 年近く前から、Google では多くの質問に対してAIを使って回答しています。社内ではこれを“ウェブ アンサー”と呼んでいます。常に、できる限りの質問に答えてきましたが、いつも感じることがありました。人々が情報を求めてやってくるとき、場合によっては答えを求めていますが、同時に、世界にある豊かさと多様性も求めている、と。これは良いバランスであり、私たちは常にそのバランスをうまく取ってきたと思います。」
現在、Google は依然として世界最大の市場シェアを誇っています。また、他の AI ベースの検索エンジンの台頭も(今のところ)Google をしのぐことはありません。
Google が AI モデルをトレーニングするためにあなたのコンテンツを「(半ば勝手に)利用している」ことを、好ましくないと思う方もいるかもしれません。
残念ながら、AI Overview をオプトアウトすることはできません。これは Google が AI Overview を検索機能とみなしているためです。
ただし、ページに noindex を設定するか、robots.txt を使用する標準的な方法で、Google をブロックできます。ただし、この方法を使うと、Google の AI Overview と SERP の両方に自分のコンテンツを表示できなくなるため、自分のサイトの評価にも大きな影響が及ぶことになります。
ただ、Google は代替方法を提供しています。それは「プレビューコントロール」です。これにより、SERP にスニペットを表示しないよう Google に指示したり、使用できるコンテンツの量を制限したりできます。
SEO コンサルタントのグレン・ゲイブさんは、Google がこのコントロールに従うかどうかをテストする実験を行いました。
結果としては制御できたのですが、最終的に機能するまでに時間がかかりました 。Google のアナリストとして著名なジョン・ミューラー氏にも連絡したとか…
いずれにしても、AI Overview をオプトアウトしたい場合は、これがオプションになります。
それでも、この実験でわかったように「検索スニペットがなくなる」といった弊害が起こることもあるため、十分な注意が必要です。
Google が SGE を発表して以来、AI Overview が SERP に与えた影響を観察するための調査が数多く実施されてきました。
これまでにわかっていることは次のとおりです。
- AI Overview はまだ不安定である — BrightEdge の調査によると、AI Overview の可視性は 7 月に 12% まで増加しましたが、同月末には 7% まで低下しました。
- 情報系キーワードには AI Overview が表示される可能性が最も高い — Flow Agency の調査によると、HR および労働力管理キーワードの場合、トップオブファネル(TOFU)のキーワードに AI Overview が表示される可能性が最も高い (24%) ことがわかりました。それに比較すると、トランザクション系キーワードでは、同じ時期に わずか 5%しかAIO が表示されませんでした。これは SEOClarity の調査によって裏付けられています。
- クエリで上位にランクインすると、AI Overview でリンクされる可能性が高くなる — リッチ・サンジャーさんと Authoritas の調査によると、概要にリンクされているドキュメントの 46.3% は、完全一致クエリの上位のオーガニック検索結果からのものでした。関連クエリが直接一致クエリに追加されると、上位の検索結果における直接一致クエリと関連クエリの両方からのリンクの割合は 60.4% に増加しました。また、1 位にランクされたリンクが注目される確率は 53% なのに対し、10 位にランクされたコンテンツが注目される確率は 36.9% であることが示されました。これは、Google が検索結果の上位 10 件以外のソースを表示することが多かった 2024 年 1 月の状況とは対照的です。
残念ながら、Google は Google Search Console で AI Overview とオーガニック検索を区別しません。すべてのインプレッションとクリックをまとめて表示します。
そのため、重要なクエリの AI Overview の可視性を追跡したい場合は、ZipTie などのサードパーティツールを使用する必要があります。
AI Overview は依然として不安定で、さまざまなキーワードで現れたり消えたりするため注意が必要です。検索クエリがより会話的かつロングテールになることを考えると、サードパーティツールも対応に苦労する可能性があります。
最後に、AI Overview の目的はパーソナライズされた概要を提供することです。この要素は、特にリンクされたソースに関する追跡では欠落してしまいます。
Google が AI Overview をオーガニック検索結果と連携させようとしていることを考慮すると、SEO のベスト プラクティスに従い、Google 自体で上位にランクインすることを目指すのが最善策です。
実際、リッチ・サンジャーさんが AIO に関する最新の調査で示した推奨事項を見ると、これらは本質的に SEO の基本であることがわかります。
つまり、Google が AI Overview を導入したとしても、SEO の基本は以下の通り変わらないのです。
- キーワード調査をする
- ユーザーの興味を惹く、検索意図にマッチしたコンテンツを作成する
- 包括的で E‑E-A‑T を満たすコンテンツを作成する
- リンクを構築する
しかし、重複がまだ 100% ではないことを考えると、これは「インフォメーションゲイン(情報利得)」が報われる潜在的な手段を示唆している可能性があります。平たく言えば、Google は模倣コンテンツではなく、新しい情報に報いたいのです。
実際、リッチ・サンジャーさんが特許を分析したところ、次のように Google は確かに多様性を求めていることが示唆されました。
「AI Overview は、そのクエリに対して上位のソースからのドキュメントのみを提供するわけではありません。多様性を求めているのです。そのクエリに対して上位にランクされたコンテンツが同質である場合、密接に関連するクエリに進みます。ターゲットクエリに対して AI Overview で上位ページ ランキングを獲得し、可視性を獲得することが最良のシナリオです。」
自分のコンテンツに「インフォメーションゲイン」を追加する方法は、次のように3つあります。
- 実験 — 実社会でアイデアをテストし、誰も持っていないデータを収集する。
- 体験 — コンテンツを作成する内容を実際に体験する。
- 努力 — 他の人よりも優れたもの、またはページ上の言葉以上のものを作成する。
まとめ
今回の記事では、Google の AI Overview についてこれまでにわかっていることをまとめてお伝えしました。まだ不安定な機能なので、Google が実験を続けるにつれて多くのことが変わることが予想されます。
ただし、オーガニック検索結果であれ AI Overview であれ、優れた SEO は変わりません。SEO の基本を地道に実践し続けることで必ず結果は現れます。
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